<第203回国会 農林水産委員会 2020年12月1日>


◇愛媛県産の裸麦の在庫過剰に対する支援について/鳥インフルエンザの現状分析/移動制限の特例について

○紙智子君 日本共産党の紙智子です。
 産地から寄せられている要望に沿って、裸麦の問題と鳥インフルエンザについてお聞きします。
 まず麦ですけれども、今年は西日本では天候に恵まれて、小麦、大麦、裸麦とも二〇一九年産よりも豊作になっています。
 愛媛県は裸麦の生産量が全国一位なんです。今年は、新型コロナ感染症の拡大で、需要減少と二年連続する豊作で在庫過剰になっています。
 裸麦は播種前契約なんですけれども、販売予定数量が四千二百二十一トン、販売見込みの数量、出荷見込みというのは六千五百八十一トンということで大幅に増えています。
 契約分よりも約二千トンがオーバーしていると。過剰分の支援をすべきではないかということですが、いかがですか。

○政府参考人(農林水産省政策統括官 天羽隆君) 国内産の裸麦でございます。主に麦みその原料、さらには主食用、麦茶の原料として使用されておる実態がございます。
 委員御指摘の愛媛県の裸麦につきましては、全農によりますと、令和二年産の集荷数量、十一月末現在で六千五百八十七トン、約六千六百トンということでございます。このうち千五百二十九トン、約千五百トンが契約数量を超過するというふうに聞いておるわけでございます。
 この契約超過数量につきましては、現在、全農と精麦会社などとの間で追加契約に向けて鋭意話合いが行われているというふうに承知をしてございます。

○紙智子君 追加契約というのは一二〇%までできると聞いているんですけど、そうなんですか。

○政府参考人(農林水産省政策統括官 天羽隆君) この契約には、豊作などにより事前契約数量を超える収穫があった場合には、契約上、当初の契約数量を超える一定の幅、アローアンスと呼んでおりますけれども、愛媛県の場合には二割までは実需者が引き取ることになっております。

○紙智子君 麦への支援策として、畑作のこの直接支払交付金、ゲタ対策と言われているものがありますけれども、交付金は食用として販売されなければ交付されないということで、これ、追加契約してもオーバーした分というのは交付対象にならないということなんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省政策統括官 天羽隆君) お答え申し上げます。
 裸麦への担い手経営安定法に基づく畑作物の直接支払交付金、委員御指摘のゲタ対策の支払でございます。
 考え方といたしましては、捨て作りの防止、さらには実需を伴わない生産を排除するという考えの下、実需者と事前に契約の上販売されるものがこの対策の対象となってございます。
 ただし、豊作によりまして事前契約数量を超える場合には、先ほど申し上げましたアローアンスまでは実需者が引き取るということになってございます。このアローアンスの分まではゲタ対策の交付対象となるわけでございます。
 さらに、このアローアンスを上回る収穫物につきましても、事前契約をした実需者と協議をし、当初の契約数量を変更して販売される部分につきましてはゲタ対策の交付対象となります。しかしながら、食用として契約できなかった部分はゲタ対策の交付対象とはなりません。これ、念のため申し上げますけれども、あくまでもアローアンスを上回る部分についてのことでございます。

○紙智子君 だから、追加契約しても、オーバーした分は食用ということでないということになった場合はどうしたらいいんでしょうか。保管とかあるんですか。

○政府参考人(農林水産省政策統括官 天羽隆君) お答え申し上げます。
 この契約数量を超えた分につきましてどのようにしたらいいのかということは、この麦、大豆を増産していこうという考え方の下、私どもも検討を進めているところでございます。
 現在、農林水産省、全農などが、輸入麦を使用しております精麦企業、みそメーカーなどを中心に、国内産の裸麦の利用拡大に向けてヒアリングなどを通じて意向の確認を行っておるところでございます。ヒアリングなどの中では、ユーザー企業、精麦会社なりみそメーカーなどから、国内産裸麦については作柄の変動が大きく、安定供給の面で不安があるといった指摘を受けてございます。
 今後の需要の拡大に向けて、国内産裸麦を安定的に供給できる体制を整備していくことが重要であるというふうに考えております。

