<第200回国会 外交防衛、農林水産、経済産業委員会連合審査会 2019年11月28日>


◇日米貿易協定は、TPPから離脱したアメリカのためのTPP以上の協定で、日本の食料主権、経済主権を脅かす屈辱的な協定だと指摘/輸入小麦により学校給食のパンから発がん性があるグリホサートが検出されており、農水大臣に対応を求めた/除草剤グリホサートに対する過剰な規制を、アメリカ国内だけでなく海外でも規制撤廃を政府機関に期限を区切って命令する大統領令に沿って日本に圧力があったら、拒否するのかと外務大臣に迫る/食の安全をないがしろにする日米交渉は応じるべきでないと主張

○日本国とアメリカ合衆国との間の貿易協定の締結について承認を求めるの件(内閣提出、衆議院送付)
○デジタル貿易に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 日米貿易協定は、TPPから離脱したアメリカのために安倍政権がTPP以上におもてなしをする協定で、日本の農業からいえば、これ食料主権、そして日本の経済主権をも脅かす屈辱的な協定だと思います。
 第一に、農産物においてアメリカに特恵的な待遇を追求するという権限を与え、第二に、牛肉のセーフガードにおいても名前だけ残して事実上はこれ無力化すると、第三に、アメリカにTPP参加国に後れを取らないように五百八十七項目もの農産品を譲り渡すと。林産物は除外したというようなことを言っていますけれども、輸入実績のあるキノコ、ハラタケ、マツタケなどは関税率は即時撤廃だと。関税率一〇・五%を超えているものを即時撤廃する品目だってあるわけです。
 なぜそこまでアメリカを特別扱いするのでしょうか。外務大臣。

○国務大臣(外務大臣 茂木敏充君) 日米貿易交渉、これ、まさに国益と国益がぶつかり合う、おもてなしという言葉は全く想定できないような非常に厳しい交渉でありましたが、TPP11そして日EU・EPAが既に発効していると、TPP11が昨年の十二月の三十日、恐らく誰の想定よりも早く発効して、今年の二月の一日には日EU・EPAが発効する、こういった中で、米国、他国に劣後しない状況を早期に実現したい、こういう米国の立場と、農林水産品については過去の経済連携協定の内容が最大限とする日本の立場、この中で最終的な一致点が今回の合意となったと考えております。日米双方にとってウイン・ウインの結果だと考えております。
 そこの中で、御指摘の農産品に関する特恵的な待遇を追求する旨の規定は、将来の交渉において米国にそのような意図があるということを単に記載したものでありまして、日本側の義務というのは規定をされてございません。また、牛肉等のセーフガード措置がとられた場合に協議を行うこととされておりますが、これはもちろん協議の結果を予断するものではありません。
 さらに、関税率については、TPP協定では、当初の発効に遅れて締約国となった原署名国、今入っている十一か国ですね、や新規加盟国に対して、締結時点で当初の締約国と同じ関税率を適用すること、このようになっておりまして、今回の米国への対応と、まさにこのような対応、TPPと同様の対応でありまして、TPPを超えるものではなく、米国を特別扱いしていると、こういう御指摘は当たらない、このように考えているところであります。

○紙智子君 幾らそういうふうに言っても、多くの国民の皆さんはそう思っていないですよ。また今回もアメリカの圧力に屈したのかなというのが多くの声ですよ。
 さらに、国会手続も従来の協定とは違うんですよね。TPPのときは、TPPの合意の後にTPP等関連政策大綱を作って国内対策を織り込み済みの影響試算という形で公表した。今回は、大綱の改訂も行わないまま影響試算を出しました。ですから、暫定という名のとおり、机上の計算でしかないわけです。国内対策を取るから大丈夫だ、そういう理屈も投げ捨てているわけですよ。
 私のふるさとの北海道で見ると、これはすさまじい影響だと思います。北海道の牛肉の産出額は一千二億円ですけれども、日米貿易協定プラスTPP11、そして日欧EPA、この生産減少額でいうと、合わせると一千六十一億円ですから、北海道の産出額がそのまま飛んでしまうというような中身なわけですよ。
 なぜ、これ政策大綱の改訂もやらずにこの協定の審議を始めたのかと。それは、来年一月に発効させたいというアメリカに合わせて国会審議を急いでいるということじゃないんですか。農水大臣、短く答えてください。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 私は交渉の場にいたわけではありませんが、極めて厳しい交渉であったことは、私も役所に泊まり込みで連絡を取り合っていましたのでよく知っております。しかし、交渉を妥結するのには、潮目とかタイミングというものがあって、一番有利な条件、こちらにとって有利な条件のタイミングをつかまえて合意に達することがベストだと思いますが、そのタイミングを茂木大臣は正確に捉えられた結果だと思います。

