<第201回国会 農林水産委員会 2020年3月10日>


◇新型コロナ対策 学校の全国一斉休校の要請に対する学校給食関係事業者への影響と支援について/食料・農業・農村基本計画について/食料自給率について/農林水産業・地域の活力創造プランについて/宮城県丸森町の台風19号被害について

○農林水産に関する調査(2020年度の農林水産行政の基本施策に関する件)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 私からも、新型コロナウイルスについてまずお聞きします。
 最初に、亡くなられた方々に御冥福をお祈りすると同時に、今まさに治療に当たられている方に対してもお見舞いを申し上げておきたいと思います。
 安倍首相が、新型コロナウイルスの感染症対策として、科学的根拠を示すことなく首相の判断で全国一斉休校を要請したことで混乱が生まれております。二月二十五日の政府対策本部の基本方針では、自治体の判断で休校するとなっていました。また、方針の修正が必要な場合には、専門家会議の議論を踏まえて方針を更新するとなっていました。対策本部が決めたルールを無視して、首相の判断で一斉休校を要請したわけです。
 三月二日から一斉休校すればどういう分野に影響出るのかということで、総理が政治判断する前に農水大臣は相談を受けたのかなということを最初お聞きしようと思っていたんですが、午前中のやり取りを聞きますと、大臣は二月二十七日の対策本部でそれを初めて聞いたということであったわけです。
 それで、安倍総理は、判断に時間を掛けるいとまがなかったというふうに言っているんですね。なかったと言っているわけです。首相は、二十五日に政府対策本部が決めたルールに沿わず、無視してというか、一斉休校を打ち出したと。関係省庁で調整しないままこれ休校すれば混乱が生まれる可能性があったわけで、二月二十七日に大臣はそこに参加して、そのときに何も言わなかったんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 総理の発言を受けて、私は特に発言はいたしませんでした。

○紙智子君 やっぱり閣僚のそういう対策本部の会議の場ですから、本来だったら、これ大変じゃないかなというふうに思ったときにはやっぱり物を言わなくちゃいけないんではないかと思うんですね。やっぱり国民にどういう影響が出るかということを考えるならばそういう態度に取るべきだったのではないかと、そういうことが誰からも出なかったということが、私は、ちょっと内閣に対して今の政権の危うさということを感じるわけです。
 それで、学校の一斉休校は総理の政治判断で行われました。安倍首相は、我が党の小池晃議員の質問に対して、政治の場において私が判断した以上、責任を持って対応していきたいというように答えています。国民生活や農林漁業への影響というのは、そういう意味では全面的に責任を取るということでよろしいんですよね。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 私は、そのときに総理の発言を聞いておりました。せんだっての対策会議においても、これまでの前例にこだわることなく、しっかりとした対策を組んでくれというふうに総理から言われておりますので、責任を持った対応をさせていただきたいと思っております。

○紙智子君 農林水産分野では、休校によって大きな影響を受けるのは学校給食ということなんですけれども、先日、農民運動全国連合会などが大臣に要請に来られました。その際に、大臣に小中学校による給食の材料キャンセル被害状況についてという一覧表をお渡ししたと思います。私も見せてもらったわけですよね。そこには、学校側のキャンセル対応、それからキャンセルされた対象農産物、それから想定される被害額、そして補償などに分類してまとめられております。補償がない、無補償と書かれている生産者の組織は、分かっているだけでも、そこにある中でも九割だったわけですね。
 地産地消として学校給食に依存している生産者、給食事業者も多いんだと思います。被害を受けている生産者団体や給食事業者をやっぱりこれ漏れなく把握するということが大事だと思うんですけど、この把握する対策というのはどうなっているでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) これが一番私も頭を痛めているところでございまして、先日、先生とお越しいただいたときには、この一部は見せていただきました。
 例えば、給食センターにしても学校で直接作るところにしても、地域の八百屋さんとか農家の方が、特別契約をしなくても、毎年毎年この時期はあなたのところからこれだけの量を納入してもらうから今年もよろしく頼むよというような形も、ざっくりとした形ではあると思うんですよ。それとは逆に、年間契約という形で書面に残して、これだけの単価でこれだけの量を入れていただきますという、客観的に評価できるようなものをお持ちな形態もあると思うんですよ。しかし、それとこれを果たして区別していいものかどうかというのは、大変、私は、農林水産的な観点でこれを判断させていただこうと思っております。
 ですから、まずは、各農政局の方と一日置きぐらいには必ず会議を開いておりますが、それぞれの地区でも、給食の形態も多様だし、子供たちへの提供の形、それから食材の調達の形も多様であるので、どこでどれだけの形があるのか、まずそれをしっかり把握することから始めなければならない。それに余り時間を掛けていると、先生がおっしゃったように、じゃ、いつまでにこれをちゃんと見てくれるんだと、いつまで待っても、やるやる言うばかりで具体的な話が全く出てこないぞというのでもまずいだろうと思いますので、正直焦る気持ちは私の中でも相当あるんですけれども、しかし、見落としたり手落ちがあってもまたまずいということでもありますので、しっかりやりながらしっかり急がせていただきたいというふうに思っております。

