<第201回国会 東日本大震災復興特別委員会 2020年4月15日>


◇新型コロナ 飲食店の休業要請と補償はセットで行うよう求めた/総務省行政評価局が行った在宅被災者に対する調査と内閣府に行った勧告について/福島第一原発事故によって発生している汚染水の処理について

○東日本大震災復興の総合的対策に関する調査
 (東日本大震災復興の基本施策に関する件)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 まず初めに、新型コロナウイルスの感染症についてお聞きします。
 震災から九年が経過いたしました。今年の三月十一日は、私、宮城県の岩沼市の追悼式に伺う予定だったんですけれども、新型コロナの影響で追悼式は中止になりました。多くの被災地がそうだったと思います。被災地は、昨年の台風十九号による被災に続いて今回の新型コロナと、連続した被害を受けております。
 この新型コロナウイルスが被災地に与えている影響について、まず大臣の御認識を伺いたいと思います。

○国務大臣(復興大臣 田中和徳君) お答えをいたしたいと思います。
 被災地においては、昨年の台風十九号等による被害に加えて、今回の新型コロナウイルス感染症の拡大の中で、事業者の方々から資金繰り等に関する相談等が多数寄せられておるところでございます。
 こうした状況を踏まえて、政府としても、先週、新型コロナウイルス感染症緊急経済対策を取りまとめ、各種の支援策を順次講じることとしておるところでございます。
 具体的なことについても、例えば、既に、被災地の事業者を含め、売上げが急減した中小企業事業者に対しては、実質無利子無担保保証、融資等の強力な資金繰り支援を実施をしておるところでございますし、また、今般取りまとめた緊急経済対策においても、かつてない支援として、中小・小規模事業者の方々へ給付金の創設を行うこととしておりますし、これに必要な予算を令和二年度の補正予算に盛り込み、今後、国会で御審議をいただくこととしておるところでございます。

○紙智子君 新型コロナウイルスの影響ということでは、被災地の暮らしやなりわいにも本当に甚大な影響を及ぼしていると思います。
 それで、報道によりますと、まだ感染者が唯一出ていない岩手県でもやっぱり影響が出てきていて、盛岡市の接客業の経営者の方が街頭で休業補償の充実を求める署名を集めていると。花巻市の東和温泉、このホテルでは三月は宴会のキャンセルが相次いで、売上げは昨年と比較しても六割減少したと。料理の持ち帰りや配達サービスを始めたとか、経営者の皆さんは従業員の雇用と生活を維持するためにも必死に努力を今されている、そして休業補償も求めているわけです。
 事業者の皆さんの声に応えるべきだというふうに思うんですけれども、この自粛要請とそして補償とを一体に行うということが感染拡大を防止すると、そして事業者にも安心して休業してもらえる。この休業要請に対する補償について、世論調査でも八二%の方が補償すべきだというふうに回答するなど、大きな今要求になっているんですね。
 そこで、田中大臣、閣僚の一人として、是非ともそのことを総理に進言すべきではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(復興大臣 田中和徳君) 総理大臣からも御答弁をさせていただいておりますけれど、今回の自粛要請の直接の対象となっていない分野においても売上げだとか発注の減によって甚大な影響が出ておることも勘案すると、政府としては、様々な事業活動の中で発生する民間事業者の個人の方々の個別の損失を直接補償することは現実的ではないと、このように考えておるところでございます。
 しかしながら、多くの中小事業者の方々において事業継続が困難になっていることは事実でございまして、このような中で、資金繰り支援だとか現金給付あるいは休業手当支給時の雇用調整助成金の特例の拡充、そして税だとか社会保障保険料の猶予など、あらゆる手段を駆使して困難に直面している事業者の皆様を支えていかなければならない、このように思っておるところでございます。

○紙智子君 感染を防止するためにはできるだけ会わないようにしなきゃいけないと。そのためには、やっぱり仕事の上でもそこを止めなきゃいけないということになっているわけで、そこを止めるとやっぱり大変だと、潰れてしまうということの中で多くの人が苦しんでいるわけで、やっぱりこの自粛要請と補償と一体にというところはますます今求められてきているというふうに思います。
 是非、やっぱり復興大臣が言わなければ、この被災地の状況をしっかり受け止めている大臣が言わなければ一体誰が進言するのかなということでもありまして、是非、先ほども寄り添っていくんだというふうに言われましたので、進言をしていただきたいなということを改めて強く要請したいと思います。
 次に、在宅被災者についてお聞きします。
 昨年の復興特別委員会において、私、在宅被災者について質問いたしました。震災で自宅が被災を受けながら、災害救助法に基づく応急修理制度を活用すると仮設住宅に入れず、壊れた自宅で避難生活を余儀なくされている被災者がいるわけですね。
 それで、総務省が在宅被災者の調査を行っていますけれども、在宅被災者をどのように定義したのでしょうか。また、調査の手法、対象について説明を願いたいと思います。

