<第201回国会 農林水産委員会 2020年4月14日>


◇新型コロナ 和牛枝肉価格の低下と対策について/牛マルキンの生産者負担金について/飼養農家が感染した場合の対策/家畜改良増殖法改正案・家畜遺伝資源不正競争防止法案について

○家畜改良増殖法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○家畜遺伝資源に係る不正競争の防止に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 まず初めに、新型コロナウイルスの感染症対策についてお聞きします。
 政府は、四月七日に緊急事態宣言を発するとともに、経済対策を公表しました。農林水産省も補正予算の概要を公表しました。そこで、その中で肉用牛の対策についてお聞きします。
 現在、和牛枝肉価格が低下しています。例えば宮城県では、和牛枝肉価格は加重平均で前月比で約一〇%下がりました。子牛一頭の価格も約十万円落ちています。出荷時期を迎えた牛は、牛舎に残せば肉質も低下すると。畜産業、地域経済への影響はもちろん、生産者の経営に大きな打撃が出ています。インバウンドの減少で需要が減っているというので、在庫が一万四千トンに積み上がっているというふうにも聞いています。そこで、どう支援するかと。
 需要を喚起するということは大事だというふうに思うんですけれども、すぐにこの需要が増えるという状況にもないという中で、在庫という言い方ではなくて、前向きな言い方で言うと調整保管とか一時保管とか、こういう考え方に立って保管料を支援するということも大事じゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) この度の補正に至るまでの段階で、ALICのお金を五百億使わせていただくことによって、保管料を二月に遡って支援することにいたしました。
 それで、チルドのものはチルドで売った方が商品価値は高いんですけれども、三か月を迎えるともうチルドじゃなくてフローズンにしなければなりませんので、そのときの凍結料、そういったものについてもこのALICの予算で見させていただく、その期間に係る金利等も見させていただくということにしました。
 調整保管という手段は否定はいたしません。否定はいたしませんが、それはいずれ在庫として残りますし、倉庫が空きません。倉庫が空かないと屠畜場を今までどおり回すことができませんので、調整保管ということも一つの手段だということで選択肢の中には入っておりますが、今、最初に先生が御指摘されました、やはり在庫をいかに流通させるかということについて力を入れていきたいと考えておりますので、販売促進計画を作っていただいて、それに即して販売していただく場合にはその実績に応じてこのALICの五百億を使って奨励金を出させていただくという支援で、何とか倉庫の隙間を、スペースをまずつくることから始めさせていただいているところでございます。

○紙智子君 もう一つ、川上から川下への流通の流れを維持しながらこの牛肉の供給量が国内で過剰にならないようにするというのが大事なわけですけれども、三月の輸入量について、政府参考人に三月の輸入量をお聞きしたいと思います。

○政府参考人(農林水産省生産局長 水田正和君) 済みません、今、三月の輸入量というお尋ねでございますけれども、済みません、今手元に、昨年の四月から本年二月までの牛肉の輸入量につきましては手元にちょっとございますので御説明させていただきますと、二〇一九年度の四月から二月までの牛肉輸入量でございますが、五十七万トンでございまして、二〇一八年度の同時期に比べまして一%減少しているという状況でございます。

