<第201回国会 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 2020年3月19日>


◇沖縄振興予算一括交付金の減額について/沖縄県が行った普天間飛行場の返還に伴う経済効果分析について大臣の認識を問う/北方隣接地域の交通インフラ、医療体制を守らなければ、振興にならないのではないかと質した/日ロ交渉について、安倍首相が北方領土問題の解決を棚上げした形で新たな条約を模索しているという地元紙の報道があったが、大臣に対して事実か確認した

○令和二年度一般会計予算(内閣提出、衆議院送付)、令和二年度特別会計予算(内閣提出、衆議院送付)、令和二年度政府関係機関予算(内閣提出、衆議院送付)について
 (内閣府所管(内閣本府(沖縄関係経費)、北方対策本部、沖縄総合事務局)及び沖縄振興開発金融公庫)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 衛藤大臣に伺います。
 沖縄振興予算の一括交付金というのは、沖縄の自立的な発展を促進するための自由度の高い交付金として国から県へ交付をされるものです。しかし、県が交付金を使い切れない不用額があるとして、二〇一五年から減額し続けてきました。不用額については県側も努力をして縮小してきたということなんですけれども、ところが、今年度の予算でまたしても減額をしたと。ハード、ソフト交付金ともに、七十九億という過去最高の減額になりました。なぜ減額したんでしょうか。

○国務大臣(内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策))衛藤晟一君) 今お話ございましたように、かつて一括交付金は不用額とかあるいは繰越金額の実態ということがありました。そういうことを見た上で、そして沖縄県のこれまでの事業計画における実績を踏まえて、継続事業費及びその新規事業費の過去の推移等も勘案して所要額を推計した結果、減額となったところでございます。
 沖縄全体の予算としては、やはり全体としては三千十億計上し、何としても沖縄振興を進めてまいりたいということで頑張っているところであります。

○紙智子君 総額は確保したと言うんだけれども、この一括交付金が減っているというのは本当に重大だというふうに思うんですね。
 それで、県では玉城デニー知事が、市町村共に強く要望していた一括交付金の増額が認められず、四年連続ですよ、大幅減で過去最低になったことは残念だと述べている。県の幹部は、七十九億の減額は痛い、ただでさえ連続の減額で、市町村事業の進捗に影響が出ているというふうに述べているわけなんですけれども。
 その一方で、沖縄振興特定事業推進費、これソフト交付金を補完するということで、県を飛び越えて国に要望の上がった市町村に直接交付される仕組みとして二〇一九年度予算から突如新設されたんですね。前年度比で二十五億円増の五十五億円の計上だと。県民始め地元紙では、これ、沖縄振興予算について、自由度のある一括交付金を減額をし特定事業推進費を増やすことは、県の裁量を狭め、国の権限がより一層強まった予算じゃないかと指摘をしているんです。県の自主性を確保すべきだと書いています。一括交付金というのは、沖縄県全体のやはり振興と自立性を大きく発揮するためには必要不可欠だと。
 ソフト交付金を補完するということであれば、私は、これ一括交付金の増額をやって、その中で賄えばいいんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策))衛藤晟一君) ずっと継続して事業をやってきたわけであります。そして、継続事業もあれば新規事業もあります。そういうもの全体を見回しながら、この財源については検討してきたわけでございます。
 そういう中で、市町村における多様な地域課題や政策課題等について機動的に対応するための財源だと思っています。私ども、沖縄にも何度も訪問しましたし、また、沖縄の各市町村の方からも、県の方からもいろんな御意見をお聞かせいただいておりますので、その中で私どもとしてはこういう判断をしたところでございます。

