<第203回国会 農林水産委員会 2020年11月24日>


◇高収益作物次期作支援交付金の追加措置について/交付金の支払いについて/運用の見直しにあたっての財務省との協議について

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今日は、高収益作物次期作支援交付金についてお聞きします。
 高収益作物次期作支援交付金は、新型コロナウイルスの影響を受けた農家が営農を断念することなく次期作に前向きに取り組めるように、簡素で弾力的な要件にすることによって支援する制度として創設をされました。新型コロナによって経済的にも精神的にもかつて経験したことないようなやはり打撃を受けている中で、生産者はこの制度ができたということで来年に向けて希望が見えたと、生産者に寄り添ったコロナ対策だということで、歓迎をして受け止められました。
 ところが、申請の締切り後、二か月以上もたってから、農林水産省は交付金の運用を見直すということで一方的にこれは通知をすると。見直しを知った生産者はびっくりして、怒りやあるいは不安、混乱の中で私の事務所にも多くの電話が掛かってきました。野上大臣は、申し訳なく思っているという原稿をこの間繰り返し読み上げられたんですけれども、これでは反省の気持ちが伝わってこないわけです。
 十月以来、生産者や農協から怒りや不安の声が寄せられておりますので具体的に聞きますけれども、追加措置をとったということなんだけれども、北海道で農協と懇談をしてきたんですね。今年の花卉、花ですね、花卉の売上げは前年比で二〇%減で推移をしているわけです。次期作のこの支援交付金で十アール当たり八十万円支援をいただけると思っていたと。それで、申請額が花卉だけでも三千万円だったんだと、ところが、要件が変わって全体に千三百万円ぐらいまで減少したんだと。種苗の購入ですとかあるいは年内の作付けというふうな条件に沿って、これ経費を掛けて、じゃ、植えなきゃということで定植作業をしてきたということなんですね。
 それで、新たな減収要件によって交付予定額が言わば千七百万円も減少したことになるわけなんですけれども、これ、追加措置でどこまで支払われるんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省生産局長 水田正和君) お答えいたします。
 高収益次期作支援交付金の関係で先月末に講じました追加措置につきましては、交付金を見込んでコロナの影響の中においても積極的に機械や資材の投資を行った農業者の皆様の経営に影響が生じ、前向きな取組が続けられなくなることがないよう支援を行うものでございます。
 このため、支援に当たりましては、実際に購入した機械、施設の取得費、あるいは資材等の掛かり増し経費を申請いただくこととしておりますが、その申請につきましては農業者ごとに内容が異なるということと、それからまた、申請の締切りでございますが、当初十一月三十日としておりましたが、事務手続に時間が掛かる等のお話もございまして、十二月二十五日に延長をしたところでございます。
 全体として追加措置によりどの程度の交付金が支払われることになるのか申し上げることは、現時点においては困難でございます。

○紙智子君 まあ、だから、分からないというわけですよね。実際、元の予定よりも相当減るということに対して、どれぐらい追加措置でなるのかというのは分からない状態なわけですよね。
 それで、投資して例えばすぐにお金を払ったとか、あるいはこれから発注するという、こういう人については出るということなんだけれども、投資しようと思っていたんだけれども、まだお金払っていないとか、まだ発注していなかったと、これからやろうと思っていた人というのは、これは出ないということなんですか。

○政府参考人(農林水産省生産局長 水田正和君) 今回の追加措置でございますが、運用見直しに伴いまして交付金が減額されるあるいは交付されなくなる農業者の方でございまして、その中で既に機械や資材に対して投資を支出した方に対して支援をさせていただくということでございます。こうした方々は経営への影響が特に大きいことを踏まえまして、こういう投資によって生産性の向上を図ろうとする前向きな取組が続けられなくなってしまうことがないよう新たな措置を講ずるということとしたところでございます。
 不公平との御意見があることは承知をしておりますけれども、機械等の投資がこれからで、まだ経費が発生していない方にまで同様の支援を行うことは難しいと考えておりまして、こうした方々には既存の補助事業等の活用も含め、丁寧に対応させていただく所存でございます。
 結果として関係者の皆様に御負担をお掛けすることになって申し訳なく思っておりますけれども、丁寧に御説明をさせていただくとともに、しっかりと現場の皆様をお支えしたいと考えております。