○紙智子君 アメリカを優遇する態度というのは、日米関係の特徴だと思うんですよ。
 一九九一年には、牛肉、オレンジの自由化がありました。牛肉は自由化されて、その後は、ガット・ウルグアイ・ラウンドを受けて関税を自主的に引き下げてきた。オレンジの自由化で、当時約十三万戸あったミカン農家は五万戸まで激減したわけですよ。義務でもないのに米を七十七万トン輸入している。そのうちの約三十六万トンはアメリカ枠としてもう固定化しているわけですね。密約があったんじゃないかということも言われているわけです。
 TPP交渉のときは、TPPに入れてもらうためにアメリカの要求に応えて牛肉、自動車、保険、三つの入場料をまず払ったと。そして、アメリカがTPPから離脱すると、戻ってきてほしいと懇願して、日米経済対話では飽き足らないアメリカの要求に屈して、トランプ大統領の再選のお膳立てをするかのように農産品の市場開放を進め、さらにはその先の第二ラウンドまで受け入れているわけですよ。トランプ大統領が狙っているのは、日本の医療保険や薬価制度の見直しや金融や共済、食の安全の規制緩和などです。
 そこで、食の安全に関わって、グリホサートの残留穀物についてお聞きします。
 グリホサート、これは国際がん研究機関、IARCが恐らく人に発がん性があるというふうに区分している農薬、除草剤です。このグリホサートを掛けると枯れるので収穫が楽になって、乾燥も進むので収穫の前に散布されています。日本は年間五百から六百万トンの小麦をアメリカ、カナダから輸入しています。
 農水省は小麦に残留しているグリホサートを検査をしていると。で、二〇一八年の検査では、アメリカ産の検出率は九八%、カナダ産は一〇〇%と。で、小麦には国家貿易と民間貿易がありますけれども、民間貿易というのは検査をしているんでしょうか。これ、農水省か厚労省か。

○政府参考人(厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官 浅沼一成君) お答えいたします。
 諸外国から輸入される国家貿易品以外の小麦につきましては、輸入時に、マラチオン、メタミドホスといった様々な農薬の残留量につきましては検査を実施しておりますが、グリホサートについては検査を実施していないところでございます。

○紙智子君 それについては把握していないということですよ。
 輸入小麦は、パン、それから加工食品として流通をしています。検査は自治事務ということなので、検査するかしないかというのは自治体の判断だというふうに聞いています。これ、検査率はどうなっているんですか、公表しているんでしょうか。

○政府参考人(厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官 浅沼一成君) お答えいたします。
 小麦及び小麦加工品の国内流通品に関する検査につきましては、自治体の事務といたしまして各地方自治体が監視、指導を実施しているため、その詳細については把握しておりません。

○紙智子君 把握していないということなんですけど、それで本当にいいんですか。
 農民連という農業団体ありますけれども、食品分析センターがあるんですが、小麦の、小麦粉の製品の検査をしているんですよ。食パン、カップ麺、パスタなどを検査しています。国産の小麦を原料にした食パンからは検出されていないと。輸入小麦を使用した食パンからは検出されていると。驚いたのは、学校給食のパンからも検出されています。コッペパン、食パンからは〇・〇五ppmから〇・〇八ppmです。一方で、国産原料を使った食パンからは検出されていないと。感受性の強い子供が食べて大丈夫なのかという意見をよく聞くわけですよ。これ、対応すべきじゃないか。これがまず一つです、二つ聞きますけれども。
 もう一つは、更に問題だと思うのは、基準を緩和していることなんですね。
 先日、我が党の井上哲士議員が外交防衛委員会で取り上げましたけれども、農薬メーカーの要望に応えて、二〇一七年の十二月二十五日に、輸入穀物におけるグリホサートの残留基準を多いものでは百倍以上、小麦六倍、トウモロコシ五倍、ソバは百五十倍緩和しているわけですよ。食品の検査がまともに行われていないのに、これ緩和していいんでしょうか。