○紙智子君 これ、ちょっと古いやつなんですよね、だから。
 それで、四月八日付けの日本農業新聞で、TPP参加国とアメリカから合わせた三月の牛肉の輸入量が前年同月を一九%上回る四万六千六百八十三トンだということが、これ財務省のまとめで分かったというふうに報じているわけです。
 三月は、既に新型コロナウイルスの感染症が広がっていて、食材に影響が出ていた時期なわけです。国産牛の在庫は積み上がって過剰になっているのに、一方でこの輸入が増えていると。これ、日本農業新聞は、大手の輸入業者によると、二十三日の週に為替が下がって、だから駆け込みで通関を切る動きがあったというふうに報じているわけです。
 需要が減って国産牛は過剰になっているのに、輸入が増えているって、これ、大臣、どのように思われますか。ちょっとこれってひどくないかなと思うんですけど、どうですか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) どう思われますかと言われましても、なかなかお答えするのが難しいんですけれども。
 なかなか、業者さんの立場に立ってみると、三月三十一日は年度末でありますから、これまでに今の税率で入れたい、それから為替も大きく影響したと思います。しかし、セーフガードのラインを超えて輸入が、例えばアメリカですけれども、行われた場合は三八・五に税率戻ってしまいますので、非常にセンシティブな輸入行動を商社の方々はされたんだろうと思います。
 ですから、今後、そのときにこれだけ外食が傷んでいる状況の中で輸入牛肉が増えたということは、なかなかちょっと理解し難い部分もありますが、ただ、今でも吉野家とかそれとか松屋さんとか、そういったところについては非常に業績が今は逆に良くなっている。そして、スーパーでも、豚肉なんかは逆に価格が上がっている、鳥肉なんかも非常に引き合いが強いということであれば、価格帯の比較的低い輸入牛肉に対する引き合いがあるのではないかという判断を買手筋はされたのではないかというふうに、これは推測の域を出ませんけれども、そういうふうに考えます。

○紙智子君 需要がすぐに増える見込みがないのにもかかわらず輸入が増えているって、これ生産者側から見ると、国産でしっかり自分たち作っているものについてはたまっているわけで、そういうときに外から入ってくるというのは、生産者側から見たら、何だこれはというふうに思うわけですよね。
 それで、新型コロナ対策として、国内では営業自粛を各方面に求めているわけです。この際、やっぱり商社の方に対してもそこは考えてもらう必要があるんじゃないかと、自粛したらどうかということを求めてはどうかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 商行為について自粛を求めるというのはなかなか難しいと思いますけれども、ただ、何回かあった、いわゆる外食系の例えばファミリーレストランの経営者の方とか、そういう方々と懇談する機会はありました。そのときには、私の方から、おたくのレストランに行くとグラスフェッドのお肉のステーキが出ておりますけれども、この機会に是非グラスフェッドからグレーンフェッドの和牛に変えていただけませんかと、これはお願いベースしかできません。オブリゲーションというわけにはまいりませんけれども、そういったお願いは二月ぐらいの段階から機会をつかまえてさせていただいてきたところでございます。

○紙智子君 いろんな営業やっている方に対して今自粛を要請しているわけですから、そういう、ここだけはというのも何か難しいんじゃないのかなと思うわけです。やっぱり政府は国難と言っているわけで、平時のときじゃないわけですよね。ですから、それにふさわしく輸入はやっぱり自粛してもらうと。輸入を国産に切り替えると、国産を使ってもらうという支援が必要だというふうに思います。
 それから、和牛生産者を支援するために、牛マルキンの生産者の負担金、この負担金は、納付猶予ということではなくて免除してはどうかということなんですけど、これについてはどうでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) これは一対三ということで、今までは、これ制度ですから、生産者の方から拠出金をいただかなければ国から拠出している分も発動しないというのがルールでございます。ですから、国からの支出分だけは生産者の方々が拠出金を払わなくても出るというのは、生産者の方々とも意見交換をさせていただきましたけれども、それは大変有り難いという評価をいただいております。
 これをもし払ったとみなすということにすると、金額がどうのこうのということではなくて、ほかにも、例えば共済とか様々な制度がたくさんあります。例えば漁業でいえば積立ぷらすとか、いろんなものがたくさんありますけれども、それも全部払ったとみなして満額給付ということになると、なかなか今回、制度設計が難しいということであって、今回は四分の三ということで御説明をさせていただいて、払わなくても国が支出した分については払ってもらえるということであれば、それはそれで有り難いという評価がいただけているので、今回はこれでやらせていただければというふうに思っております。

○紙智子君 実質的にはそういう四分の一の分も、何というんですか、考えられるということではあるんですよね、実質的には。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 実質的にその分を埋めるということを具体的に申し上げているわけではありませんが、今回、別途ALIC事業で市場に出荷した場合に、幾つかの取組はしていただくことになっておりますが、非常に取り組みやすい内容になっておりますので、一頭当たり二万円をこれ出させていただくというのも別メニューで用意しておりますので、そちらも併せて御利用いただくと肥育農家の方々の御理解は得やすくなるのではないかと思っております。