○紙智子君 ちゃんと把握するということがとても大事、難しいんですけど大事だというように思います。
 ちょっと具体的に何点か聞きます。
 野菜を扱っている生産組織、生産者の組織は学校以外に販売先がないと、販売先を例えば紹介するとかマッチングだとか、そういうことなんかも含めて必要になるんじゃないかと思うんですけれども、この点どうでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) おっしゃるとおり、必要だと思っております。
 それぞれマッチングについて、本省ではなかなか難しいですけれども、我々は食品関係団体とも、所管でありますのでネットワークがございますから、そういったところも含めてマッチングの努力もさせていただきたいと思います。
 重ねて、給食に回っている野菜の割合は、この時期は全体の生産量の大体一%から二%に当たるというふうに言われております。それが学校給食に行かずに市場に回ることによって価格下落が起こることがあってはまずいと思いますので、幅広に周りを見ていかなければならないだろうというふうに考えております。

○紙智子君 それからもう一つ、お米なんですけれども、お米を扱っている生産者団体は、これは玄米で販売する方法もあるんだけれども、精米よりも安いので差額が減収になってしまうと。販売先を探す手間も掛かり、これ減収にもなるということで、これらに対しての対策も要請があったと思うんですけれども、これはいかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) この間御提言をいただいて、相当な量でありました。今、数量は、こちらのいただいた紙にありますけれども申し上げませんが。
 確かに、玄米と精米とでは価格差があるということで、なるほどということでありましたけれども、これについては、今、検討しています。答えが出ておりません。私は正直が取り柄でありますので正直に、これについてどのような扱いにしたらいいか。
 学校給食に関しましては、全てが農林で背負えればいいんですけれども、納入済みのものについては給食センターのものじゃないですか。そうなりますと、これは文部科学省の方で見るという形になりますので、その線引きのところが非常になかなかややこしくて、我々としては、なるべく押し付けるなんということは決してせず、前に前に農林省としては出て、我々のテリトリーを広げていこうとは思っておりますけれども、この精米と玄米の差についてどのような取扱いにするかについては、大変申し訳ないんですが、今鋭意検討中だというところでございます。

