<第201回国会 農林水産委員会 2020年3月26日>


◇家畜保健衛生所の欠員が出ている事態について、実態を把握するよう求めた/家畜防疫員が行うワクチン接種について、防疫体制の強化を求めた/ワクチン接種の手数料は、各県ごとに差が出ないよう一律の支援を求めた/殺処分を受けた豚に対する手当金について、宮崎県での口蹄疫の時と同様に非課税にするよう求めた

○家畜伝染病予防法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○養豚農業振興法の一部を改正する法律案(衆議院提出)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 豚熱が二〇一八年の九月に発生して以降、一年半が過ぎました。一度これ過去に撲滅したはずの豚熱の発生が起こったということは、政府の水際対策の甘さにあったんではないかというふうに思うわけです。
 そこで、水際対策が強化されてきているわけなんですけれども、同時に、国内の防疫体制の強化、これ必要だと思います。家畜防疫員は今全国で何人いるんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 新井ゆたか君) 家畜防疫員は、家畜伝染病予防法第五十三条に基づきまして、当該法律に規定する事務に従事させるためということで、都道府県知事が任命をするということになっているところでございます。
 これにつきましては、毎年都道府県から定期報告を受けているところでございます。令和元年四月一日現在で、全国で約六千二百人ということで、近年増加傾向にあるということでございます。

○紙智子君 家畜保健所の獣医師、家畜防疫員ですかね、この充足率について説明をいただきたいと思います。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 新井ゆたか君) 家畜保健所の獣医師の充足率というお尋ねでございます。
 家畜保健所は、家畜保健所法に基づいて設置されている県の施設でございまして、家畜の伝染病の予防のほかに、繁殖障害の除去でありますとか人工授精の実施など、ほかの業務も行っているということでございます。
 それから、家畜伝染病予防法におきましては、都道府県知事はその事務の一部を家畜保健所長に委任することができるということで、いわゆる知事部局と家畜保健所の役割分担というのは県によってまちまちということでございます。したがいまして、都道府県によってこのように任務量が違うということですので、国から定員を示すということも行っておりませんし、獣医師の充足率を定期的に把握するということもしておりません。
 先ほど申し上げましたとおり、家伝法上の事務を行っていただきます原則として獣医である方々というのは家畜防疫員ということでございますので、これらにつきましては、数を把握した上で、適切に職務をこなしていただけるように常に連絡を取っているところでございます。

○紙智子君 ですから、充足率を聞くと、いろいろなことが言われていて、結局は把握できていないということなんですよね。
 今までに何度か、どうなんでしょうかということで、都道府県でやっているものをやっぱり国も把握して、それでちゃんと足りているのかどうかということはやる必要がないのかということを今まで何度か申し上げてきているんですけれども、昨日も、それまでに何度かやり取りしているんですけれども、結局、把握すらしていないということなんですね。それで、全体数はそう出てくるんですけれども、そういう充足しているのかどうかとなると出てこないと。
 衆議院で養豚農業振興法が可決をされました。立法提案者の方に今日おいでいただいているんですけれども、まずお聞きしたいんですが、第七条に、豚の伝染性疾病に対する検査その他の防疫に関する事務の実施体制の整備というのがあります。この規定を創設した理由についてお述べいただきたいと思います。

○衆議院議員(農林水産委員長代理 宮腰光寛君) 現下の豚熱、アフリカ豚熱の状況に対応するには、農場における飼養衛生管理の徹底を求める閣法の家畜伝染病予防法の改正案と併せて、養豚農家による飼養衛生管理の向上のための取組等を支援していく必要があるということで、衆議院で全会一致により養豚農業振興法の改正案がまとまったところであります。この改正案は、養豚農家に必要な支援を政治の責任で進める姿勢を示す上で重要なものであるというふうに考えております。
 お尋ねの点についてでありますが、豚熱の発生に伴い、都道府県の家畜保健衛生所や家畜防疫員の業務量が増大しておりまして、疾病発生時の防疫措置の実施に当たって、他県から家畜防疫員を派遣する、さらに、民間の獣医師を臨時に家畜防疫員として任命するなどの対応を取っているところと承知をいたしております。
 伝染性疾病の発生を予防し、速やかな防疫措置を行うには、検査体制のみならず、国及び地方公共団体の防疫事務の体制整備が重要であります。そこで、第七条に、豚の伝染性疾病に対する検査その他の防疫に関する事務の実施体制の整備を規定したところであります。

