<第201回国会 決算委員会 2020年6月22日>


◇新型コロナウイルス感染症 老人保健施設で発生したクラスターについて/北海道・国立病院機構八雲病院の機能移転問題について

○国家財政の経理及び国有財産の管理に関する調査
(外務省、厚生労働省及び防衛省に係る経理等に関する件)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 まず、新型コロナウイルス対策についてお聞きします。
 札幌市では四月二十六日に介護老人保健施設茨戸アカシアで入所者が新型コロナウイルスに感染したのが判明し、五月三日には五十一名にまで広がりました。翌日、五月四日に北海道からの依頼を受けてクラスター対策班が派遣されました。クラスター班が入ったので感染の流行を早期に終息させることができるのかと思いましたけれども、感染拡大は収まらず、十二日後の五月十六日には八十四名まで広がり、札幌市は施設内に現地対策本部を設置するという事態になり、その後、九十名を超えました。なぜ感染拡大したのか。
 厚生労働省は四月七日に原則入院とする通知を出しましたが、入院させなかったわけですね。お父さんがお亡くなりになった男性は、入院治療を受けていれば助かったんではないかと訴えておられます。しかも、クラスター班が入った日、五月四日に原則入院とする通知を更新して、やむを得ず施設での入所継続を行う場合もあるというただし書を入れたんです。
 感染者の受入れ病床を調整しているというのが理由なんですけれども、この未知の感染症が発生しているのに、施設に留め置くことが可能だというただし書を行って対応したことに問題はなかったんでしょうか、お聞きします。

○国務大臣(厚生労働大臣 加藤勝信君) まず、感染の中で、感染したのと発症したのとかなりずれがありますので、そこはよく踏まえながら対応していかなきゃいけない。今回のケースも、既に一定程度感染はしてまだ発症には至っていない方、その方々がまた発症していって拡大していった。そういった意味においては、いかに早期に介入していくのか、その必要性を我々も認識をさせていただいているところであります。
 その上で、ただし書云々というお話がありましたけれども、まず、あるべき姿からいえば、入院が逼迫することがないような必要な医療提供体制をしっかり確保していくということ、これはこれからもしっかり進めていかなければなりません。しかし、当該事象が発生したときにどう対応するか、限られた制約条件の中でどうするのかという中では、一時的にどうしても入所を継続せざるを得ない場合も出てくるわけであります。
 ただ、その場合においても、それはあくまでも入院が原則であって、それの例外的な取扱いだと。そして、その期間において都道府県が人員体制、物資などに関する支援体制を構築していくこと、また、症状や状態に変化があった場合の医療提供体制、入院方針を明確化していくこと、期限の目安を定めていくこと等々を求めているものでありますので、言わば、本来であれば全員が入院をしていくことが当然ではありますけれども、様々な地域的な条件あるいはそうした地域の医療の逼迫の状況の中でやむを得ずといった場合に対する対応をお示しをさせていただき、しかし、その中でも、あくまでもやむを得ずであって、こうした措置をしっかり講じていただきたい、このことも併せて申し上げているところであります。

○紙智子君 やはり、そうはいっても、亡くなられた方や家族の方の苦しみや介護施設を支える職員の気持ちを考えますと、原則入院とする通知を変更したということで何が起こったのか、やはり実情をつかんで見直すべきではないかというふうに思います。
 クラスター班についてお聞きします。
 クラスター班は、感染拡大防止対策の提案、関係機関との調整、疫学調査などを行うというふうになっています。札幌の茨戸アカシアに入って何を教訓にしたのかというのは明らかじゃありません。なぜなら、報告書の作成は自治体任せになっているからです。なぜクラスターが発生したのか、なぜクラスター班が入ったのに感染が広がったのかということさえ分からない。
 クラスター班は、感染の流行を早期に終息させるために徹底した対策を講じるという方針を受けて設置をされています。それなのに報告書がないと。これでは迅速な対策を取るための疫学調査が共有化されないんじゃありませんか。

