<第204回国会 農林水産委員会 2021年4月13日>


◇中山間地域等直接支払制度と環境保全型農業直接支払制度の現状について/中山間地の農業の対策について/生乳の規制緩和を求める規制改革推進会議について

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 冒頭、これ質問しませんけれども、東京電力の福島第一原発事故による汚染水の海洋放出について述べたいと思います。
 この問題、私も本委員会で何度か取り上げてきましたし、昨日も、党の国会議員団としても梶山経済産業大臣のところに申入れをしまして、決めるなということで言いました。まだ決まっていないと、近日中というふうに言っていたんです。近日中と言っていて、昨日の今日ですからね。本当にこれどういうことかというふうに思います。
 しかも、二〇一五年の八月、福島の皆さん、自治体も含めて決議を上げて政府に対して要請しているのに対して、政府と東電は関係者の理解なしに汚染水はいかなる処分も行わないということを文書で回答しているんですよ。本当にこれ約束違反じゃないかということで、私、厳しくこれは抗議を申し上げたいと思います。
 その上に立って、今日は中山間地域についてお聞きします。
 中山間地域は、人口で全国の約一割を、農家数、耕地面積、農業産出額は全国の約四割を占めているわけです。しかし、過疎が進行して生活や生活条件が、生産条件が厳しくなっている現実にあります。中山間地域の支援策として、中山間地域等直接支払制度があります。
 そこで、中山間地域の直接支払交付金の面積と環境保全型の支払の実施面積、これ資料でお配りしております。

資料 中山間地直接支払交付面積、環境保全型支払の実施面積

水色が中山間地域の直接支払交付金面積、オレンジが環境保全型の農業直接支払です。中山間地域直接支払面積、交付面積は、二〇一四年度の六十八万七千二百二十ヘクタールをピークにして、その後、一旦下がり、横ばいが続いて、二〇一九年度は六十六万五千三百九十四ヘクタールです。これ、なぜ交付面積が横ばいで推移しているんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省農村振興局長 牧元幸司君) お答えを申し上げます。
 この中山間地域等直接支払交付金の交付面積でございますけれども、委員お配りの資料にございますように、二〇一四年、平成二十六年度、六十八万七千ヘクタールでございましたところ、第四期対策に移行いたしました二〇一五年度につきましては六十五万四千ヘクタールに減少しているところでございます。
 その理由といたしましては、この中山間地域等直接支払制度につきましては五年を一期ということでやっておりまして、少子高齢化、人口減少の進行等を背景といたしましたこの人員、人材不足、また、地域コミュニティー機能の維持に必要な話合いが、話合いが困難な地域が増加しているということ等によりまして、この第四期対策の初年度に面積が減少したということは考えております。
 その後、この第四期対策の期間中に、各市町村におきまして、本制度に取り組んでいない地域に対しまして交付金の活用の推進活動というような現場の大変な御努力が積み重ねられた結果といたしまして、令和元年度、二〇一九年度でございますけれども、これにつきましては、二〇一五年度から約一万ヘクタール増加をいたしまして六十六万五千ヘクタールとなっているところでございます。

○紙智子君 要するに、今の説明でいうと、中山間地域で高齢化が進んでいて、五年以上もの農業継続できないということが一つ大きな要因としてあるという話だったと思うんですね。
 次に、今立ち上がりましたけれども、環境保全型の農業直接支払、これ自然環境の保全に役立つ農業生産活動の実施に伴う追加的コストを支援するというものですよね。この交付金も、二〇一七年度の八万九千八十二ヘクタールをピークにして下がって、二〇一九年度は七万九千八百三十九ヘクタールと。これ、なぜ落ちているんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省生産局長 水田正和君) お答えいたします。
 委員御指摘の環境保全型農業直接支払交付金でございますが、これは、農業者団体などが化学肥料及び化学合成農薬を原則五割以上低減する取組と合わせて行う地球温暖化防止や生物多様性、生物多様性保全等に効果の高い営農活動に対して支援を行うものでございまして、有機農業ですとか堆肥の施用ですとかカバークロップですとか、そういったものに、そういった取組を行う場合に支援をするものでございます。
 この交付金では、二〇一五年から二〇一七年、年度までですね、同じ圃場で二つの取組をやった場合に重複してカウントできるという形でどちらも支援をしておりましたが、取組の実面積を拡大させるということを優先させるという観点から、二〇一八年度からは同じ圃場における支援対象取組を一つに限定していただくと、こういった運用に見直したところでございます。
 この見直しを行ったことや天候不順があったことなどによりまして、二〇一八年度には実施面積が約九千六百ヘクタール減少いたしまして七万九千四百六十五ヘクタールとなったところでございます。
 なお、その見直し後の運用が周知、定着されてきた翌年度の二〇一九年度におきましては、約四ヘクタール、四百ヘクタール増加いたしまして七万九千八百三十九ヘクタールとなっているところでございます。