○紙智子君 要するに、防疫あるいは検査、そして行政側の体制をきちっと整備しないといけないという趣旨なんだと思います。
 そこで、改正案で、生産者は家畜の伝染性疾病を予防し、当該家畜に起因する家畜の伝染病の蔓延を防止することについて第一義的責任を有していることを自覚するように求めているわけですよね。生産者に第一義的な義務を負わせていると、一方では。ところが、家畜保健所の定数を満たしているのかいないのかということさえも把握していないということになると、これ本当に責任取れるのかということにもなるんですね。
 実は、北海道の家畜保健所で二十七名欠員が出ているというふうに聞いているんです。それで、農業共済組合も、事務費の負担が今減らされてきていて人数の確保が難しいと。共済なんかは、本当に獣医さんと連携しながらやらなきゃいけないということもあって、非常に難しくなっているということも言われているわけです。
 それで、改正案は、家畜の所有者とともに、国、都道府県、市町村の責務を明確化するというふうに言っているわけです。養豚農業振興法の中でもこの実施体制の整備を求めているわけです。家畜保健衛生所で欠員が出るような事態をそのままにしていいのかということについて、大臣に伺いたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) しっかり現場の業務が遂行できない状態は決して良いことではない、水際対策も含めて、家伝法に基づいてこれをやっていただくのはこの防疫員の方々、衛生所のこの防疫員の方々ですから、人数的に欠員が出るのは好ましくないと思います。
 しかし、どうも、私もこのことについて昨日いろいろ勉強もさせていただいたんですが、その欠員という定義がなかなか難しい。ですから、足りないですよというお話なのか、定員が定められていて、そこに対してきっちりとした人数が集まらないとか、予算上足りないから充足できないということがあるのか、ちょっとそれは調べてみたいとは思います。
 しかし、その共済組合の事務費の削減についてはずっと続いていることで、共済の方々からもそういう話聞いております。確かに、こういう状態になると、水際対策と国内でこの防疫員の方々と、両方これはまさにしっかりやらなきゃいけませんので、これ県職員の方々なので、国からああせいこうせいと、なかなか地方自治法の観点から難しい部分はありますが、まずは、北海道のどこでしたですかね……(発言する者あり)後でお伺いします。そこについては、どのような状況でそのような御報告になっているのか、聞かせていただきたいと思います。

○紙智子君 やっぱりちゃんと把握するべきだというふうに思うんですね。
 それで、獣医師の不足は、これワクチン接種にも影響を与えると思うんです。法定伝染病のワクチン接種は、民間の獣医師さんはできないですよね。それで、家畜保健所の獣医師に接種を依頼するときにも、これ対応できないということになる。体制が不足しているときはこれ困るわけで、これはどういうふうに対応されるんでしょうか。これ参考人に。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 新井ゆたか君) 現在、CSFで打っております予防的ワクチン、これにつきましては、法の六条に基づく接種ということでございまして、接種命令でございます。したがいまして、都道府県知事の公権力の行使として行うということ、それから、確実に接種をしていただくということで、都道府県の職員であります家畜防疫員が注射をするという規定になっているところでございます。
 これにつきましては、実際に接種する場合のワクチン接種につきましては、ワクチン接種プログラムを国が認める段階におきまして、その接種の体制につきましても確認をしているところでございます。
 具体的には、家畜防疫員の任命というのは、民間の獣医師でも任命できるということになっておりますので、今回の接種の中で、家畜保健所の家畜防疫員がなかなか接種に、全部ができないということであれば民間の獣医師を任命しているということでございます。実際に、今、二十一の県でワクチン接種を行っておりますが、十五の県におきましては民間の獣医師を家畜防疫員に任命するといった形で接種をしていただいているというふうに承知をしております。

○紙智子君 昨年、ワクチンの接種が始まったときに、これ、依頼してもすぐにワクチンが接種できなかったという事態もありました。ですから、防疫体制を強化していただきたいということを求めておきたいと思います。
 それから、ワクチンの接種費用についてお聞きするんですが、都道府県によって農家負担が異なっているんですけれども、それはなぜなのかと、高いところと低いところ、それぞれどういうふうになっているのかというのを教えていただきたいと思います。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 新井ゆたか君) 今回の予防的ワクチンの接種は、今申し上げました家畜伝染病予防法第六条ということで、自治事務で実施をしているということでございます。当然受益者負担が発生をするということで、その手数料につきましては、それぞれの都道府県が都道府県議会の承認を得まして手数料条例で定めて徴収をする、あるいは免除あるいは減免をしているというふうに承知しているところでございます。
 なお、CSFのワクチンの接種の費用につきましては、家伝法の第六十条に基づきまして、ワクチン代や資材費について県の購入費の二分の一を国が負担するということ、それから、都道府県の負担分の五分の四につきましては特別交付税を措置するということにしているところでございます。
 それから、各県、手数料条例、確かに大分幅がございます。恐らく、福井県が若干高いということでお話があるのかと思いますが、福井県は五百九十円ということでございますが、現時点におきましては、初回を含めて手数料は徴収をしないという形で運用しているというふうに聞いております。

