<第201回国会 農林水産委員会 2020年4月2日>


◇新型コロナによる一斉休校で、学校給食の納入業者へキャンセル分の支援策を文科省、農水省に確認した/食料・農業・農村基本計画 耕地面積・販売農家・基幹的農業従事者の減少に歯止めがかからない理由を問う/農地の集約化・構造政策の評価について/中小家族経営の所得の確保策について/輸出戦略について/国連の家族農業の10年について/輸出と食料自給率目標の関係について

○食料・農業・農村基本計画に関する件

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 初めに、新型コロナウイルスの感染症の対策についてお聞きします。
 全国の小中学校一斉休校に伴って学校給食が中止になったことで、食材を納入している納入業者、生産者の経営が直撃を受けたことから、文部科学省は支援制度をつくりました。学校臨時休業対策費補助金を使うかどうかということは、これ学校設置者の判断ということなので、食材の納入業者と行政区との間でこれ混乱が生まれています。自己破産申請の準備に入った業者もあるというふうに報じられております。
 それで、例えばある自治体では、三月分の食材で保存が利くものは四月に使用できるので、これは支援の対象外というふうに言っていると。しかし、年間通じて食材を計画的に納入している業者にとっては四月分が宙に浮いてしまうと。
 総理の政治判断で一斉休校したということですから、これキャンセル分は支援すべきではないかというふうに思います。文部科学省、お願いいたします。

○副大臣(文部科学副大臣 亀岡偉民君) ただいま質問があったように、今回の一斉臨時休業要請に伴う学校給食休止により関係者に生じる負担については、今お話にあった三月十日に決定された新型コロナウイルス感染症に関する緊急対策第二弾において、新たに学校臨時休業等対策費補助金を創設し、政府として対応して今おりますが、本事業においては業者への違約金等の支払も補助の対象としております。学校設置者におかれましては、事業者への違約金等の支払についても、関係事業者と十分協議を行うなど、関係者の理解と協力を得られるよう丁寧に対応いただきたいと考えております。
 文部科学省としては、違約金が補助の対象となっていることについては既に学校臨時休業対策費補助金に関するQアンドAにおいて周知しているところでありますが、学校給食の安定的な実施の観点からも、学校設置者に対し事業者との十分な協議を改めてしてくださいという周知徹底をして、お願いをしているところであります。これを徹底させていただいた上で、できることは文部科学省として全部やるということを決めておりますので、今対応させていただきます。

○紙智子君 つまり、キャンセルということになった事態に対しては支援の対象になるということだったと思います。
 それで、なかなかちょっと決まらなかったというのもあって、食材納入業者がどこまで補償されるのかということで学校設置者に何回も聞いたと。そうしたら、そんなに言うんだったらもう取引やめると言われたという人もいるということなんですね。
 それで、学校設置者の方も、なかなか、いつになるかということがはっきりしなかったということもあると思うんですけれども、この学校設置者と協議がうまくいかないときには、やはり設置者任せにせずに相談に乗って解決するべきではないかと思うんですけれども、もう一度いかがでしょうか。

○副大臣(文部科学副大臣 亀岡偉民君) 今委員のお話にあったように、なかなか、周知徹底をすべく我々も頑張っているんですが、ただ、設置者と、学校との、業者間との関係というのは詳しく分かりません。できる限り我々は周知徹底をする努力をしますが、万が一それがうまくいかない場合においては個別に文科省としてもしっかりと対応するということは決めておりますので、これは、何かあったときは設置者も含めて文科省に相談してくれということを言っておりますので、これは徹底してやっていきたいと思います。