○紙智子君 すぱっと免除すると言うといいと思うんですけど、ここまでにしておきます。
 それから、飼養農家、生産者が新型コロナウイルスに感染した場合、先ほどもちょっとありましたけれども、餌やりが、生きているものなので、飼育する人のめどが立っていないというふうに聞いています。これも支援策が必要じゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 先ほどお答えしたように、非常に規模によっても全然違ってくると思います。家族経営であるのか、中規模であるのか、それとも大きな農場で複数罹患者の方が出た場合と、いろんなケースが考えられると思いますが、ガイドラインは作らせていただきました、三月十三日にですね。
 これで全てだとは思っておりませんが、業務の継続につきましてはやはり生産者団体の皆様方に御協力をいただかないと、先ほども、午前中の質疑でもさせていただいたように、私がいきなり行っても、とても搾乳もできませんし、餌やりもできませんし、現場のことが分かっている人間でないとできませんので。かといって、ヘルパーの方がいきなり育成できるわけじゃない、高い給料を払ったからってヘルパーがいきなり生まれるわけではありませんので、こういう場合は、地域の方々がやはりもしもの場合は考える必要があるんだろうと思っております。ですから、酪農ヘルパーについては、代替要員の確保については定額一万五千円、これ一応考えさせていただいております、経済対策でですね。
 公共牧場に家畜を預けるという場合も出てくるんじゃないかと思っております。その場合の輸送費とか委託管理費、こういったものも一頭当たり七千円出させていただこうと思っております。それから、農場の洗浄とか清浄化、それから感染拡大防止に係る消毒等の経費についても、一農場当たり八万円の定額ではありますけれども、これを支援させていただくというようなことも今回の経済対策には盛り込ませていただいておりますので。
 しかし、こういったことをやっても、じゃ、本当に搾乳や給餌についてマンパワーが確保できるのかと言われれば、できますとはなかなか言い切れないので、徳永先生から御質問いただいた内容にかぶりますけれども、いろんなケースで、もしここでこういうことが起こったらどういう対応をしなければならないかということについては、シミュレーションのようなものをさせていただきたいというふうに考えております。

○紙智子君 酪農ほど肉牛のヘルパーさんの形って整っていないというふうにも聞いていますので、単価がどうなるかということも気になるところですけれども、是非、緊急事態宣言によってインバウンドの減少に加えてこの業務用需要が大きく減少している中で、前例にとらわれないで、やっぱり生産者の経営守っていくと、そういう支援を求めておきたいと思います。
 続きまして、家畜改良増殖法改正案についてお聞きします。
 獣医さんには結構知り合いもいて意見聞くことも多いんですけれども、人工授精師のお仕事とか役割については余り私も深く知りませんでした。それで、今回、この機会に調べたりお話を伺って、改めてこれ大事な仕事だなということを学ばせられました。
 ある家畜診療所の女性の授精師さんは、この仕事の一番のやりがいは何かというと、命を授ける仕事なんだというふうにおっしゃっています。農家さんに、授精した牛留まったよと、うちで受胎率がいいんだよというふうに言われたときが一番うれしいと。初めての分娩で無事に牛が生まれたときの感動もあると。いろいろな精液から自分が選んだものを農家さんに選んで指定してもらううれしさもあると。農家さんとの関わりで、知らないことをたくさん教えてもらう喜びもあると。だから、牛とも人とも向き合う仕事にやりがいを感じると、これ女性の人なんですけど、言っているわけですね。
 それから、またある男性の授精師さんは、自分の努力で生み出した精液を使って肥育農家がほかの牛と交配して品質のいい牛を作り出すことができて、ずっと苦境に立たされていた経営が改善されて、それに貢献できたということで喜び合ったとかですね、技術的なそういう努力というか苦労もあるんですけれども、そういう中で果たしている役割というのは非常に大きいんだなということを思ったんですね。
 ちょっと大臣に、やっぱりこういう人工授精師の役割とか大切さをどのように思われているかということを伺いたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 大変すばらしい仕事だと思っています。
 出産は獣医師さんの方にお願いすることになりますけれども、今先生がおっしゃったように、まず発情しているかどうかをしっかり見極めなければなりません。タイミングを間違えば、幾ら一生懸命いい種を入れてもそれは着床しませんので、それはやっぱり腕が相当差が出ます。やっぱりいい人工授精師は、まず繁殖雌牛に負担を掛けません。非常に雌にも負担を掛けずに高い受胎率を実現するということは、やはり畜産農家にとっては一年一産を実現することが経営を安定させる一番の基でもありますし、それによってどの雌とどの種雄牛のいわゆるストローの種を交配するかということも、これも技術のうちに入ってくると思います。
 獣医さんはやっぱり非常に遠い存在である場合もたまにはあります、偉い先生ですから。しかし、人工授精師さんは、例えば御自身が、お父さんが牧場主で息子が人工授精師の資格を持っているという場合も多分にあって、親子で同じ経営をしながら、周りの農家も助けながら、自分の農家の種付けは全部うちの息子がやっている。
 そして、御指摘のように、最近大変女性が増えておりまして、あなたの腕の長さで届くんですかというぐらい大変そうな小柄な子も宮崎にはいますけれども、その彼女も極めて評判が良くて、御指名が入るような子がおります。
 ですから、この人工授精師という仕事も大変な仕事でありますけれども、やはりこれからは社会的地位もみんなで認知して、そして彼らの活躍の場を、これを増やしていきたいというふうに思っております。

