<第201回国会 農林水産委員会 2020年5月12日>


◇新型コロナ 北海道のホタテへの影響と支援について/特定水産物供給平準化事業について/魚価の減少対策について/卸売業者、仲卸業者、市場開設者への支援について

○農林水産に関する調査
(新型コロナウイルス感染症対策としての水産業への支援に関する件)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 政府は、四月七日に新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて緊急事態宣言を出して、五月四日に期限を今月三十一日まで延長しました。感染症を封じ込めるために人の接触を減らそうということで、各方面で努力がされていると思います。こういう努力されている皆さんに改めて敬意を申し上げたいと思います。
 いわゆる三密を避けるために国会でも努力されていますが、どうしてもやっぱり委員会を開いていきますと、関係者がそれに伴って動きますので、三密になりかねない側面があると。当然、国民の苦難を解決するために、この新型コロナ対策の議論を行って迅速に対策を打ち出していくという必要性があるんですけれども、政府自身が緊急事態だというふうに言っているわけですから、急ぐ必要がない法案、例えば規制改革推進会議が求めているような法案とか予算に関係しない法案までどんどん進める必要性はないと思います。少なくとも、緊急事態宣言が解除されてからでもいいんじゃないかというふうに思います。
 さて、今日は水産関係の新型コロナウイルス対策についてお聞きします。
 私も北海道にいつもどおり帰れる状況になっていないものですから、北海道の党の事務所や地方議員の皆さんと連絡取り合いながら、この間、状況を把握し、必要な対策を求めています。北海道で我が党は畠山和也前衆議院議員が新型コロナウイルス対策本部長をやっておりまして、情報交換を行っています。
 そこで、ホタテについてお聞きをしたいと思います。
 ホタテ漁は、この間、北海道の噴火湾でのへい死の被害がありましたが、今、全道的には比較的好調というふうに言われています。北海道漁連の集計によりますと、二〇一九年度、つまり去年の四月から今年二〇年の三月まで、この間の道内のホタテの水揚げは前年比で一一%増と、約三十九万トンということなんですね。
 それで、畠山本部長が漁協などの関係者から話を聞いたところ、新型コロナの影響で中国への輸出がストップをしていると。強い外出自粛要請で道内の需要が落ち込んでいると。北見市の漁協では、殻付きの浜値が四割下がってホタテの在庫がだぶついていると。冷凍施設もいっぱいで、保管できる施設を探してこれ確保することが、今オホーツクの地区、十四漁協あるんですけれども、十四漁協全体の課題になっているということなんです。組合長は、SARSとかリーマン・ショックもあって経験してきたけれども、影響がこの浜まで押し寄せてきたというのは初めてだというふうに言われています。
 そこで、冷凍施設がいっぱいなので、何らかの方法で施設を確保する必要があると、そういう努力しているんですけれども、そういう必要があるときにどういう支援をするのかということをまずお聞きしたいと思います。大臣、お願いします。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 当省からの不十分な答弁であるということは承知した上で申し上げますが、そもそもは当初予算では措置されていない、ホタテは措置されておりませんけれども、今回このコロナの感染症の影響を受けて、特定水産物の供給平準化事業、これの対象にして冷凍保管をすると、買い取って保管して、いずれ売っていただくというような制度をやっておりますけれども、肉も同じでございまして、そういう制度があってもなかなかその保存する場所がないということであって、これについては非常に頭を痛めているところでありますけれども、今現在お示しできる制度はこれでございます。

○紙智子君 調整保管に要しての保管料とか、それから入出庫料、それから運搬料、これらについて二分の一の助成というのがあるというように聞いていますけれども、そうなんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) これは、国と生産者の方々とリスクを分担し合いましょうという制度で元々スタートしている制度でございます。
 買い取って、いずれ保管をして売るときに、また輸出がまた中国では大変引きが強くて、このコロナが起こる前は日本の輸出の大きな柱になっていたこのホタテでありますから、いい値で売れれば、今値段が下がっているところで買い取っていますから、これはいい値で売れれば、二分の一助成であっても二分の一にはならない、収益が上がるわけですから。しかし、その値段で売れなかった場合も二分の一の水準は必ず国が責任を持って補填をするという制度でありますので、多分これでは不十分だと、もうちょっと助成率を上げろという御指摘をいただくのかもしれませんが、今のところはこれでやらせていただいているというところでございます。

