<第201回国会 東日本大震災復興特別委員会 2020年6月3日>


◇福島県の原子力被災12市町村の営農再開について/農林水産技術会議が作成している福島県の農地土壌の放射性物質濃度の調査について/福島県内で取り組まれた土壌スクリーニングプロジェクトについて/福島復興再生特別措置法改定案における農用地利用の集積について

○復興庁設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 私からは福島の農業についてお聞きします。
 復興・創生期間後の基本方針では、農業分野では原子力災害被災十二市町村において営農面積が三割弱にとどまると述べています。なぜこの営農面積が三割にとどまっているのか、復興大臣にお聞きします。

○国務大臣(復興大臣 田中和徳君) ただいまのお尋ねでございますが、原子力被災十二市町村のうち避難指示解除の時期が遅い市町村では、農業の担い手不足に加え、営農再開に向けた農地集積をサポートする体制や人材も不足をしておる状況でございます。被災十二市町村における営農再開面積が約三割弱にとどまる原因はこうしたことがあるのではないかと、このように思っておるところでございます。
 このため、今般の福島特措法改正案による農地の利用集積の促進を含めて営農再開の加速化を図ってまいりたい、このように思っておるところでございます。

○紙智子君 今述べられたことだけなのかと、ちょっとそれは、表面的には、現象的にはそうかもしれませんけど、それだけなのかなということ。
 次、農水大臣にお聞きしたいんですけれども、農林水産省は、福島県で農地土壌を採取して放射性セシウムの濃度を測定をし、農地土壌分布図を作っています。
 これ、配付しております資料なんですけれども、御覧いただきたいと思います。

配布資料1 福島県 農地土壌の放射性物質濃度推定図

 三百六十八地点あります。この調査というのは何のためにやられているんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 今復興大臣からお話がありましたように、やはり一日も早く福島の本格的な復興を遂げるためには、農地をもう一度農地として戻せるようにするためには、まず調査をしなければなりません。農地に入れば、農家の方々もちゃんと除染をしなければ被災するおそれもありますので、現在、地域の方々とお話合いをしながら三百数十地域での定点検査をさせていただいておりますけれども、それによって、どれぐらいその地域はいまだに放射性物質が残っているのか、それを調べることによって、施肥をする場合にカリウムをまきますとこれを減らすことができますので、どれぐらいの量を施肥したらいいのかということも知る必要がありますし、そういったものを調べるために検査をさせていただいている、そしてそれを毎年公表させていただいているところでございます。

○紙智子君 これ、三百六十八か所ということで、これ調査数は少ないし、データの分析も不十分だと思うんですね。
 福島では、チェルノブイリの教訓を学ぼうということで、チームをつくって現地に行って調査したんですよ。それ見ますと、チェルノブイリでは詳細な土壌マップが作られている。農地は三ヘクタールから十ヘクタール、森林は七十ヘクタールのメッシュをつくって、それごとに土地の汚染度と土壌の質が調査をされて、データベース化されて四年ごとに更新して、それぞれの土地の資格書というふうになっているわけです。
 そこで、もう一度資料を御覧いただきたいんですけれども、日本では測定の数が三百六十八か所と。これ、飯舘村でいいますと、農地面積が二千二百二十ヘクタールなんですけど、そこで八か所だけです。だから、三百ヘクタールに一か所だと。浪江町はどうかというと、二千三百九十ヘクタールあって八か所なので、やっぱり三百ヘクタールに一か所と。だから、チェルノブイリと比べると百分の一と、極めて少ないんですね。しかも、データベースにして、除染を通じてこの放射能汚染がどれぐらい下がったのか。セシウム137は半減期が約三十年です。九年たってどれぐらい低減したのかということは明らかになっていないんですね。
 二〇一三年のときに農水省が農地土壌の放射性物質濃度分布マップ調査報告書を出しているんですけれども、それ以降は報告書は出されていないんです。この九年間でどう変わったのか、分析はされていないんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 今の先生お話ありました二〇一三年というのは、ちょっと調べてみたら、二〇一一年の年に農林水産省が調査分析方法それから解析結果を解説した報告書として原子力規制委員会に報告をいたしまして、委員会のホームページ上で公表されたものだということでございます。
 その後は、二〇一一年以降は、農林水産省のホームページでは毎年、農地土壌、先ほど申し上げましたように三百六十八か所、数は少ないんでありますけれども、実測図それから分布図等は公表してまいりました。
 しかし、今日先生から御指摘をいただきまして、やはり、ここで営農をもう一回再開しようとしている方々にとっては、このもうすぐ十年を迎えようとするその年月の中で、どのようにセシウムの、いわゆる放射性物質の残留濃度が変わったのかと、そういうことは非常に関心の高いところでもあろうと思いますので、今後は、放射性物質等の濃度の推移、それから経年変化、こういった検証、分析もしっかり行っていきたいというふうに考えております。

