<第204回国会 農林水産委員会 2021年3月26日>


◇森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案に対する反対討論

○森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党を代表して、森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法の一部改正する法律案に反対する討論を行います。
 森林の間伐を進めることは、CO2吸収など森林の地球環境保全機能と豊かな森づくりのために大切です。間伐事業に対する交付金制度の延長は、長期にわたり間伐を繰り返し行っている地域で活用されており、賛成できるものです。しかし、間伐の現状は目標に遠く及ばず、支援策を強化することが求められています。
 今回の改正案は、間伐促進に新たに主伐を伴う特定植栽促進事業を新設します。
 特定植栽促進事業は、成長の早い苗木であるエリートツリーを植栽するものです。間伐が進んでいないのに主伐が推進されれば、CO2の吸収源対策にならず、法律の理念に反することになります。
 エリートツリーを植栽するためには立木を伐採する必要があり、生産性、効率性を優先すれば皆伐になりかねません。
 また、三十年という短いサイクルでの主伐が繰り返されれば、植栽したとしても根が弱まり、土砂災害が起きる可能性が高いとの指摘もあります。これでは、森林によるCO2の吸収源対策の目的にそぐわなくなります。
 今、主伐後の再造林は四割程度にとどまるなど、造林未済地が拡大しています。これでは、森林のCO2吸収源対策への懸念が払拭できません。特定植栽促進区域が造林未済地になれば、森林吸収源対策に反することになります。
 政府は、林業の成長産業化のために森林の皆伐を推進してきました。二〇五〇年カーボンニュートラルを実現するためには、森林が有する地球環境保全機能を発揮させることが重要であり、長期を見据えた持続可能な山づくりが必要です。
 林業の成長産業化ではなく、環境保全型の林業への転換を求めて反対討論とします。

○委員長(上月良祐君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
 これより採決に入ります。
 森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。

   〔賛成者挙手〕

○委員長(上月良祐君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、田名部さんから発言を求められておりますので、これを許します。田名部匡代さん。

○田名部匡代君 私は、ただいま可決されました森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・国民の声、立憲民主・社民、公明党、日本維新の会及び国民民主党・新緑風会の各派並びに各派に属しない議員須藤元気さんの共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。

    森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  森林は、国土の保全、水源の涵養、二酸化炭素の吸収による地球温暖化の防止等の多面的機能を有しており、これらの機能の持続的な発揮を確保する上で、適正な森林整備を推進することは極めて重要である。
  また、パリ協定に基づく我が国の森林吸収量目標の達成や二千五十年カーボンニュートラルの実現のためにも、引き続き、間伐や再造林等の森林整備を通じて、森林吸収量の最大化を図っていくことが極めて重要である。
  よって政府は、本法の施行に当たり、次の事項の実現に万全を期すべきである。
 一 再造林をはじめ、間伐等の森林施業による森林吸収源対策を着実に進めるため、森林整備事業に係る予算の確保及び支援措置を拡充すること。
 二 特定母樹の増殖に当たっては、遺伝的多様性に十分配慮すること。また、増殖した特定母樹から採取される種穂の配布に当たっては、地域の苗木生産者が広く利用できるようにすること。
 三 再造林に当たっては、適地適木を原則とすること。また、特定苗木を用いた植栽については、地域の実情も踏まえつつ、区域指定や施業の基準となる考え方を国として示すこと。
 四 未更新地の解消を図るため、再造林に係る省力化・効率化、苗木供給量の拡大、苗木生産者の支援に係る施策を拡充すること。
 五 森林資源の循環利用の確立に向け、林業労働力の育成・確保に向けた施策の拡充、賃金・労働安全対策をはじめとする就業条件改善に向けた対策を強化すること。
 六 二千五十年カーボンニュートラルに向けて、木材の利用拡大による炭素貯蔵、二酸化炭素の排出削減効果を最大化するため、本法の措置に加え、CLTや耐火部材等の活用により、公共建築物のみならず民間の非住宅建築物の木造化・木質化を進めるとともに、熱利用など高効率な木質バイオマスエネルギーの活用を推進すること。
 七 国有林野事業においても、国有林の一元的な管理経営の下、再造林、間伐等の森林整備が着実に推進されるよう、適正な人員等の確保、人材の育成、技術の継承等に努めること。
 八 台風等の自然災害による森林被害や山地災害が頻発している現状に鑑み、災害からの復旧を迅速化し、今後の災害発生を予防する観点から、間伐をはじめとする適切な森林整備を推進するとともに、災害発生リスクの増大を踏まえた治山対策を強化すること。
   右決議する。

 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。

○委員長(上月良祐君) ただいま田名部さんから提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。

   〔賛成者挙手〕

○委員長(上月良祐君) 多数と認めます。よって、田名部さん提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。