○紙智子君 今のところ二分の一の助成ということを話されたんですが、そうすると残りが漁業団体が負担をするということになるわけです。
 ホタテの需要が落ち込んでいるのに、これ保管するために二分の一負担しなければならないということでは、この新型コロナ感染症の終息が、これすぐ終わればいいけれども、長引いた場合、これ漁業団体の重荷になるんじゃないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 繰り返しの答弁になって恐縮ですけれども、今、大変悲しいことではありますけれども、今買い入れる価格は下がって、安い値段で買い取っている状況でございます。
 これを、もし、世界の需給が回復しなきゃなりませんし、中国との行き来も、人も含めてまた回復することも必要かもしれませんが、また輸出という窓が開けば、これは今買い取っている値段よりも高い値段で売却することができますので、そうなると、いわゆる漁業者の方々、いわゆるその漁協の負担も二分の一よりも更に軽減されるという最終的には結果にはなるということでございます。

○紙智子君 だけど、その先がなかなか見えていないわけですから、やっぱり状況を見て、ずっと長引く状況になれば、その状況に応じながら考えていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 今回、一度補正予算に五千四百四十億ほど積ませていただきました。これも、我々も経験したことのないことに対する対策でありますので、かなり水産庁も林野庁も、それから生産局や各局もそれぞれ皆知恵を出してやったんですけれども、足らざる部分があったことは率直に認めたいと思いますが。
 今私が省内で申し上げていることは、まずは第一発目はこの補正予算についてしっかり周知をして、給付金についても、持続化給付金についても、皆さん方が対象になるんですよ、漁業者の方々も対象になるんですよということをこちらから申し出るような形で、待つのではなくてこちらから声を掛ける形で周知徹底を図っていきながら、そしてこの予算を消化していく中で足らざるところがあれば、もしも次の追加の補正予算の要求があれば、そこを埋めていきたいというふうに考えております。

○紙智子君 団体のやっぱり重荷にならないように考えていただきたいということを求めておきたいと思います。
 そこで、水産庁長官にお聞きしますけれども、特定水産物供給平準化事業の対象魚種について教えてください。

○政府参考人(水産庁長官 山口英彰君) お答えいたします。
 今回の補正予算で措置しております特定水産物供給平準化事業につきましては、まず、新型コロナウイルス感染症の影響で需要量が減少し又は取引価格が下落しているもの、次に、漁業者の自助努力、例えば生産調整等でございますが、これのみでは供給過剰状態の解消が困難なもの、また冷凍保管等により価格が著しく低下しないと見込まれるもの、さらに、新型コロナウイルス感染症終息後に放出された保管水産物が輸出拡大等によりまして需要回復につなげられると見込まれるもの、こういった要件を満たした魚種につきまして事業計画ごとに承認をするという形になっております。

○紙智子君 つまり、魚種は特に決めてはいないということですよね。はい。
 特定水産物供給平準化事業は、かつて水産物の調整保管事業とか需給変動調整事業というふうに言われていました。ところが、二〇一七年の行政事業レビューで事業者の自助努力又は地方公共団体により行われるべきという指摘を受けて、この事業は今年度、つまり平成二十九年度で終了すると、新規事業においては対象水産物を限定するということになりました。対象から外した魚種を教えてください。