○紙智子君 裸麦の輸入量はアメリカからの輸入というのが急増していて、平成二十七年は二千トン、二十八年は八千トン、二十九年は二万トン、三十年度は二万六千トンなんですよね。
 農林水産省、今お話があったように、麦・大豆増産プロジェクトというのを推進しているわけですけど、この国産麦の使用拡大を図るために、輸入麦から国産麦への切替え、当面、その保管用の倉庫の整備支援を求めたいと思いますけれども、いかがでしょうか、大臣。

○国務大臣(農林水産大臣 野上浩太郎君) 今、輸入麦から国産麦への使用の転換あるいは保管に対する支援が必要ではないかというお話でございました。
 私も先般、御地元の、愛媛県の皆様、関係者の皆様と話をさせていただいたところでありますが、今、統括官からお話しさせていただきましたとおり、今、精麦会社ですとか、あるいはみそメーカーに対してヒアリングを行っております。そのヒアリングの中では安定供給の面で不安がある等の指摘を受けておりますので、やはりこの裸麦が安定供給できる体制を整備していくことが重要であると考えております。
 このため、令和三年度概算要求では新たな、麦、大豆の豊凶変動に対応して安定供給を行うための産地での一時保管等の支援ですとか、あるいは、国内産麦の利用拡大に向けて、新商品開発、生産者と実需者のマッチングや商談会への支援を要求しているところであります。
 また一方で、同じ裸麦でありましてもモチ性の、特性のある裸麦に対する需要ですね、例えばモチ麦入り御飯ですとかモチ麦麺ですとかシリアル等々でございますが、この需要が拡大をしてきておりますので、これまでのウルチ性の裸麦からこのモチ性の裸麦への転換も利用拡大を図る上で有効な手段と考えております。概算要求中の、中でも、水田麦・大豆産地生産性向上事業においてはこのような作付け転換への支援も検討しているところでございます。

○紙智子君 麦は、転作作物としても食料自給率を向上させるためには重要な作物だというふうに思います。豊作がやっぱり喜びになって生産意欲が高まるように、しっかり支援をしていっていただきたいと思います。
 それから次に、高病原性鳥インフルエンザについて質問します。
 新型コロナウイルスの感染症が第三波という深刻な状況で対策が急がれているんですけれども、家畜の方でも高病原性鳥インフルエンザの発生が、香川県を始め福岡、それから兵庫、そして宮崎でも続発していると。これ放置できない状況になっています。
 まず、現在の発生状況と感染ルート、なぜ香川でいうと集団発生をしたのか、分析をされているでしょうか。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 新井ゆたか君) お答え申し上げます。
 今般の高病原性鳥インフルエンザの発生につきましては、十一月五日に香川県で一例目が発生して以来、香川県内で八事例、福岡及び兵庫でそれぞれ一事例、それから本日朝には宮崎県で一事例ということで、今まで計四県で十一事例が確認をされているところでございます。
 今シーズンは、ヨーロッパの諸国、イギリス、ドイツ、オランダ等でも発生が続いているということ、それから韓国の家禽の農場でも先週末、今シーズン初めての鳥インフルエンザの発生があったということを承知しておりまして、世界的にも発生が続いているという状況でございます。
 このような中、我が国での発生につきましても、これまで北海道、鹿児島県、それから新潟県におきまして、ふん便や池の水から高病原性の鳥インフルエンザのウイルスが確認をされております。これらのウイルスについて、今までの分析によりますと、いずれもH5N8亜型でございまして、シベリアの野鳥と同じということが確認をされているところでございます。したがいまして、飛来した野鳥が感染経路となっているかということにつきましては、環境省が実施する野鳥の監視調査結果を踏まえる必要がありまして、引き続き分析を行っていきたいというふうに思っております。
 これらのウイルスが農場にどのように入ったかという、いわゆる疫学調査でございます。疫学調査チームにつきましては、発生の都度、現地に派遣をいたしまして専門家の調査をしているところでございます。これによれば、ウイルスがネズミ等の小型の野生動物の侵入から入ったということ、それから農場におきます防鳥ネットの破れ、あるいはいろいろな隙間といったところから入ってきたということ、さらには、人、物の疫学関連による伝播の可能性というのが指摘されているところでございます。
 特に、香川県三豊市の発生につきましては、一例目の発生から三キロ圏内の中で、狭いエリアで立て続けに七件ということでございまして、これにつきましては、専門家の緊急提言によりますと、防疫措置が、最後の消毒までに時間が掛かったということ、それからやはり人、物の移動、車両等も含めましたそういう移動によりまして地域内の環境ウイルスが非常に高まっていたということが指摘されているところでございます。

