<第201回国会 農林水産委員会 2020年6月16日>


◇新型コロナ 沿岸漁業者への支援について/卸業者・仲卸業者への支援について/飼養衛生管理基準案の公表と内容について

○農林水産に関する調査
(新型コロナウイルス感染症対策としての水産業への支援に関する件)
(家畜伝染病対策に関する件)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 五月十二日の日に、私、新型コロナウイルスの感染症の影響を受けている沿岸漁業者に支援を創設、拡充するように求めました。そのときに江藤大臣は、補正の審議が正式に行われることになれば沿岸漁業に対して何ができるか検討したいというふうに述べられました。
 第二次補正予算に休漁中の漁業者対策というのが入りました。沿岸漁業者をどう支援するのか、また支援の時期はいつからになるのか、御説明をいただきたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 五月の十二日に先生から御質問いただいたのはよく覚えております。
 非常に、捕っても、昨日のネットニュースにも出ておりましたけれども、タイがキロ十円だとか、もうむちゃくちゃな話もニュースには出ておりました。
 漁に出ても燃油代も出ないという状況の下において、何が何でも漁に出るのではなくて、この機会にいろんな将来の漁場を良くするための作業をしていただくことに皆さん方汗を流していただいた方がいいだろうということで、今回、漁船による漁場の耕うん、清掃については一隻当たり一日六万円程度、それから、藻場におけるウニ駆除、そういったものについてはお一人当たり一日一万円程度、それから、海水温の観測等による資源調査については一隻一日六万円程度、漁船による養殖漁場、養殖生けすの下の、いわゆる餌がたまりますから、そういったものの清掃なんかについても一日六万円程度を措置させていただくことにしました。
 もちろん、毎日毎日出ていただくとこれ予算的にとんでもないことになりますから、ある程度の上限は設けさせていただきますけれども、これによって、出漁しなくても、いわゆる漁場を良くすることで沿岸漁業の方々の経営を支える一助にはなるのではないかというふうに考えております。

○紙智子君 資源・漁場保全緊急支援事業の基金を積んでいただいて、そういう中で今のことをやられるということだったと思うんですね。早速支援策を打ち出していただいて、感謝したいと思うんです。同時に、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている沿岸漁業者の要望をやはり受け止めて、今後もしっかり支援するようにお願いをしたいと思います。
 それから、経営継続補助金が創設をされましたけれども、これも沿岸漁業者が活用できるんでしょうか。これは水産庁長官に。

○政府参考人(水産庁長官 山口英彰君) お答えいたします。
 経営継続補助金は、常時従業員数が二十人以下の農林漁業者を補助対象としておりまして、沿岸漁業者も対象になると考えているところでございます。
 具体的には、非接触型の生産、販売への転換等への経費が六分の一を占めることを前提に、経営継続に関する取組に要する経費につきましては、補助率四分の三で上限百万円まで支援をすることになっております。これらの取組と併せて、消毒液の購入など感染拡大防止の取組に要する経費に対しましては、上限五十万円を定額で補助することとしております。
 また、支援機関である漁協等に対しましては、漁業者が行う経営計画の策定や取組の実施等を支援していただき、それに伴う経費を支援することにしております。

○紙智子君 漁協等がこの経営支援機関になって、全国農業会議所を通じてこれは支援することになっているわけですけど、やっぱり敏速に対応していくという点で、事務量が増える団体への支援も求めておきたいと思います。
 それから、卸売市場を支えている卸、仲卸業者への支援についても十二日の日に聞きました。江藤大臣は、補正があれば検討の対象になり得るというふうに述べられました。
 市場関係でも、お話を聞きますと、活魚の需要が八割減少しているとか、仲卸業者の中には取扱量が八割減少していると、日銭商売のところもあって運転資金が不足し倒産につながりかねない懸念もあるとか、市場内で営業している関連業者への影響も深刻になるという話を聞いております。
 それで、卸、仲卸や市場関係業者をどう支援されるんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省食料産業局長 塩川白良君) ただいま御指摘いただきました卸売業者、それから仲卸業者などが支払います卸市場の施設使用料に対する支援につきましては、本年度の第二次補正予算で新たに措置され現在中小企業庁で制度の詳細を検討中でございます家賃支援給付金について、卸売業者や仲卸業者が利用がしやすい制度になるように、今、中小企業庁と連携をしているところでございます。
 また、貸し手側の開設者が卸売市場の施設利用料を減免する場合は、同じく二次補正予算で拡充をされました地方創生臨時交付金、これも活用することが可能となっているところでございます。