○紙智子君 今検討中ということなんですけれども、学校給食がストップしたということ自体は、やっぱり関係省庁との調整も、周知することの時間も取らずに一気に総理の政治判断でやったということでもありますから、自然災害とは違って、やっぱり政権がきちっと責任を持つように強く求めておきたいというふうに思います。
 次に、基本計画の問題について質問します。
 食料・農業・農村基本計画なんですけれども、これ、基本計画は、食料・農業・農村基本計画の理念を実行するために食料自給率の目標を定めて施策を具体化するプログラムなんだと思うんです。
 一九九八年の食料・農業・農村基本問題調査会、ここで答申を出していて、そこには、供給熱量ベースの食料自給率は、国内で生産される食料が国内消費をどの程度充足しているかを示す指標であり、国民の食生活が国産の食料でどの程度賄われているのか、国内農業生産を基本とした食料の安定供給がどの程度確保されているかを検証する上で分かりやすい指標であると、分かりやすい指標なんだというふうに言って、食料政策の方向や内容を明示するものとして意義があるんだというふうに当時指摘をしているんですよね。
 そして、その基本法の第二条のところで、国民に対する食料の需給及び貿易が不安定な要素を有していることに鑑み、国内の農業生産の増大を図ることを基本と定めているわけです。第十五条のところでは、食料・農業・農村基本計画は基本理念を実現するための施策の基本方向であるというふうにして、この食料自給率の目標はその向上を図るための目標なんだと、向上を図るための目標なんだと位置付けています。
 当時、ガット・ウルグアイ・ラウンドがあって、農業合意が決着をした後でWTO体制になっているわけですけれども、その下でこの農業基本法が改正された中で、食料政策は、食料自給率の低下に対して生産者、消費者が不安を抱いていることから、国内農業生産の拡大を図ることを基本とすることが定められたと。今回、この方向に沿った基本計画の改定ということになるのでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) なかなか正確な答弁をするのは難しいと思いますけれども。
 先生のおっしゃるように、衆議院の方でも大分議論になったんですが、カロリーベースとか生産額ベースとかいろんな指標があって分かりづらいんじゃないか、骨子を御覧になって御指摘をいただきました。自分としては、供給熱量ベース、これが国民に示す食料安全保障に直結する指標であって、これが大黒柱ですということを申し上げました。ですから、今回の基本計画の下においても、それがしっかり見えるような形での書き方、表示の仕方はしっかり守らせていただきたいと思っております。
 ガット・ウルグアイ・ラウンドのときの、WTOの下での基本計画、今度は、イレブンとかTAGとか、そういう要素が新たに加わって、国際環境も、この時代、九八年とはまた大きく変わってきておりますので、こういったものも基本計画の前書きの部分にしっかりと書き込んで、こういう国際情勢の、ちょっと文言までは、まだ最終文書ではありませんから申し上げられませんが、前書きのところにこのようなことについてもしっかりと触れさせていただいて、趣旨に沿ったものにさせていただくつもりでございます。

○紙智子君 衆議院の答弁で、カロリーベースの食料自給率が大黒柱だというようにおっしゃっているのは、私も見て知っております。
 それで、ちょっと聞いたのは、要するに、元々の基本計画、基本法ですね、基本計画のところでやっぱりその柱に据わっているのは、その当時でいえば、食料の政策は、食料自給率の低下に対して生産者、消費者が不安を抱いていると、で、国内農業生産の拡大を図ることを基本とするというふうになっていて、確かに、当時の議事録というか読んでみたんですけど、物すごくそのことが議論されているんですよね。
 やっぱりWTO協定によって、自由化ということの中で下がってきた。当時、それでも四〇%、四一%ぐらいだったと思うんですけど、それでも物すごい議論になっていて、こんなに下がってしまって大丈夫なのかという議論がされているわけですよ、四一%でも。そういう議論の上に立って、やっぱり国内農業生産の拡大を図ると、そこをちゃんと基本にすることが大事だよねということが据わっているものだったと思うんですね。だから、そういう線で今回も考えられるのかということをちょっと聞いた、趣旨としては。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 生産規模の拡大というのは、まず、農業でいえば耕作可能な面積、四百四十万ヘクタール弱でございますけれども、それを今後の基本計画の下で、将来像としてどれぐらいの面積を確保するのかということが一つ議論になると思います。
 それから、センサスの下でも、これから人口構造が大きく変わるにつれて就農人口の減少が予想されます。それに基づいて、意欲ある担い手への農地の集積ということも並行して進めているわけでありますけれども、生産基盤を維持しつつ、そこで営農活動をしてくれる人たちをいかに維持していくのかということをしっかり書き込む必要があると思っております。
 しかし、その一方で、しっかりその現実を見据えた数字にもしなきゃいけないということを私は結構こだわっておりまして、これから、四百四十万弱プラス九・二万ヘクタールの荒廃農地がありますので、その荒廃農地をいかにして営農可能な農地に戻すかという観点も書かなければなりませんし、なかなか難しゅうございます。難しゅうございますが、ただ、大目標として、確定的な数字は申し上げませんが、先ほど局長が申し上げましたように令和十二年に四五パーという数字を掲げるということであれば、国民の皆様方が一九九八年のガット・ウルグアイ・ラウンドの時期に感じた不安にいかに国の責任として応えていくのかということはやはり書き込む必要があるのではないかと、今の質疑を通じて感じたところでございます。

