<第204回国会 東日本大震災復興特別委員会 2021年4月9日>


◇福島第一原発事故による汚染水の海洋放出について/宮城県による被災者生活再建支援金の加算支援金打ち切り問題について/被災者の実態調査について/防災基本計画と災害ケースマネジメントについて

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 初めに、福島第一原発事故による汚染水処理の問題について平沢大臣にお聞きします。
 今日のNHKの昼のニュースで、十三日にも関係閣僚会議を開き、海洋放出を決定する方針を固めたという報道が昼にありました。これは事実でしょうか。御存じでしょうか。

○国務大臣(復興大臣 平沢勝栄君) 私は全く聞いておりません。閣僚会議の案内、私もメンバーですけれども、その案内も、少なくとも私が復興庁を出るときには一切来ておりません。ですから、それは少なくとも今の時点では私はまだ何ら聞いていない話でございます。

○紙智子君 汚染水処理の問題めぐっては、先ほど来議論になっていますけれども、四月七日に菅総理と全漁連の岸会長との会談が行われました。岸会長は、汚染水の海洋放出について漁業者は絶対反対だと政府に要請してきた経緯がある、我々の反対の考えはいささかも変わることはないというふうに、菅総理に対して改めて海洋放出反対の立場を表明しました。
 菅政権によるこの現場の声をもし無視してこの汚染水の海洋放出を強行するということになれば、これは福島、福島だけじゃないですよね、懸念を持っている国民の、多くの国民の皆さんと漁業者を切り捨てることになるんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。

○国務大臣(復興大臣 平沢勝栄君) まだこの問題について結論が出たということは聞いておりません。ですから、どういう結論が出るか分かりませんけれども、いずれにしましても、結論が出るに当たっては、国民の皆さん、とりわけ福島県の皆さん方の御理解、御協力いただくべく、私は最大限の努力をするだろうと思います。
 いずれにしましても、そういったこと、結論を出したことによって風評被害が万が一生じるようなことがあれば、その風評被害を消すために最大限の努力をしていかなければならないと考えております。

○紙智子君 実際ニュースで流れているわけですよ。それで、見てびっくりしている人もいるわけですよね。
 それで、現場はですね、現場はもう誰もこれ納得していない話なんですよ。納得していないことはやっぱりやるべきでないんじゃないでしょうか。

○国務大臣(復興大臣 平沢勝栄君) 私も昼のニュースを聞きまして、まさに寝耳に水でございました。
 いずれにしましても、そういったこと、御理解、御協力なくしては、繰り返しますけれども、この問題は前に進めることはできないわけでございまして、そこはしっかり取り組んでいきたいと思います。

○紙智子君 やっぱりこれは、いや、それで何日か後にやっぱりそうだったということにならないようにしていただきたいわけですけれども、やっぱり、風評被害がもし出た場合は万全の対策と言うんだけど、一番の風評被害の対策というのはこれは海洋放出をしないことなんですよ。ですから、是非この海洋放出はやめるべきだということを強く申し上げておきたいと思います。
 次に、東日本大震災、福島第一原発事故から十年が経過しましたけれども、今もなお被災者支援の中で取り残されようとしている人がいるんですね。
 宮城県が、インフラなどの基盤整備が進んだことを理由にして、四月十日で被災者生活再建支援金の加算支援金の申請を打ち切ろうとしていることが今月一日付けの河北新報やテレビで報道されて大問題になっています。宮城県のまとめでは、加算支援金の未申請の世帯数が県内九市町村で四千二百三十五世帯に上るわけです。
 それで、未申請の方々は、住宅の再建方法を検討中であったり、あるいは再建のめどが立っていないとか、理由があるわけなんですね。今後、申請する権利があるにもかかわらず、県がこれもし強引に締め切ることになれば、被災者が取り残されることになるわけなんです。
 これでは、議員立法で作ったこの被災者生活再建支援法の精神が生かされないことになるんじゃないんでしょうか。

