<第201回国会 東日本大震災復興特別委員会 2020年6月3日>


◇復興庁設置法等の一部を改正する法律案に対する反対討論

○復興庁設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 私は、日本共産党を代表し、復興庁設置法等の一部を改正する法律案に反対する討論を行います。
 東日本大震災、福島第一原発事故から九年三か月が経過しました。今公表されているだけでも、四万人を超える方々が避難生活を余儀なくされています。被災地は、震災による直接的な被害に加え、昨年の台風被害や今回の新型コロナウイルス感染症の影響が打撃となり、重くのしかかっています。復興公営住宅では、居住者の高齢化や孤独死、心のケアや地域コミュニティーの形成、公的支援から取り残された在宅被災者の問題など、新たな課題に直面しています。なりわいの再建を含め、復興庁の設置期間を延長することは当然です。地震・津波被災地域に対する支援は、期限ありきで打ち切ることがあってはなりません。
 法案に反対する最大の理由は、福島第一原子力発電所事故の原因者である東京電力の責任を免罪し、そのツケを国民、被災者に転嫁するからです。法案は、中間貯蔵施設の費用などを拠出する電源開発促進勘定に、再生可能エネルギーの導入などに使うエネルギー需給勘定から資金の繰入れを可能としました。中間貯蔵施設の費用は、本来、放射性物質汚染対処特措法の規定に基づき東京電力が負担するとされています。それを国が負担している上に、更にその財源が逼迫したから別勘定から繰り入れることは、東京電力の責任を免罪するものであり、断じて認められません。
 後日、電源開発促進勘定からエネルギー需給勘定に同額を繰り戻すとしていますが、電源開発促進勘定は電源開発促進税を特定財源としており、電気料金の一部として被災者を含む国民から徴収しているものであり、原発事故の被災者を含む国民に東京電力の責任を転嫁するものにほかなりません。
 加えて、福島イノベーション・コースト構想は、廃炉やロボット、ドローンなど浜通りの産業回復をうたう構想ですが、呼び込み型の巨大開発が中心となっているという問題があります。
 福島の農業の再建も重要です。営農再開の加速化と称して県が主導し農地の大区画化、施設整備を進めれば、市町村やJAなどが置き去りになりかねません。再建に当たっては、農地の圃場調査や生産者の健康不安に応えるべきであるということを申し上げ、反対討論とします。

○委員長(青木愛君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
 これより採決に入ります。
 復興庁設置法等の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。

   〔賛成者挙手〕

○委員長(青木愛君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、木戸口君から発言を求められておりますので、これを許します。木戸口英司君。

○木戸口英司君 私は、ただいま可決されました復興庁設置法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・国民の声、立憲・国民.新緑風会・社民、公明党、沖縄の風、碧水会及びみんなの党の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。