○政府参考人(水産庁長官 山口英彰君) 平成三十年度に外れたものといたしましては、ホタテガイということでございます。

○紙智子君 三十年度ホタテで、その前はホタテのほかにマグロとかホッケとかもあったと思うんですけど。あっ、いいです、いいです、いいですよ。三十年度はホタテが外れているということですよね。
 それで、全国に流通する水産物なのに、これ自助努力、地方自治体で行うように求めて予算と対象魚種を削ったということで、迅速な対応ができなくなったと思うんです。今回は新型コロナウイルス感染症で需要が減少したわけですが、迅速な対応ができずに現場が苦境に陥ったんじゃないでしょうか。補正予算という一時的な対応ではなくて、いざというときの備えが必要だと思うんです。そういう意味では、恒常的な制度に戻すべきではないかと思いますけれども、大臣、これ、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) ホタテが三十年に外れたのは、極めて人気があって、輸出でも主役を張るような品目でありましたから、冷凍して保存するような必要性がなかったということで外れたということでございますけれども、確かに昔の調整保管という性質から見ると若干弱くなったということは事実でありますけれども、理屈なく外したわけではないということだと思います。
 しかし、このコロナウイルス終息後のことは、先ほど先生が度々おっしゃっているように、どのような経緯を経てこれが平準化され、終息に向かうのか。まあロードマップは正直日本だけのことではなくて世界のことですから見えないところがありますので、今後、この対象魚種について、またこれを継続的にホタテを採用していくのかどうかについては検討の余地があるというふうに私は考えております。

○紙智子君 是非検討してほしいと思うんですね。特定水産物供給平準化事業として補正予算で対応したことは前進だとは思うんですけれども、現場の苦難に応えるように拡充するように求めておきたいと思います。
 そこで、現場の苦難に応えるために、総額一兆円、新型コロナウイルス感染症対策地方創生臨時交付金というのが創設をされております。新型コロナウイルスの感染拡大の防止及び感染拡大の影響を受けている地域経済や住民生活の支援を通じた地方創生を図るということが目的なんですけれども、非常に幅広くあると思うんですね。
 漁業の町で、さらに北方隣接地域の根室市、ここの市長さんは、余りにも現場を分かっていないんじゃないかと、情けないというふうに怒っておられます。根室市の交付金の配分額は一億五千三百万円で、これは実はリーマン・ショックのときに地域活性化・経済危機対策として当時三億千三百万円だったので、その半分なんですね。市長が怒るのもこれ当然だなと思うんですけれども、大臣、是非これ予算を抜本的に増やすように、所管は農水ではないと思うんだけれども、しかし、政府内で是非リーダーシップを取ってもらっていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) リーマン・ショックのときと比べて根室市がそれだけ少ないというのは、ちょっと私も勉強不足で知らなかったわけでありますけれども、もう言うまでもなく、これ、内閣府において五月一日の通知ということでありまして、全く所管外で、他省がやったことについて私がいいとか悪いとか適切だとか不適切だと言うことは、これはもうまさにそののりを越えておりますから御勘弁いただきたいと思いますが。
 ただ、この緊急事態宣言自体は全国に及んだものでありまして、全国すべからくこの影響は受けているわけでありますから、閣僚懇談会とかいろんな場面があります、今はなかなか閣僚も集まって話ができない状況でありますけれども、そういう機会には、私としてリーダーシップが取れるとまでは申しませんけれども、こういうことについてどうなんだろうという議論はしてみたいというふうに思っております。

○紙智子君 本来、内閣府とかに聞かなくちゃいけない、総務省とか言わなきゃいけないんですけれども、是非、やっぱり水産の町でもありますので、それが成り立たないと全体大変ということでもありますので、是非イニシアチブを発揮していただきたいと思います。
 それから、沿岸漁業者、そして産地市場でも影響が出ていますが、JCFU、全国沿岸漁民連、調査を行っております。鮮魚出荷価格が全国的には二分の一、三分の一以下に下落をし、採算割れが生じていると。地方から都市部への出荷が滞る中で、産地市場では値が付かず、やむを得ず休漁せざるを得ない地区や漁船が続出していると。養殖業でも出荷量が三割減少した地区もあるということです。
 過去には燃油が高騰したときに休漁せざるを得ないことがありましたけれども、そのときは支援策を拡充しました。今回は、コスト高ではなくて新型コロナによる需要の減少による休漁ということでケースは違うんですけれども、これ支援策を是非拡充すべきではないでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 特に沿岸漁業で漁をされている方の中には、もう捕っても値段が安いので燃油代にもならないと、ということであればもう漁に出ない方がましだという、これ、私、門川町という港町の育ちで友達はみんな漁師ですから、そういう声は生声として聞いております。そういうものを聞くと、自分としても、そういう人に何ができるのかと、その燃油高騰対策のときにこの対策を打ったことのことも正直自分でも覚えております。
 これからまだ補正があるということを断定的に申し上げることはできませんが、今漁場が休んでいるということに着目して何かするとか、何かいい手はないかということで一生懸命考えています。今はこれをやるということを申し上げられませんけれども、先生がおっしゃるように、これがいつ終息するかが分からない。まあ四十人とかになって、このまますうっといい感じになってくれればいいですけれども、また第二波が来るかもしれない。ということであれば、ある程度中期の、それから、長期ということは余り考えたくはありませんが、ある程度スパンの長いことも考えざるを得ないのかなと思っておりますので、もし補正の審議が正式に行われるということになれば、この沿岸漁業に対して何ができるか、具体的な指示がまだ出ておりませんけれども、しっかり省内で検討させていただきたいと考えております。