○国務大臣(復興大臣 平沢勝栄君) 被災者生活再建支援法は、都道府県が相互扶助の観点から拠出した基金を活用して支援金を支給することによって、被災された方々の生活再建を支援して被災地の復興に資すると、こういうことを目的としているわけでございまして、支援金の申請期間につきましては、被災地における危険な状況の継続などやむを得ない事情により申請することができないと認められるときには都道府県の判断によって延長することが可能となっているわけでございます。
 このように被災者生活再建支援制度は都道府県が主体的に支援の判断を行う制度となっておりまして、宮城県においては、法の目的を踏まえてこれまで申請期限の延長を行ってきたものと認識しております。
 この間、加算支援金の未申請世帯に対しては、訪問や電話、郵送等により周知徹底に努めてきたものと伺っておりますけれども、支援金の申請期間についても県において適切に判断されるものと考えております。

○紙智子君 県が判断することだということなんですよね。
 それで、災害公営住宅を退去した世帯への支援制度の周知がこれ不足しているということについては宮城県の当局自身が認めていることなんです。内閣府からも説明を受けたんですけれども、河北新報の報道や申請期間の延長を求める方々の指摘を受けて、宮城県は改めて、先週ですね、先週、周知の徹底を市町村に向けて求めているところで、各市町村で加算支援金の対象者を洗い出しているところだと聞いているわけです。
 周知したのは、これ締切りの一週間前なんですよね。市町村のある担当者は、災害公営住宅を退去した際に改めて加算支援金の対象となることは県の周知もなく分からなかった、もっと早く分かっていればと、是非申請期間の延長をしてほしいというふうに言っているわけです。仙台市の担当の窓口は、自分に受給資格があるんだろうか、あるいは、公営住宅を退去すると加算支援金の対象になることというのをそもそも知らなかったということで、この報道を見てこの問合せが、一日十件以上問合せが来ているということなんですよ。
 市町村の担当者もよく知っていない、被災者も知らない中で、これ強引に打ち切っていいんでしょうか。

○国務大臣(復興大臣 平沢勝栄君) この問題について宮城県に確認したところ、これまでに各市や町において加算支援金の未申請世帯に対しまして訪問や電話、郵送等によりまして申請期間等についての周知徹底を図ってきたほか、県においても広報活動や定期的な状況把握等を行ってきたということで聞いております。さらに、本年四月二日にも県から各市や町に改めて申請期間等についての周知依頼を行っているということで聞いております。
 このような周知状況等を踏まえまして、支援金の申請期間につきましては宮城県において適切に判断されるものと認識しております。

○紙智子君 ですから、現に今紹介したような担当者が知らなかったというのがあって、これやり始めたのは、ですから、新聞で報道で指摘されて、改めて、一週間前ですよ。だから、まだ間に合っていない状況になっているというのが現実にあるわけです。
 それで、災害公営住宅の入居者が退去した場合は加算支援金の申請の対象者となる、住宅の購入や補修や賃貸を含めて、住宅確保に向けてこれは必要な支援金になると。津波で被災して現在仙台の災害公営住宅に住んでいる方は、今年の三月までの家賃は四万九千円だったんですけど、四月からは収入超過者世帯ということになって家賃が八万七千円に上がると。今後も、収入が変わらなくても毎年三万円ずつ上がって、五年後の割増し家賃は十八万円にもなるということなんですね。これじゃもうとても大変ということで退去を検討して、賃貸物件を探している最中だと。四月十日にとても間に合うような状況じゃないという声が寄せられているんですけど、この事態を政治家である大臣にちょっとやっぱり考えてほしいと思うんですよね。
 今、県は申請したんだと言っているんだけれども、でも、こういう事態なんだということを踏まえてどうしたらいいのかということなんですけど、いかがでしょうか。

○国務大臣(復興大臣 平沢勝栄君) このような、いろいろとこの制度については宮城県の方で周知徹底されたと思いますけれども、もしそういった事例があるならば、これはもう宮城県の方で適切に判断されるものと考えておりまして、そういった具体的な事例があるということを宮城県の方に言われたらいいと思いますし、私の方でも、今日の委員会でこういう話がありましたよということは宮城県の方に連絡させていただきたいと思います。