○紙智子君 農水省の家畜衛生部会家きん疾病小委員会で、過去にない続発ということで緊急提案まとめているんですけれども、大臣、この危機感はおありでしょうか。どんなふうに受け止めていますか。

○国務大臣(農林水産大臣 野上浩太郎君) やはり、今回の発生は例年、例年といいますか、これまでの発生に比べて早い時期での発生であったということがあります。それから、立て続けにもう三キロエリアあるいは十キロエリアの中で集中的に起こったということもありまして、極めて強い危機感を持って対応しております。

○紙智子君 私も、香川県の状況については現地の党議員団から状況や要望を聞いています。既に百三十九万羽もの処分が行われていると。被害が出た農家はこの先どうしたらいいのか不安に押し潰されそうになっていて、被害出ていない農家も、いつ自分のところからも出るか分からず恐怖に襲われていると。
 三豊市長さんは、同じエリアで鳥インフルエンザが続発して発生する異常事態で、四国一ここ養鶏が盛んな町で、一つの町で一つの産業が危機に瀕していると、危機感を強く持っておられると聞きました。
 殺処分の現場で対応する市の職員などの精神的、体力的な負担も大きいと聞きます。感染防止のために必要な対応策は、専門家会議の緊急提案でいわゆる飼養衛生管理の徹底や消毒などについて触れられているんですけれども、それらをやっぱり被害農家に寄り添って対応することが大事だと思うんですね。
 三豊市と隣接地域だけでも養鶏場が約百二十戸あると言われております。検査を担当する家畜防疫員が四人しかいないということですし、県の担当者が限られたマンパワーでは回り切れないと、人的支援が求められているというふうに思うんですけれども、どういう対応をされているでしょうか。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 新井ゆたか君) 今お話しいただきましたとおり、三豊市におきましては非常に短時間で発生が続いているということで、防疫作業が長期化しているという状況でございます。防疫に従事されている方々の疲労も大変なことになっているということも、私どもも承知しております。
 このような防疫対応につきましては、自衛隊の災害派遣でありますとか、他の都道府県からの職員、それから家畜改良センターの職員の派遣、私どもも、動物検疫所、それから動物医薬品検査所、農政局の職員を派遣して香川県の防疫作業に協力しているところでございます。
 それから、現地にも十一月十五日に現地対策本部を設置をいたしまして、リエゾン職員を常に派遣いたしまして、香川県や三豊市と連携しながら対応しているところでございます。特に現在は、防疫措置の完了に向けての埋却、それから緊急提言にございました地域全体の消毒を徹底していくということで、幹線道路のみならず細部の道路までの消毒につきまして、市と連携を取りながらやっているところでございます。
 それから、職員の方々の健康管理につきましては、香川県が現場に医師を配備をしているということでございまして、それに加えましてメンタルヘルスケア等の相談窓口を設置しておりまして、これにつきましても協力しながら対応していきたいと考えております。