○紙智子君 やっぱり県によって違うというのは、今の話で、国は二分の一出すんですけど、それぞれ県によって違いが出ているということなんですけれども。
 やっぱり養豚農業振興法の第七条、国、都道府県は、豚の伝染性疾病の発生を予防し、伝染性疾病が養豚農家の経営に及ぼす影響を緩和するために必要な施策を講じるとなっています。少なくとも、やはりこの法定伝染病のワクチンの接種料は都道府県で差が出ることのないように、やっぱり一律の支援をするように求めておきたいと思います。
 それから、特定家畜伝染病の防疫指針についてお聞きします。先ほど来いろいろ議論になっていますけれども、第三条の二に基本的な方針が明示されましたけれども、これはなぜでしょうか。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 新井ゆたか君) 今般の改正法案におきましては、家畜伝染病予防法の中に幾つかの指針あるいは基準といったものがございます。これらの全てにつきまして、内容でありますとか方向性を明確化するという形での改正をいたしました。したがいまして、それぞれの指針、基準などにおきましては改正事項を列記するということで対応しているところでございます。したがいまして、防疫指針におきましても、基本的な方向でありますとか幾つかの事項を明示をいたしたところでございます。

○紙智子君 第八条の二は、消毒設備の設置等の義務が今度は衛生管理区域内における消毒設備の設置等の義務というふうに、消毒設備から衛生管理区域内におけるというふうに変わるわけですけれども、これはどう変わるんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 新井ゆたか君) これにつきましては、畜舎とその敷地を衛生管理区域という形にしたところでございます。
 今回の改正におきましては、CSFの経験に基づきまして、畜舎だけではなく、その周辺もしっかり消毒していただかないとウイルスが侵入をするということですので、その敷地という形で明記をさせていただいたところでございます。

○紙智子君 それからもう一つ、家畜の所有者の責務が強化されているわけですけれども、第十二条の三、第十二条の三の二、第七十条が変わりますけれども、これについて御説明ください。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 新井ゆたか君) それぞれ、条文の順番でお答えをいたしたいと思います。
 まず、十二条の三につきましては、これまで飼養衛生管理基準に記載すべき事項が法律上明らかにされていなかったということでございまして、衛生管理区域への病原体の侵入の防止の方法や、衛生管理区域内における病原体による汚染の防止の方法等、記載すべき事項を列記し、明確化したというところでございます。
 それから、今回新設をいたしました第十二条の三の二につきましては、CSFの発生事例におきまして、家畜の所有者やその従業員におきましてなかなか知識が十分、あるいは理解が十分でなかったということで、飼養衛生管理状況がそういう状況があったということ、それから、我々としても最新の疫学的情報を迅速に農家に共有できなかったという反省を踏まえまして、各農場に飼養衛生管理者を選任することを義務付けたところでございます。
 最後に、七十条でございます。家畜伝染病予防法の第十二条の四による定期報告事項は、ふだんから飼養衛生管理基準の遵守に係る指導を担う重要な判断要素であるばかりでなく、伝染病の発生時には、投入される人員や資材の規模、いわゆる殺処分の防疫措置の基礎となるデータということでございます。しかしながら、今般の事例の中におきましては定期報告の内容が実態と乖離している事案があったということでございまして、これにつきましては、その過料を現行の十万円から三十万円以下に引き上げるということで、しっかりとした定期報告を促したいと考えております。

○紙智子君 家畜所有者に対する責任が相当これ強化をされるということだと思うんですね。
 それで、飼養衛生管理基準が強化されることに伴って、このウイルスの侵入を防止するために、畜舎の改修などの経費や設備投資に費用が掛かるわけです。それで、殺処分した養豚農家は、新たな豚を徐々に導入しつつ、同時にこの畜舎の改修が必要になるので、元の経営に戻すためには五年から十年掛かるということも言われているんですね。六十歳ぐらい過ぎると、先を見通して離農していったりする人もいると。若い人でも、借金をつくる前に辞めて、サラリーマンになる農家もいると。
 議員立法の提案者にここでお聞きするんですけれども、第七条に、豚の伝染性疾病の発生後の養豚農家の再建に関する支援その他必要な施策を講ずるとありますけれども、この設備投資の費用に悩む養豚農家に応えることができるんでしょうか。