○政府参考人(総務省大臣官房審議官 小森敏也君) 本年三月に公表いたしました「災害時の「住まい確保」等に関する行政評価・監視」に関しまして、在宅被災者の定義、それから調査の手法、調査対象についてのお尋ねがございました。
 まず、調査の対象でございますけれども、東日本大震災から平成三十年七月豪雨までの災害のうち、半壊以上の住家被害が一千戸以上発生した災害の被災地域、それから首都直下地震などの大災害が今後起こり得るとされている地域、これら二つの地域の地方公共団体等としております。また、調査の手法といたしましては、地方公共団体等からの資料の提供を受け、あわせて直接ヒアリングを行ったものでございます。
 それから、在宅被災者の定義につきましては、本調査においては、避難所閉鎖以降において災害により被害が生じた自宅に居住しながら住まいや生活の再建を目指す者といたしておりまして、これとともに、避難所開設期において、自宅が損壊したもののやむを得ない理由により避難所に滞在することができない者、これを避難所外避難者として整理いたしまして、これらを対象として指定避難所の外にいる被災者の住まいの確保の実態に焦点を当てて調査を行ったものでございます。

○紙智子君 宮城県の石巻市や仙台弁護士会の調査では、在宅被災者は、自宅の屋根が崩壊していて、近隣住民に瓦が落ちると危険だと指摘をされて応急修理制度を利用したところ、応急仮設住宅には入れなくなったと。その後、加算支援金も使ったけれども、お風呂も直せず、加算支援金をもらうと、この支援金を受給した場合には災害公営住宅には入居できないというふうに言われたと、こういう実態が明らかになっているわけです。現行制度を使った結果、カビ臭い壊れた自宅で生活を余儀なくされているわけです。
 今回の調査で明らかになった結果、課題また解決策について説明をお願いします。

○政府参考人(総務省大臣官房審議官 小森敏也君) 今回の調査の結果明らかになった制度上の課題につきまして、二点、総務大臣から内閣府防災担当大臣へ勧告を行っております。
 一点目は、住宅の応急修理は発災から一か月以内に修理完了とされているところ、被災地では修理に想定以上の長期間を要しているのが実態であるため、この救助期間を見直すこと。二点目は、現状では住宅の応急修理と応急仮設住宅の供与の併給が認められていないところ、修理が十分にできなかったなどの事情により、引き続き壊れた自宅に住み続けている世帯が存在することから、このような被災者に対して応急仮設住宅の供与を可能とすること。以上二点を勧告したものでございます。

○紙智子君 そのことを内閣府に勧告をしたということであります。
 それで、調査結果から言えることは、今の制度では対応できない、限界があるということではないんでしょうか。これ、いかがですか。

○政府参考人(総務省大臣官房審議官 小森敏也君) 今回の当方の指摘したことに対応するのは、法律レベルということではなくて現行の告示に関する事項であると我々の方では考えておりますが、いずれにしましても、こういう告示を含めて災害救助法の制度の体系をどのように見直していくかにつきましては、この制度を所管する内閣府の方において御検討いただくべきものと考えております。
 以上でございます。

○紙智子君 つまり、災害救助法では告示という形で対応は可能だと、ただ、それは内閣府が対応することであるということだと思うんですね。
 そこで、内閣府にお聞きします。
 今回の調査を受けて、災害救助制度を見直すべきではないんでしょうか。

○副大臣(内閣府副大臣 平将明君) 住宅の応急修理と応急仮設住宅の供与については、救助の対象が異なることから併用しないこととしていたところでありますけれども、一方で、今御指摘のありました修理業者の不足等の課題もあり、修理期間が長期化することも実態としてあるところと認識をしております。
 今ありました、総務省さんから三月三十一日に行政評価の勧告をいただきました。その内容を踏まえて、各制度の併用の可能性について、被災自治体や被災者の声も聞きながら、災害救助法の目的や趣旨、救助としての必要性を考慮しつつ、まさに今検討を進めているところであります。