○紙智子君 幾ら申し訳ないという言葉を繰り返しても、実際上、今の答えからいうと、当初交付予定額をこれ投資した額を下回れば、これ満額交付されないということなわけですよ。次期作に前向きに取り組めるようにというふうに、そういう交付金なんだというふうに言いながら、結局、今出されている追加を含めても、我慢しろということになるんじゃないでしょうか。
 それで、例えば豪雨の被害を受けた以外の申請の締切り、これは七月末だったわけです。ですから、もう四か月目になるわけですよね。本来だったら交付金の支給というのは始まっていたはずなんですね。既に、持続化給付金ですとか経営継続補助金、これ、まだ途中ではありますけれども、手元に、農家の手元には渡ってきつつあるわけですよ。ところが、この次期作については、十月に運用の見直しを行ったために、これまだ交付金については一円も農家に渡ってないんじゃありませんか。大臣、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 野上浩太郎君) 申請者の皆様への支払が遅れていることにつきましては、大変申し訳なく思っております。
 現在実施しております第三回公募の締切りについても、農業者の申請書の作成ですとかあるいは事業申請窓口の事務処理に要する負担に鑑みまして、当初の十一月三十日から十二月二十五日まで延長したところでありますが、まずは運用見直しですとか追加措置につきまして関係者の皆様に丁寧に御説明をさせていただいて、申請書等の提出をいただいた上で支払に向けた所要の手続を行い、できる限り速やかに交付金をお支払いできるように努めてまいりたいと考えております。

○紙智子君 だから、まだ一円も現場に届いてないですよね。届いてませんよね。そのことをちょっと聞いたんですけど、言ってないから。

○政府参考人(農林水産省生産局長 水田正和君) 御指摘のとおりでございます。

○紙智子君 ですから、まだこれ農家の手元に払われていないということですよね。交付金の運用を見直したことで、これ、農家の経営計画を狂わせる、そういう事態をつくっているわけです。申請締切り後に要件を一方的に変えて、この交付金はいまだに払われていない、更に追加書類の提出も求めているわけです。前向きにと言って期待だけ持たせておいてはしごを外したと、だから詐欺だという声もあるぐらいですよ。そう言われても仕方がないというふうに思うんですね。
 この追加措置で救済される人がいる一方で、救済されない農家の方々もいるんですね。今回の追加措置では、これ、十月三十日までに機械や資材などに投資した方は対象にするけれども、投資していない、これから投資しようと思っていた人は対象外ということになっているわけで、これ、どうして十月三十日で線を引いて切るんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省生産局長 水田正和君) 今回の追加措置でございますけれども、運用の見直しに伴いまして交付金が減額又は交付されなくなる農業者の中で、既に運用見直し前に機械や資材に対して投資をし支出をした方につきまして、経営への影響が特に大きいということを踏まえまして、こうした農家の生産性の向上を図る取組が続けられなくなってしまうことがないよう新たな措置を講ずるということとしたところでございます。
 一方で、運用見直し後に投資をされる場合でございますが、今回交付金が減額又は交付されなくなった方という方は、収入の減少が少なかった方あるいは収入の減少がなかった方ということでございますので、こういった方々に見直し前の交付金額を前提に御支援をするということは、この高収益作物以外に取り組む農業者の方々とのバランスに考えても極めて難しいと考えておるところでございまして、こうした方々に対しましては、機械、施設に対する様々な補助事業等の支援策ございますので、そういったことの活用をお願いするなど、丁寧に対応してまいりたいと考えております。

○紙智子君 ちょっと今の答えだと、どうして十月三十日で線を引くのかということに答えになっていないんですけど。分からないんですよね、何で十月三十日で線引くんですか。

○政府参考人(農林水産省生産局長 水田正和君) 基本的に、運用見直しを行う前に既に投資をされた方という方につきましては、こういった運用見直しを全く想定をされてないという状態でございましたので、そういった方々に対しまして追加の措置について御支援をさせていただくということでございます。
 運用見直し後になりますと、既にその運用見直しが世の中に周知をされている状態になっておりますので、そういった中で今後投資をされる方につきましては、新たな取組ということでございますので、前向きな取組ということでございますので、様々な補助事業等による支援をさせていただきたいということでございまして、追加措置の対象とはさせていただいてないということでございます。

