<第201回国会 農林水産委員会 2020年4月7日>


◇新型コロナ 農林漁業の雇用対策・外国人技能実習生について/北海道におけるジャガイモシロシストセンチュウの影響と対策について

○農林水産に関する調査
(新型コロナウイルス感染症拡大時における食料安定供給に関する件)
(ジャガイモシロシストセンチュウ対策に関する件)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 新型コロナ感染拡大によって生まれている問題でありますけれども、農繁期を迎えて、技能実習生に頼っている農林漁業の現場は、働く人が不足して、雇用対策が緊急の課題になっています。私の事務所にも、これ相談が増えています。
 三月二十五日の予算委員会でこのことを大臣にお聞きしました。大臣は、現場で体験がないと作業に付いていけないというふうに言われましたよね。技能実習生は、数週間研修を経て、徐々に慣らしながら現場に入っていくということでありますから、大臣の言われるとおりなんだと思うんです。同時に、大臣は、JAの職員、家族、農業大学校の生徒の力を借りたいということも言われました。
 そこで、予定していた技能実習生の来日の状況ですとか今後の見通し、あるいはJAを始めとした支援の状況、今どうなっているかということを教えていただきたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 四月一日現在で、農業でいわゆる技能実習生、この見込みが欠けている部分が一千七百名、先ほど申し上げました。内訳は、中国が一千二百名、ベトナムが二百名、ミャンマーが百四十名、インドネシアが七十名、フィリピンが七十名ということでございます。
 そして、一か月の就労可能な延長措置をやりましたが、四月の三日に、就労可能な期間は三か月、今延伸はいたしております。本人がその就労を希望すればということでありますので、今就労している研修生が帰りたいと言えば帰ってしまうということもその裏側にはあるということでございます。
 JAさんも大変協力をしていただいていて、かなり、地域でどれだけの人数が足りなくていつの時期足りないかという聞き取りも含めて、現場に下ろして作業が進んでいるというふうに聞いております。まだ、その農業大学校とかそういう方面は、設置の主体者が都道府県であったりいたしますし教育にも関わることでもありますので、そこの部分は若干遅れが出てはおりますけれども、こちらの協力も得たいと思っております。
 それから、先ほどの質疑の中でも若干申し上げましたけれども、今回のコロナのことによって、例えば、私の地元ばかり言って恐縮ですが、高千穂の旅館に働いている方というのは、結構農家の奥さんだったりする可能性が極めて高いので、農業の実習経験というものも実は持っている方も、多数即戦力になれる方もおられるという話を観光協会の方からも伺っておりますので、そういった方のマッチングも、役場でやるのか観光協会でやるのかJAでやるのか、窓口は様々だと思いますが、農林水産省としても、十分にサポートをして、これから農繁期に入るこの時期に際して何とか補えるように努力をしていきたいというふうに考えております。

○紙智子君 北海道のある農協は百八十人来日の見通しがないというふうに言っているわけなんですけれども、群馬県でも、ある村では百七十人とか、別の産地では二百人とか、来日の見通しが立たないというふうに言っています。人手不足が深刻になりつつあると思います。
 そこで、JAや地域でこれ臨時に作業を手伝ってもらう場合の雇用契約というか、どういう形で働いてもらうのかと、これはどうなるんでしょうか。これ、政府参考人にお聞きします。

○政府参考人(農林水産省経営局長 横山紳君) 技能実習生の方の受入れが困難な場合に代わりの方を雇う、そういう場合に、じゃ、どういう雇用形態かと、こういう御質問だったかと思います。
 実際、雇用形態としては、まさにその地域地域の農業ですとか、あるいはそれぞれの農家の方の経営実態にも応じて決まってくるものだと思いますけれども、例えば、フルタイムなんだけれども短期で雇用するというようなことでございますとか、あるいはパートタイムということで複数の方を雇われるということですとか、それは様々な形があるのではないかと思います。
 いずれの場合でも、労働者を雇用する際には、使用者は、労働基準法に基づきまして労働者との労働契約の締結に際しまして契約期間、始業及び終業時間、賃金等の労働条件を明示する、こういったことが求められております。このほか、労働関係法規の遵守、これは当然必要になってまいります。