○紙智子君 基本法から二十年たっているんですよね。二十年たっていても、食料自給率の低下というのは、むしろ下がっているわけですから、生産者や消費者の中での不安というのは今も変わっていないんだと思うんですね。国民に対する食料の安定供給というのが、国内生産の増大を図るということが基本なんだと思うんですよ。
 それで、やっぱり当時と今でいうと、今大臣も言われたように、メガFTAとかEPAとかということで、日本が参加している中での基本計画になるわけなんですけど、ちょっと今の答弁でいうと、従来と違いがあるのかないのかというのがちょっともう一つよく分からなかったんですけど、違いはあるんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 時代が変われば内容は変わっていかねばなりません。そうは思いますが、しかし、私も、ちょっと変な話をさせていただいて恐縮なんですけれども、私のおやじが青嵐会の時代に書いた本が、小冊子がありまして、そのときに、今の日本の農業の課題ということで小さな論文のようなものを書いておりました。それを読んでびっくりしたんですけれども、物すごい前の、四十年ぐらい前の話じゃないですか。しかし、今我々が直面している課題と根幹の部分はほぼほぼ変わっていないということを痛切に感じました。
 ですから、我々がこれから立ち向かっていかなければならない課題は、多分大きな柱の部分は変わらないんだろうと思います。しかし、これからいろんな技術の開発とか、漁業でいえばもうかる漁業の推進であったり、先ほど先生から御質問あったようなIoTの活用であったり、いろんなものを活用することによって農業の営農の形とか林業の形とか漁業の形は変わり得るものだろうと思います。
 その結果として、生産ベースとかカロリーベースとか熱量ベースとか、そういったものでの自給率が示される、数字で示されるわけでありますけれども、どこが何が変わったのかと言われると、代わり映えがしないという御指摘もごもっともかと思いますが、やはりこれから先も、多分十年先も、農業が解決しなきゃいけない、我々が立ち向かっていかなきゃいけない課題は変わらないと思います。
 そしてもう一つ申し上げれば、日本は確かにマーケットが小さくなり、人口構造も縮小してシュリンクしてしまいますけれども、世界の食のマーケットは確実に大きくなっていって、そうなると、一人当たり、世界の人口一人当たりの耕作面積というものは一九六〇年をピークにして減る一方じゃないですか。ということになれば、一人の人間を養うための世界の農地面積というのは確実にこれから小さくなっていく一方ということであれば、今までどおり海外から潤沢に食材が入ってくるというのも、ある瞬間にもしかしたら幻想になるかもしれない、そういうことも含めた議論がこれからは求められていくのかなということを感じております。