○紙智子君 中小企業庁と連携しながらというお話でありました。
 それで、卸売市場には、行政が開設者になっている市場と、それから民間が開設者になっている市場があります。民間の市場も国民の食生活を支える重要な機関であることには変わりないというふうに思うんですね。民間が開設者になっている市場への支援も求めておきたいと思います。
 それから次に、先ほど来質疑にもなっておりますけれども、防疫対策の放牧制限についてお聞きします。
 農林水産省は、放牧を制限する飼養衛生管理基準案を公表して、パブリックコメントを行ってきました。この発表を受けて、私の事務所にもすぐに問合せが来たんですね。もうびっくりして、釧路の方の酪農をやっている方からすぐ電話が掛かってくるということがありました。要望書も届きました。日本有機農業学会とか日本有機農業研究会、有機農業推進協議会からも意見書をいただきました。
 日本有機農業学会は、一たび感染が広がれば多大な被害が発生する家畜伝染病の恐ろしさを十分考慮したとしても、放牧中止措置にはその必要性、相当性、放牧生産者の権利への配慮について検討すべき課題が幾つも含まれているというふうに指摘しているんですよね。
 それから、基本的な視点として、放牧された豚は土を耕してくれる、放牧によって耕作放棄地を解消し、農地を極めて低コストで維持できる、放牧された家畜はストレスの少ない環境で健康で育つので免疫力も高く、その肉などは人間の健康にとっても望ましい食べ物となる、放牧の多面的価値を高く評価し、適正に管理された放牧畜産は地球環境問題の解決にも役立つ持続可能な農業であるという指摘もされています。加えて、放牧を推奨してきた農林水産省の諸政策、これを推奨してきたということもあって、それとも矛盾すると。
 なぜ柵設置やワクチン接種だけでは足りないんだろうかと、なぜ放牧を中止しなければならないのか等の疑問に答える科学的根拠が示されていないとして、今回の放牧中止措置は寝耳に水だとして、丁寧な説明と協議を求めているんですね。
 それで、日本有機農業研究会の方は、放牧を中止する必要性、有効性の根拠を示されておらず、放牧中止を基準とすることは、経営の存続を脅かし、著しく不当な過剰規制で、違憲とも言える規制と言わざるを得ないし、放牧中止の規定を削除するように、かなり厳しい意見ですけど、求めていると。
 なぜこういう要請ですとか反発が起こったのかと、どのように思いますか、大臣。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 今先生がおっしゃったように、過剰であってはならないと自分も思います。しかし、先生おっしゃったように、適切な管理された状況の下で、これ飼養形態にかかわらず、管理型の養豚場であろうが放牧型であろうが、やはりASF、CSFの侵入を防ぐための一定の基準はやっぱり守っていかなければならないということは広く御理解いただきたいと思います。
 パブコメのペーパーも見ました。基準の案を見たら、こうこうこうだったら中止しろというふうに書いてあるわけですね。これは、やっぱり書き方として、自分としてもこれはちょっと違うんじゃないかと、私の意見ですよ。もちろん、いろんな外部の方々の御意見によってまとめていただく必要があるんですけれども。
 自分としては、かくかくしかじかの要件を満たしていただければ今までどおり続けていただいて結構ですと、今までどおり続けるにはこれらの条件をクリアしてくださいというのが適切なアナウンスの仕方ではないかという意見を申し上げさせていただいて、それは一部取り入れられているんではないかなと思っております。ですから、その中止という文言が消えたというような報道も一部なされているんだろうと思います。
 ですから、先ほど申し上げましたけれども、例えば酪農の方からお話があったといいますけど、牛全く関係ないので、全く関係ない、北海道ですから更に関係ないので。ですから、その内容について十二分な御説明が足りなかったことも反省の要素としてあるのではないかと思っております。