○紙智子君 レタスとかキャベツの収穫時期は、六月下旬が大体そういうふうになるんですけど、今農作業をしながらコミュニケーションを図って、六月頃にトップギアに上げていくというふうに言っているんですね。そういう関係つくっていくんだと、実習生の場合ですね。葉物の収穫というのは、人の手で丁寧にやらないと、これ傷つくので品質が落ちるんだと、作業はきついので慣れるのに時間が必要だということもお聞きしました。
 それで、予算委員会のときに、働く方が不足しているために規模を縮小せざるを得ない場合の経営支援策についてもお聞きしました。大臣は、縮小にならないように努力すると言われた上で、四月、五月になると営農が立ち行かないということもあるので、人間の手当てと無利子無担保の融資、セーフティーネット資金もあるけれども、窓口が大変なので短いスパンで支援策も検討しているというふうに言われました。
 それで、経営規模の縮小もだんだん現実味を帯びてきた課題になっていまして、関東のレタス、キャベツ産地のある農家は、この縮小の状況によっては二千万円から三千万円の被害になるというふうに言っているんですね。融資だけではこれ耐えられないというふうに言われていますが、どういう支援策を検討されているのでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 非常に悩んでおります。
 なかなか、しゃがんで包丁で切るという作業は、経験した者にしか分からないこれは苦労がありますので、切って、汚い、汚いというかちょっと汚れているところをちぎってやるような作業はなかなか大変ですし、箱に入れても、かなり水が多分に含まれていて重たいということもあって、負荷も大変大きい労働であるということも非常に問題になっていると思います。規模がでかければでかいほど、一気にでき上がりますので、その時期に収穫をしないと間に合わないということも承知をいたしております。
 ですから、先ほどから申し上げておりますように、何とかこれが短期で終わることをまず祈りますけれども、世界的にですよ、世界的に短期で終わることを祈りますし、国内のこの非常事態宣言も、一か月めどということでありますが、これができるだけ早く解除されることを目指して政府としてはまいりますけれども、その期間を何とか耐え抜く、まず目先のこと、直前にある課題についてどう切り抜けるかということを全力で考えたいと思います。
 今、群馬とか北海道の話を具体的にされましたので、ホクレンとか北海道農政局、それから関東農政局とか都道府県に対しても、それからその地域のJAに対しても、しっかり状況を把握していると思いますので、もう一回農林水産省に、どういう状況なのか、今、千七百人という数字を具体的に御答弁申し上げましたので、多いといえば多いですけれども、しかし、じゃ、どうにもならない人数かといえば、私はそうではないと思います。
 ですから、何とか、ここのことについては営農規模が縮小しないように果敢にトライをしたいと思いますし、セーフティーネット資金等については、この間答弁いたしましたのでもう重ねては申し上げませんけれども、そちらも活用していただきながら、今回の経済対策で、個人事業主であったり、それから法人登録をしている場合でも事業継続に対する支援はまた変わりますので、そういったメニューも御活用いただくということも考えていただければというふうに思っております。

○紙智子君 ちょっと今まで経験していないというか、そういう事態でもあると思うので、是非、固定資産税を減免するとか、あるいは税制を含めて、営農が継続できる、そういう支援についても検討するように求めたいと思います。
 次に、シロシストセンチュウの問題について質問します。
 シロシストセンチュウというのはジャガイモに寄生する線虫で、二〇一五年の八月に我が国で初めて確認されました。網走市で発生をして、昨年は斜里町、清里町でも確認をされました。
 侵入ルートについては解明されたんでしょうか。また、この遺伝子解析が行われましたので、結果について説明していただきたいと思います。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長  新井ゆたか君) 今お話がありましたとおり、昨年八月に、斜里町などでジャガイモのシロシストセンチュウが確認されたところでございます。
 これにつきまして遺伝子解析を行ったところ、二〇一五年、平成二十七年に網走市で確認されたものと同一の系統であるということ、それから、南米が起源で、現在欧州、米国等で発生しているものと遺伝的に近い関係にあるということが確認されたところでございます。
 ただし、シストは土壌中で長期間生育をするということでございますので、現時点におきましては、網走市と斜里町のどちらに先に潜入したのか、それから、どこの国からどのように侵入したのかということは不明ということでございます。

○紙智子君 なかなか感染ルートがいつも明らかにならないということなんだけれども、どの辺から来ているかというのは、何となくこういう状況ではあるんだけど、そこがいつも本当に気になるところなんですけど、やっぱりどう封じ込めるのかというのが重要だと思うんです。
 網走で、寄主植物というんですか、寄生するものだから芋だと思うんだけど、植物の作付けの禁止あるいは移動制限が行われてきましたけれども、これで成果は上がっているんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 新井ゆたか君) ジャガイモのシロシストセンチュウの確認がされました北海道の網走市、それから大空町におきまして、平成二十八年十月から緊急防除という形で実施をしております。
 今お話がありましたとおり、まず第一といたしまして、発生圃場におけるバレイショの植栽を禁止をするということ、それから、防除区域からのバレイショ等の移動制限をする、それから三番目といたしまして、本線虫の発生密度を減らす効果がある対抗植物、トマトの野生種ということでございますけれども、これを植栽する、それから、農薬による土壌消毒などを行うということでございます。これらにつきましては、国が定額、十分の十で補助をすることによりまして本線虫の駆除、蔓延防止を行ってきたところでございます。
 この結果でございますけれども、令和元年度までに駆除を実施した百六十三の圃場のうち九割以上の圃場、百四十八の圃場で本線虫が検出されない水準まで発生密度が低下するなど、高い防除効果が得られているというふうに承知しているところでございます。
 一方、令和元年度に実施した調査の結果によりますと、これまで本線虫が確認されていなかった五十三の圃場で本線虫が新たに確認をされまして、また、斜里町及び清里町でも新たに本線虫が確認をされたということでございます。
 このため、本年、緊急防除期間を令和八年三月まで六年間延長いたしまして、本線虫が残存した地域や昨年度新たに確認された地区におきまして、引き続き、北海道と連携をいたしながら防除対策を進めてまいりたいと考えております。