○紙智子君 つまり、圃場で複数の取組を認めないということが一時下がっている要因というふうに言えると思うんです。
 多面的機能支払も、これ認定農用地面積が減少しています。これも新しく五年間の計画が立てることができなくなっているというふうに聞いています。
 農林水産省は産業政策と地域政策が車の両輪だというふうに言ってきました。しかし、地域政策がこれ機能していないんじゃないかと思うんですね。農地の保全を軸にした政策がこれ限界に来ているんじゃないんでしょうか、農水大臣にお聞きします。

○国務大臣(農林水産大臣 野上浩太郎君) 中山間地域を始めとする農村地域では、少子高齢化や人口減少が都市部に先駆けて進行しておりまして、この地域コミュニティーの維持や多面的機能の発揮に支障が生じつつあると認識をいたしております。
 こうしたことから、昨年三月に閣議決定しました食料・農業・農村基本計画におきまして、農村を維持して次の世代に継承していくために、地域政策について大きく見直しを行い、三つの柱として推進することとしております。具体的には、中山間地等の特性を生かした多様な複合経営等及び地域資源を活用した所得と雇用機会の確保、二つ目は、地域コミュニティー機能の維持機能や生活インフラ等の確保による農山漁村に人が住むための条件整備、三つ目は、地域を支える体制や人材づくりによる農村を支える新たな動きの創出を推進しているところであります。
 特に、この農村地域における人材不足というものは、これは、農村を支える新たな動きや活力、柱の一つでありますこの分野の中心的な課題でありまして、昨年五月から開催しております新たな農村政策の在り方に関する検討会において現在議論しているところであります。六月中を目途に取りまとめを行うこととしておりますが、検討会での提言も踏まえながら、この人材の裾野拡大というものも図ってまいりたいと考えております。

○紙智子君 今のお話でもありましたけれども、農地の保全、そして多面的機能を発揮するためにも、マンパワー、人がいないとできないということだと思うんですね。
 雑誌「農業と経済」というのが出されていますけど、ここで、私も知っている福島県の二本松の東和地区の菅野正寿さんという方が登場しているんですけれども、この人は、農地集積や大規模化に政策が集中して、兼業農家も農業を維持できる仕組みがなおざりにされてきたんじゃないのかというふうに言っているんですね。それで、兼業で例えば会社勤めしている人、そうしながら農家している人も集落には大事な人材だというのは地域のリアルな姿なんだというふうに言っていて、やっぱり農業だけではなくて、祭り、商店、地域文化、生活圏の地域コミュニティーと一体となって地域を守っていく視点が必要なんだと、そして、今総務省の地域おこし協力隊の制度などに取り組んでいるということも言われているんです。東和地区というのは優良事例として紹介されているわけです。
 そこで、ちょっと総務省に来ていただきましたが、お聞きします。地域おこし協力隊と集落支援員の概要、実施主体、活動期間、交付税の措置、人数等について説明してください。

○政府参考人(総務省大臣官房審議官 黒瀬敏文君) お答え申し上げます。
 地域おこし協力隊でございますけれども、都市地域から過疎地域等の条件不利地域に生活の本拠を移した方に地方自治体が委嘱をするもので、おおむね一年から三年の間、農林水産業への従事ですとか住民の生活支援などの地域協力活動を行いながら、その地域への定住、定着を図る取組でございます。
 総務省では、実施主体である地方自治体に対しまして、隊員の報償費等について一人当たり四百七十万円を上限に特別交付税措置を講じてございます。平成二十一年、隊員数八十九人からスタートいたしましたが、令和二年度には約五千五百人が千六十五の自治体で活躍をしておられます。
 一方、集落支援員でございますけれども、地域の実情に精通をし、集落対策に対するノウハウや知見を有する方に地方自治体が委嘱をするもので、集落の巡回ですとか課題の把握、集落の在り方に関する住民同士の話合いの促進等を行っていただく取組でございます。
 集落支援員の報償費等についても、一人当たり四百三十万円を上限に特別交付税措置を講じてございます。令和二年度は千七百四十六人の専任の集落支援員が三百六十一の自治体で活躍しておられます。