○国務大臣(厚生労働大臣 加藤勝信君) 感染拡大の防止のためには、早期にクラスターの発生を把握して積極的疫学調査を行っていく、そして感染源と濃厚接触者を同定して感染拡大を防止していくための対策を実施していくことが必要でありまして、そのため、厚労省においては、要請を踏まえてそうした専門家の方々で構成されているクラスター対策班を設置をし、それぞれの地域に要請に基づいて派遣をさせていただき、感染拡大の可能性についてのリスク評価あるいは感染拡大の提案等の支援を行っているところであります。
 具体的にどういった提案をしたのか、調査支援報告を公表するか等は、これはまず一義的にはその自治体において御判断されるべきものというふうに考えているところであります。
 また、厚労省は厚労省で、派遣で得られた知見を踏まえて、例えば新型コロナウイルス感染症に対する感染管理、あるいは医療従事者向けの感染の注意喚起に関する周知等に努めさせていただいているところでありますし、また、五月一日には、医療機関における新型コロナウイルス感染症に備えた体制整備及び発生時の初期対応として、医療機関が行うことが推奨される事項を取りまとめた周知も行わせていただいているところでありまして、そうした経験についてはそれぞれ活用させていただいていると。
 ただ、具体的な対応については、基本的には自治体が中心になり、それの言わば支援として入っているわけでありますから、全体としての対応等については自治体において取りまとめて公表されるべきものというふうに考えております。

○紙智子君 自治体においてということを言われるんですけれども、国のクラスター班が入ったのに収まらないで広がったわけですよ。国が調査に入っているのに、報告なり調査メモを作らないなんてあり得ないと。報告ないんですかと言ったら、それは出せないという話でありまして、なぜかといったら自治体がまとめるんだと。これではよく分からないわけですよ。是非直ちに疫学調査が教訓化されて、徹底した対策を取るように求めておきたいと思います。
 次に、国立八雲病院の機能移転計画についてお聞きします。
 国立八雲病院は、北海道で唯一の筋ジストロフィー、重症心身障害者、障害児、障害者の専門病院です。新型コロナのクラスターの発生が収まらず第二波に備えた体制が急がれるときに、国立病院機構は、今年八月十八日から筋ジスや重心の患者さんを二百四十五キロ離れた札幌の国立北海道医療センターと、八雲から八十五キロ離れた国立函館病院に移送するといいます。明日も、六月二十三日にもリハーサルを行うといいます。新型コロナウイルスの感染症のさなかに、この治療薬もワクチンもまだないのに免疫力の低い患者さんをなぜ移送するのかと、移転するのかと。
 患者家族の会のある方は、現在、コロナ感染防止のために家族とは面会できず、患者はつらく寂しい日々を送っていると、八雲に残る選択肢があれば残りたいと言われています。一方、家族有志の会の方も、機構はコロナ禍にあっても移転計画は一歩も立ち止まることなく、ウイルス感染に対して何のちゅうちょもないまま進められている、重度の障害を持つ八雲病院の子供たちの命を危険にさらすことになる、子供の命を軽視しているとしか思えないと言われています。
 コロナ禍の移転は子供の命を軽視している、この意見に理事長さんはどう思われますか。

○参考人(独立行政法人国立病院機構理事長 楠岡英雄君) お答えいたします。
 今回の移転の趣旨といたしましては、入院患者さんが今非常に高齢化されております。生活習慣病等の合併症がかなり増加が見込まれておりますし、また、今後とも他の併存症の発生も考えられる中で、現在の立地及び現在の医療機能ではそれを十分対応できる専門医の確保、充実が極めて困難な状態になっております。また、御家族の方自身の高齢化も進んでおり、非常に長距離に面会等での移動に関しても非常に負担になっているという声も聞いております。以上のような理由から、筋ジストロフィー患者の方々などから移転の要望をいただいたところもございます。
 これらを踏まえて、平成二十七年六月の基本構想の公表以降、北海道医療センター及び函館病院への機能移転に向けた検討、調整を進めており、本年九月一日の機能移転を予定している最中でございます。
 御指摘のとおり、八月中下旬に患者移送を予定しておりますけれども、これはあくまで予定であって、今後のコロナの状況をしっかり見極めながら随時それに対しては必要な措置をとっていきたいというふうに思っております。

○紙智子君 私は、現場から出されている、命を軽視しているんじゃないかという意見に対してどう思うかということを聞いたわけですよね。
 函館や札幌への移転というのは、これ大移送計画になるんですよ。移送する患者数、移送に関わる人員が何人になる予定なのか。八雲病院だけでは対応できないと聞いています。どこから何人程度応援に来るんでしょうか。

○参考人(独立行政法人国立病院機構理事長 楠岡英雄君) お答えいたします。
 北海道医療センターには、延べ百九十二名のスタッフにより百三十六名の患者を移送する予定にしております。また、函館病院には、延べ六十五名のスタッフにより五十四名の患者を移送する予定にしております。
 現在のこの計画では、看護師については延べ九十五名、医師については延べ十一名の応援が必要となるため、北海道、東北グループ内の国立病院機構の病院へ協力要請をしているところでございます。

