<第204回国会 農林水産委員会 2021年3月30日>


◇有明海の調査について/有明海に放出される有害水が水産生物や潮流に与える影響の調査について/有明海の再生に向けて生物環境の調査を求めた

○有明海及び八代海等を再生するための特別措置に関する法律の一部を改正する法律案(衆議院提出)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 諫早湾干拓事業についてお聞きします。
 潮受け堤防排水門の開門を命じた確定判決から十年たちました。いまだに漁業者の苦悩が続いていますので、宝の海をどう再生させるのかが重要です。
 有明特措法によって有明海・八代海総合調査評価委員会が設置されました。議員立法を作ったときのその趣旨を、立法提案者は、抗争の海から平和の海にしないといけない、豊かな海をつくっていく、資料等をみんなで共有しながら再生を目指すための調査であるというふうに位置付けたと説明されています。
 そこで、環境省にお聞きします。
 評価委員会は、干潟と有明海の環境影響調査、潮流等々、有明海の環境影響調査を行っています。調査する海域は七ブロックと、大きな海域ごとに行われています。しかし、漁業は地先ごとに魚介類の分布状況が違います。例えば、タイラギ漁は二〇一二年以降は休漁になっています。タイラギのへい死が問題になっています。地先で潮流がどのように変化しているのか、魚介類の分布などを調査しているでしょうか。

○政府参考人(環境省大臣官房審議官 森光敬子君) 有明海・八代海等総合調査評価委員会の報告では、まず、個別海域ごとに問題点及びその原因、要因の考察を進めることによって、各海域の再生に係る適切な評価、再生方策を見出すことが期待できるとされているところでございます。
 こうしたことを踏まえまして、海域の区分は、水質環境、底質、それから生物の生息状況の三通りの視点から統計的解析手法により検討され、最終的には水環境を基本に、タイラギ、サルボウ、アサリ等の水産資源として重要な二枚貝等の生息状況、これを勘案しまして現在七区分というふうにされておりまして、そのような水産資源の分布状況、こういうものも含めて評価とさせていただいておるところでございます。

○紙智子君 七区分ということなので、結構広い範囲だと思うんですよね。漁業者の実感ともちょっと違うんじゃないかと思うんです。
 調整池内の調査、これは、環境省、行っていますか。あっ、農水省ですね、行っていますか。

○政府参考人(農林水産省農村振興局長 牧元幸司君) 調整池の水質につきましては、九州農政局が調整池の二か所におきまして毎月水質調査を実施をしているところでございます。

○紙智子君 それで、湖沼水質保存特別措置法に準じた行動計画があると思うんですけれども、行動計画に基づく目標数値は達成しているでしょうか。

○政府参考人(農林水産省農村振興局長 牧元幸司君) お答えを申し上げます。
 この九州農政局の調査結果によりますると、有機汚濁物質の目標、指標でございます化学的酸素要求量、いわゆるCODでございますけれども、水質保全目標値である一リットル当たり五ミリグラムに対しまして、令和元年度におきましては一リットル当たり八・六ミリグラムとなっておりまして、目標は達成していないところでございます。
 調整池の水質改善につきましては、長崎県が定める行動計画に基づき、現在行っております対策の一層の進捗を図りますとともに、対策の効果の検証、新たな対策を行うなど、長崎県、関係市と連携をして取り組んでまいりたいと考えております。

○紙智子君 今の答弁でも、目標は達成していないということなんですね。
 実は、堤防内のこの有害水が定期的に有明海に放出されることが問題になっています。
 それで、環境省にお聞きします。
 放出した有害水が堤防の外側の水産生物や潮流に与える影響を調査しているでしょうか。

○政府参考人(環境省大臣官房審議官 森光敬子君) まず、有明海の環境変化の要因、原因につきましては、この特措法に基づきまして、関係省庁及び関係県が連携して海域、環境等の調査を実施しておりまして、その結果に基づきまして、環境省に設置されました有明海・八代海等総合調査評価委員会が有明海再生に向けた評価を行っているという状況でございます。
 この報告、平成二十九年に取りまとめられました調査委員会の報告でございますけれども、この有明海、八代海等の様々な環境変化については、要因を評価した結果、数多くの要素が複合的に関連している可能性を示唆するものとなっておりまして、先ほど七つの海域に分けてというふうに御説明をさせていただきましたけれども……(発言する者あり)堤防の外を含めて、諫早湾の海域に関しての調査というのはその評価の一つとなっております。諫早湾における、先ほど言いましたように、二枚貝の生息状況ですとか、それから先ほどありました汚濁負荷量ですとか、そういう水環境の状況というものを含めて諫早湾として評価を行っておるという状況でございます。

○紙智子君 ちょっと今の答弁よく分からなくて、ちょっと事前に聞いたら、要するに、放出した有害水が堤防の外側の水産生物や潮流に与える影響は調査していないって聞いていますよ。

