<第200回国会 農林水産委員会 2019年11月7日>


◇台風災害で水没した稲わらの撤去の支援について、農家負担なく処理できることを確認した/自家用として作った飼料用の稲わらが水没した畜産農家への飼料用の稲わら確保対策を求めた/収穫後、倉庫で浸水した米は、被災農家営農再開緊急対策事業で支援することを確認した/豚コレラ(CSF)へのワクチン接種の判断の遅れについて、輸出を優先したのではないかと指摘/殺処分を受けた養豚農家の経営再建へ、豚舎の改修・改築への支援が必要と指摘/国連の家族農業10年について、日本も推進する体制をつくるべきだと主張/生産基盤の弱体化について、大臣の認識を問う/多様な家族農家の営農意欲を引き出す政策が必要だと主張/なぜ、離農するのか、離農者への年代別の調査をおこなうよう求めた

○農林水産に関する調査

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 八月は、豪雨災害ということで九州北部を襲いました。それから、九月から十月にかけては、特に東日本では台風十五号、十九号、二十一号ということで甚大な被害が発生いたしました。亡くなられた方々には心からお悔やみを申し上げると同時に、被災された皆さんには本当にお見舞いを申し上げたいと思いますし、今も復旧のために奮闘されている皆さんには心から敬意を申し上げたいと思います。
 早速質問に入りますが、昨日の新聞報道で台風十九号の追加対策が報道されておりました。なので、幾つか重要な対策についてお聞きをしたいと思います。
 それで、農水省の発表では、現時点で分かっているだけでも、被害額が十五号、十九号、二十一号を含めて二千六百六十六・八億円でしょうか。この間も私は、千葉県、それから宮城県、福島県に調査に入りました。先月の十六日には、宮城県の大崎市鹿島台というところの志田谷地という地域、ここを視察したんです。この地区は、決壊した吉田川沿いに広がる田園地帯で、広範囲に浸水して、大量の稲わらや稲わらをくるんでいるロール、これが浮いているという状況でありました。偶然、土地改良区のそこの理事長さんにお会いしたんですけれども、ロールは水を吸うので、相当撤去するときは重くなっているという話もありました。撤去費用に対する不安も出されておりました。
 そこで確認をしたいんですが、こういう稲わらなどを撤去するには多額の費用や人材が必要になるわけですけれども、持続的生産強化対策事業というのを活用すると農家負担なく処理できるというふうになるんじゃないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) とにかく、委員が御指摘のように、農家の負担なくこれを撤去するということが一番大事だと思っております。これが発生したときから、農水省の農政局の皆さん方にも、農家の方々には負担がないから安心してくださいということを周知するように努力をいたしました。
 具体的には、一立方当たり五千円という単価を出させていただきました。これは、最初は、私の農地から流れて先生の農地まで流れていってしまった場合は、誰のか分からないじゃないですか。なかなかそこら辺の因果関係が難しいので広域処理をした方がいいという方針を最初は出したんですけれども、広域処理ということになると、やっぱりその事業委託をした人にこの五千円が行くということになります。
 現場をいろいろ見させていただく中で、今はもう稲刈りも終わっている、例えば千葉、この間行ってきたんですけれども、千葉なんかは、稲刈りが終わっていて稲わらがたくさんあるわけですね。委託するつもりだとおっしゃっていましたけれども、私としては、なるべく御自身で、大変かとは思いますが、水を吸って重い、それからちょっと臭いも出始めている、いろいろありますから大変と思いますけれども、できれば自分で施業されると、軽トラ一杯当たり大体一万五千円ぐらいの金額にはなりますので、二往復すれば大体三万円ぐらいになりますので、補填ではありませんけれども、自分で対応することによって農家に少しでもお金が残るような形になったらいいなということで、今、そういうお知らせをさせていただいているところでございます。