○紙智子君 八月十八日から二十一日までの四日間で、延べ三百人体制だというふうに聞いてきました。医師や職員以外に、移送業者は、これ日本通運の運転手百二十名、車の台数でいうと百二十程度と、大移送計画ですよ。
 それで、応援部隊のための宿泊施設も必要になるんじゃないか。患者、あるいは移送に関わる医療関係者、移送に関わる運転手、応援部隊が泊まる宿の感染対策は一体どうするのかと。PCR検査、移送二週間前からこれ隔離するんでしょうか。
 医者、看護師、運転手、付添人、宿の職員、それぞれにどうなるのかということを説明いただきたいと思います。

○参考人(独立行政法人国立病院機構理事長 楠岡英雄君) まず、患者移送に関わる職員につきましては、移送業務を行う時点で新型コロナウイルスに感染していないことを確認することは極めて重要なことであり、それに対しましては、移送実施前の二週間前から健康状態をチェックするスクリーニングフォームを作り、それを提出していただく。それから、移送前のPCR検査等の実施については、その対象範囲を踏まえ現在検討しているところであります。
 御質問の宿舎に関してでありますけれども、現在確保している宿舎におきましては、どのような感染防止対策を取っておられるのかを確認しているところであります。
 感染防止対策としては、消毒薬の設置、あるいはビュッフェ形式による食事ではなく通常の個別の食事、その際の座席間隔の保持、従業員の健康管理、清掃の強化、あるいは換気等に関しまして、どのようなことが行われているか今確認を行っておりますし、既に多くのところではそういうようなことが取られていることも確認しております。また、それらに加えまして、応援スタッフに対しましては、宿泊する際に部屋の換気を小まめに行う、あるいは手指消毒などを徹底するように周知し、リスクの軽減を図るようにしております。
 移送の状況に関しましては、車内を運転席側と、患者さん、スタッフが入る側は、そこに仕切りを置いてその区分けを行う。それから、それぞれにおいては十分な換気を行うということによって感染予防を行うとともに、輸送の、いわゆる運転手等が直接患者に接触することがないように設定していきたいというふうに考え、今その準備を進めているところでございます。

○紙智子君 PCR検査については今まだ検討しているというふうに、まだ決まっていないということなわけですよね。
 病院には、移送の準備をするコンサル会社や引っ越し業者が来ると思います。患者の家族は面会禁止になって今までいるわけですよね。で、業者は、それで病院に入れるのか、患者の部屋に入って荷物の整理を行うんでしょうか。検温はするのかもしれませんけれども、業者が新型コロナウイルスを持ち込まないためにPCR検査や一定期間隔離をする必要があるんじゃないかと思いますけれども、そこはどうなんですか。

○参考人(独立行政法人国立病院機構理事長 楠岡英雄君) PCR検査を行うことは確実に行うことにしておりますけれども、どの手法を使うのか、あるいは時期としてどの時期が妥当であるかというのは、現在のところいろいろ検討している最中でございます。
 特に、八月という、移送時期は今から二か月先ですので、その時点でのコロナの状況、北海道におけるコロナの状況あるいは周辺におけるコロナの状況を見ながらPCR検査を必要とする者の対象者を絞っていくと、絞るというか決めていくというふうに考えております。
 それから、業者の方ですけれども、基本的に移動に伴う患者さんの荷物の取りまとめ等は病院職員の方で行い、直接的に業者がその患者さんの荷物をまとめるために病棟の方へ入るようなことはないように行いたいというふうに考えております。

○紙智子君 それをどうやってやるのか、よく分からないんですよね。
 厚生労働大臣にお聞きしますけれども、基本的なことなんですが、新型コロナ感染を防ぐ知見というのは確立されているんでしょうか。

○国務大臣(厚生労働大臣 加藤勝信君) 新型コロナ感染症についてはいまだ不明な点が多い感染症でありますけれども、その時点における国内外の情報を収集しつつ、また、例えば今のは院内、病院のお話をされておりましたけれども、発生した院内の感染事例、また派遣された感染症の専門家の方々の知見も踏まえて、新型コロナウイルス感染症に関する感染管理のガイドライン、これを作らせていただき、また逐次改訂、公開をし、また厚労省としても自治体に通知するなど、院内感染に万全を、院内感染のための方策について周知を図らせていただいているところであります。
 したがって、あくまでもまだ不明な点は多いわけでありますけれども、しかし、分かったこと、それを踏まえながら必要な感染症の予防は講じていただけるよう対策を講じているということであります。