○紙智子君 ちょっとその辺の議論は、また時間あるときにやらなきゃいけないのかなと思うんですけど。
 私は、安倍政権になってから農政が大きく変わっているというふうに思うんですね。それは、やっぱりこの間、一連のメガFTA、EPAに合わせて日本の農政を転換していると。政府の農林水産業・地域の活力創造プランというのがありますよね、国際市場への輸出による農業の成長産業化を図るグランドデザインだと。そして、昨年末の農業生産基盤強化プログラムの中では、今後、我が国農業を持続的に発展させていくためには、海外で高まるニーズを捉えて輸出を更に拡大するとともに、こうした新しい需要にも対応できるよう、中山間地域や中小・家族経営も含めて幅広く生産基盤の強化を図るというふうに言っているんですね。
 言わば、これ、輸出拡大のために中山間地域も中小・家族経営も動員しようということなのかなというふうに思うんですけれども、元々、現在の基本法が目指したのは、食料自給率の低下に生産者、消費者が不安を抱いていることから、国内農業生産の拡大を図るということだったわけですね。だから、輸出を増やすためにということじゃなかったと思うんですよ。
 農林水産業・地域の活力創造プランだとかこのプログラムでは、国民への食料の安定供給は国内の農業生産の拡大を図ることを基本とするということが書かれていないんですけど、これは何でなのかなと。いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 先ほど申し上げましたように、国内外の需要に応える、ですから、輸出に対しましては、輸出のみを目途として、条件不利も含めて生産基盤の強化を図るということではなくて、輸出にも対応できるようにというふうに、ちょっと、後ろでなかなかページをめくっても出てこないみたいですから、どこに書いてあるかが正直明示的に示せないのでちょっともどかしいんですけれども。
 輸出にも対応できるし、輸出をするためには、そもそも国内でちゃんと作らないと出せないわけであって、国内でないものは売りようがないので、決して海外で必要としているものばかりを作るということではなくて、いわゆる条件不利地域も含めて、私は、売れるものはたくさんあると思っております。いろんな農産物や、例えばお茶とかいろんなものについてもチャンスはまだまだあると思っておりますので、国内の需要にも応えつつ、ですから、国内の生産の増大も図りながら、そして同時に、その増大が輸出に対応していくということだと私は理解いたしております。

○紙智子君 今の大臣が言われた主張と果たして合っているのかなというふうには思うんです。
 それで、日本の農業の基軸は、農業基本法の理念を示したプログラム、つまり食料・農業・農村基本計画でいくのか、それとも安倍政権が目指している規制改革推進会議の意向を酌んだプログラムなのかと、どちらを基軸に進めるのかなというのも疑問に思うんですけれども、これはどうでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 創造プランは平成三十年にできたものでありますので、それから大分たっておって、私は、私の責任の下で基本計画を今作らせていただいております。
 ですから、活力創造プランのいいところはしっかり生かさせていただこうと思っておりますし、それから、時間の経過もこれありということでありますから、どちらを中心にとか片方をうっちゃってこれをやるということではなくて、両方のいいところはしっかり取り入れてやらせていただきたいと考えております。

○紙智子君 安倍政権の下で、元々のこの農業基本計画が目指した理念や方向から、率直に言ってずれてきているんじゃないかというふうに思うわけです。基本法に基づくプログラム、基本計画から規制改革推進会議の意向を酌んだプログラムに農政を変質させてきているんじゃないかというふうに思うんですね。少なくとも、やっぱり基本法を基軸にした中小・家族経営を応援するというふうに位置付けた基本計画にするように強く求めておきたいと思います。
 ちょっと時間がなくなってきたんですけれども、丸森町のちょっと台風被害についてもお聞きしておきたいと思います。
 江藤大臣も藤木政務官も丸森町に行かれましたよね。なので、実情というのは御存じだと思うんですね。私も、先月行ってまいりました。台風被害から四か月たっても、圃場には土砂や瓦れきが残ったままです。流木が橋に掛かって、そこに土砂がたまって川底が浅くなっていて、ちょっとした雨でも、あと水があふれる危険性があると、平場でも川があふれる可能性があるということで、住民の方は戻ってこれないというふうに言っているんですね。
 森林の被害も甚大で、山の奥まで崩壊していても、林道が崩壊して、そこに行くこともできないと。沢が崩壊していて、大きな岩でもうごろごろと転がっていて、家が押し流されるわけですね。民家の裏山の崩壊も相当ありました。
 それで、丸森町は、東日本大震災と同等の財政支援や人員支援を求めているんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 町長さんの顔は今でもよく覚えています。非常に実直な真面目な方で、非常に顔に苦渋が刻み込まれたようなお顔をされて、何とかしてあげたいという気持ちを強く持ちました。
 それで、財政規模も非常に小さくて、町財政の三倍に及ぶ被害だということでありますので、自力財源のみの復興は、これはどう見たって、私が見たって、町長さんがどんなに頑張ってもこれが不可能であることは、私もよく分かっております。
 さはさりながら、なかなか答弁しづらいんですけれども、震災復興の特別交付税は一〇〇%の交付税措置、今先生がおっしゃっていたこれを求めているということでありますけれども、これは、復興増税をやったその裏付けがありますので、国民に広く御負担をお願いした上でこの一〇〇%の交付税措置ということをやらせていただいたということでありますから、これを同じように適用するということのハードルは相当高いというふうに思っております。
 ただ、例えば、私が言われてよく覚えているのは、農地の復旧に多分三年か四年掛かると、ですから、二分の一補助ということになっても、今すぐ農機具を買えといったって今は要らないんだと、農地が戻ってからじゃないと農機具は要らないんだと。今の財政上のルールでいうと、令和三年までに買っていただかないとこれ切れてしまいますので。ですから、農地が復旧した後に丸森の皆様方が営農再開のための機材を購入する場合において我々は何をしなきゃいけないかということについてはこれからしっかり議論をしていかなきゃいけませんが。今までちょっと例のないことでありますけれども、これについてもチャレンジはしていきたいと思っておりますが、その東日本大震災並みと、同等の財政支援ということについては、正直なかなか厳しいというのが現状でございます。