○紙智子君 それで、この食材の納入業者と学校設置者との間でなぜ混乱が生まれたのかということで、ちょっと調べてみたんですけれども、文科省の通知が分かりにくいということがあったんだと思うんですね。つまり、文部科学省の補助金交付要領には目的が書かれているんですが、学校給食費返還等事業、その目的は名前のとおりですけれども、学校給食休止に係る学校給食費を保護者に対して返還等するための経費を支援する、この補助金で保護者の負担軽減等に資するというふうにあるんですね。つまり、納入した給食費を返還するということが書かれていて、この食材納入業者の減収を補償するということは書いていないわけなんですよ。
 保護者にこの給食費の返還をするというのは、これは当然のことだと思うんだけれども、納入業者の収入減少を補償する仕組みであることをやっぱり周知徹底するというのが大事だと思うんです。これがまず一つね。
 それから、もう一つなんですけど、これ、つい最近の話なんだけれども、東京のある区から、四月いっぱい給食を中止するという連絡が来たということなんですね。やっぱり、そうなってくると新たな対策が必要ではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(文部科学省大臣官房審議官 矢野和彦君) お答え申し上げます。
 委員から御指摘ございましたように、本事業の補助対象には、学校設置者がキャンセルせずに事業者から購入した食材に係る経費及びその処分に要した経費のほか、事業者に対して既に発注していた食材に係る違約金等が含まれます。
 文部科学省におきましては、事業者との契約主体であり本補助金の申請主体である学校設置者に対し、補助対象経費について必要な情報提供を行うとともに、関係事業者との十分な協議についても改めて周知する予定でございまして、あくまでも学校設置者に対する補助だということ。それと、四月以降につきましては今後検討させていただきたいと考えております。

○紙智子君 四月以降については今後検討ということなんですけど、やっぱりもうスピーディーにやらないと、それこそ自己破産を選択しようかというところが出ているわけですから、急いでいただきたいと。
 それから、同じように農水省にもお聞きします。この給食納入業者や生産者にも収入減少分は補償されるということが分かるように農水省としても周知すべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(農林水産省食料産業局長 塩川白良君) お答え申し上げます。
 農林水産省でも、この食材を納入する事業者や農業者が学校給食の休止に伴う支援を円滑に受けられますように、三月六日から地方農政局に新型コロナウイルス感染症に関する相談窓口を設置いたしまして、相談に一元的に対応しているところでございます。
 また、学校給食における食材の調達方法、実は実態は様々ございますことから、三月十一日、二十五日、三十一日に、食品関連団体あるいは農業団体を通じまして、事業の内容、それからその対象になる納入の具体的形態などに関するQアンドAを、これは文科省の方でお作りいただいたものをこちらの方のルートからもしっかり通知をしているところでございます。
 引き続き、影響を受けた方々が円滑支援が受けられるようにしっかり対応してまいりたいと思います。

○紙智子君 一斉休校にしたのは安倍総理の政治判断ですから、納入業者や生産者が被った被害は国が責任を持って補償すべきだと思います。
 同時に、四月からの学校再開に向けて既に契約が始まっているというのもあるし、一方、引き続き感染症が広がって休校せざるを得ない場合に対応できるように予算を含めた対策を求めておきたいと思います。
 さて、次に基本計画についてです。
 食料・農業・農村基本法についてお聞きしますが、食料・農業・農村基本計画を作り出してから二十年がたちました。耕地面積は、耕地及び作付面積統計によると、二〇〇〇年は四百八十三万ヘクタール、二〇一〇年度は四百五十九万ヘクタール、二〇一九年は約四百三十九万ヘクタールと減少を続けています。
 それから、農業構造動態調査によると、二〇〇〇年の販売農家は二百三十三万七千戸、二〇一〇年の段階で百三十三万戸、二〇一九年は百十一万戸と半減しています。基幹的な農業従事者も、二〇〇〇年は二百四十万人だったのが、二〇一〇年は二百五万人、二〇一九年は半分近く減って約百四十万人と。
 なぜこれ、減少に歯止めが掛からないのでしょうか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 横山紳君) お答え申し上げます。
 まず、耕地面積でございます。耕地面積自体、例えば令和元年と平成十一年、これ平成十一年、基本法が制定された年でございますが、これを比べますと約四十七万ヘクタール減少してございます。二十年間で四十七万ヘクタールということでございますが、これは荒廃農地の発生でありますとか、あるいは宅地への転用といったことによるものということでございます。
 また、委員から御指摘がございました販売農家数、これも二十年間で約百三十四万戸、基幹的農業従事者数は約九十三万人減少ということでございます。これにつきましては、そもそも我が国の農業構造といたしまして、昭和一桁世代の方々、これがかなり多数を占めるという農業構造になっておりましたけれども、この方々が高齢化されることに伴いましてリタイアをされていったということによるものというふうに考えているところでございます。