○衆議院議員(農林水産委員長代理 石川香織君) 委員御指摘のとおり、伝染性疾病が発生した養豚農家が空舎期間を経て経営再開に至るまでには、防護柵や防鳥ネット、それから消毒機器の整備などの設備投資が必要となります。そこで、養豚農家の経営再建や飼養衛生管理の向上を後押しするためにこの第七条を設けたところでございます。
 また、伝染性疾病の発生によって経営の中断を余儀なくされた養豚農家が離農に追い込まれるようなことがないように、本改正を踏まえまして、国及び地方公共団体は、経営再開の意欲を持つ農家に寄り添った支援策を積極的に講じてほしいと考えております。

○紙智子君 後押しする規定ということで、設備投資が必要になる養豚農家への支援ということなんですね。
 それで、そういう趣旨なわけですけれども、もう一度政府参考人にお聞きしますけれども、具体的にはどのように行うのでしょうか。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 新井ゆたか君) 養豚農家の再建、それから飼養衛生管理を守っていただくというためには、ソフト面の日々の行動ということだけではなく、ハード面でもいろんな施設整備が必要だということは我々も認識しているところでございます。
 まず、今回、野生動物の侵入対策というのを重視をいたしました。これは、野生イノシシがやはり媒介をしているという状況を踏まえたものでございます。この野生動物の侵入防護柵につきましては、昨年の夏から既に手当てをしておりまして、現在、各地で、各県で施工が進んでおります。国からの助成は二分の一でございますが、地方自治体が上乗せ助成をした場合には、その五分の四につきまして特別の交付税をいわゆる特交措置するということで支援をしているところでございます。
 それに加えまして、消毒の義務を今回強化をするということでございます。それから、実際に洋服を着替えていただく、あるいは長靴を交換していただくということもお願いしているところでございます。このようなものに必要となります動力噴霧器でありますとか防鳥ネット、それから簡易更衣室といったものにつきましても二分の一、それから、地方公共団体が上乗せをした場合には五分の四という形で措置をしています。加えて、農家負担の軽減のため、低利の融資というのも用意しているところでございます。

○紙智子君 昨年イノシシに起因する豚熱が発生した早期出荷推進地域ってありますよね。そこで消毒のためのシャワーゲートの支援が全額行われたということなんですけれども、イノシシに起因しない地域はその支援はなかったというふうに聞いているんですが、なぜそういう違いが出たんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 新井ゆたか君) 早期出荷対策につきましては、野生イノシシのCSFの感染が確認された地域におきまして、農家の方々に一旦農場の豚を空にしていただく、いわゆる出荷できないものはレンダリングしていただくという大変な決断をしていただいた農家に対しまして、空舎期間を利用して必要な施設のいわゆる整備をしていただくという一連の対策として行ったものでございます。したがいまして、通常のものに比べますと、やはり助成はしっかりやっていこうということで組んだものでございます。
 野生イノシシの地域であるかそうでないかということではなく、今申し上げましたとおり、野生イノシシがいる地域、それから消毒を徹底するということに関しましては、今回、消費・安全の交付金におきまして、地域に区別なく、さっき申し上げました消毒ゲートでありますとか噴霧器でありますとか、そういったものについては助成をするということでございます。

○紙智子君 同じ豚熱で苦しむ農家で支援策に差が出てしまってはいけないと思うんですね。やっぱり行政への不信につながらないように対策をしていただきたい。これからは差別なくということでもありますので、よろしくお願いしたいと思います。
 それから、殺処分の家畜に対する手当金についてお聞きします。
 宮崎県で口蹄疫が起きたときは、これ、手当金は非課税措置になったんですよね。これはなぜ非課税にしたんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 新井ゆたか君) 宮崎県で口蹄疫が発生した際には、平成二十二年でございますが、同年の十月二十二日に成立した議員立法によりまして、手当金の交付により生じた所得に対する所得税等の免除が特別に措置されたと承知をしております。