○紙智子君 あのね、ちょっと何言っているかよく分からない。
 経営継続補助金は今年の十二月三十一日まで実施期間にしているんですよね。だったら別に十月三十日じゃなくてもいいんじゃないかなというふうに思うわけですよ。
 元々の交付金の趣旨というのは、これ、コロナの影響で農家が営農を断念することがないように次期作に前向きに取り組んでもらうための支援だったはずなんですね。同じ支援策で十月三十日という線を引いたことで切り捨てられる農家も出てくるわけですよ。減収要件で農家の選別を持ち込んで、さらに、この事前に投資したかどうかということで更に切り捨てていくというね、これは農水省が、本来農家を支援しなきゃいけない農水省がやることなんですか。大臣、どうですか。

○国務大臣(農林水産大臣 野上浩太郎君) この高収益作物次期作支援金につきましては、売上げが減少するなど、コロナの影響によって大きな影響を受けた花卉、茶、野菜、果樹等の高収益作物を対象に次期作に前向きに取り組んでいただけるよう支援する事業であります。
 その事業を創設した当初は、コロナ禍によって需要減少が外食産業ですとか学校給食など様々な消費場面で現れておりましたので、花卉、茶、野菜、果樹の分野の品目を生産している全ての農業者に売上げの減少が発生する蓋然性が高いと考えて、事務の簡素化の観点も踏まえて、個人ごとの減収を要件としないという仕組みを、申請しやすい仕組みをつくったというところでありました。
 その後、需要減少に一定の回復が見られる中で、野菜や果樹などの分野においても、個別品目で見ますと価格が回復する品目が出てくる中で、減収していない農業者からの申請も含まれていることが見込まれまして、このまま交付金が支払われることになれば、コロナの影響を受けていないのに交付金が支払われることになりかねず、国民の理解を得ることは難しいと考えて、農業者ごとに減収のあった品目を対象にして、減収額を超えない範囲で交付額をお支払いするところとしたというのが経緯でありますが、この運用見直しによりまして減収額を超えない範囲で交付金をお支払いすることといたしましたが、次期作に前向きに取り組んでいただくための支援であるというこの本来の事業の趣旨自体は変えたということではございません。

○紙智子君 何か長く答えましたけど、全然中身が分からないんですよね。
 それで、いや、コロナの影響を受けていないのに申請したというふうに、そういう誤解を持たれると言うんだけど、衆議院の方で我が党の議員が質問したときに、じゃ、影響を受けていない人ってどれくらい申請したんだと聞いたら、分からないと言っていたんですよ。そういうこともちゃんと分からないのに、一方的に決め付けてやるっておかしい話で、私はこれ支援策に一律に線を引くべきではないと思いますよ。
 要件の見直しに至った経緯についても聞きますので、実は、十月の、私たち共産党の農水部会として、この次期作の支援策の交付金ですね、次期作の交付金の要件変更についての説明を求めました。で、来てもらったんです。で、私たちの質問に対して、農水省は、七月三十日の申請締切り後、八月に財務省と協議したと説明をされました。そこで、財務省との協議内容も含めて、時系列で運用の見直しに至った経緯の詳細を農水省に資料要求しました。
 ちょっとお配りした資料を御覧いただきたいと思うんですけれども、これずっと時系列で書いてあるんだけれども、財務省との協議というふうに言っていたのに、その協議のところが抜け落ちているわけなんですよね。これはなぜなんですか。

配布資料

○政府参考人(農林水産省生産局長 水田正和君) 予算の関係でございますが、予算の執行に関する責任と申しますのは一義的にその所管省庁にございまして、この交付金につきましては農林水産省が責任を持って実施をするというものでございまして、この今回の見直しにつきましても農林水産省において決定をしたということでございまして、八月に協議をしたというお話でございますが、八月の時点で申請状況の報告が地方からまだ上がってきている、順次上がってきている段階でございまして、申請状況の十分な分析とかそういったものには至っておらない状況でございまして、運用の見直しなどは想定していなかったという時期であったと記憶しております。

○紙智子君 七月三十日以降の締切り後に財務省と協議していないということなんですか、大臣。

○政府参考人(農林水産省生産局長 水田正和君) 運用見直しにつきましては局長通知を最終的に出しましたけれども、そういった内容につきまして財務省に情報提供をさせていただいておるところでございますが、いずれにいたしましても、この運用の見直しにつきましては農林水産省の責任において農林水産省として決定をしたものでございます。