    復興庁設置法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項の実現に万全を期すべきである。

 一 復興庁の設置期間を十年間延長するに当たり、これまでに実施された復興施策の総括を行い、今後の課題等を踏まえ、復興・創生期間後の各分野における取組、復興を支える仕組み及び組織について、被災地のニーズに基づき構築することにより、一日も早い復興を目指して取り組むこと。
 二 復興・創生期間後の復興事業の進捗状況を踏まえ、五年目に当たる令和七年度に組織の在り方を検討することとなるが、被災地の実情により中長期的な対応が求められる事業については、五年を超えて事業支援を継続すること。
 三 復興・創生期間後においても切れ目なく、安心感を持って復興に専念できるよう、十分な財源を確保すること。復興事業の財源については、復興特別所得税の上振れ分を見込むこととしているが、新型コロナウイルス感染症の拡大により経済活動の停滞、景気の後退に伴う税収の減収も懸念されることから、復興事業が滞ることのないよう必要な財源を確保すること。
 四 新型コロナウイルス感染症の拡大による被災地への影響の現状把握に努めるとともに、地元の要望を踏まえた経済支援策を実施し、復興事業が遅れることのないよう努めること。また、外出や移動の自粛により観光業等への影響が甚大であることから、収束後を見据えた支援策を検討すること。
 五 復興庁が復興の司令塔として被災地のニーズにワンストップで対応できるよう、体制強化に努めること。これまで蓄積した復興に係るノウハウを関係行政機関と共有するとともに、復興の記録の収集・整理・保存等の取組を通じ、今後起こり得る大規模災害に活用していくこと。さらに、オンライン等の活用を含めた防災教育の拡充にも努めること。
 六 岩手、宮城の復興局の位置を政令で定めるに当たっては、被災地方公共団体の意見を十分に踏まえて決定するとともに、被災地の復興が着実に進展するよう十分に配慮すること。
 七 心のケア等の被災者支援等については、時間の経過とともに生活環境の変化や経済問題等、今後の生活への不安に伴う相談が増え、専門的な対応がさらに求められていることから、実情の把握に努め、中長期にわたる継続した対策を講ずること。また、被災者のコミュニティ形成や居場所づくりを支援するNPO法人等に対する支援を講ずること。児童生徒への心のケアは長期にわたることを踏まえ、特別な教員加配、スクールカウンセラー等の配置等の支援策を今後も継続すること。
 八 人口減少に歯止めがかかっていない被災地に対し、移住・定住促進策の一層の展開を図ること。
 九 土地区画整理事業等による宅地造成後に生じた空き区画等の利用を促進するため、その解消に向けた必要な措置を講ずること。また、移転跡地の利活用促進に向けた必要な措置を講ずること。
 十 政令で定めるとされる復興推進計画及び復興整備計画の対象地域、復興特区税制の対象地域については、復興状況や必要となる事業の見込みだけでなく、被災地の意見にも十分に配慮すること。
 十一 帰還困難区域の特定復興再生拠点区域について、計画期間内での避難指示解除を確実に実現すべく、国の責任の下で除染、廃棄物の処理等を実施し、それぞれの地域の実情に応じた整備に取り組むこと。また、特定復興再生拠点区域外における避難指示解除のための具体的な方針を示し、将来的に全ての帰還困難区域における避難指示を解除できるよう取り組むこと。
 十二 帰還・移住等環境整備交付金については、福島県及び対象市町村がその地域の特性に即して自主的かつ主体的に事業を実施できるよう十分な予算を確保するとともに、新しい住民の定着につながる魅力的なまちづくり等に資するよう、柔軟な執行に努めること。また、帰還政策に加え、移住政策が推進されるとしても、自主避難者、県外避難者を含めた避難者の人権を最大限尊重し、最後の一人に至るまで必要な支援を継続すること。
 十三 避難指示解除区域等の農業については、地元の担い手に加えて、意欲を持った外部からの参入を進めるとともに農地の利用集積や六次産業化施設の整備を促進し、営農再開の加速化を図ること。また、福島県知事による農用地利用集積等促進計画の作成に当たっては、所有者不明農地を含めた一体的な権利設定や農地転用等の特例を十分に活用できるよう、福島県や対象市町村と連携し、技術的な助言など必要な支援を行うこと。
 十四 福島イノベーション・コースト構想の推進の中核的な機関である公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構の法定化に伴い、産業集積や人材育成等の取組を更に進めるため、国職員派遣による人的支援や財政的支援、関係省庁による一層の連携強化など、機構が十分に活動できるよう総合的に支援すること。また、同構想を進めるに当たっては、地元の企業の参画と地元の若者の人材育成等に資するよう配慮すること。併せて原子力被災十二市町村の事業・生業の再建については、公益社団法人福島相双復興推進機構を通じて、福島県や市町村等と連携しながら、きめ細やかな支援を引き続き行うこと。
 十五 あらゆるチャレンジが可能な地域として、福島の浜通り地域等に国内外の研究機関や大学、企業等を呼び込むため、国際教育研究拠点を推進するとともに、福島ロボットテストフィールド等の拠点を核として、地域全体が研究・実証フィールドとして活用されるよう、研究開発や実証の促進等に資する規制緩和等を検討すること。
 十六 根強く残る福島の農林水産物等の風評被害払拭のため、生産から流通、消費に至るまでの総合的な施策を継続的に講ずるとともに、諸外国・地域における輸入規制の撤廃・緩和に向けた働きかけや海外における風評対策を強化すること。
 十七 福島イノベーション・コースト構想の推進に資する事業を実施する事業者や風評被害に対処するための事業活動を実施する事業者に対する税制措置については、より多くの事業者が課税の特例を受けられるよう配慮すること。
 十八 福島の森林・林業の再生に向けた「ふくしま森林再生事業」等については、復興・創生期間後も支援を継続し、事業を実施するための予算を十分に確保するとともに、現行の対象地域での推進を図ること。
 十九 福島県知事が作成する福島復興再生計画の認定に当たっては、福島県及び市町村が地域の実情を踏まえて、自主的かつ主体的に事業を実施することを旨として認定されるものとすること。また、福島復興再生計画に掲げる取組を確実に実施できるよう十分な予算を確保すること。
 二十 福島復興再生基本方針を変更するに当たっては、地元の意見を丁寧に聴き、これに寄り添った対応をとること。
 二十一 東京電力福島第一原子力発電所の廃炉に向けて、使用済燃料及び燃料デブリの取出し作業に際して、周辺環境に影響を与えることのないよう東京電力に対する指導・監督を徹底するとともに、今後の廃炉作業を担う人材の育成・確保、雇用の適正化、作業環境の改善等について東京電力と国が一体となって取り組むこと。また、使用済燃料及び燃料デブリを含む放射性廃棄物について、国の責任の下で、適切に処分が行われるよう議論を進めること。
 二十二 令和二年度の中間貯蔵施設事業の方針に沿って除去土壌等の中間貯蔵施設への搬入を計画的に進めるとともに、中間貯蔵開始後三十年以内の福島県外での最終処分の完了が確実になされるよう、国が責任を持って取り組むこと。
 二十三 東京電力福島第一原子力発電所で増え続ける、いわゆるALPS処理水の処分方法については、更なる議論を尽くし地元をはじめとする国民の理解を得た上で慎重かつ丁寧に決定すること。
 二十四 日本郵政株式会社の株式の売却収入は、貴重な復興財源であることから、株式の売却に当たっては、売却収入が少しでも多く得られるよう株式市況を見極めて売却時期を慎重に判断すること。
 二十五 エネルギー対策特別会計のエネルギー需給勘定から電源開発促進勘定へ繰入れを行う場合は、その使途を真に福島の復興・再生に資する事業に限定し、透明性を確保するとともに、将来的にエネルギー需給勘定へ確実に繰戻しを行うこと。
 二十六 国際リニアコライダー計画は東北が世界的候補地になっていることから、その推進は福島イノベーション・コースト構想と並んで東北をフィールドとした科学イノベーションの創出による「新しい東北」に資するものであり、国内誘致に向け関係機関と検討を進めること。

   右決議する。

 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

○委員長(青木愛君) ただいま木戸口君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。

   〔賛成者挙手〕

○委員長(青木愛君) 多数と認めます。よって、木戸口君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。