<第201回国会 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 2020年6月19日>


◇米軍機の飛行が沖縄県内の学校教育に与える影響について/宜野湾市の緑ケ丘保育園での米軍機の部品落下事件について/日ロの領土問題について/

沖縄及び北方問題に関しての対策樹立に関する調査
 (沖縄及び北方問題に関しての施策に関する件)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今日は、沖縄の子供の命に視点を当てて質問したいと思います。
 質問、順番を変えます。
 沖縄振興というのは、沖縄の自主性を尊重し、沖縄の自主的な発展と豊かな住民生活の実現です。そして、安心、安全が保障され、穏やかな暮らしと両輪です。しかし、基地があるがゆえに、沖縄の子供も県民も命が危機にさらされるという状況があります。
 先月、五月二十一日、二十二と、飛行自粛の依頼を無視して米軍機が学校の上空を飛行しました。沖縄県、そして宜野湾市、嘉手納町では、毎年式典や入学式などの大切な行事やテストの前には沖縄防衛局を介して米軍機の飛行自粛依頼を米軍に行っており、今回も、コロナ禍で延期になった入学式の当日、事前に米側に伝えていたんです。
 防衛省に事実を確認をしましたら、目視で離着陸の事実を確認したので米側に申入れを行ったということでしたけれども、どのような申入れをしたんでしょうか。

○政府参考人(防衛省地方協力局次長 青木健至君) お答え申し上げます。
 先月の沖縄県における各学校の授業再開に当たり、沖縄県及び宜野湾市から沖縄防衛局に対し、入学式等が実施される日における米軍機の飛行自粛について要請をいただきました。当該要請を受け、沖縄防衛局から米軍に対し、学校周辺での飛行について配慮するよう申入れを行いました。
 米軍機の飛行運用に際しては、安全確保はもとより、周辺住民の皆様の生活への最大限の配慮が大前提です。防衛省といたしましては、引き続き米側に対し、学校生活等への影響を最小限にとどめるよう求め、適切に対応してまいります。

○紙智子君 ですから、配慮するように申し入れたと言うんだけど、どうして依頼を無視したのかということを聞いたんでしょうか。そこがただされなければ、事件や事故というのは止まらないんですね。
 子供たちは日々危険な状態にさらされています。二〇一八年の十二月に、沖縄タイムスが、宜野湾市内の小中高、それから保育、幼稚園など八十四施設にこの米軍機の飛行についてのアンケートを行いました。例えば、米軍機の墜落や落下への不安について、常にある、時々あるを合わせると七七・二%、全くないというのは〇%です。小中高校で、時々授業が中断する、学習面に悪影響がある、特に運動場などで教師の説明が伝わりにくい。それから、保育園では、三歳の男の子が飛行機の音が怖い、二か月ほど震えて園庭に出なかった、あるいは絵本の読み聞かせがよく中断する、園児は騒音に耳を塞いで不安な表情をすると。こういうことが示されているんですね。
 どうしてこういうアンケートの結果になっているのか。教育政策を担う文科省として、その最大の原因がやっぱりこの米軍機の往来が影響している、そういうふうにお考えでしょうか、見解をお聞きします。

○政府参考人(文部科学省総合教育政策局社会教育振興総括官 寺門成真君) お答えを申し上げます。
 委員御紹介のアンケートにつきましては、地域の皆様の声をお聞きした一つの調査結果であるというふうに認識をしてございます。
 また、学校の安全につきましては、学校におきましては児童生徒等の安全の確保が保障されることが不可欠の前提であり、この学校安全の意義を踏まえ学校教育活動は行われる必要があるものというふうに認識をしているところでございます。