○紙智子君 事前に、やっぱり現地に正確に伝えたいので通告もしておりまして、それで、農家に負担がなくというところを確認しているのと、一立方メートル五千円支給ということで、それで負担なくなるということなんだけど、作業そのものは、個人でやれるものもあるけれども、そうじゃないものもありますので、そこはいろいろと柔軟にやっていただけるものというふうに思います。
 それで、是非、営農再開に向けて、現場の要望に応えた支援というのが本当に大事だと思うので、引き続いて、この支援の徹底というか、周知徹底も含めてお願いをしておきたいと思います。
 それから、次なんですけど、大崎市で肥育農家で八十頭飼っている農家の方は、自家用として作った飼料用の稲わらが田んぼの浸水で全部駄目になってしまったと。今年分の餌の稲わらは確保できているんだけれども、来年になったらもうないという不安なんですね。
 大崎市は、品質のいい稲わらの産地ということで、ほかの県にも出荷しているということなんです。これ食べると、肉牛の肉質とか乳牛の乳質にも大きく変化というか、変わるんだという、違いがあるんだということもお聞きしました。
 それで、やっぱりこの飼料用稲わらの確保の対策というのが必要だと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) これは過去にも私ども何度も経験していることでありまして、優良な農家であればあるほど、飼料、それから濃厚飼料等はこだわって生産されて、自家でやっているものでないと嫌だという方がおられます。しかし、もう流れてしまって使えないということであれば、もう仕方がありませんから、今回は、今年分については、多分同じところのお話を私聞いているんじゃないかと思うんですけれども、まず、どこから調達できるかという情報をしっかりお伝えすることが大事だと思っております。
 農林水産省が間に入って、ほかの近県からのマッチングを図ることは当然やらせていただきますが、ホームページ等でも閲覧できるようにさせていただいています。そして、トン当たり五千円出させていただくことによって飼料を調達できるようにしていただければと考えております。

○紙智子君 ALICの事業なんかもあって、マッチングをして、そしてやっぱり足りないところに送るという仕組みになっていて、粗飼料確保緊急対策事業というふうに聞いておりますので、是非この点も、ただ、本当に間に合うかどうかというのはよく調べないといけないというふうに思うんですけれども、よろしくお願いしたいと思います。
 それから、浸水した米の支援についてもお聞きします。
 台風十九号では、河川の氾濫などでかなりの広範囲にわたって野菜や果樹、米などが浸水するなどの被害が出ました。先日関東で被災された米の農家の方のお話なんですが、この方は、自宅、それから作業場とともに乾燥機、それから田植機、農機具、これがもう全部浸水と、収穫した後倉庫に置いていた米二千袋も全て浸水したと、丹精込めて作った米が全て駄目になったらこれから先が見えないと、やっぱりこのままだったら大きな収入源が途絶えてしまうということになるということが出されていました。
 私は思い出したわけですけど、二〇一五年の鬼怒川の堤防決壊のときに、浸水被害を受けた米農家向けに、当時、これ共済対象とはなかなかならないという議論の中で、それじゃもう大変じゃないかというので被災農家営農再開緊急対策事業というのがつくられていて、営農再開の準備に必要な経費に対して営農再開支援金として助成をしているというのがあったわけですけど、追加対策ではこの事業を被災農家に支援するということになるんでしょうか。できるんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) この場でお答えをしたいのはやまやまなんでございますが、支援政策パッケージという、そのパッケージで発表をするということになっておりまして、私が勇み足をするわけにはまいりませんが、ただ、先生のお気持ちは私の気持ちと全く同じでございます。
 行ったところで、もうここら辺の農家は高齢化をして、自分がみんな引き受けているんだと、そして、引き受けた米を積んでおいたけどみんなつかっちゃったんだと、もう捨てちゃったと、もうないと。その人は、これは二千袋とおっしゃいましたけど、三十キロですかね、すごい量ですよね。それだけのものを委託されて、委託された農地に対しては米で返すと。これはルールですから、もう返す米がないということであれば、じゃ現金で返すのかと。そんなことできっこないということでありますから、そういった中核的に周辺の農地を引き受けてくれる人が潰れてしまったら地域農業自体が潰れてしまうという危機感を持っております。
 そして、先生御指摘があった乾燥機とか、それからコンバインとかトラクターとか、それからフォークリフトとか、いろんなものが被災しておりますので、そういうものについても、特定非常災害に指定されたという事情もありますから、もうできる限り手厚く国としても自治体と協力しながら支援をさせていただいて、もう一回頑張ろうという気持ちになっていただける方向を目指していきたいと考えております。