○紙智子君 農林水産省として決定したと言うんだけど、大臣、本当に財務省と協議していないんですか。

○国務大臣(農林水産大臣 野上浩太郎君) 今局長が申し上げたとおりだと考えております。

○紙智子君 財務省とは協議していないんだというふうに言うんですけど、じゃお聞きしますけれども、事業実施団体である団体が九月九日付けで交付金の申請者に向けて出した文書を入手したんですね。ここには、高収益作物次期作支援交付金審査の遅延についてという見出しで始まるんです。そこにはこう書いてあります。全国から予想を超える金額の申請があったことから現在農林水産省と財務省との間での協議に時間を要しており、当初のスケジュールから遅れが生じております。こういうふうに書かれているわけですよ。財務省と協議して時間を要したと書いてあるわけですよ。何を協議したんですか。

○政府参考人(農林水産省生産局長 水田正和君) 先ほど申し上げましたように、運用見直しにつきましては財務省に情報提供をしております。協議ということではございませんけれども、情報提供をさせていただいておりまして、そういう中で、農林省として、運用の見直しについては農水省として決定させていただいたというものでございます。

○紙智子君 提供するだけだったらそんな時間要しないと思うんですよ。この文書にはっきり、予想を超える金額の申請があったことから現在農林水産省と財務省との間で協議に時間を要しておりと、はっきりこれ書いてあるわけですよ。書いてあるんですよ。これ勝手に書いたとは思われないんですね。やっぱり農水省から聞いて、それを文書にして出したんだと思うんですよ。違いますか。

○政府参考人(農林水産省生産局長 水田正和君) ちょっと経緯を申し上げますと、先ほどお話ございましたように、第二次公募でございますが、これは農業者を対象とした一回目の交付金の申請の受付でございます。事業申請窓口であります地域再生協議会から地方農政局に申請をいただきまして、その締切りは七月の三十一日でございました。その後、お盆の期間を挟みまして、八月中旬にかけまして農政局とその申請窓口との間で確認作業などを行いました上で、八月十八日を期限に農政局から本省に申請状況を報告をしていただいたところでございます。
 これを受けまして、本省の方で地域別の集計を行って、そういう中で、地方農政局を通じまして、その申請の対象となった品目など確認を事例的にさせていただく作業を行いました。こうした中で、収入が減少していない農業者からの申請も一定程度含まれていることが確認をできたわけでございますが、この申請数かなり多かったこと、あるいは慎重な調査が必要だったこともありまして、こうした作業を九月の半ばぐらいまで実施をしておったところでございまして、その上で運用見直しの要否につきまして検討を行った上で、十月の運用見直し通知の発出ということに至ったということでございます。

○紙智子君 今、答えになっていないんですよね。
 それで、事業実施団体が勝手に書くということは考えられないので、他の事業実施団体も同様の文書出しているんじゃないかと思うんですけど、これ調べていただきたいと思います。それで、当委員会に資料提出を求めたいと思います。

○委員長(上月良祐君) ただいまの件につきましては、後刻理事会において協議いたします。

○紙智子君 野上大臣は、このまま交付金をお支払いすることになれば、コロナの影響を受けていないのに交付金が支払われることになりかねず、国民の理解を得ることは難しいというふうに言われたわけですよ。でも、ここで言う理解というのは、これ国民の理解じゃなくて財務省の理解が得られなかったということなんじゃないんですか。
 なぜ要件を見直したのか、これ農水省には説明する責任があるんですよ。申し訳なく思っているということで事済ませるわけにいかないんですね。当初の政策を突然なぜ変えたのか、その経緯を含めて説明しないと、これ農政に対する不信になると思うんですよ。この先どんな対策を取ってもまた変わるんじゃないかというふうに不安を持つことになると思います。いかがですか。

○委員長(上月良祐君) 時間が参っておりますので、答弁は簡潔にお願いいたします。

○国務大臣(農林水産大臣 野上浩太郎君) この見直しに至った経緯につきましては、今ほど来、真摯に説明をさせていただいておるとおりでございます。

○委員長(上月良祐君) 時間が参っておりますので、おまとめください。

○紙智子君 今回のこういう対策に対する農水省の対応、二転三転したと、生産現場に農政の不信を広げているわけです。
 やっぱり、大臣自身が新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けた農林水産業の皆様に、関連、従事される人たちの基盤を守るために全力を尽くすというふうに述べたわけで、これをやっぱり定めたルールを自ら破って、支援を求める農家の切捨てをやるということは非常に責任が重いというふうに思います。
 コロナ禍で営農を断念する農家が出ることがないように、この運用の変更の撤回を求めて、質問を終わります。