<第201回国会 農林水産委員会 2020年5月14日>


◇森林組合法の一部を改正する法律案に対する反対討論

○森林組合法の一部を改正する法律案(内閣提出)

○紙智子君 私は、日本共産党を代表して、森林組合法の一部を改正する法律案に反対する討論を行います。
 安倍政権は、戦後以来の林業改革に挑戦します、意欲と能力のある林業経営者に森林を集約し大規模化を進めますと豪語し、森林経営管理法を制定しました。昨年は、国民の共有財産である国有林をも売り渡す国有林野管理経営法の改悪を行いました。改正案はこれに続くもので、いずれも未来投資戦略と規制改革推進会議の提言の具体化です。
 新型コロナウイルス感染症が拡大し、緊急事態宣言を出しているさなかに、森林組合や林業関係者の意見を聞くこともなく法案の審議を進める必要はありません。そのことをまず指摘しておくものです。
 反対する理由の第一は、森林組合が大型製材工場等の求めに応じて木材の伐採、販売を進めれば、森林の荒廃が進み、国土保全や水源の涵養機能などの森林の有する多面的機能を一層後退させるからです。
 現状でも造林未済地の面積は一万千四百四十四ヘクタールに拡大しており、林野庁は、再造林がされていない現状を分析すらしていません。
 第二の理由は、森林組合を森林所有者による相互扶助の協同組織から企業的組織に変質させるものだからです。
 現行法の四条から営利を目的としてその事業を行ってはならないとの規定を削除し、事業譲渡、吸収分割、新設分割など会社法の手法を取り入れるとともに、販売事業や法人経営に関する実践的な能力を有する者を理事に置くことを義務付けています。利益を上げるために不採算事業の整理縮小が進むとともに、リストラなどの人員整理にもつながりかねません。これでは、地域の森林と山村の守り手、地場産業としての林業の担い手である森林組合の役割は果たせません。
 森林組合は、政府が進める皆伐のための集約化、大規模化、企業化の道を進むのか、それとも本来の協同組合の自主性や自立性を基本にした道を維持するのか、鋭く問われることになります。森林組合の企業化が進めば、森林の公益的機能が発揮されないばかりか、山村地域の一層の過疎化、空洞化が進みかねません。今、農業などを行いながら森林の所有者などが皆伐でなく長伐期多間伐施業を行う自伐型林業が広がりつつあります。
 安倍政権が進める林業の成長産業化路線の転換を求めて、反対討論とします。

○委員長(江島潔君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
 これより採決に入ります。
 森林組合法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。

   〔賛成者挙手〕

○委員長(江島潔君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、徳永君から発言を求められておりますので、これを許します。徳永エリ君。

○徳永エリ君 私は、ただいま可決されました森林組合法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・国民の声、立憲・国民.新緑風会・社民、公明党及び日本維新の会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。

    森林組合法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  戦後造成された人工林が本格的な利用期を迎える中で、森林経営管理法が制定され、また、国有林野の管理経営に関する法律が改正されたこと等に伴い、森林の経営管理の集積・集約、木材の販売等の強化、さらにこれらを通じた山元への一層の利益還元の推進が求められている。森林組合には、公益的機能の維持増進とともに地域の林業経営の重要な担い手として役割を果たしていくことがますます期待されている。
  よって政府は、本法の施行に当たり、次の事項の実現に万全を期すべきである。
 一 森林組合に対しては、本法により創設される新たな連携手法の利用促進に向けた制度の周知に努めるとともに、連携手法を選択しない場合も含め、個々の状況に応じて、経営基盤の強化に向けた自主的な取組を引き続き支援すること。
 二 正組合員資格の拡大に当たっては、後継者等が正組合員として森林組合の運営に参加することが促進されるよう、制度の周知を図ること。また、理事に女性や若年者が登用されることが促進されるよう、必要な施策を行うこと。
 三 森林組合が行う林産物の販売等の強化に当たっては、本法により創設される新たな連携手法等による販売その他の事業活動の拡大を通じ、地域林業の活性化、更には地域経済への貢献が図られるよう指導すること。
 四 森林の有する公益的機能の維持増進を図りつつ事業を実施する森林組合が、「意欲と能力のある林業経営者」として、森林経営管理制度や樹木採取権制度の円滑な実施に貢献できるよう、人材の育成、施業技術の向上等の必要な支援を行うこと。
 五 森林経営管理制度の円滑な実施に向けては、森林組合を始めとする林業事業体における新規就業者の確保及び定着が喫緊の課題となっていることに鑑み、林業就業者の所得の向上、労働安全対策を始めとする就業条件改善に向けた対策の更なる強化を図ること。
 六 台風等の自然災害による森林被害が頻発している現状に鑑み、災害発生を予防し、災害復旧を迅速化する観点から、倒木の防止や除去等を含め、間伐を始めとする適切な森林整備を推進すること。また、市町村が主体となった森林整備の着実な推進に向け、林地台帳の整備、境界の明確化、森林所有者の明確化等を一層推進すること。

   右決議する。

 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。

○委員長(江島潔君) ただいま徳永君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。

   〔賛成者挙手〕

○委員長(江島潔君) 多数と認めます。よって、徳永君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。