○紙智子君 ちょっと確認なんですけれども、積立ぷらすの基金積み増したことは聞いているんですけれども、新たに漁業者の自己積立金の仮払いとか、あるいは契約時の積立猶予を行っているというようにも聞いたんですが、それは間違いないですか。確認します。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 積立猶予を行っております。それから、新しく今まで積立ぷらすに入っていなかった新規の参入の方が入るときにも、この部分については猶予をさせていただくということになっております。
 そして、これまで、三月三十一日まで、いわゆる年度末で締めるまでこれお金触れないという制度の立て付けになっておりますけれども、この積立ぷらすの部分については期中であっても仮払いという形で、今お金が必要な方というのは結構いらっしゃいますので、そういう方々については仮払いという形でお金を支出することも可能という運用の改善をさせていただいております。

○紙智子君 急いで手にしたいという場合にはそういうことも有効かなとは思います。是非更に拡充していただきたいと思います。
 それから、積立ぷらすは減収分が全額補填されるわけではないということもあり、漁業共済未加入者も中にはいると。それらも含めて是非支援策の拡充を考えていただきたいと思います。
 最後になりますけれども、浜の産地市場では需要の減少で値が付かないと、そして中央卸売市場では物流そのものが、物量ですね、そのものが減少していると。水産経済新聞の報道では、大阪市の水産物卸協同組合の調査では、百二十五社のうち六十九社が昨年比で取引五〇%未満になっていると報道しています。また、宮城では、県の休業要請の対象外で協力金はもらえないということです。
 そうなりますと、卸業者とか仲卸業者の経営が成り立たない。固定費である施設使用料が重荷になってきます。これも支援策が必要ではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) いわゆる市場については大小がありますけれども、今現在私どもで把握しているのは、中央卸売市場を開設した四十都市ございますが、この中の大阪とか東京辺りの九つの都市においては、いわゆる卸売市場の施設使用料等の支払猶予の措置が行われています。
 しかし、これは国の施策ではありません。当該自治体が行っているものでありますので、これについて国として何かすべきでないかという検討はさせていただこうと思っておりますが、今日の段階で、このいわゆる九都市だけに限ったものではありませんので、市場というのは大きいところ、小さいところ、私の地元でも本当にちっちゃいところもありますので、果たしてどのぐらいのカバー率でどのようなことができるか、もし補正があれば検討の対象にはなり得るんだろうというふうに思っております。

○紙智子君 緊急事態宣言を出しているのは政府なわけですから、対応は違うといっても、この飲食店とか居酒屋の臨時休業をしたことから影響が出ているというのは明らかだと思うんです。
 卸売や仲卸の経営実態がどうなっているのかというのはちょっと全体把握しないとよく分からないということもありますけれども、開設者の支援が果たしてされているのか。されているところもあると思うんですけど、されているのかどうか早急に把握をして、これ、自治体任せにせずに対策を取るように強く求めておきたいと思います。
 最後に一言、それについての答弁いただいて、終わりたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 卸も卸、仲卸と業態が様々で、仲卸の方々も、どういう商流を持っていらっしゃるかで、例えば料亭に商流を持っている方は影響が大きいとか、仲卸一くくりでなかなかジャッジするのは難しいですけれども、できるだけ現場の状況を把握する努力はさせていただきたいと思います。

○紙智子君 終わります。