○紙智子君 いろいろ市町村から上がってくる要望に応えるのは別にいいと思いますよ。だけど、この県の裁量で活用できる一括交付金、これは減らしておいて、国の裁量で決められる特定事業推進費、これを増やせば、県と市町村の間あるいは市町村間の間に分断を持ち込むことになりはしないかという心配が拭えないんですね。市町村が求める要望があれば、それをやっぱり県がちゃんと生かせるように交付金の在り方そのものを見直していくと、仕組みを再考すべきだというふうに申し上げておきたいと思います。
 次に、沖縄の振興についてなんですけれども、衛藤大臣は、大臣就任のときのマスコミへのインタビューで、沖縄振興と基地負担軽減についての私の思いは玉城デニー知事と共通していると、米軍普天間飛行場の移設問題と沖縄振興予算をリンクさせるつもりはない、所信の挨拶のときにも、普天間飛行場について一日も早い全面返還の実現に政府として取り組むこととし、駐留軍用地の跡地利用は今後の沖縄振興の観点からも極めて重要な課題ですというふうに言われていますよね。これは私も同感です。多くの日本の国民の皆さんがそれを願っていると思うんですよ。
 そこで、大臣にお聞きするんですけれども、二〇一五年の一月、沖縄県が沖縄防衛局の統計などを基にして、普天間飛行場の返還される前と後で経済効果を出しているわけですよね。直接の経済効果でいうと、普天間飛行場の返還前百二十億円なのが、返還されれば三千八百六十六億円の三十二倍になると。誘発雇用人数は、返還前だと千七十四人から、返還後についていえば三万四千九十三人ということで、これまた三十二倍になるというのを出しているわけなんですけれども、こういう指標というのは、沖縄の県民の皆さんにとっては将来に希望の持てる指数だと思うんですね。
 大臣は、こういう今沖縄が出していることについてどのように思われるでしょうか。

○国務大臣(内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策))衛藤晟一君) 大臣に就任をさせていただきまして以来、まさに、この普天間のみならず今回の返還に係るところ、言わば嘉手納以南の五百ヘクタール、そして普天間の五百ヘクタール、計一千ヘクタールに及ぶ地域は、これ、跡地利用についてどういう具合にやっていくかというのは、これだけ大きな経済効果もありますし、まさに将来の沖縄の姿を決める大変重要なものだという具合に思っております。
 ですから、一刻も早い返還を果たして、そして沖縄振興に、自立的にやっていけるように頑張っていきたいというふうに思っております。
 とりわけ、沖縄はまだ県民所得は全国最下位というところであります。そういう意味で、今、私どもはこの県民生活の向上のために相当力を入れていかなければいけないという具合に思っておりますので、それについて市町村からもいろんな御意見もお聞かせいただいていますので、できるだけ皆さん方の御要望に沿った形で、そういう意見を聞きながら判断をさせていただきたいというふうに思っているところでございます。

○紙智子君 沖縄県がやっている経済効果について、重要なことだというふうにお話をされました。
 それで、しかし、先月、衆議院で我が党の赤嶺衆議院議員が、政府の資料から、普天間飛行場の移設先である辺野古について、工期や工事の費用など新たな見積りが出されたと。工期を当初の五年から二倍近い九年三か月、米軍への提供手続を含めた全体では十二年も延長するということを明らかにしました。これでは幾ら一刻も早く返還しようというふうに言っても、現実的にはこれ難しいんじゃないかと。
 大臣も重要で進めたいというふうに言っているわけだけれども、この基地返還後の経済効果の発揮もずっと先に遠のいてしまうし、いつできるのかということになると思うんですよ。本当に沖縄を振興させるということにするためには、まずはやはりこの普天間基地返還と辺野古の移設については切り離すべきだというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策))衛藤晟一君) 私どもは、私どもの役所だけじゃなくて、政府を挙げて、沖縄の基地負担の軽減に全力で取り組んでいくという考えでございます。そういう意味で、一刻も早いこの基地負担の軽減を、もっと、少しでも実現したいというふうに思っております。
 普天間飛行場につきましては、その危険性の除去を図ることは極めて重要な課題であるという認識を持っております。よく世界で一番危険な基地だという話がございまして、そのことは政府の大きな責任だという具合に思っておりますので、それを、一刻も早い危険性の除去をやって、そして、かつ将来の沖縄にとって極めて有用なこの跡地利用について、できるだけスピードを上げて進めていかなければいけないと思っています。また、それが私どもにとりましては政府の大きな使命だという具合に思っている次第でございます。