○紙智子君 ちょっと時間の関係で二つ、まだたくさんあるんですけれども、そのうち二つだけ質問しておきたいんですけれども。
 丸森町によりますと、公共土木や農業などの被害額の合計が四百億円以上で、基幹産業の農業被害が百七十六億円余り、同町の二〇一九年度予算額約九十億円をはるかに超える額になると。東日本大震災のときに農林水産省は、農業・農村の復興マスタープランを策定しました。そこでは、津波被災農地についてはおおむね三年間で復興を目指すという農地の復旧スケジュールを示して、農地の復旧までの被害農業者の所得確保などを打ち出しました。
 そこで、農業では、今年の営農をどうするか。圃場に土砂が堆積していますから、これ、作付けできる農地とできない農地の調査が必要になると、で、作付けできる農地への支援策、これをどうするかということが一つです。
 それからもう一つは、作付けできない農業者への収入対策。これ、東日本大震災のときには、被災農家経営再開支援事業というのがあって、これは、経営再建の意思のある被災農家が地域において共同で行う復旧作業などの取組に対して、農業者の所得確保と同時に地域農業の再生と早期の経営再開を図るということを目指した事業で、さらに、その後の支援策としても、被災者向けの農の雇用事業というのもあったわけなんですよね。だから、丸森町においても作付けできない農業者への収入対策も行うべきなんじゃないかということも含めまして、これ二点、最後にお聞きしたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) まず、営農を再開できるところについては、春の作付面積を増やさなきゃなりませんので、仮の畦畔の設置とか、天水でできるものですね、かんがい施設がまだ完全にでき上がっておりませんので。麦とか大豆とかができるように、技術者の派遣をしっかりやって、それらの作付けを応援させていただきたいと思います。
 それで、災害復旧事業の話は、先ほどの、国民に広く課税もさせていただいたということとリンクしますので御理解をいただきたいと思いますが、農の雇用につきましては、例えば、被災地の場合は、瓦れきを拾っていただくとか、先生も覚えていらっしゃると思いますけれども、そういうことで雇用を生んで、一定の期間は農家の方々の所得を確保するということができました。今も復旧事業の工事等がありますので、できるだけ、なかなか農家の方が土木の現場で働くというのは抵抗があるかもしれませんが、そういうところでお勤めいただけるということであれば積極的にそちらの方にマッチングするような努力も、就農機会を確保するような努力もさせていきたいと思っております。
 とにかく、丸森につきましては、災害復旧査定を含めて、人的資源がもう圧倒的に足りないというお声を聞かせていただいておりますので、農林水産省としても、技術者を含めて人的な支援も、マンパワーも含めた支援をさせていただこうというふうに考えております。

○委員長(江島潔君) 時間です。

○紙智子君 ありがとうございました。
 ちょっと時間になりましたので、残りはまた次回させていただきたいと思います。
 終わります。