○政府参考人(厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官 浅沼一成君) お答えいたします。
 我が国におきましては、食品中の農薬の残留基準は、食品を介した摂取の観点から、食品安全委員会による食品健康影響評価を踏まえまして、農薬を適正に使用した場合の残留試験の結果や、国際機関でありますコーデックス委員会で定める食品に関する国際基準等に基づき、薬事・食品衛生審議会の審議を経て設定しております。
 現在のグリホサートの残留基準値につきましても、食品安全委員会の食品健康影響評価等の科学的な根拠に基づき、人の健康を損なわないよう設定していることから、安全性に問題は生じていないと考えておるところでございます。

○紙智子君 そういう答えなんですけどね。いや、平均的な形で数字を言っているわけなんだけれども、平均的な日本人が摂取している安全基準だと言うんだけれども、だけど、感受性が強い子供、小さなお子さんもそういうことで一般的にやっていいんですか。これ、私、本当に心配だと思いますよ。この問題についてどうなんですか。農水大臣、どうですか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 余り知識がなくて申し訳ないんですが、しかし、子供については、非常に感受性の強い子、例えばそばを食べたら駄目だとか、そういうことについては十分な配慮をしているはずです。
 ですから、この場でこういたしますという答弁、私からはできませんが、関係省庁、連絡をもう一回取って、この二〇一七年の緩和の経緯、しかし、全ては科学的見地のエビデンスの積み重ねによって判断されるものだというふうには思っておりますけれども、事学校給食ということになるとちょっとステージが違うのかなと思いますので、少し考えさせていただきたいと思います。

○紙智子君 やっぱり子供の成長に関わる大事な問題ですから、これは真剣に検討しなきゃいけないと思うんですよ。
 発がん性の可能性のあるグリホサートを主成分とする除草剤ラウンドアップ、この訴訟が今急増しているんですよね。今年七月には約一万八千件と言われていましたけれども、今や四万二千件だというふうに報道されています。これ、アメリカですけれどもね。
 アメリカ、AP通信は、今月十一月二十五日にメキシコのグリホサートの農薬の輸入禁止ということが報道しております。メキシコ環境省は農業用グリホサートの輸入許可を拒否した。グリホサートの深刻な環境への損害と不可逆的な健康への被害を引き起こす可能性があるという信頼できる推測を前提とすれば、同物質には高い環境リスクがあるというふうに言っているわけです。
 それで、訴訟の増加、メキシコの動きをどのように認識しているでしょうか。これ、厚労省かな。じゃ、農水大臣、外務大臣、一言ずつお願いします。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) グリホサートにつきましては、直近では平成二十八年に食品安全委員会における安全評価が行われたということでございますが、薬品としての使用方法を遵守すれば健康上の問題はないということになって登録をされているということでありますが、米国とかで大変訴訟が増えているということは私も承知はいたしております。しかし、米国やEUでも同様の評価がされているということもまた一方、訴訟がありながら事実だということも申し上げておきたいと思います。
 このために、直ちにグリホサートの規制を強化することはなかなか、私の所管ではありませんが、難しいのかなと。先ほど申し上げましたように、科学的エビデンスの蓄積によって判断されなければならない部分もありますので、少し考えさせていただきたいと思います。

○紙智子君 日本でも不安があるから、この農民連の分析センターというところに検査依頼が次々来るわけですよ。不安に目を向けてしっかり対応するのが行政の役割ではないかと思います。
 そこで、今年六月、トランプ大統領は、バイオ農産物規制の枠組みの現代化という大統領命を公布しました。除草剤グリホサートに対する過剰な規制を洗い出して、アメリカ国内だけでなく海外でも規制を撤廃することを政府機関に期限を区切って命令していると。まさに世界の流れに逆行する動きが今こうなっているわけです。
 大統領令に沿って日本に圧力があったら、これきっぱりと拒否しますか、外務大臣。

○国務大臣(外務大臣 茂木敏充君) 六月の十一日、農業バイオテクノロジーに関して米国政府としての戦略等を策定します内容の大統領令、トランプ大統領が署名したということを承知をいたしております。内容につきましては、時間もう過ぎておりますので割愛をさせていただきますが、本件について、その後の米国内の状況については公表されておりません。
 また、六月といいますと、まさにライトハイザー通商代表と交渉していた時期真っ盛りでありましたが、この大統領令の話は全く出ておりません。

○紙智子君 答えないですね。出ていないという話じゃなくて、出たら拒否するんですかと聞いたんですよ。
 食の安全をないがしろにするようなこの日米交渉はやっぱり応じるべきでないということを申し上げまして、質問を終わります。