○紙智子君 今大臣も不明な点が多いというふうに言われました。リスクは、だからあるということですよね、ゼロじゃないわけですよね。
 新型コロナウイルス、症状のない人もいると。これがやっぱり難しいところでもあると思うんです。だから、自分が感染しているかもしれないと考えることが大事だというふうに言われてきました。移送計画に関わる引っ越し業者や宿泊施設の職員や医療関係者、誰もがそういう意味で不安を抱えているわけです。ましてや、安全のための知見は確立をされていないし、治療法や薬が特定の病気、症状に効果がある、そういうエビデンスも確立されておりません。そういう中で免疫力の低い患者さんを移送するんでしょうか。
 コロナ禍のこの移送計画の強行については中止あるいは延期するように、大臣、言うべきじゃないんでしょうか。

○国務大臣(厚生労働大臣 加藤勝信君) 先ほど国立病院機構からも御説明をさせていただいたように、そもそもこの移転というのは、患者や御家族の方々の声なども踏まえて、こうした合併症が増加する中で、同病院の立地あるいは現在の医療機能では対応できる専門医の確保、充実がなかなか難しいということ、また、高齢化が進む家族との長距離移動の負担にも配慮が必要であること等々を踏まえて、こうした移転計画が進められてきているわけであります。
 今回のその言わば患者搬送については、新型コロナウイルスの状況も十分考慮していただきながら、その方の安全、安心、それを確保し、万全の体制を講じていただくよう、六月十八日付けで国立病院機構に対して、私どもの医政局長から事務連絡も発出をさせていただいたところであります。
 今、機構からの逐次いろんな説明もありました。そうしたことをしっかり、体制を更に、感染防止に対する体制をしっかり取っていただく上で、また、具体的な中身について患者、またその御家族に丁寧な説明をして、不安の解消に努めていただきたいというふうに思っております。

○紙智子君 やはり、命を優先するのが私は厚生労働省だと思うんですよ。その厚生労働大臣がしっかりと言うべきことは言うというふうにしなきゃいけないと思うんですね。それで、ちゃんと担保できるのかというと、まだはっきりしないわけですよ。しかも、患者、家族、職員の皆さんから繰り返し上がっている不安というのは解消されていません、今でも。
 機構のホームページから理事長の挨拶が掲載されておりますけれども、理事長はこう言っていますよね。病院機構は医療を通じて地域の安全と安心に貢献してきた、患者の目線に立って、患者の目線に立って懇切丁寧な医療体制を提供するというふうに言われているわけです。
 理事長、このコロナ禍で免疫力の低い患者さんの移送計画は、これやっぱり中止かあるいは延期すべきではないかと思いますけれども、いかがですか。

○参考人(独立行政法人国立病院機構理事長 楠岡英雄君) 現在のコロナの状況が今後どのように展開するかに関しては、全く未知と言ってもいいような状況かと思います。
 先ほども申し上げましたように、現在、北海道においては、新規患者発生数は五人以下、それから、いわゆる市中感染症と思われる患者さんは昨日では一名のような状況、それから、入院患者数は現在八十名程度ということで、北海道の方で定めている、ある意味警戒基準に相当する三つの基準のいずれも半分以下のような状況になっております。
 このような今の状況が今後どのように展開するか全く分かりませんので、こういうデータを見極めながら慎重に判断することは今までどおりでありまして、絶対に移転を行うということを決めているわけではございません。
 ただ、このコロナに関しまして、もし今後、国内である意味季節性インフルエンザのような定着状況がもし発生すれば、そうしますと、それを前提にした移送計画を考えなければならない。もちろん、今後予想されるような第二波、第三波の最中に移送することは絶対にできませんが、ある程度見極めの付いたところでは行わざるを得ないというふうに思っております。それが先ほど最初に申し上げました患者さんの将来のためということもありますので、そこは慎重に判断をしていきたいというふうに考えております。

○紙智子君 未知という話もありました。そして、知見は、何よりもこの確立されていない中では決して無理をしないようにということを改めて申し上げておきたいと思います。
 残り、財務省の方に来ていただいたんですけれども、申し訳ありません、時間がなくなりましたので次回とさせていただきます。
 ありがとうございました。