○紙智子君 強調して言われたんだけれども、大臣はやっぱり振興に責任を持つ大臣ですよ。ですから、そういっても、実際、現実には相反することがやられている中で、普天間飛行場のこの存在自体が大きな経済発展の弊害になっているというふうに思うんですね。保育所や学校への落下物による命の危険というのは放置されたままですよ。固定化は絶対に避けなければならないというふうに政府は繰り返し言うけれども、その言葉と実態、懸け離れたものになっていると言わざるを得ないんですね。
 普天間飛行場の返還が延びるほどに、これ、沖縄県の振興が、妨げになっていると。活断層の上に軟弱地盤のある辺野古の代替施設は、これもう徹底調査を行って、返還のための代替施設完成の条件というのは切り離して、やっぱり直ちに普天間飛行場については返還するべきだということを強く申し上げておきたいし、是非、大臣は閣僚の中でそのことをしっかりと言っていただきたいというふうに思っております。
 次の質問に入ります。北方問題です。
 先月の二月の十七、十八の二日間、根室市を始め北方隣接地域の実情を調査する委員派遣に私も参加をしてまいりました。今の日ロ外交について、千島連盟の元島民、居住者の皆さんは、外交交渉が停滞していることは大変残念だと。つまり、交渉は停滞しているというふうに言われているんですね。
 この間、ロシア二百海里内のサケ・マス流し網漁が禁止されて以降、有効な外交交渉が打てずに根室市の水産業のサケ・マス、サンマ、タラ、これまででいえば三本柱ということでやってきたんだけれども、資源が減って、支えとしてきたサンマ漁までが今歴史的な不漁であるということから、地域経済が深刻になっているわけです。大地みらい信用金庫がありますけれども、やや低調とこの景況感を判断をしているわけです。昨年十二月にも、今年一月にも、ロシアのこの拿捕というか連行ですね、連れていかれるということがありました。
 一方、JR北海道が公表した維持困難な区間に根室市につながる花咲線が挙げられていますし、厚生労働省が公表した公的病院の再編統合病院には、国民健康保険標津病院と町立別海病院が入っているわけですよ。これから根室を始め、この北方隣接地域はどうなるんだろうと、こういう不安が広がっています。交通インフラ、命を支える医療を守らなければ北方隣接地域の振興にならないと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策))衛藤晟一君) この北方領土問題解決のためには、北方領土返還運動の拠点でもございます北方領土隣接地域において、安定した地域経済が構築される、そして自立的に発展していくための環境を整備することが重要だというふうに思っております。このため、北特法において、隣接地域振興計画の策定やその実施のための特別の助成とか、あるいは北方領土隣接地域の振興等基金などの支援策が設けられております。
 そういう中で、一昨年の通常国会においては、同基金の運用益が減少する中で基金の取崩しを可能とするということで、昨年の四月一日に北特法の改正が行われたところでございますので、そういう中で、私どもは、今年度は漁場の造成とか、あるいは後継者育成事業等の地元の要望を踏まえた事業等にしっかりと活用されているものと承知をいたしております。
 来年度につきましても、現在、事業計画について北海道と協議を行っているところでございまして、隣接地域の振興が図られるよう、引き続き、改正北特法の趣旨を踏まえながら、関係機関とも連携を図りながら取り組んでまいりたいというふうに思っております。

○紙智子君 ちょっと、時間になりましたので、最後、一つだけお聞きします。
 日ロ交渉についてですけれども、北海道新聞が二月十四日付けで、安倍首相が北方領土問題の解決を棚上げした形で新たな条約を模索しているという観測があると報道があったんですけれども、これ、ちょっとびっくりして見ていたんですけれども、大臣、これ事実でしょうか。

○国務大臣(内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策))衛藤晟一君) 事実でないんじゃないかというように思っておりますが。
 政府といたしましては、いずれにいたしましても、北方領土問題を解決して平和条約を締結するという基本方針の下に、この外交交渉に粘り強く取り組んでいるところでございます。そういうことで、引き続き、私どもとしても、交流事業や、あるいは国民の世論の啓発とか、そういうことについて、あるいは島民の、元島民の方々の援護等に積極的に取り組んでこの外交交渉をしっかりと後押ししてまいる、そんな体制をつくってまいりたいと思っております。

○紙智子君 こういう報道一つ一つが非常に大きな波紋を広げるし、不安にさせているわけですよね。
 今年、北方領土返還要求大会で安倍首相の挨拶がちょっと変わったなという印象をみんな持っているわけです。昨年は、領土問題を解決して平和条約を締結するという順位があったんだけれども……

○委員長(小西洋之君) 時間が来ております。

○紙智子君 今年は、北方領土問題の解決と平和条約の締結の実現というふうに並列しているということ自体も、元島民の皆さんを含めて、もう何というか、変わってきているんじゃないかというふうに不安になるわけで、やっぱりこういうことを含めてしっかりと、島民の皆さんに対してもそうだし、国民に対して説明をするし、不安が広がらないようにするべきだということを申し上げて、質問を終わります。