○紙智子君 やっぱり人工授精師さんが誇りを持って仕事をできるように応援すべきだというふうに思うんですね。
 そこで、現行法の第三条の三項で、都道府県知事が、当該都道府県において家畜の改良を促進していく上での指針というのは、国の改良増殖目標に即して自主的に家畜改良増殖計画を定めることができるというふうにされているんですけれども、一方で、これは農家の活動を規制するものではないというふうに承知していますけれども、そういう理解でよろしいでしょうか。参考人にお聞きします。

○政府参考人(農林水産省生産局長 水田正和君) お答えいたします。
 家畜改良増殖法第三条の三でございますが、都道府県は、国が定める家畜改良増殖目標に即し、都道府県における改良増殖に関する計画である家畜改良増殖目標を定めることができるとされております。この計画、あくまで計画でございますので、法的な拘束力を伴うものではなく、畜産農家における家畜改良に関する事業活動を規制するものではございません。

○紙智子君 それで、今度の改正案ですね、改正案の第二条二項の規定ですけれども、国や都道府県が行う改良増殖の促進に必要な施策に協力しなければならないの意味について、衆議院での我が党の田村議員の答弁で、家畜改良増殖目標の実現に向けた家畜の遺伝的能力評価を始めとする施策や遺伝的多様性の確保など御協力いただくことを念頭に入れており、これによって民間の家畜改良事業者の自由な改良の権利を害するようなことを考えているわけではないと答弁をされていますよね。
 改めて確認をしますが、不正流通をしないように協力するのは当然と、ですけれども、農家の増殖活動まで規制するものではないということですよね。確認をしておきたいと思います。

○政府参考人(農林水産省生産局長 水田正和君) お答えいたします。
 今回の家畜改良増殖法の改正案における第二条第二項の規定でございますが、先ほども加藤副大臣から答弁いたしましたとおり、努力規定でございます。強制力のあるものでもなく、罰則もないということで、協力するよう努めなければならないという規定と法律上意味する内容が異なるものではございません。
 したがいまして、本法における他の条とかあるいは他法令の規定に抵触しない限りは、改正法第二条第二項の規定によりまして、その民間の改良事業者の種雄牛造成などの活動の自由が妨げられるといったものではございません。

○紙智子君 協力しなければならないというふうにあるものですから、拘束されるんじゃないかという不安もあったので、今確認をしました。
 規模が小さくても、個人でも自由な取組によって質の良い種雄牛の造成につながるということもあるわけですから、不正流通しないように協力するのは当然としながらも、この民間の家畜改良、農家の増殖活動が規制されないように改めて申し上げておきたいと思います。
 そこでなんですけど、小規模なこの人工授精師をどう応援するかというふうに思うと、年間数千頭授精する家畜人工授精師や家畜関係者もいますけれども、小規模でも情熱を持って農家の皆さんを支えて、年間数十頭ぐらいの家畜人工授精を行っている授精師も存在しています。こうした人工授精師も県の許可を取って業を行っているわけです。
 今回の改正で家畜人工授精所を開設することになると、申請とか手数料とか事務量が大きく増えちゃうとか、こういうことはないのでしょうか。