○紙智子君 びっくりして電話してきた人に、いや、一律じゃないんじゃないのと、ちょっと聞いてみるけれどもということでは酪農の人には話をしたんですけれども。
 やっぱりなぜ猛反発が起こったのかということを聞いたわけで、やっぱり唐突な発表で、本当に丁寧な説明とか協議というのが十分やっぱりやられていなかったんじゃないのかということを指摘しておきたいというふうに思うんです。
 それで、六月十一日に食料・農業・農村審議会の家畜衛生部会がありました。部会では牛と豚の放牧中止の規定を削除することが確認されたのでしょうか。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 新井ゆたか君) 飼養衛生管理基準につきましては、パブリックコメントの御意見を踏まえまして、十二日に家畜衛生部会を開催いたしまして、改正案をいただいたところでございます。
 この案の中におきましては、まず、牛とそれから豚共通でございますけれども、家畜伝染予防法、家伝法三十四条の規定に基づく放牧の停止又は制限があった場合に備えて、家畜を収容できる避難用の設備の確保、出荷若しくは移動のための準備措置を講ずることということがまず一つございます。
 それから、豚の大臣指定地域につきましては、また大臣指定地域においては、放牧場について給餌場所における防鳥ネットの設置及び家畜を収容できる避難用の設備の確保を行うことということで、二十九という項に、大臣指定地域における放牧場についての取組という形で新設をしたところでございます。
 従来、二十八のところに放牧場、パドック等における舎外飼養を中止しという文言がございましたが、これについては削除するという案で、まさに現在、今日、家畜衛生部会で御審議をいただきまして最終的な答申をいただくということにしているところでございます。

○紙智子君 畜産部会の答申を受けて、今日受け取るということなんですけれども、放牧中止はやっぱり撤回すべきではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 新井ゆたか君) 今お話をいたしましたとおり、しっかりした野生動物対策をしていただければ放牧を継続するという案でお諮りしているところでございます。

○紙智子君 継続するという言い方なんだけれども、是非中止は撤回するように求めたいと思います。
 それから、愛玩動物の飼育は禁止ということが書かれていて、けれども、犬というのは、私は農家で育ったので、農家はもうどこでも犬飼っているんですよ、番犬として。愛玩動物じゃないんですよね、番犬として飼っていて。それで、やっぱりいろんなよく分からないものが来たりするとわんわんほえて、ほえて追っ払うということなんですね。だから、余分なものを近づけないということでも役割は持っているんじゃないかなというふうに思うんですけど。
 ですから、拙速にこれ決めるのではなくて、ちゃんと実態をつかんで家畜農家と協議をすることが大事じゃないかなというふうに、それはちょっと求めておきたいと思います。
 それから、飼養衛生基準案に書いてあるのは、豚については四十項目、それから牛などについては三十八項目も守るべき内容が示されています。例えば、平面図を作るとか、農場の、それからマニュアルを作るとか家畜の死体の埋却の土地を準備するとか、豚でいえば、処理済みの飼料を利用する場合は摂氏九十度以上で六十分以上加熱処理するとか、防護柵を作るとか防鳥ネットを設置するとかですね。畜産農家の作業が増えて、設備投資の費用も掛かるわけですよね。特に、小規模な農業経営を行っている家畜農家の経営意欲につながるのかということでは課題があると思うんです。
 もうこんなのやっていられないわといって離農にならないようにやらなきゃいけないと思うんですけど、この点でも、施設の投資をどう支援するのか、事務量をどう支援するのか、支援策を明らかにするべきだと思うんですけれども、最後の質問になりますけれども、大臣、お願いします。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) しっかり支援をしたいと思っております。
 このコロナ禍においても豚価については非常に安定をしておって、経営もしっかりやっていただいているということでありますから、そういう状況にあるからこそ、CSF、ASFの侵入は何が何でも防がなきゃならない、飼養衛生管理基準は何としても守っていただかなきゃならない、これは基本だと思っております。それには、やはり三十八、四十、多いという御指摘もあるかもしれませんが、それは必要不可欠なものだと御理解いただきたい。
 その裏側で、やはりALIC事業でも三つほど事業を立てさせていただいておりますし、もう時間が来ましたので詳細は申し上げませんけれども、それには、国の補助、それから当該市町村、当該都道府県の補填も含めて、特交措置も含めて、しっかりと経営を支えていく必要があるというふうに考えております。

○紙智子君 終わりますけれども、大小多様な農家を支援していただきたいということを述べて、質問を終わります。
 ありがとうございました。