○紙智子君 それはなぜなんですか。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 新井ゆたか君) これは議員立法でございまして、財政金融委員会で付託されたというふうに承知をしております。
 ここにおきます理由というのは、議員立法でございますのでなかなか承知をしておりませんが、地域における畜産業、その当時の提案の書類を見ますと、地域における経済への影響が非常に甚大だったということが議論されたというふうに当時の資料からは承知をしております。

○紙智子君 これ、私、殺処分して今やり直している方にお話聞いたんですね。
 それで、殺処分家畜に対する手当金というのは、六か月出荷すると平均で大体三万七千円から三万八千円ぐらいだと、手当金がですね。それで、手当金は、だから百頭いると約四百万円、それから、一千頭だと四千万円になるわけです。この手当金は経営の再建にほとんどもう消えちゃうんですね。経営が中断されて、再建を図るにしても、母豚を入れて、それでそこから子供の豚が生まれて、次の売上げが出るまでは一年半掛かると、その間の餌代は月に百万円単位で消えていくと、従業員の人件費も払わなきゃいけないと、それで、経営を開始するのと並行して、全部の豚舎と農場の周辺でこの飼養衛生管理基準に沿う設備投資もしなければならないと、だから、豚熱の発生前の経営に戻すためには、少なくとも五年とかもっと掛かるというふうに聞きました。それなのに手当金が課税対象になるということで、その税金を払うためにまた借金しなきゃいけないという状況だったというんですね。
 だから、手当金に掛かる税金を払うために借金するって、これおかしいと思いませんか。これ、大臣、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 手当金につきましては、基本的に殺処分の損失を補填するものということでありますから、利益は出ないということが基本的にあると思いますので。
 しかし、今委員の方から、その間の餌代であるとか種豚の導入であるとかその期間のランニングコスト、人件費等のこともお話ありましたので、この国からの補填した部分と、殺処分の補填した部分だけについて今は議論をされているということでありますから、そこまで丸めて話をすると、おっしゃることにかなり説得力が出るんだろうと思いますけれども、前回の家伝法の口蹄疫のときもそこまでは見ていない。
 そして、議法で、財政金融委員会で議決をされて議法で通って、法律を根拠法としてこれは課税されなかったということでありますから、今回それがされておりませんので、仮に利益が出るということであれば、あれば利益の部分については課税されるということになると思いますけど、基本的には利益は出ないんだろうというふうに承知をいたしております。

○紙智子君 いや、口蹄疫のときもやっぱり甚大な影響を与えると、あのときも次々と広がっていって殺処分をしたと、それで、もう地域全体が、経済が本当に破綻しかねないような大変な甚大なそういう影響が出るので、だから、当時、議員立法もありましたけれども、やったと思うんですよね。
 今回、じゃ、それと違うのかといったら、やっぱり今紹介したように、何か、補填するために出された手当金が所得とみなされるような形で課税されるというのは、実態からいってもやっぱり大変なことなんだという話なんですよ。
 それで、今のお話の中で、財政金融委員会で規定されたんだという話があるんだけれども、そうであれば、やっぱり実情に合わせてちゃんと考える必要があるわけで、そうしないために、私は、むしろ大臣に、農水大臣ですから、財務省に言っていただきたいんですね。働きかけていただきたいんですよ。実情をちゃんとやはり伝えて、利益出ていないわけですから、それに対して課税するというのはやっぱり考え直してほしいということで、もう一度、ちょっと財務省に言っていただきたいと思うんです。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 徴税につきましては、これまた法律に基づいて、国の根幹を成す部分でありますので、私が財務省にああせい、ああしてくれと言ったからといって、そうなるものでは基本的にはないと思います。
 しかし、心情はよく分かりますけれども、私が財務から、そういう要請をするということはなかなか難しいというふうに思います。

○紙智子君 やっぱり多くの方々がそういう苦しみ持ちながらそういう問題提起もしていただいているわけで、それに応えていかなきゃいけないと思うんですよ。今国の法律ではこうなっているからそれに合わせるんじゃなくて、実情に合わせて柔軟に変えていくというのが今求められているというふうに思うんですよ。
 それで、ちょっと改めて言いたいんですけれども、今、理由の中に、当時は、口蹄疫のときは要するに議員立法でやったんだという話があるものですから、是非、この手当金を非課税にするように、党派を超えて自民党の先生にも言いたいんですけれども、是非……(発言する者あり)ないないというふうに言わないでほしいんですけれども。やっぱりそれを超えて働きかけをやっていきたいということを改めて自民党の皆さんにも呼びかけて、質問を終わりたいと思います。