○紙智子君 今現在検討を進めているということですけれども、在宅被災者を把握する仕組みが今のところないんですよね。
 それで、この総務省の報告書で、これ出されている報告書で示されているわけですけれども、在宅被災者の支援は、国において統一的な考え方が示されていないこともあり、実態や支援ニーズが把握されていないというふうに三十九ページにまとめて書いてあるんですけれども、今後、この在宅被災者の実態と人数を把握すべきではないんでしょうか。

○政府参考人(内閣府大臣官房審議官 村手聡君) お答え申し上げます。
 自宅で避難生活を続けている被災者へ行政からの情報提供等を適切に行っていくため、在宅被災者の状況を把握することは重要であると認識してございます。
 内閣府では、避難所運営に関する取組指針やガイドラインにおきまして、在宅にて避難生活を送る被災者への支援を実施することなどについて自治体に周知し、適切な対応を求めているところでございます。
 また、令和元年台風第十九号の際には、在宅で避難生活を送っておられる被災者についても、避難所で配布している食料、水など必要な物資の配布や健康相談等のサービスの提供、行政からの情報提供が受けられるよう自治体に対して通知し、支援を促したところでございます。
 内閣府といたしましては、自治体において支援が必要な在宅被災者をしっかり把握して必要な支援が行われるよう引き続き促すとともに、その状況の把握についても検討してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。

○紙智子君 やはり恒常的に在宅被災者を把握する仕組みがないと、これ迅速な対応にならないというふうに思いますので、そういうふうに是非やっていただきたいというふうに思います。
 それから、復興大臣にお聞きするんですけれども、総務省の勧告を受けて在宅被災者の課題を解決することは必要なんですけれども、同時に、東日本大震災の担当大臣として、いかに恒久住宅につなげる支援していくかということが問われていると思います。
 NHKが毎年三月に被災者のアンケートを行っています。今年は九年目の調査になります。復興は思ったより遅れている、全く進んでいないというふうに、合わせて五五・七%の方が回答しています。その中で、何に対してそれを感じるのかというと、自分の住まいと答えた人が四三・八%。
 九年目のアンケートですよ。九年たってのアンケートでこういうことで、被災地の実態を誰よりもやっぱり把握して知っている、そういう大臣ですので、住まいの問題を解決するために、被災者生活再建支援、この制度を抜本的に見直すべきではないかと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(復興大臣 田中和徳君) 被災者の方々のために安心できる住まいを一日も早く確保することが最重要課題というふうに私も認識をしておるところでございます。
 このため、復興庁としても、住まいの復興工程表を策定をさせていただいて、被災者の方に対し住宅再建の見通しを提示をさせていただき、住宅再建の加速化に全力で取り組んでまいりました。恒久的な住まいの再建に向けては、被災者の自主再建を支援するため、被災者生活再建支援金の支給だとか、取崩し型復興基金等を活用した助成、また様々な形で被災者の負担軽減を図ってきたところでもございます。また、自主再建が困難な被災者向けの災害公営住宅の整備だとか、面的な町づくりとしての宅地造成も進めてきたところでございまして、地震・津波被災地域においては復興・創生期間内での完成を見込んでおります。このように、被災者の方々の状況に応じて住宅の再建を支援してまいりました。
 今後とも、住宅再建の取組が確実に進捗するよう、引き続き政府を挙げて取り組んでまいりたいと思っております。

○紙智子君 被災者生活再建支援制度の支給額で今三百万なんですけど、これも何度も私たち言っているんだけれども、これじゃ足りないと、やっぱり引上げをするように求めておきたいと思います。
 次に、福島第一原発事故によって発生している汚染水の処理についてお聞きをいたします。
 二月十日に公表されたALPS小委員会の報告書では、トリチウム水の処理については大気への水蒸気放出及び海洋放出の選択肢が示されました。その中で、特に海洋放出を現実的な案だとして有力視しているわけです。
 政府は、四月六日、十三日と二回、福島県内の自治体や団体の代表者から意見を聴取する場を設けています。福島県の漁連の野崎会長は、我々福島県の漁業者は、地元の海洋を利用して、海洋に育まれた魚介類を漁獲することをなりわいとしている、震災後、地元に土着しながら生活を再生するということを第一に考えている、その立場からしても海洋放出には反対せざるを得ないと、震災後に世代交代が進み、若い後継者の参入が進んだ、後継者の未来を約束するためにも反対するというふうに意見が述べられているんですけれども、大臣、これどう思われますか。