○紙智子君 これから経年の変化もやっていきたいというお話あったんですよね。
 それで、これまでで言うと、経年的に分析して将来の見通しがどうなるかということも示されていないわけです。余りにもやっぱりそういう意味では安全に対する認識が薄いんじゃないかと言われても仕方がないと思うんですね。
 政府がやっぱり本腰を上げてなかなかやらなかったということもあって、福島では、二〇一二年度から土壌スクリーニングプロジェクトが取り組まれて、JA新ふくしまの農地中の放射性物質の分布マップを作成し、福島生協連とか職員とか組合員も参加して、生産者、消費者が連携して全農地を対象に放射性物質含有量を測定して、汚染状況をより細かな単位で明らかにしてきたんです。福島市を含むJA新ふくしま管内では、十万地点ですよ、十万地点を測定をしてマップが作成されたんです。
 そういう努力をしないと安全、安心な農作物作れないと。農家は、田畑で長時間、農地で作業しなきゃなりません。田起こしをやれば、直接土に含まれている放射性物質が舞い上がって、吸い込んだりするわけですよ。だから、被曝の不安が付きまとってきた。線量が高いところではとてもできない、だから圃場ごとに測定してほしいという要望が早いときから上がっていました。この九年間、毎年福島の農民連の皆さんが、放射性物質の汚染から農民の健康を守れる対策を要求してきたんです。
 ところが、厚生労働省は、原子力発電所などで働く労働者は除染電離規則でガイドラインを作ってやってきたと。だけど、農業者は労働者じゃないから所管外だといって受け付けなかったんです。環境省はどうかというと、線量は測るけれども健康調査は福島県に聞いてくれと、こういう態度だったんです。じゃ、農水省は対応するのかと聞いたら、農水省は農地の問題や農業経営に関してやるけれども、健康への影響は厚生労働省じゃないんですかということで、これ、たらい回しだったんですよ。
 それで、私は二〇一四年の復興特のときに、当時、竹下復興大臣だったんですけど、大臣に質問しました。原発事故の責任は東電と国にあるんだから、たらい回しではなくて、どの省がどう対応するのかを決めるべきじゃないか、こういうふうに言ったときに、大臣が、おっしゃるとおりだと言ったんですね。復興庁が他の役所を叱り付けてもやっぱりこれやりたいというふうに答えたんですよ。そういうふうに答えていながら、もう六年過ぎたんですけれども何も変わっていないと。
 それで、田中復興大臣にお聞きしますけれども、復興庁は何をされてきたんでしょうか。

○国務大臣(復興大臣 田中和徳君) 放射性物質に関する認識については、科学的根拠に基づいた正確な情報を発信していくことが一番重要であろうと思っております。
 こうした考えの下、私が司令塔となって、原子力災害による風評被害を含む影響の対策タスクフォースを開催をさせていただいて、関係省庁に対して取組の強化を指示するなど、政府一体となって取り組んでまいりました。
 委員御指摘の農作業における安全の確保に関しては、厚生労働省あるいは農林水産省が連携をして所要の情報の周知を図っているものと承知をしておるところでございます。
 引き続き、関係省庁としっかりと連携をさせていただいて、現場に寄り添って丁寧に対応していきたいと思っております。