○政府参考人(環境省大臣官房審議官 森光敬子君) 評価委員会においては、各関係県が調査したその調査内容について評価を行っております。
 その調査というものに関してでございますけれども、評価におきましては、諫早湾の、諫早湾として、全体として評価を行っております。水の水質環境に関しては本明川等から流れ込む汚濁負荷量といったようなものに関しての調査を行っておりますけれども、魚ですとか二枚貝の生息状況については諫早湾全体としての調査となっているという状況でございます。

○紙智子君 よく分からないんですけど。昨日の段階では、していないという答弁だったんですよ。
 それで、農水省はこれ調査していますか。

○政府参考人(環境省大臣官房審議官 牧元幸司君) ただいま環境省から御答弁がございましたように、この有明海・八代海等総合評価調査委員会の報告によって調査が行われていると承知をしております。
 環境省から御答弁がございましたように、数多くの要素が複合的に関連している可能性を指摘するものとなっているというふうに農水省としても承知をしております。

○紙智子君 非常に曖昧で分かりづらいわけですよ、今の話は。
 それで、やっぱりこれ、ちゃんと把握をして、来年度、二〇二一年に評価委員会が中間報告を行うというふうに聞いていますよ。そこにちゃんと反映させるべきじゃないかと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 野上浩太郎君) 検討してまいりたいと思います。

○紙智子君 ちゃんと反映させなきゃいけないと思いますよ。有明海の調査範囲をきめ細かく行うということと、調整池から放出されている有害水が水産生物や潮流に与える影響を調査して報告するように求めておきたいと思います。
 それから、農林水産省に要望したいと思うんですけれども、今問題になっているタイラギ、それからサルボウの統計がありません。二〇〇七年以降、農林水産統計で集計していないというふうに聞いているんですね。水産資源を把握するためにはデータをしっかり取るべきではないんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省大臣官房統計部長 大角亨君) お答え申し上げます。
 タイラギ等につきましては、漁獲量が低位であったこと等から二〇〇七年以降はその他の貝類として一括して集計することとしたところでございます。
 しかしながら、地元からの要望等を踏まえまして、二〇一六年からは九州農政局で発刊しております九州農林水産統計年報におきまして、有明海を含む福岡県、佐賀県、長崎県及び熊本県におけるタイラギ等の漁獲量をその他の貝類の内訳として公表しているところでございます。

○紙智子君 これ、統計じゃなくて聞き取り調査なんですか。

○政府参考人(農林水産省大臣官房統計部長 大角亨君) 統計調査として、統計の数字としてですね、地方版の公表物の中では公表しているということでございます。

○紙智子君 やっぱり有明海を再生するためには、干潟がなくなって調整池、潮受け堤防ができて生物の生息環境がどう変わったのかということをしっかり調査するように求めたいと改めて思います。最後に、それに、大臣、お願いします。

○委員長(上月良祐君) 時間が参っておりますので、答弁は簡潔にお願いします。

○国務大臣(農林水産大臣 野上浩太郎君) 調査はしっかりと進めてまいりたいと考えております。

○紙智子君 終わります。

○委員長(上月良祐君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 有明海及び八代海等を再生するための特別措置に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。

   〔賛成者挙手〕

○委員長(上月良祐君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、田名部さんから発言を求められておりますので、これを許します。田名部匡代さん。

○田名部匡代君 私は、ただいま可決されました有明海及び八代海等を再生するための特別措置に関する法律の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・国民の声、立憲民主・社民、公明党、日本維新の会、国民民主党・新緑風会及び日本共産党の各派並びに各派に属しない議員須藤元気さんの共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。

    有明海及び八代海等を再生するための特別措置に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  国民にとって貴重な自然環境及び水産資源の宝庫である有明海及び八代海等を豊かな海として再生するため、「有明海及び八代海等を再生するための特別措置に関する法律」に基づき、海域環境の保全及び改善並びに水産資源の回復等による漁業振興に関する取組が行われてきた。しかしながら、その再生は道半ばであり、今後も引き続き、有明海及び八代海等における漁業振興に関する施策を強力に推進する必要がある。
  よって政府は、本法の施行に当たり、次の事項の実現に万全を期すべきである。
 一 有明海及び八代海等の海域環境の保全及び改善のため、赤潮や貧酸素水塊の被害防止対策、近年頻発する豪雨等に伴い発生する海岸漂着物等の除去及び処理のための十分な予算を確保し、地方公共団体と協力して取組を推進すること。
 二 有明海及び八代海等における漁場生産力の増進、水産動植物の増殖及び養殖の取組を支援し、同海域における水産資源の回復と持続的な利用を確保し、漁業振興に関する取組を着実に進め加速化すること。その際、指定地域内の状況の違いに十分配慮すること。
 三 有明海・八代海等総合調査評価委員会の所掌事務の遂行状況の公表に当たっては、有明海及び八代海等における環境等の変化の原因・要因、再生の方策が分かりやすいものとなるよう十分に配慮すること。また、国及び関係県が行う調査の内容については、地域や季節によって状況が大きく異なる同海域の特性を十分に踏まえ、きめ細かな分析を行うこと。
   右決議する。

 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。

○委員長(上月良祐君) ただいま田名部さんから提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。

   〔賛成者挙手〕

○委員長(上月良祐君) 全会一致と認めます。よって、田名部さん提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。