○政府参考人(農林水産省生産局長 水田正和君) お答えいたします。
 今回、法改正をするということでございまして、その家畜人工授精所以外で保管された精液等の譲渡禁止を明文化いたします。
 精液などをほかの畜産経営に譲渡している方は、適正にこの譲渡を行うためには、家畜人工授精所の開設許可申請、これ行っていただいて許可を取っていただくということになるわけでございます。したがいまして、その数が、家畜人工授精所の数が増えているという状況にもございます。
 これに伴いまして開設許可のための申請手数料や事務負担というものは一定程度生ずるということでございますけれども、これ、法の改正前も、この保管している精液等を譲渡する場合には家畜人工授精所の許可を取るよう運用で指導してきたところでございますし、また、これ、和牛につきましては日本の宝でございます。この遺伝資源の保護の重要性に鑑み、御理解、御協力をいただきたいと考えておるところでございます。

○紙智子君 一定掛かる、一定は必要になるということだと思うんですけど、検討会で、関係者の理解を得つつ過度な負担とならないように配慮するというふうに言っています。負担にならないように是非求めたいと思います。
 精液の流通管理をどうするかということが大事になるわけですけれども、現行法の第三条の二項で、家畜人工授精とは、先ほどちょっと紹介ありましたけど、雄から精液を採取し、処理し、及び雌に注入するというふうに定義しています。人工授精という行為は、採取、処理、注入ということなわけですよね。一方、改正案には保存という言葉が出てきます。家畜人工授精所以外の保存を禁止する、授精所でないと保存してはいけないとなっているわけです。そうすると、保存は、精液が流通する工程から考えると人工授精という行為の中にはありませんから、これ、どの段階をいうのか。人工授精師は人工授精所に保存だけ頼むのか。それでは手間も時間も、まあどの段階をいうのかですね、手間も時間も掛かるので分かりにくいという意見も出ています。保存とはどういう行為なのか。流通の中でいうと、どの段階を指して、誰が行うのか。新たな負担が増えない形で分かりやすく整理するように、これはちょっと要望だけしておきたいと思います。
 それと、次に家畜遺伝資源に係る不正競争の防止に関わる法律案についてお聞きします。
 今回の法改正は、日本人が和牛の精液や受精卵を中国に不正に持ち出そうとした事案を契機としたものです。それで、新聞報道で、先ほど来ありますけれども、過去に四回も、まあ五回という話もさっきありましたけど、中国に受精卵などを密輸していたことも判明したと。
 それで、現在、和牛の精液は海外に輸出できないことになっていますけれども、その理由は何でしょうか。

○政府参考人(農林水産省生産局長 水田正和君) お答えいたします。
 家畜の、動物の精液ですね、これを海外に輸出する場合には、家畜伝染病予防法におきまして、輸出前検査を受けた上で輸出検査証明書を添えて税関に輸出申告を行うことが義務付けられておりますが、牛の精液については二国間でその家畜の衛生条件というものが結ばれていません。そういう国がございませんので、輸出検査証明書を発行することができませんので事実上輸出できないということになっておるところでございます。

