<第200回国会 農林水産委員会 2019年11月19日>


◇農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律案に対する反対討論

○農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 私は、日本共産党を代表して、農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律案に対する反対討論を行います。
 まず初めに申し上げますが、我が党は輸出に反対するものではありません。北海道では、ホタテやナマコ等を輸出して生活を支え、地域経済も支えています。東日本大震災で被災した漁業、水産加工業者は、販路をなくしたために、新たな販売先を探して輸出に取り組んでいる人もいます。米を輸出している農家もいます。こうした努力を国が支援するのは当然です。それでもなぜ本案に反対するのかを述べます。
 それは、農林水産物の輸出が、安倍政権が進める成長戦略、アベノミクスの中心的な柱に位置付けられ、輸出を国家プロジェクトに位置付けているからです。日本再興戦略二〇一四年は、二〇二〇年に農林水産物・食品の輸出額一兆円を目標に掲げ、前倒しするといいます。菅官房長官は、輸出拡大のための関係閣僚会議において、農産品輸出を一元的かつ戦略的に推進するための司令塔組織を設置する、農林水産省に本部をつくり、実行計画を作り、都道府県は速やかに実施する体制を構築する、都道府県に速やかに実施するよう求めるといいます。またしても、成長戦略を達成するために、官邸が主導して農政が進められようとしています。こうした政策や手法にくみすることはできません。
 日本の農林漁業は、相次ぐ輸入自由化によって離農が進み、農地が減少するなど、生産基盤の弱体化を招きました。輸出促進策で農家や地域の疲弊が解消されるものではありません。政府を挙げて農業の振興に取り組むというのであれば、戦後最低になった食料自給率を、省庁の枠を超えて取り組む食料自給率を向上させるための本部、あるいは地産地消を推進するための本部、国連家族農業年が提起されている下で家族農業を支援するための本部などこそが必要ではないでしょうか。国内需要を満たす農業政策を拡大することこそ必要です。
 以上を申し上げて、反対討論といたします。

○委員長(江島潔君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
 これより採決に入ります。
 農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律案に賛成の方の挙手を願います。

   〔賛成者挙手〕

○委員長(江島潔君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、徳永君から発言を求められておりますので、これを許します。徳永エリ君。

○徳永エリ君 私は、ただいま可決されました農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律案に対し、自由民主党・国民の声、立憲・国民.新緑風会・社民、公明党及び日本維新の会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。

    農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律案に対する附帯決議(案)

  我が国では、人口減少や高齢化を背景に、今後国内の食市場は縮小する一方、世界に目を転じると、アジアを中心とした新興国では経済成長、人口増加が進んでおり、世界全体の食市場は大きく拡大するものと見込まれている。また、我が国の農林水産物・食品は、安全でおいしいと諸外国から高い評価を受けており、農林水産物・食品の輸出額は昨年まで六年連続で過去最高を更新している。こうした中、世界の食市場の更なる獲得に向けては、成長著しいアジア諸国のみならず、富裕層を擁する欧米の大市場も重視した、一層、戦略的・積極的な取組が必要である。
  しかしながら、輸出先国政府による食品安全、動植物検疫上の規制が我が国の農林水産物・食品の輸出拡大の障害となる事例があることに加え、一部の国・地域が平成二十三年の原発事故に伴う輸入規制措置を依然として実施しているなど、厳しい課題にも直面している。
  よって政府は、本法の施行に当たり、次の事項の実現に万全を期すべきである。

 一 農林水産物・食品輸出本部が輸出促進を担う司令塔組織として十分に機能するよう、実効ある組織体制を整備すること。
 二 農林水産物・食品の輸出に必要な輸出証明書の申請及び発行その他の手続並びに相談についてワンストップサービスを早期に構築するなど、輸出に取り組む事業者の負担軽減措置の実現に早急に取り組むこと。
   また、農林水産物・食品の輸出に取り組む農林漁業者が、自らの輸出産品及び輸出先国・地域に適した地域商社・海外バイヤー等とのマッチングが適切に実現するよう、十分に支援すること。
 三 輸出証明書の発行、生産区域の指定、加工施設の認定等を行う地方自治体及び加工施設の認定等を行う登録認定機関がその業務を適切かつ円滑に行うことができるよう、輸入規制の基準等の解釈その他の情報を適時適切に共有するとともに、これら関係機関との連携強化に努めること。
 四 流通の広域化や国際化が進む中で、日本産農林水産物・食品のブランド力を維持・向上し、競争力を強化していくため、GAP認証等、世界の食市場において通用する認証を取得しようとする取組を更に推進すること。
 五 食品・農林水産物等の輸入条件としてHACCPの取組を求める動きが世界的に広がっている現状を踏まえ、HACCPの導入等に取り組む事業者に対し、その事業規模に即したきめ細かな支援措置を実施すること。
 六 我が国の地理的表示や地名の海外における不正使用や、第三者による商標登録、植物新品種の海外流出が行われないよう、適切に対応すること。また、農林水産業の輸出力強化に向け、知的財産の戦略的活用に取り組むこと。
 七 和牛は関係者が長い年月をかけて改良してきた我が国固有の貴重な財産であり、不正に外国に持ち出されたり、使用されたりすることのないよう、流通管理の在り方や知的財産としての遺伝資源の保護の在り方について、法整備も含めた検討を加速すること。
 八 原発事故に伴う輸入規制措置の緩和・撤廃に向けて、政府間交渉に必要な情報・科学データの収集・分析等を十分に行い、諸外国・地域に正確な情報を提供した上で、科学的根拠に立った対応を引き続き強く要請すること。
 九 昨年九月に国内において二十六年ぶりに発生したCSF(豚コレラ)について、その発生及び感染拡大の原因を徹底的に究明・分析した上で、あらゆる手段を行使し、将来の輸出拡大も見据え、一刻も早い事態の終息に努めること。
 十 農林水産物・食品の輸出促進に取り組むに当たっては、農林漁業者の経営の安定と所得の向上、農山漁村の活性化に資するよう、十分留意すること。
 十一 輸出促進にあわせて、我が国農林水産業の生産基盤の強化と生産の拡大を図り、国産農林水産物を原材料とする高付加価値商品等の研究開発及び成果利用の促進に対する支援を拡充すること。

   右決議する。

 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

○委員長(江島潔君) ただいま徳永君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。

   〔賛成者挙手〕

○委員長(江島潔君) 多数と認めます。よって、徳永君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定をいたしました。