○紙智子君 あのね、もう九年たったわけですよ。それで、安倍総理の閣僚はみんなが復興大臣だと思ってやってくれと言っていたんですよ。だけど全然やっていなかったということがあるわけで、今日、実は農水大臣来てもらったのは、期待を込めて来てもらいました。是非、この問題、先ほどもおっしゃいましたけれども、是非これからでも対策に乗り出すべきだと思うんですけれども、大臣、一言お願いします。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) ロシアのチェルノブイリ並みの面積単位で細かくという話についてはなかなか困難な部分もありますし、それぞれ農政連やJAの方々が一生懸命やっていただいたことについてはもう一度しっかり勉強させていただきたいと思います。
 しかし、これまで何も農水省がしてこなかったのかということについては、そうではないということだけは申し上げたいと思います。
 厚生労働省が定めたガイドラインは、しっかり農水省も協力してくれと言われましたので、このようなガイドラインを厚生労働省が定めておりますということを周知する努力は一生懸命してまいりましたし、それから健康面については、これは作るだけじゃなくて、そこで作業する人の健康を管理することもGAPの一部ですから、農林水産省としては、ほかの予算でもやれますけど、農水省の予算でもGAPの推進を進めて農民の健康管理にも一助となってきたというふうに考えております。

○紙智子君 GAPは私も知っているんですけれども、ちょっと今言われているその経過からいっても是非誠実に応えていただきたいということを申し上げておきたいと思うんです。放射能への不安があるから営農面積がやっぱり三割にとどまっているんじゃないかと。しかも、医療とか買物とか生活のインフラも整っていないということがあるので、そのことも是非踏まえていただきたいと思います。
 こういう切実な問題をそのままにしたまま、新基本方針では、外部からの参入も含めた農地の大区画化とか利用集積とか、高付加価値の産地の展開とか六次産業化とか、これ加速化を図るというふうに言って、県が主導して農地の集約化をすると。それから、県民の八割は知らないと言っている農業のイノベーション構想も、県が主導して進めるということになるんですよ。これ、現場が置き去りにならないかという心配があります。
 現行の農業経営基盤強化促進法に基づいて行われる所有者不明農地、これに関して、共有者の過半が明らかでない場合は、探索や公示は今までは市町村や農業委員会が行うことになっていたんですけれども、今回は福島県が単独でやれるようになるんです。市町村とかJAとか農業委員会が関与しなくてもよくなると、こういう仕組みにもなっていて、これが所有者不明地で公示の日から六か月以内に異議を述べなかった場合には、十七条の二十八項の規定でもって、福島県知事が定める農用地利用集積促進計画に同意したものとみなすと、賃借できるようになるということで。これは、住民としてみれば、避難を余儀なくされていたりいろんな事情で六か月経過して、終わった後に気が付くということだって出てくるわけで、そういう場合にどうするのかということも含めて慎重に扱わなきゃいけないというふうに思うんですけれども。
 時間になりましたのでちょっと続けて言います……

○委員長(青木愛君) おまとめをお願いいたします。

○紙智子君 はい。
 ということで、是非、復興の主人公、主体者というのは生産者であり市町村でありJAでありそこでやっている人たちだと思うので、加速化といってそこを置き去りにしないように心からお願いしたいと思いますけれども、最後に一言お願いします。

○委員長(青木愛君) 時間が来ております。簡潔にお願いいたします。

○国務大臣(復興大臣 田中和徳君) ただいまのお尋ねでございますけれども、今回の福島特措法改正案においては、共有者の過半が判明していない農地については、県が十分な探索を行ってもなお過半の共有者を確知できない場合には、県が当該農地を農地バンクに貸し付けることを内容とする計画を公示をして、六か月たっても異議がなかったときは計画に同意したものとみなして農地バンクへ利用権が設定されることとしておるところでございます。いろいろと慎重な手続を経て、その上で権利を設定するものでありまして、不明な共有者にも十分配慮した仕組みと考えておるところでございます。
 いずれにしましても、私どもも実の上がる対応をしてまいりたいと思っております。

○紙智子君 置き去りにされないようにお願いします。
 終わります。