○紙智子君 大臣の方からもそういうことがあるよということを言われるということで、それ自体も大事だと思うんですよ。
 大臣、現場主義をやっぱり徹底するというお話されているし、被災者に寄り添うというふうに言っていたわけで、やっぱり被災者が困っている現実があるということには是非動いていただきたいということを思います。
 どうして県の方がこうやって締め切ろうとしているのかと、急いでね。これ、申請期間の延長を求める声がずっと実際には出ているわけでして、申請延長、申請期間を延長して、再度広報して周知する期間を設けるとか、宮城県が再考して判断したらこれは延長は可能なんだと思うんですね、県がそもそも決めるものだから。ここをまずちょっと確認、さっきも答えられたんですけれども。そのことと、それから、未申請の世帯に支援金がやっぱり届くように、漏れがないようにしていくように工夫、何とかできるように検討できないものでしょうか。いかがでしょう。

○政府参考人(内閣府大臣官房審議官 村手聡君) お答え申し上げます。
 被災者再建支援金の申請期間につきましては、やむを得ない事情により被災世帯の世帯主が申請期間内に申請をすることができないと認めるときは都道府県の判断によって延長することができるとされてございます。
 宮城県におけるその申請期限の延長については、地域の実情を踏まえて宮城県において判断されるものと考えてございます。

○紙智子君 県が判断すればできるということなので、宮城県には被災者のためにも改めて再考するように求めたいと思います。
 震災から十年経過した今も住宅を確保できない人もいます。石巻の人は、津波による被害を受けて、自宅を更地にして区画整理も終了したんだけれども、土地を売却した資金と加算支援金で住宅確保を目指していたと、ところが、土地の売却が進んでいないために住宅再建のめどが立っていない。このまま申請期限が打ち切られてしまったら、受給資格があるにもかかわらず支援が受けられない事態となるということなんですね。これ、被災者置き去りのやっぱり支援打切りはそういう点からも許されないというように思います。
 このほかにも被災者が取り残されている事態があるんですね。在宅被災者の問題です。
 私、この間、住宅応急修理制度を利用したことで応急仮設住宅に入れず、壊れた自宅に住み続けるしかなかった在宅被災者の問題を何回か取り上げてきました。
 宮城県の女川の男性は、住宅被害が一部損壊と認定されて、自宅の浴槽がひび割れて使えなくなった、修理するお金もないまま、約八年間、炊飯器で沸かしたお湯で体を洗うという生活を続けるしかなかったと、二〇一九年の三月に在宅被災者の支援団体とつながることができた、ボランティアの方ですね、それで保証人を探すということもやって、ようやっと災害公営住宅に一般枠で入居することができたということなんですよ。震災から十年といっても、こういう不自由な生活を強いられている在宅被災者の方がいるわけです。
 なぜ被災者が長年壊れた家で住み続けなきゃいけないのかということでは、これ大臣、実態について把握されているでしょうか。

○国務大臣(復興大臣 平沢勝栄君) 被災自治体によって被害状況とかあるいは被災者の状況というのは様々でございますけれども、在宅被災者の調査や支援につきましては、これは住民に身近な自治体で実情に応じていろんな対応を取られることが望ましいと考えております。
 自治体によっては、在宅被災者を含む被災者の実態把握や訪問調査、相談支援などを実施してきているところでございまして、復興庁としても、こうした取組を被災者支援総合交付金を活用して支援してきたところでございます。
 自治体から丁寧に状況を伺いつつ、こうした在宅被災者への支援も含め、引き続き被災者に寄り添った支援に取り組んでいきたいと考えております。

○紙智子君 もちろん自治体は身近なところですからつかむんですけれども、やっぱり被災者一人一人がどういう状況になっているのかというのは国が調査をして実態をつかむ必要があるんだと思うんですね。実態把握をしなければ今どういう支援が必要なのかということが分からないわけです。十年たった今だからこそ、被災者の実態調査を行うべきではないんでしょうか、大臣。

○委員長(杉尾秀哉君) 大臣、答えられますか。

○国務大臣(復興大臣 平沢勝栄君) 在宅被災者の支援、それから、それとその他被災者の支援については、基本的には都道府県が実情を詳しく知っているわけで、やるわけで、その中で国として支援できるところがあれば国として都道府県を支援すると、あるいは市町村を支援するということだろうと思います。
 いずれにしましても、実態を詳細に都道府県から、県あるいは市町村から聞いて、そしてそれに応じたしっかりした支援策を国として何かできるかどうかは考えていきたいと思います。