○紙智子君 有識者会議が行われていて、防除区域を分割することが可能かどうか検討するというのがあります。大字というくくりですね、大字というくくりを見直すということも言われているんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 新井ゆたか君) このシロシストセンチュウの緊急防除につきましては、防除対策の専門家や北海道庁、それから関係市町から成りますジャガイモシロシストセンチュウ対策検討会議というものを立ち上げまして、具体的な対策等を進めてきたところでございます。
 この線虫は、農機具に、線虫自体は動かないということでございますが、農機具に付いた土を介して蔓延するということでございますので、今までは、一般的に農機具の共用が行われているというふうにされております大字単位で防除区域の指定を行ってきたということでございます。
 一方、本年一月の第九回のこの対策検討会議におきましては、同じ大字でも地理的に隔たりがあり農機具が共用されていない事例があるということを踏まえまして、本線虫の発生状況、それから河川や防風林などの地理的な要因、農機具の共用の有無等の状況を踏まえまして、大字よりも小さい単位に防除区域を見直すことができるよう決定したところでございます。
 今後は、本線虫が確認された大字内の全ての圃場、千五百ぐらいになりますけれども、こちらの発生状況を調査した上で、大字よりも小さい単位で蔓延防止対策が実施できると認められる地区については、告示の改正を行いまして防除区域を見直すということにしているところでございます。

○紙智子君 ちょっと現場からも、大字の単位でやられると物すごく広いので非常に大変だという話も出されておりました。
 防除区域の見直しは、これは今は大字で、もっと細かくやれるということにもなるんですけれども、これは網走以外でも検討するということになるんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長  新井ゆたか君) そのとおりでございます。

○紙智子君 発生を封じ込めるということとともに、やっぱり現実的な対応が必要だというふうに思います。
 それから、シロシストセンチュウは、〇・六ミリほどの大きさで硬い殻に覆われている、乾燥や低温に強くて、最大で二十年程度は土の中に残るということですよね。土壌消毒でも根絶は難しいと言われています。撲滅するのには、現実的にはなかなかこれ難しいことではあると思うんですけれども、ジャガイモの抵抗品種というか新品種、その開発が必要になると思うんですが、現在の開発状況について教えていただきたいと思います。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長  新井ゆたか君) シロシストセンチュウの抵抗性品種といたしましては、フリアという品種が開発をされているところでございます。
 これにつきまして、これまで緊急防除を実施してきた網走地区におきましては、希望する農家が令和三年度からこの抵抗性品種の栽培ができるよう、現在、生産者団体におきましてこのフリアの増殖を行っているというふうに聞いております。
 さらに、令和元年度に新たに本線虫が確認された地区におきましても、令和四年度から順次この品種の栽培が開始できますように、種苗管理センターにおきまして更なる種バレイショの増殖を行っているということでございます。

○紙智子君 実用化の時期というのはどうなるんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 新井ゆたか君) お答え申し上げます。
 令和三年度から、網走地区におきましてはこのフリアの作付けが可能になるということでございます。

○紙智子君 ジャガイモの価格は、でん粉用にするでん原用のバレイショの価格というのが元々安いし、生食用で低く価格は安定した状況ではあると思うんです。とはいえ、これが作れなくなると農家にとっては大変大きな打撃になると思うんですね。
 それで、北海道にとっては、ジャガイモは輪作体系では欠かせない作物なんですよね。農家がやっぱり安心して営農できる支援対策、これも是非求めたいと思うんですけれども、これ、大臣にお聞きしたいと思いますが。ちょっと通告はしていなかったんだけど。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 農地の生産性を維持するという上で、輪作体系を維持するということはとても大事なことだと思います。
 このシストセンチュウについては、ずっと大変な御努力、闘いをしてきましたけれども、おっしゃったように、非常に厄介な、二十年も生き残るようなやつでありますのでなかなか撲滅は難しいということで、対抗性のあるものを令和三年から植え付けるということでありますけれども、その中でも、新しい対抗性の品種ができたとしても、やはり輪作体系の一環として、でん粉用は安いということであっても、これは重要な収入源でありますから、その体系の一環としてこれからも生産が維持できるように、農林水産省としても、しっかり目配りをしながら必要な対策をこれからも打っていきたいというふうに考えております。

○紙智子君 是非よろしくお願いしたいと思います。
 それで、今日緊急事態宣言が出されるということも報道されているんですけれども、やっぱりその際には国民全体に対しても丁寧なよく分かる説明をしないと、やっぱり混乱を来しても困るので、そこをお願いしたいことと、それから、やっぱり現場の困難な状況、これに本当に寄り添って、それにかみ合うような対応策を機敏に取っていく必要があるというふうに思いますので、そのことを最後にお願いをいたしまして、質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。