○紙智子君 今の、子供たちの安全確保というのは教育の大前提だというお答えなわけですけれども、その答弁というのは非常に私大事だというふうに思うんです。前提なんですよね。
 それで、衛藤大臣にお聞きしますけれども、このアンケートの実態、こういう実態ですね、沖縄の子供たちは一体いつこの状態から解放されるのか。子供たちが安心して平等な教育を受けられるように、これ是非、防衛省や外務省などの関係機関が連携を取ってやっぱり解決に向けて協議を行うべきだと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策)衛藤晟一君) 米軍基地が集中する沖縄においては、米軍機の飛行に際して住民の方々が米軍機事故等に対する不安を招いていることは承知をいたしております。
 米軍の運用に当たって事故等はあってはならないものであり、私としても、沖縄の振興を担当する大臣として県民の皆様の思いを深く受け止めつつ、また関係省庁や自治体とよく連携しながら、住民の方々の不安を和らげることができるよう最善を尽くしてまいりたいと思っております。

○紙智子君 やはり、衛藤大臣は、少子化の担当も含めて子供の政策とも関わってきている大臣ですから、是非閣内でもイニシアチブを取って、やっぱり大臣がやらなくて一体誰がやるのかというふうに思うんです。
 国には危険な状況を取り除く責任があると思うんですね。しかし、放置されている問題がまだ多々あるわけです。
 それで、二〇一七年の十二月七日に起きた宜野湾市の緑ケ丘保育園での米軍機の部品落下事件についてなんですが、当時、保育園の園庭には二十人から三十人の子供たちが既に遊んでいたと。一歳児たちが建物から園庭に出ようとしたやさきの部品の落下だったということですね。
 お配りした資料を見ていただきたいんですが、これが落下したCH53Eの部品です。

配布資料(1) 緑ヶ丘保育園・米軍ヘリ落下物事故 2017年12月7日

それから、もう一枚、二枚ありますけど、もう一枚は沖縄県が設置しているカメラが捉えたそのときの飛行中のCH53Eなんですね。

配布資料(2) 部品を落とした米軍ヘリCH−53の連写画像

米軍はこれは、落下物は米軍のものであるというふうに認めているんです。ところが、当日飛行したCH53Eからは落下させていないというふうに否定しているわけですよね。
 それで、この間、改めて私どもしんぶん赤旗が文書で米軍に事実関係を確認したんですね。そうしたら、海兵隊からは、海兵隊の航空機から落下したものではないという、まあ同じ答弁なわけです。それは、この部品は飛行前に外すことになっていると、基地内にあったというふうに言うんですね。沖縄の防衛局も米軍と同じ見解だというふうに言うわけですよ。
 立入調査もしていないのにどうして米軍と同じ見解になるのかって、よく分からないんですけれども、結局、それから何も分からないまま、進まずに二年以上が経過しているんですよ。こんなことでいいんでしょうか。警察庁にお聞きします。

○政府参考人(警察庁長官官房審議官 太刀川浩一君) お尋ねの件は、平成二十九年十二月七日、沖縄県宜野湾市内の保育園において軍用ヘリに使用されている部品カバーが発見された事案と承知しております。
 沖縄県警察において現場の状況を確認するとともに、保育園から当該部品カバーの提出を受け、関係者から事情聴取するなど、これまで必要な事実確認を行ってきたところでありますが、当該部品カバーが上空からの落下物であるか否かを含む事実関係の特定には至っていないものと承知しております。
 沖縄県警察において、引き続き関係機関と協力しながら、こうした事実関係の特定に必要な事実確認を更に進めていくものと承知しております。

○紙智子君 二年過ぎているんですよ。本当にこの現場に立入りもできないまま、分からないままで来ていると。そういうことだからやっぱり不信が生まれるんですね。この部品落下事故を曖昧にしようとしているのかというような声も上がっているわけですよ。これが国の言う豊かな生活の実現なんだろうかと。
 そこで、茂木外務大臣にお聞きしますけれども、大臣は、所信の中で、米軍機等の安全確保について米国に強く要請するというふうにおっしゃっておりますけれども、この事案で曖昧にするんでしょうか。米側とどんなやり取りをされているんでしょうか。

○国務大臣(外務大臣 茂木敏充君) 捜査当局の対応については今答弁があったとおりだと承知をいたしております。
 外務省としては、本件事案を受けまして、米側に対しまして速やかな情報提供を求めたところであります。これに対して米側は、日本側関係機関と連携して事実関係の究明に協力していく旨述べております。
 引き続き必要に応じ適切に対応していく考えであります。