○紙智子君 今お話あったように、地域おこし協力隊、これ二十一年が八十九人から今五千五百人になっているという話ですよね。
 それで、この協力隊というのは、活動地域と同一市町村内の定着率が五〇%だと。どう定着を図るかというのも課題になっていて、弘前大学の平井太郎准教授の調査によると、活動地域と同一市町村内の定住者も、五年目には四分の一、八年を過ぎると約四割が活動地域を去り、近隣の都市部に定住するということなんですよね。主な理由は何かというと、受入れ地域の子育てや教育などの環境が脆弱なことだというふうに言っているわけです。そのほかにも、やっぱり医療体制なんかもあると思うんですよね。
 それで、農地をどうするかという角度だけではなくて、農村地域の資源を保全しながら集落機能をどう発揮していくのか、総合的な対策をこれ検討することが今いよいよ急がれているんじゃないかというふうに思うんですけれども、これ、農水大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 野上浩太郎君) 今ほど来御議論のあります集落機能に着目した対策につきましては、食料・農業・農村基本計画の中で、地域コミュニティー機能の維持や強化を図るために、世代を超えた人々による地域のビジョンづくり、あるいは小さな拠点の形成の推進、地域コミュニティー機能の形成のための場づくりなどに取り組むことといたしております。
 これを受けまして、令和二年度から始まりました中山間地直払いの第五期対策では、集落の話合いによりまして集落の将来像を明確化するために、集落戦略の作成を体制整備単価の要件とし、協定参加者の減少や高齢化、担い手不足といった課題に対応するために、集落機能強化加算ですとか集落協定広域化加算などを拡充をすることといたしたところであります。
 また、令和三年度から、今総務省からも施策の紹介があったところでありますが、この地方公共団体の職員等を対象といたしまして農村プロデューサー養成講座を開催をいたしまして、各府省横断の地域づくりの施策に関する講義を取り入れるとともに、今お話のありました地域おこし協力隊員も参加可能とするなど、今、関係省庁間で連携をしつつ、実施をすることといたしております。
 幅広い関係者と連携をした総合的な施策を講じて、やはりこの集落機能の維持、また発揮を図ってまいりたいと考えております。

○紙智子君 是非、各省庁と連携して進めていただきたいと思います。
 さて、規制改革推進会議についてもお聞きします。
 規制改革推進会議農林水産ワーキング・グループが三月十九日に生乳の流通規制改革について議論をし、改革の遅れを指摘する意見が続出したと言われています。会議は非公開ですので、幾つか事実確認をしたいと思います。
 規制改革推進会議の二〇一六年十一月の意見ですが、改革の原則は、生産者が自ら自由に出荷先を選べる制度に改革する、そして生産者が創意工夫をしつつ所得を増大させるとしています。内閣府にお聞きしますけれども、生乳改革で酪農家の所得は全体として上がったんでしょうか。

○大臣政務官(内閣府大臣政務官 岡下昌平君) お答え申し上げます。
 農林水産省の畜産物生産費統計によりますと、全国の生乳一キロ当たりの所得は、乳価が上昇したものの、それ以上に生産コストが上昇した結果、平成二十九年度が三十六円、平成三十年度が三十四円、令和元年が三十二円と、減少しております。
 平成二十九年六月に閣議決定されました規制改革実施計画では、牛乳、乳製品の生産、流通等に関する規制改革といたしまして、生産者が出荷先等を自由に選べる環境の下、経営マインドを持って創意工夫をしつつ所得を増大していくことを目的として改革を行うこととされております。
 引き続き改革を進めることで、酪農家の所得増大を目指していくことが重要と考えております。

○紙智子君 議論していないんですか。所得を上げるというふうに言ってきたわけだけれども、実際上がっていないんじゃないのかと。
 それで、最近、今ちょっとお話ありましたけど、取引乳価とか補給金とか、あるいはその副産物、この価格が上昇してきて多少所得は上向いているというのはあるんだけれども、一方で、農林水産省の乳牛の生産費の調査でいうと、生産に必要な費用も増えていると。ある意味、農家にとってみればちょっと一息つけるかなということでもあるんだと思うんですけれども、しかし、これって生乳改革で所得が上がったわけじゃないんですよね。
 生乳は、需要に応じて飲用向けと乳製品向けを調整する必要があって、生乳の需要の全体の安定を図っていくということが必要なわけです。二〇一七年六月の規制改革実施計画においては、飲用向けと乳製品向けの調整の実効性を担保できるものとすること、また、部分委託の場当たり的な利用を認めないルールにすることというふうにしているわけです。
 需要調整と、需給調整と場当たり的な利用について、これどうなっているかというのは議論されていますか。