○紙智子君 手続上は、これ本当は輸出できることになっているんですよね、多分。しかし、家畜衛生条件で合意する国がないということで止まっているということだというふうに理解しているんですけれども。
 それで、いろいろ報道があるんですけれども、例えば群馬県の畜産農家の元に華僑やシンガポール人を名のる人から和牛の精液を販売してほしいと電話やメールが寄せられているけれども、断っていると。それから、数年前も熊本県の日本の赤牛の登録協会にも、アメリカの畜産会社から和牛の遺伝資源などを譲ってほしいというメールが届いたと。協会の担当者も危機感を募らせているわけですけれども、農水省はこういった外国関係者の動きを把握しているのか、また、どう対応しているんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 昨年の四月の日経新聞の記事でこれは出たわけでありまして、これ、新聞から知ったということ自体が私は問題だというふうに思っております。このような事案があれば、そのような申出をもらったところはすぐ県なりそういった身近な団体に報告をいただいて、そういった報告を生産者なりからもらった者はすぐ国に報告するようなシステムをすぐにつくるようにということで今進めさせていただいております。
 しかし、流出はしていないということで、カリフォルニアの農家から話が四、五年前あったということでありますけど、これも一応断ったということで、断ってくれたからよかったということでありますので、こういう話があった時点で我々はこういったことを把握する努力をしなきゃいけないというふうに思っております。
 やはり農家の方々が、これから先、畜産というものが日本の農業生産の柱となっていくためには、こういったものを出すことが結局自分たちにとって極めて不利益で、逸失利益を生んでしまうんだということの意識の啓蒙啓発というものをしっかりやらせていただくことも同時に進めていきたいというふうに思っております。

○紙智子君 実際上は家畜伝染予防法の中で止まっているということの中で、これ自身も不正な流通につながる可能性があるわけです。生産者に接触する怪しい事業者がいれば、農水省の地方局が業者と連絡を取るということです。これからも国外流出を防いで日本の和牛ブランドを守るべきという趣旨は、これ、多数の関係者が賛同していることだと思いますので、是非、不正な流通を防ぐように求めておきたいと思います。
 次に、家畜遺伝資源に係る不正競争防止に関する法律の定義の第二条、これは、「当該家畜遺伝資源生産事業者が契約その他農林水産省令で定める行為によりその使用する者の範囲又はその使用の目的に関する制限を明示したものをいう。」としています。この契約というのは、契約自由の原則の下で当事者の判断によって決定されるものであり、契約当事者間で合意される自主的なものだというふうに思っていますけれども、そういうことですよね。確認したいと思います。

○委員長(江島潔君) 残り僅かですので、簡潔にお願いします。

○政府参考人(農林水産省生産局長 水田正和君) 契約の一般原則を定める民法におきまして、「契約の当事者は、法令の制限内において、契約の内容を自由に決定することができる。」とされているところでございます。
 新法は、契約の内容を法令で制限するものではなく、第二条第一項で定義しているとおり、契約により使用する者の範囲や使用の目的の制限を明示した場合において契約の内容を保護できると、保護するということとしているものでございます。したがいまして、法令に違反しない限りは、家畜遺伝資源生産者と取引の相手方が合意すれば、使用者の範囲についても契約により自由に設定することができることになります。

○紙智子君 時間というふうになってしまって途中になるんですけれども、要するに、農水省が去年十一月から北海道や仙台や名古屋や熊本や五か所を回って県や獣医師やその関係者を集めて説明会を開いたときに、その契約書のひな形を出しているということなんですよね。
 留意点として、ひな形は拘束されるものでないとされていて、標準的な規定の例を示しただけだって書かれているんだけれども、そう言いつつも、第二条の国外利用及び目的外利用の禁止だとか第四条の第三者への譲渡の目標、その項目は入れてほしいというふうに言われたということなんですけど、こうなりますと、自由ですといいながら止めていることになるんじゃないかと、これ誤解を与えるんじゃないかと思いますけど、それだけ最後お聞きしたいと思います。

○委員長(江島潔君) 時間が過ぎていますので、簡潔にお願いします。

○政府参考人(農林水産省生産局長 水田正和君) 今回の新法におきまして、家畜遺伝資源不正競争の対象とするためには、この契約等で使用する者の範囲とか使用の目的とかを縛っておかなければいけないということでございますけれども、不正な海外流出を防止するという観点を考えますと、海外では使わないという契約を結んでいただくことが必要でございますし、それをまた第三者に譲渡した場合にも同じような契約を結んでいただくということ、ここは必須でございますので、こういった契約を結んでいただかないと幾らこの法律ができましても海外への不正流出が防止できないということになりますので、この点については、今回の場合は必須でやっていただきたいということでございます。

○紙智子君 今の答弁ですと、海外に流出はもうとにかくやらないと、それは必須ということで、その範囲においては抑えるというか押し付けるものじゃないということでいいんですよね。返事だけ、では。(発言する者あり)