○紙智子君 今のお話しになったのは、現象面なんですよね。荒廃農地の増大とか、だんだん昭和一桁が多くて高齢化になっているというのは、現象はそうなんですよ。そうじゃない、現象じゃなくて、なぜ減ってきているのかというその理由の根本のところですね、それをどういうふうに考えているのか、お聞きしています。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 理由は様々あろうと思いますが、やはり私も田舎でございますけれども、やはり大学進学率はそう高くはない宮崎であっても、高校を出たら一度はやはり都会に出てみたいという人間がやっぱり大多数を占めるという時代が長く続きました。最近は随分地元で頑張ろうという人間がおりますけれども、都会への憧れというものは職業選択上の自由ということもあり、認めなければならない部分はあると思います。
 そして、その昭和一桁世代という話、今局長からもさせていただきましたけれども、どうも私の周辺、私の一世代の上の方々は、自分の息子たちには、おまえは百姓になるなと、こんなつらくてしんどい仕事をおまえにはさせられぬと言って農業従事を積極的に勧めなかったということもあります。そのことが悪いと言っていることではありませんけれども、それだけ農業というところはつらくて、きつくて、天候にも左右される厳しい産業であるという側面もあったと思います。それに沿って政策的にも我々一生懸命やってきたつもりでありますが、それを補うだけの効果を上げられなかったということも率直に認めなければならないというふうに思っております。

○紙智子君 若い人でもやっぱり離農する人がいるわけですよね。これから働き盛りという人でも離農する人がいると。それで、農業では生活できないということだとか、あるいは将来的に今の自由化路線で行ってしまったら見通しが立たないということから途中でやめてしまうということがあるわけで、私はやっぱり、現状があるわけで、それに対して政策を打って、それがどうだったのかという、見返りというか、そこのところの分析がなければいけないんだと思うんですよ。打った政策がどうだったのかということについては、もう率直に言って安倍政権の下でやられてこなかったんじゃないかというふうに言わざるを得ないんですね。
 例えば、担い手が減っても、担い手への農地の集積が進んで耕地面積が維持されていれば、これ構造再編、構造政策としてはまあ成功しているというふうに、政府としてはそういうふうに言うんだろうと思うんですけれども、現実は若干の耕地面積も減っているわけですよ。あっ、肝腎の耕地面積も減っていると。政府が目指した構造政策がこれ成功しているというふうに言えるんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 数字は極めて冷静なものでありますから、この四百四十万ヘクタールを切っているということ、それから荒廃農地も増えているということも、予想以上に増えているということはこの基本計画の中にも正直に書かせていただきました。ですから、このことについてうまくいっているということを強弁することはやはりできないんだろうと思いますが。
 しかし、その一方、農地の集積というものは地域の農業者が求めていることです。私の友人で極めて一生懸命農業をやっている人間がいるんですけれども、ちょっと前までは、江藤さん、私が一日朝五時から仕事をして、日が落ちるまで仕事をしますけれども、主に移動ですと、あっちの畑に行って、こっちの畑に行って、また向こうの畑に行って、もう半分以上は車のハンドルを持っている時間の方が長いんですよというお話を聞いたのがもう十数年前です。
 ですから、担い手でやる気のある人間に、分散錯圃をしているそういう農地の環境を修正して作業効率を上げてやるということは極めて重要な政策だったと思います。ですから、そういう担い手を、農地利用集積率はこの二〇%で、平成十年度の二五・一%から三十年度で五六・二%、三一%増えておりますので、その面においては成功した面も認めていただいていいのではないかと思っております。
 そして、一時大変疑問符が付いて私も憤慨しておったんですが、やはり地域では話合いがとても大切だと私は思っております。この人・農地プランというものをもう一回活発にワークさせていただいて、地域の話合いの下において、この農地については次の世代はどこどこの誰が引き継いでいくのだ、そして後継者がいなくても第三者承継がきちっとなされていくのだと、そういった話合いを通じて地域をこれから守っていく努力を重ねてまいりたいというふうに考えております。