○大臣政務官(内閣府大臣政務官 岡下昌平君) お答え申し上げます。
 御指摘の点につきましては、制度改正を受けまして既に実施済みの事項であると承知いたしております。
 先日の規制改革推進会議におきましては、既に実施された事項も含めまして、生産者が出荷先等を自由に選べる環境が実現できているかどうかを議論されたものと承知をしております。

○紙智子君 本当に無責任だなと思いますよ。需給調整に関心ないようですよね。
 昨年のコロナ禍で、学校の一斉休校に伴って学校給食用の牛乳への出荷が止まったことが酪農に与える影響が本当に心配されたわけですよね。そのときに、指定団体が生乳の需給調整に大きな役割を発揮して、生乳を廃棄せずに乗り越えることができたわけですよ。一方で、一昨年に、群馬県の生乳卸のミルク・マーケット・ジャパン、いわゆるMMJですけど、北海道の九戸の酪農家から集乳を停止して、大量の生乳が廃棄される事態が発生しました。指定団体の取組は生乳の廃棄を回避し、もう一方で、規制改革のきっかけとなったMMJは生乳を廃棄する事態に発展したわけですけれども、このことについてはどういう議論していますか。

○大臣政務官(内閣府大臣政務官 岡下昌平君) 先ほども答弁申し上げましたけれども、規制改革推進会議におきましては需給調整の実効性の担保の重要性を否定したり、あるいは部分委託の場当たり的な利用のための契約違反を認めるような議論が行われたとは承知いたしておりません。
 いずれにせよ、同会議では、生産者が出荷先等を自由に選べる環境の下で、経営マインドを持って創意工夫をしつつ所得を増大していくことを目的として議論が行われているものと考えております。

○紙智子君 本当無責任な議論なんですよね。
 それなのに、いいとこ取りはビジネスの常識だとか、それからホクレンは分割すべきだなんていう意見が出たということですけれども、農林水産省は、これに対してちゃんと説明したりあるいは反論したりとやっているんですか。大臣。

○国務大臣(農林水産大臣 野上浩太郎君) その議論でありますが、三月十九日のワーキンググループでありました。農家が、あっ、酪農家が出荷先を自由に選択できる環境を整備した制度改革、これは一定の進展があるものの、指定団体への出荷が大宗を占める実態は変わっておらず、指定団体が不公正な取引を行っている疑いも見られることから、実態として制度改革進んでいないとの意見があったところであります。
 委員からは、この生乳改革事業者の競争を促すことによって、酪農家が出荷先を自由に選びやすくするために、実態、取引、実態調査とか防止の取組、あるいは指定事業者が生乳取引を拒否できるルール違反の事例集の全面的な見直しですとか、今お話のあった指定団体の分割や取引条件の透明性の確保のための検討と、そういうような意見があったところであります。
 ワーキンググループにおける指定団体についての議論は、これは分割ありきで議論されたものとは認識していませんが、この現在の指定団体は歴史的に乳業メーカーとの対等な価格交渉を行う上で酪農家が団結をして酪農家の協同組織として発展した経緯があります。こうした経緯を踏まえると、競争を促すために指定団体を分割すれば乳業メーカーに対する酪農家の価格交渉力が弱体することにつながるおそれがあると考えております。
 今回の議論は指定団体が系統外の事業者を排除するような不公正な取引を行っているという懸念があるという点から始まっておりますので、まずはこの不公正な取引について、農水省としては承知していないことから、その実態があるか否かを含め調査をして対応を検討していく必要があると考えております。

○委員長(上月良祐君) おまとめください。

○紙智子君 もう時間になっちゃいましたけど、やっぱり私は、さっき誰かも言いましたけど、農水省は農水省の意見を言うべきだと思うんですよ。
 結局これ、規制改革会議って密室で議論して言いたい放題でしょう。やっぱり、規制改革会議、安倍前総理が、私がドリルになって岩盤壊すと言ってこの規制改革推進会議を主導でやってきたわけですけれども、現場を置き去りにした議論なんですよ。国民に不信を招くような新自由主義的な改悪はもうやめるべきだということを申し上げて、質問を終わります。