○紙智子君 いや、もう全然、外務大臣の答弁としてそれでいいんでしょうか。子供の命懸かっているんですよ。何でもっと踏み込んで明らかにできないのかというふうに私思うんですね。
 緑ケ丘保育園の園長にお話を伺いました。今月も、六月の十五日十一時頃に、ちょうど保育園で園児たちがお昼を食べていたときにも、大型固定翼機がこの普天間飛行場からタッチ・アンド・ゴーの訓練を繰り返し行っているというわけですよ。
 園長は、とにかく上空を飛ばないでほしいと。落下事故があったのになぜ防衛局と警察は動かないのか、何をやっているのか、状況はむしろ悪化して、米軍は民間の上空を使いたいように使っていると。日米の交渉の中で合意して飛ばないとなっているはずなのに、そんなこと守っていないわけですよ。今日あしたの命の問題なんだということを訴えられました。
 それで、二〇一九年の一月に緑ケ丘保育園にはこの参議院の本委員会で視察して、米軍機のこの物品の落下事件に対しては直接要請を受けている問題でもあるんですね。その直後、与野党がこの委員会として何とかしようということで対策を講じたということが、聞いていますけれども、そういうことがまずあるということと、それから、二〇一八年には、十二月に宜野湾市議会で、緑ケ丘保育園の上空を飛ばないでくださいという請願の実現を求める意見書が、これ全会派一致ですよ、で採択をされているんです。
 そういう要請を受けた以上、やっぱり委員会としても引き続き解決のために取り組む必要があるというふうに思います。それから、この後も、ですから、この問題やっていきたいと思います。
 次に、日ロの問題について茂木外務大臣にお聞きします。
 二〇一六年の十二月に、ロシアのプーチン大統領が来日をしました。で、首脳会談を行いました。安倍総理はそのときに、七十年間一ミリも領土問題は動かなかった、互いの正義を語るだけではいかないんだということで、新しいアプローチで前に進めていくというふうに言いました。しかし、あれから三年以上たちましたけれども、元島民の願い、あるいは地域の皆さんの願いに応える前進があったんでしょうか、お聞きします。

○国務大臣(外務大臣 茂木敏充君) 北方四島におきましては、二〇一六年の長門合意に基づきまして、特に昨年来、かつてない日ロの協力が実現をしております。
 具体的に申し上げますと、平和条約交渉については、二〇一八年十一月のシンガポールでの日ロ首脳間で合意が行われまして、これを踏まえ、私とラブロフ外相との間で、昨年九月にニューヨークで、十一月に名古屋で会談を行い、そして十二月には私が訪ロして八時間にわたり会談をし、相互の基本的な立場の違いを埋めていく方策について、お互いが知恵を出し合いながら相当突っ込んだ議論をさせていただきました。
 共同経済活動についても、昨年、初めて北方四島への観光パイロットツアーを始めとするパイロットプロジェクトを実施をいたしました。航空機によります元島民の方々の墓参につきましても、昨年は泊、留別といったこれまで何年も訪問できなかった場所を訪れることができました。
 このように一つ一つ成果は生まれていると考えておりまして、日ロ協力、さらに平和条約交渉、更に進展をさせていきたいと思っております。

○紙智子君 飛行機で墓参できるようになったと、それは良かったと思いますよ。だけど、毎回それ同じことばっかり言っているんですよね。(発言する者あり)そうですか。
 島民の最大の願いは、やっぱり島に帰りたいということなんですよ。領土問題の進展を首脳会談のたびに期待するんだけれども、がっかりすると。この繰り返しなんですね。元島民の平均年齢が八十五歳になっている、余りもう時間ないと。自分の住んでいた土地がどうなっているのか確認したいけれども、ままならない。墓参も、全て希望どおりじゃなくて、限定されていて、行くことができない場所もあるわけです。
 さらに、水産業も、サケ・マス流し網漁がロシアの法律改正で禁止をされて漁ができなくなった。それで、代替措置として政府が行ってきたサンマの棒受け網漁、これも今厳しい状況になっていますよ。水産で栄えてきた根室にしても、隣接地域の経済も、これ大変な状況です。その上、安全操業協定があるにもかかわらず、去年の十二月にはミズダコの漁をしていた根室の漁船がロシアに連行されて拘束される事態もあったわけです。
 新しいアプローチでやってきたんだと言うんですけれども、むしろ経済も漁業の安全性も悪化しているんじゃないんでしょうか。いかがですか。