○紙智子君 集約そのものは、必要なところは集約すると思うし、話合いが大事だという話もそのとおりだと思うんですよ。ただ、やっぱり政府として構造政策そのものがうまくいっていないから生産基盤の弱体化が進んできたんだと思うんです。
 それで、新たな食料・農業・農村基本計画では、農業分野において、経営規模の大小や中山間地といった条件にかかわらず、農業経営の底上げにつながる生産基盤の強化を図るとあります。この規模の大小にかかわらずと、それから、担い手としてそれも位置付けるというのは、これいいことだというふうに思うんですね。政府が目指した農業構造は中小・家族経営ではないんですよね、目指したのは。基本法が目指す望ましい農業構造というのは、効率的かつ安定的な農業経営を育成する、これは規模拡大する農業経営だと思うんですけれども。ところが、今回、中小・家族経営も大事だというふうに言っているわけです。
 なぜそういうふうに言い方を変えてきているのかということでいうと、やっぱり効率的、安定的な農業経営だけでは農業は維持できないんじゃないかと、生産基盤を強化できないから中小農家経営にもやっぱり頼ってやらなければいけないということになったのではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 先生のおっしゃるところに同意する部分もあるんですけれども、しかし、これから地域政策が大事だということで、人・農地プラン、それから地域の話合いが大事だということも先ほど申し上げさせていただきました。
 家族経営であっても、規模の小さい中小の農家であっても、効率的、安定的であるということはやはり私は求められていくんだろうと思います。小さくてもサンショウはぴりりと辛いというような、私の地元でも、ハウスを二つしか持っていないけれども、非常に作業効率も良くて生産性も高くて、すばらしい所得を上げている農家もあります。ですから、大きいから小さいからということではなくて、それぞれの地域に合った、土地の条件もありますし、様々な条件がありますので、それに合わせた政策を打っていくことが全体の底上げという言葉につながっているんだというふうに御理解をいただきたいと思います。
 ですから、その部分は、基本計画の四十二ページにしっかりと書かせていただいて、これから両方を並行する形で、産業政策と地域政策、並行してやらせていただければというふうに考えております。

○紙智子君 中小・家族経営を大事にするというのはいいことです、何回も言いますけど。じゃ、所得は確保できるのかというのが次に来る問題で、効率的、安定的な農業経営は、他産業従事者と遜色のない水準の生涯所得を確保し得る経営というように言っているんですけれども、じゃ、中小・家族経営の位置付け、所得というのは、どこにも、自分の近くで頑張っているのがいるというのはあるんですけれども、こういう中小の家族経営は本当にその遜色ないような所得というのは確保されるんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 様々な形態があると思います。先ほど申し上げましたように、中小でも高い収益性を上げる場合もあるでしょう。それで、これから先は、例えば農家の中には、主たる収入が農業ではない、サラリーマン収入が主たるものであって、一部農地、例えば茨城辺り、振興農業でいうとレンコンの栽培なんかを一部やりながら、サラリーマンでありながら地域のコミュニティーにも参加して農業の生産活動も引き続きやるというような形もあるんだろうと思います。
 私の宮崎なんかだと、山の方では特に、山をやりながら、高原野菜をやりながら、牛を育てながら、米も作りながら、時には高千穂の町に出て仲居さんのバイトをしたり、それから、男性、女性もですけれども、公共事業のバイトに出たり、いろんな複合収入によって地域の農家の経営というのが守られているというのが現状でありますので。
 そういった方々について、農業そのものだけでなかなか収入を確保し、生活を安定させるということは現実的には難しい側面あるかもしれませんけれども、しかし、その農業収入の率というものを何とか上げていきたいという努力を、これから特に条件不利の地域についてはやらせていただきたいという気持ちを込めてこのような基本計画にさせていただいたということでございます。

○紙智子君 中小・家族経営が大事だということ、これは言われていると思うんですけれども、やっぱり位置付けが本当にちゃんとなっているのかなというふうに思うわけですね。しかも、この農業生産基盤強化プログラムでは、海外で高まるニーズを捉え、輸出を更に拡大するとともに、こうした新しい需要にも対応できるよう、中山間地域や中小・家族経営も含め、幅広く生産基盤の強化を図るというふうになっていて、そういうふうに言われると、輸出戦略にも動員されることになるんじゃないのかなと思うわけですね。
 二〇一九年から、国連が決議した家族農業の十年というのが始まっているわけです。中小・家族経営が大事だというふうに言っているわけなんだけれども、この基本計画の中にはこの国連が呼びかけている中身の言葉も出てきていないということなんですよね。それはなぜなんでしょうか。