○委員長(江島潔君) そのとおりだそうです。

○紙智子君 はい。
 じゃ、終わります。ありがとうございました。

○委員長(江島潔君) この際、委員の異動について御報告をいたします。
 本日、高野光二郎君が委員を辞任され、その補欠として加田裕之君が選任されました。

○委員長(江島潔君) 他に御発言もないようですから、両案に対する質疑は終局したものと認めます。
 これより両案について討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 まず、家畜改良増殖法の一部を改正する法律案について採決を行います。
 本案に賛成の方の起立を願います。

   〔賛成者起立〕

○委員長(江島潔君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 次に、家畜遺伝資源に係る不正競争の防止に関する法律案について採決を行います。
 本案に賛成の方の起立を願います。

   〔賛成者起立〕

○委員長(江島潔君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、徳永君から発言を求められておりますので、これを許します。徳永エリ君。

○徳永エリ君 私は、ただいま可決されました家畜改良増殖法の一部を改正する法律案及び家畜遺伝資源に係る不正競争の防止に関する法律案に対し、自由民主党・国民の声、立憲・国民.新緑風会・社民、公明党、日本維新の会及び日本共産党の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。

    家畜改良増殖法の一部を改正する法律案及び家畜遺伝資源に係る不正競争の防止に関する法律案に対する附帯決議(案)

  和牛を始めとする我が国の畜産物は世界的にも評価が高まっており、その安定的な生産のために必要となる家畜人工授精用精液・受精卵は長年にわたる改良の成果である付加価値の向上により知的財産としての価値を有し、我が国畜産業における競争力の源泉の一つとされている。これが不正に流通することのないよう、その管理保護を強化することは、我が国畜産の振興を図る上で極めて重要な課題である。
  よって、政府は、両法の施行に当たり、次の事項の実現に万全を期すべきである。
 一 国内における不正流通のリスクを低減するため、各地域での実情に応じた家畜人工授精用精液・受精卵の流通管理の仕組みを構築することが肝要である。そのため、国が適切な流通管理のための方針を示すなど主導的にその構築を推進すること。
 二 家畜人工授精用精液・受精卵の不正な海外持ち出し等の防止を徹底するため、畜産関係者はもとより、動物検疫所、税関、空海港管理組織、運輸業者、液体窒素の供給事業者等の協力・連携体制を構築・強化すること。
 三 家畜人工授精用精液・受精卵の流通管理において重要な役割を果たしている家畜人工授精師が不断に技術や知識を磨くための機会の確保に努めること。
 四 家畜人工授精用精液・受精卵の流通規制の強化等に当たっては、現場が混乱することのないよう、その周知徹底を図り、確実な実施を担保するとともに、現場の負担を極力軽減するよう十分配慮すること。
 五 家畜遺伝資源に係る不正競争の防止に係る新たな制度については、家畜遺伝資源の知的財産としての価値を強力に保護するため、その趣旨及び内容を幅広く関係者に周知し、不正競争の未然防止に努めること。
 六 和牛の遺伝的多様性を確保するためにも、国や県の施策によって、個人や民間における多様な種雄牛の造成が妨げられることがないようにすること。
 七 外国産WAGYUが国外で流通している実態を踏まえ、国内外の市場における我が国の和牛ブランドの確立・浸透の取組を一層強化すること。
 八 国内外における我が国畜産物の需要増に対応するため、中小規模の家族経営も含めた生産基盤の強化による増産への取組を支援すること。
 九 新型コロナウイルス感染症の影響により、和牛の需要が減少し、在庫が大幅に増加している状況を踏まえ、生産基盤を維持するとともに、生産・流通・消費が円滑に進むための措置を講ずること。
 十 我が国畜産振興に影響を及ぼすアフリカ豚熱の侵入脅威に対処するため、輸入禁止畜産物を所持した者の入国を阻止するための制度について早急に検討すること。
   右決議する。

 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

○委員長(江島潔君) ただいま徳永君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の起立を願います。

   〔賛成者起立〕

○委員長(江島潔君) 全会一致と認めます。よって、徳永君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。