○国務大臣(外務大臣 茂木敏充君) 全くそのようには考えておりません。
 紙委員、領土交渉、そんな簡単じゃないですよ。やはり、相手のあることです。そこの中で一歩一歩進めていかなきゃならない。四島におけます事業も、お互いの法的な立場を害さない中でどうやっていくかと相当な工夫が必要な中で一歩一歩前進をさせていくということが必要であると思っております。

○紙智子君 いや、交渉は相手があることだから、そんな簡単じゃないということは分かりますよ。
 でも、最近は、ロシアのラブロフ外相もプーチン大統領も、これかつて余り言わなかったんですけど、最近は、北方四島というのは第二次世界大戦の結果ロシア領になったんだという主張を繰り返し言っているんですね。共同経済活動をめぐっても、日ロ互いの法定の枠組みを害さない形で協議すると言ってきたはずなんだけど、ロシア側が、いや、ロシアの法制下でやるんだというふうに言ってみたり、最近は、報道によると、日ロどちらの法律を適用するのかの管轄権問題ですね、この棚上げを提案しているとか、さらに、来月の七月には領土割譲禁止を含む改憲案の是非を問う国民投票が行われると、賛成多数で成立する見込みだということが報道されているわけです。
 こういう動きをやっぱり私たちも新聞などで読むと、非常に、大丈夫なんだろうかと、茂木外務大臣はこうした動きに対してどう対応しているのか、この領土問題の解決の糸口ですね、見通しということについて是非話していただきたいと思います。

○国務大臣(外務大臣 茂木敏充君) 北方四島におけます共同経済活動、これは双方の法的立場を害さないことが大前提であります。この点につきましては、二〇一六年十一月のプーチン大統領訪日時のプレス向け声明においても確認をされているところであります。
 また、言及のありましたロシア連邦の憲法改正に関する動向につきましては関心を持って注視をしておりまして、七月一日に投票を延期されておりますが、日ロ平和条約交渉、まさに現在進行形で進められているものでありまして、その詳細であったりとか様々な要因の影響についてコメントすることは差し控えたいと思っておりますが、これからも粘り強く交渉を進めていきたい。
 交渉、いろんなやり方あると思います。ただ、基本的には、例えば交渉の基本的な書物に出てきます「ゲッティング・ツー・イエス」でもそうでありますし、「ジ・アート・アンド・サイエンス・オブ・ネゴシエーション」でもそうでありますけど、いかに自分の情報を出さずに相手の情報をたくさん取るかと、これが交渉における第一弾の、一番の成功の鍵と言われておりまして、その点、紙委員と私では見解を異にしていると思います。

○紙智子君 見解の違いをちょっと持ち出されると困るんですけれども。
 私は、多くの国民の皆さんがそういうやっぱり不安を持っているわけですし、それから、現に私たちは、サケ・マスの流し網のときに、ロシアの法律が変わったことによって、禁止されたことによって日本が影響を受けて、それできなくなったということを体験したわけですよ。だから、こういうロシアの中での改憲が動きがあるということになると、それをめぐって本当にちゃんと交渉するということでは不利な状況にならないんだろうかという不安を持つわけですよ。
 やっぱり、ロシアとの交渉自身が大変だという話はあるんですけれども、やっぱり今のロシアの主張をそのままにして領土交渉の解決はないというふうに思うんです。安倍総理は、原則論だけ言っていても進まないんだということを言われてきたんだけど、やっぱり原点に立ち返った交渉が必要だと思うし、国際社会全体を納得させる論立てで、やっぱりしっかり組み直してやっていくということをやるべきだということを改めて訴えまして、質問を終わりたいと思います。