○農林水産大臣政務官(藤木眞也君) お答えをいたします。
 国連は二〇一七年に、二〇一九年から二〇二八年を家族農業の十年と定め、各国に家族農業に係る施策を実施することを奨励しており、我が国としてもその重要性を認識しているところでございます。日本の農業経営体の約九八%は家族経営であり、こうした方々が地域の農業生産や美しく活力ある農村を支えているのが実態であり、このため、規模の大小や生産条件の優劣にかかわらず、全体の底上げを図っていくことが極めて重要だと考えております。
 このため、今回の基本計画では、国連の家族農業の十年とは明記していないものの、その趣旨を踏まえつつ、家族経営など多様な経営体について新たな項目を立てるなど、しっかりと書き込んだところでございます。

○紙智子君 だから、どうして明記しないのかなというのが疑問なんですけど、国連決議は、家族農業十年に向けて五つの取組を提起したわけですよね。日本からも参加して賛成していると思うんだけれども、そのうちの一つとしては、全ての国家に対して家族農業に関する公共政策を策定し、改善し、そして実施すると、政府及び国際的な、また地域的な機構は、国連家族農業の十年の実施を積極的に支援するというようになっているんですね。
 だから、各国に対して計画作って進めなさいよということが言われていて、日本政府としても何をするのかということをやっぱり基本計画で示すというのは自然だと思うんですけど、どうですか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) もう閣議決定いたしましたので、ある程度御了解をいただかなきゃならぬと思いますが、四十二ページを読んでいただくと、明文化はされていないまでも、こういった趣旨は書き込んであるということは多分御理解をいただけるんだろうというふうに思います。
 先ほど、生産基盤強化プログラムの話で、輸出に巻き込まれていくようなお話を若干されましたけれども、私は、条件が不利なところであっても、輸出にかむとか参加するという話ではなくて、やはりこの五兆円の目標達成の過程においては、所得の向上の恩恵があってしかるべきだと思っております。
 三十一日に農水省で、スカイプを使って意見聴取をいたしました。次の補正予算の編成に向かって何を望むのかという意見聴取を九人の方からさせていただきましたけれども、やはり中山間地域では大変畜産というものの位置付けが日に日に高まっております、やはり一頭当たりの利益率が高いものが見込めるということもあってですね。ですから、生産基盤強化プログラムの中でもうたわれておった理念も生かした上で二十四万六千円という増頭対策も今回立てさせていただいてやっているわけでありますので、全体として、何度も申し上げて申し訳ないんですけれども、底上げということを今回の基本計画では目指しておりますが、誰かが後ろに取り残されるということではなくて、全体でみんなで前に出ていこうということを中心的な議題として上げさせていただきますので、御理解を賜れればというふうに思います。