○国務大臣(復興大臣 田中和徳君) 処理水の取扱いに係る関係者の御意見を伺う場において、処分方法だとか風評対策、情報発信の在り方等について様々な御意見をいただいているところでございます。
 ALPS小委員会の報告書には、処理水を処分した場合に、全ての人々の不安が払拭されていない状況下では風評被害を生じ得ることは想定すべきであると記載されておりますので、そうした御懸念が様々な御意見となっているのではないかと、このように思っておるところでございます。
 引き続き、幅広い関係者の方々から御意見を伺った上で政府としての方針を決定することにならなければならない、このように思っておりますし、御意見をしっかりと受け止めてもまいりたいと思っております。
 いずれにせよ、復興庁としては、引き続き、関係省庁及び福島県と連携を密にしながら、風評の払拭、福島の復興に向け全力を尽くしてまいりたいと思っております。

○紙智子君 今、農業者の声なんですけれども、それだけじゃ、あっ、漁業者です、だけではないわけですね。それで、森林組合の連合会の会長さんは、福島県の森林・林業は、原発事故による放射性物質の汚染によって、森林整備、これが約五割程度に停滞していると、森林の公益的機能の低下も危惧している。シイタケの原木って全国に搬出していたわけですよね。これも今はもう無だと、全くなしだと。さらに、野生キノコとか山菜などの出荷制限も多くの市町村で継続、出せないという状況になっているわけです。そういう中で、処理水を、新たな放出物質を大気中や海洋に出すことには、これは反対であるというふうに言っているわけです。
 それで、吉野正芳元復興大臣が二〇一七年のときに記者会見でトリチウム水の放出について反対を表明しています。田中大臣、御存じだったでしょうか。それで、吉野大臣は、これ以上トリチウム水を放出して福島県の漁業者に新たな不安をつくらせないでくださいというのが私の意見でございますと。基準以下の濃度で放出すべきだという意見も承知した上で、これ以上福島県の漁業に携わる人たちを、特に風評被害は必ず発生するので、追い詰めないでくださいというのが私のずっといる立場ですというふうに語っているんですね。これ、濃度の基準に関係なく放出はやめてもらいたいという立場を言っておられるわけです。
 私、田中大臣も是非、復興大臣として、この立場で反対だとおっしゃったらどうかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(復興大臣 田中和徳君) 吉野大臣は地元の代議士でもいらっしゃいますし、お地元の方々の御心情を踏まえておっしゃったんだろうなと、このように今お話を承ったところでございます。
 処理水の取扱いについては、本年二月にまとめられましたALPS小委員会の報告書を踏まえて、今政府一体となって福島県や地元自治体を含む幅広い関係者の御意見を伺っておるところでございます。今後も幅広い関係者から御意見をお伺いした上で当然結論を出していくものと承知しておるわけでございますが、まずは、いただいた御意見をしっかりと受け止めていくことが重要と考えております。
 いずれにしても、復興庁としては、引き続き、関係省庁及び福島県と連携を密にしながら、風評の払拭、福島の復興に全力で取り組んでまいりたいと思っております。

○紙智子君 トリチウム水の大気放出や海洋放出をスケジュールありきで押し付けるんじゃなくて、あらゆる可能性を検討すべきだと思うんですよ。
 福島のJA中央会の会長は、二つに選択肢を絞ってどちらかにするかと迫るんじゃなくて、トリチウム分離処理技術の開発を要望しているんですね。具体的な提起をいろいろしています。こういう提案に応えるのが政治じゃないかと思うんですね。どれだけ検討したのか分かりませんけれども、こういう声にですね。十分な検討もなく、海洋放出は反対ですと、こういうことを復興大臣としてははっきり言ってほしいと、何で言えないのかと思うんですけれども、最後、一言。

○委員長(青木愛君) 申合せの時間が来ておりますので、簡潔にお願いをいたします。

○国務大臣(復興大臣 田中和徳君) はい。
 今お答えを申し上げたとおりでございますけれど、やはり広く御意見を伺って適切な対応をしてまいりたいと思っております。ありがとうございます。

○委員長(青木愛君) 紙智子君、時間となります。

○紙智子君 少なくともそれぐらいは言っていただきたいということを申し上げて、質問を終わります。