○紙智子君 大臣は所信表明の中で、十年という長い期間の経過によって被災者や被災地の置かれた状態が多様化しており、きめ細かい対応の必要があるというふうに述べているんですよね。被災者一人一人にきめ細かい対応するためにはやっぱり実態調査が必要だと思いますので、是非実行に移していただきたいというふうに思います。
 それから、東日本大震災を経験をして見えてきた課題があるんですが、震災以降も毎年のように今地震とか災害とかって発生しているわけです。今、被災者一人一人に寄り添った取組が必要であるというふうになっていて、例えばアメリカですけれども、二〇〇五年に発生したハリケーン・カトリーナで甚大な被害を受けたアメリカで制度化されたんですけれども、災害ケースマネジメント、これを実践しているわけですけど、これに学んで日本でも自治体がやっているところがあって、鳥取県は、鳥取県中部地震から復興を進めるために、条例に位置付けてこれ取り組んでいるんですね。
 鳥取県版の災害ケースマネジメントの取組について、ちょっと簡潔に御説明お願いします。

○政府参考人(内閣府大臣官房審議官 村手聡君) お答え申し上げます。
 鳥取県におきましては、平成二十八年に鳥取県中部を震源とする地震を契機にいたしまして、被災者の生活復興を支援するため、推進するため、被災者一人一人に寄り添った支援であります災害ケースマネジメントに取り組んでいると承知してございます。具体的には、県や市町村の職員が世帯を戸別訪問し、困り事などを聞き取り、世帯の状況を把握する、次に、この実態調査の結果に基づきまして、関係機関が集まり各世帯の状況に合わせた生活復興プランを作成、さらに、生活復興プランに基づき専門家の派遣や支援窓口とのマッチング等を行うといった流れとなってございます。
 こうした取組により被災者の個々の状況に応じた生活復興支援がなされ、成果を上げていると承知してございます。
 以上でございます。

○紙智子君 つまり、今の説明でもあるように、行政などによる戸別訪問を通じて被災者の状況を把握し、関係機関や専門家の派遣を通じて生活再建を後押しする制度ですね。
 今、被災者一人一人に寄り添った総合的な支援が求められていて、鳥取県の取組を是非全国に広げていく必要があるんじゃないかと。ということなので、提言をしたいんですけれども、国として防災基本計画に位置付けることができるんじゃないかと、付けたらいいんじゃないかということなんですけれども、小此木大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(内閣府特命担当大臣(防災) 小此木八郎君) 一人一人の被災者の被災したとき、そしてその後、そして生活の再建までに、寄り添うという言葉が使われましたが、その方の身になってしっかりとその再建に取り組んでいく、つまりそれが災害ケースマネジメントということと考えますけれども、こうした観点からそれは重要だと思っています。
 そうした観点から、個々の被災者の状況に応じた適切な支援制度が活用されるように、被災者台帳を活用したきめ細やかな支援、被災者の見守りや相談支援に関する補助事業の実施、被災者が容易に支援制度を知ることができる環境の整備等に現在も努めているところであります。
 現行の防災基本計画においてですが、市町村は、必要に応じて、個々の被災者の被害の状況や各種の支援措置の実施状況、配慮を要する事項等を一元的に集約した被災者台帳を作成して、被災者の援護の総合的かつ効率的な実施に努めるものとすると、こう記載されておりまして、市町村の取組を促しているところであります。
 この記載も含めて防災対策について不断の見直しを行いつつ、先ほど委員からのお話で、審議官が御説明いたしましたけれども、鳥取県のような先進的な取組を行っている事例がほかにもあろうかと思いますけれども、こういったところを横に展開するといいますか紹介をしながら、更に被災者に寄り添った切れ目のない支援が行われるよう、関係省庁、地方公共団体と連携して取り組んでまいりたいと存じます。

○委員長(杉尾秀哉君) 時間が来ております。

○紙智子君 ありがとうございます。はい、終わります。
 それで、今お話あったように、ちょうど中央防災会議の中でも見直しのときに来ているということなので、是非それを反映させるべく、そして横の連携を取りながら取り組んでいただきたいということを申し上げまして、質問を終わります。