○紙智子君 国連が家族農業年を決めたきっかけというのは、二〇〇七年のリーマン・ショックによる世界的な経済危機だったんですよね。貿易を自由化すれば貧困、飢餓問題は解決されるという考え方だったけれども、現実には逆に貧困、飢餓が更に深刻になってきていたと。気候変動を含めて、持続可能な社会を目指すSDGsというのはありますけれども、そこで、やっぱり近代化や大規模化を進めてきた国際機関も小規模家族経営をもっとやっぱり大事に見直す必要があるんだというふうにかじを切ったわけです。
 加えて、今、さっきも議論になりましたけれども、新型コロナウイルスの感染症で世界的な危機に直面しようとしているときに、食料はやっぱり自国の生産を基本にする、そのためにも家族経営の位置付けが必要なんだというふうに思うんですね。
 さて、食料・農業基本計画の方向性についてお聞きするんですが、私、三月十日の農林水産委員会で、日本の農業の基軸というのは、農業基本法の理念を示したプログラム、つまり食料・農業・農村基本計画でいくのか、それとも安倍政権が目指している規制改革推進会議の意向を酌んだプログラムなのか、どちらを基軸に進めるんですかと聞いたときに、大臣は、両方のいいところはしっかり取り入れてやらせていただきたいと言われたんですね。
 つまり、事実上、二つのこういうプログラムがあるということを認められたということなんだけれども、そうすると、カロリーベースの食料自給率がどうなったかというと、目標は現行と同じ四五%なんだけれども、輸出目標五兆円を組み込んだものになっているわけですよ。輸出五兆円は食料自給率でいえば三%に相当するんだという説明がありましたから、輸出を除くと実質的には四二%に下げることになるんじゃないのか。いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) そういう見方をされる向きもおられることは否定はいたしません。しかし、輸出される部分が潜在的な国内のカロリーベース、自給率に換算することができるということは御理解をいただきたいと思います。
 その上で、この部分が乗っかったんだから基礎的な部分を下げたのではないかという御指摘だと思いますけれども、決してそういうことではないと思っています。五兆円が達成されて、この三%という答弁を前回局長はいたしましたけれども、この三という数字も、機械的に計算した上では今のところそうなっておりますが、この三兆円のうちのどれだけのものが生産現場に還元されるのかということが一番問題になってくる大事なところだと思っています。
 これがしっかり生産現場に利益として還流されれば、農業の生産基盤は確実に強くなりますし、農業に関わる方々の所得も向上し、生産に対する意欲も上がっていくんだろうと思いますが、そうなれば、現在ある九万二千ヘクタールの荒廃農地、今すぐにでも農地に回復できる農地が存在しているわけでありますから、こういう環境にあれば、この荒れた農地をもう一回農地に復元しようという意欲も十分湧いてくるのではないかということも期待しております。
 ですから、決して、この五兆円の部分が乗っかって、それが三%というものであるから、食料自給率目標四二%というふうに実質的に下げたということには私は考えておりません。今までどおり、四五%という数字は国民の皆様方にまずは中間目標として達成すべき目標として掲げさせていただいたというふうに御理解いただければと思います。

○紙智子君 基本法の第二条で、国民に対する食料の需給及び貿易が不安定な要素を有していることに鑑み、国内の農業生産の増大を図ることを基本にすると。この基本法の位置付けが、私、変わってくるように思うんですよね。基本計画が規制改革推進会議の意向を酌んだ農業生産基盤強化プログラム、この考えを色濃くした計画に変わっていくんじゃないかという危惧があります。
 今回の基本計画は、自給率目標にしても、生産基盤を強化する担い手の位置付けにしても、基本法が目指した路線と、TPPなどのメガFTAが発効した下で安倍政権が目指す成長産業化、攻めの農政の路線のはざまで混迷した計画になっているんじゃないかということを私は感じます。
 大臣は、思いを込めて率直に自分の言葉で語られようとすること自体は私はいいと思うんだけれども、本当にそれをやろうと思うと、こういうはざまで揺れるんじゃなくて、ちゃんとやっぱり決別して進めるべきだというふうに思います。
 農業の位置付けが大事だけれども、私、各地回ると言われるんです、一体日本に農業は必要なのか必要でないのかと、はっきりしてくれと。そういう思いでいるということなんですよ。こういう思いに応えるためには、やっぱり命を支えるのは農業なんだということではっきりと語っていただきたいということを最後に申し上げて、答えいただいて、質問終わりたいと思います。

○委員長(江島潔君) 簡潔にお願いします。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 先ほど輸出を三兆円と言ったようですけど、五兆円の間違いでございますので、答弁、若干修正させていただきます。
 あなたがおっしゃるように、農業はなきゃいけないに決まっているわけであって、一度失ったものは、例えば農地なんていうのは、一度駐車場にしても、すぐにまた農地として復活できると勘違いしていらっしゃる国民が結構いらっしゃいます。農地は、三年余り放置をすると、農地として復活させるのに大変な手間が掛かると。ですから、継続的に農地を維持し、それが国民の安全保障につながり、農業に従事していらっしゃる方々は大変な国家的役割を果たしていらっしゃるんだということを強く、やはり広く国民に知っていただきたい。ですから、この国民の理解の醸成ということをこの基本法の中でも強調して書かせていただいたということでございます。

○紙智子君 時間になりましたので、攻めの農政ではなくて、やっぱり人と環境に優しい農政に変えていただきたいということを呼びかけまして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。