○紙智子君 現地からの訴えでいいますと、五事例目までは鳥の埋却も終わって防疫措置は完了したんだけれども、それ以降について言うと、埋却場所の選定について、地元関係住民の同意も必要なために、この場所の確保ができずに困っているという話が出ているんですね。それからさらに、鳥の処分というだけじゃなくて、ふん尿も埋却しなければならないんだけれども、これができていないと。長期にわたってきていますから疲労も出てきているということで、これは是非しっかり見届けるようにしていただきたいと思うんですよ。まだ途中の段階だということで、現場は大変だということです。
 それから、養鶏業者の不安に応える支援というのが必要だということで、発生農場から三キロ以内の移動制限区域、それから三キロメートルから十キロ以内はこれ搬出制限区域というふうに指定されているんですけれども、その解除は防疫措置の完了から三週間後となっているわけです。それで、完了の見通しがまだ立っていない中で、養鶏業者は生産されてくる卵やひなの扱いに困っていると。
 以前、宮城とか千葉で発生したときに行われて、国と県との協議によって例外規定の適用がやられていたんじゃないかと。そういう対応を是非至急行ってほしいという要望が出されているんですけれども、これについてはどうでしょうか。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 新井ゆたか君) 移動制限区域、特に搬出制限区域は三キロから十キロということで非常に広い範囲でございます。これらの区域からの食用卵や種卵、それから初生ひなの移動につきましては、リスクに応じて判断をするということでございまして、防疫指針に定められている一定の要件を県が確認し、農林水産省が協議を受けることで、例外的に制限の対象外として出荷を認めているところでございます。
 これにつきましては、香川県三豊市以外につきましては防疫指針にのっとって適時解除をしているところでございますが、三豊市に限りましては、狭い地域で短期間に続発したという状況がございましたので、この例外協議を十一月十一日から一時停止をしていたところでございます。しかしながら、その後、家きん疾病小委員会の意見も聞いた上で十一月二十日に例外協議を開始いたしまして、これまで協議があった農場については既に例外的な出荷を認めているという状況でございます。
 引き続き、ウイルスの拡散防止に万全を期すということを前提といたしまして、経済活動への影響も最小限に抑える観点から、例外協議の仕組みを活用してまいりたいと考えております。

○紙智子君 そうしますと、もう既に例外協議を行って一定の措置をとってきているということでよろしいんですか。はい、分かりました。
 それから、この後、生産者に対する補償だとか支援というのが問題になってくると思うんですけれども、この支援制度についての情報の提供ですとか丁寧な説明がないと、やっぱり被災されている農家や業者の不安というのは解消できないと思うんですね。
 それで、殺処分などへの手当金だとか、売上げの減少額とか飼料やそれから保管、輸送などへの支援、どれぐらいのものになるのかということですとか、家畜防疫互助基金、こういう事業なんかもあるんだけど、これは任意だと、それで入っていない人も結構おられるということでもあって、こういう問題についての対応策、これはどういうふうにやろうとしているんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 野上浩太郎君) 今お話のありましたこの高病原性鳥インフルエンザに対する経営支援対策につきましては、一つには、家伝法に基づきまして、原則殺処分した鳥の評価額の全額が手当金として交付されるほか、移動制限や搬出制限による売上げの減少や掛かり増し経費については、これ国と県の支援で全額助成をすることが可能となっております。また、経営再開に必要な鳥の導入や飼料、営農資材の購入等に要する資金につきましては、家畜疾病経営維持資金あるいは農林漁業セーフティネット資金の活用が可能となっております。加えて、御指摘のあった家畜防疫互助事業に加入している方が新たに鳥を導入する、そして経営を再開をする場合には経営支援互助金の交付を受けることが可能となっているわけであります。
 農林水産省としましては、各都道府県に対しまして、今シーズン一例目の香川県での発生を踏まえまして、今申し上げたような経営支援対策等の周知に関する課長通知を発出したところでありまして、これを受けて香川県においても個別の養鶏農家それぞれに対して周知を行ったところであります。
 引き続き、香川県とも連携をしながら、養鶏農家の方々が安心して養鶏業に従事できるように対応してまいりたいと考えております。

○紙智子君 今いろいろと支援の中身言われていて、やっぱり現地全然分からないので、それをきちっと徹底するということが安心につながると思うんです。
 それと、最後にちょっと言いましたけど、互助基金のこの制度ってあるんだけど、やっぱり任意なので入れていない人たちがいて、そういう場合、入りやすくするだとか、そういったこともアピールしてやっていただく必要があるんじゃないかと思うんですけれども、この辺、最後、もう一言だけお願いします。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 新井ゆたか君) 互助基金につきましては、農家ベースで六割強、それから羽数で考えますと大体八割程度の方が御加入いただいております。しかしながら、全員というわけではございません。これにつきましては、随時加入の制度でございますので、私ども、このシーズンになりますと、養鶏協会とともに、しっかり加入していただくことということでPRしているところでございます。
 そのように、やはり備えをしていただくということが一番必要でございますので、そういう意味では、今も加入できるということでございますので、そこについてはしっかり皆さんに周知をしていきたいと思っております。

○委員長(上月良祐君) 時間が参っております。

○紙智子君 時間になりましたので終わります。
 ありがとうございました