○紙智子君 もう一回頑張ろうというふうになるところがすごく大事だと思うので、あしたかあさってか分かりませんけれども、是非そういうことで公表していただければというふうに思っております。
 それと、ちょっと時間がなくなってきたので要望だけなんですけれども、軽トラックの話は、これが汎用性がどうなのこうなのということでなかなか認められていないんですけれども、やっぱり軽トラックないと話にならないんですよね。これは是非とも引き続き検討してほしいし、それから、果樹の被害も甚大で、リンゴ畑が濁流で襲われて大変な深刻な事態になっているので、植え替えに伴う費用とか、それから、未収入の期間が結構あるので、木が育つまでのそこに対する支援とか、是非検討を求めたいと思います。これは答弁要りません。
 それから、次に豚コレラについて伺うんですけれども、昨年九月の発生以降、この間、十四万頭を超える豚が殺処分されました。農水省は二月に新規対策で三月には追加対策と出したんだけれども豚コレラが終息しないということで、私、四月の農水委員会のときに、関係者の意見を聞いてワクチン接種を検討するべきじゃないのかということを要求してきました。八月に質問主意書も出しているんですね。
 ようやく十月二十五日からワクチン接種が始まったと、ところが十月三十日にも四十七例目が出たということでありまして、何でこれ対策が遅れたんだろうかと多くの指摘がなされています。新聞紙上でも、政府の輸出拡大の思惑からワクチン使用の判断が遅れたんじゃないかと、それから、対策が後手に回ってしまえばこれ取り返しが付かないんじゃないかということも報じています。養豚農家を守るよりも輸出を優先させたと言われても仕方がないんじゃないんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 私は、前大臣をかばうということでは決してなくて、絶対そういう趣旨ではなかったと私は本当に思っています。
 やはり国際スタンダードを考えても、今までの長い長い清浄国としての歴史を紡いでこられた先人の努力、そして、アジアの中ではもう極めて極めて限られた清浄国が日本であるというこの優位性は、輸出がどうのこうのということではなくて、やはり保つ努力をすることが一義的には大事だったんだろうと思います。
 ですから、その遅れたことについての御批判についてはしっかり私の方で受け止めさせていただきますけれども、輸出については、また余計なことを申しますが、いろいろ関係国と協議をさせていただいて九七%はセーフになりましたし、それから、豚皮については一〇〇%今までどおり輸出できるようになりましたので、決してワクチン接種イコール輸出が完全に止まってしまうというロジックで当時の農林省も自民党も動いていたというわけではないというふうに私は理解しております。

○紙智子君 養豚農家の皆さんは、朝起きると、豚コレラになっていないかどうかと、もうはらはらしながら畜舎に行くわけですよ。それで本当に不安な日々を送っていて、ワクチン接種については現場から遅過ぎたぐらいだという声も出ています。こういうやっぱり本当に苦労されている養豚農家の皆さんのその声をしっかり受け止めていただきたいというふうに思います。
 それから、殺処分を受けた農場の場合の今後の見通しなんですけれども、先々月の十日付けの農業新聞で、殺処分を受けた岐阜県、愛知県、三重県、福井県の三十八例目まで四十四経営体を対象にアンケートをやっていますよね。経営再開に向けた課題として、再開に向けた設備投資で資金が底をつきそうなんだと、豚舎の改築や改修には多額の費用が掛かるということを挙げているわけです。
 やっぱり経営再建に向けて飼養衛生管理基準の徹底と、これ大事だとは思うんだけれども、ネズミなどの野生動物の侵入対策に伴う、柵はいろいろ支援出るんだけれども、畜舎の整備ということでいうと、これやっぱり何らかの支援が必要じゃないんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) これも経営体によって様々でございまして、私がまだ結婚する前ぐらいに見たような養豚農家もまだ残っていますし、非常に近代的でウインドーレスでやっているようなところもありますし、なかなか個別具体的にどういう対応をするかというのは難しいんですが。
 私どもは、必ずしも建て替えをしてくださいということを求めては今おりません。基本的には、まず柵を立てさせていただいて、それから、小さい動物も入ってくる可能性、虫もありますので、防鳥ネット等を設置することについては御支援をさせていただくということでございます。それから、畜舎の消毒とかで消石灰の散布とか、それから出入りについて、もうここについてもきめ細かく指導をさせていただく。
 一生懸命県も頑張り、家保も頑張り、農水の担当者も頑張って飼養衛生管理基準の徹底ですよということでお願いをするんですが、なかなか直近の発生事例を見ても徹底されていなかったという事例も残念ながら見られますので、基本をやっぱり守ることも大事だと思っています。そして、再導入した場合にはモニター等も入れていただいて大体二週間ぐらいは見てもらうようなこともこれからやってまいりますので、そういうことを考えながら経営再開をやっていただきたいと思います。
 私も、報道等で、この機会で、もう後継者もいないので養豚業をやめるという報道も見ておりますので、そういうことについては非常に残念だしお気の毒だなという気持ちは先生と共有しているところでありますが、今後追加的に何ができるか、引き続き考えさせていただきたいと思います。

○紙智子君 これ、実際に殺処分をした実際の県でアンケートを取って、何がこの後再開するのに心配かとか、それがなかったらやっぱり離農せざるを得ないという人たちも出てくるという状況だと思うんですよ。これはやっぱり深刻だと思うんですよ。そう簡単じゃないというか、もう本当に、それこそ後を継ぐ人いないからやめるというところがたくさん出かねない今現実だと思うんですよ。ですから、やっぱり離農しないで続けられるように真剣に対応しなきゃいけないんだと思うんですね。
 そういう意味では、やっぱり殺処分を受けた農家が本当に経営再開、支援できるようにするために何がネックになっているのかということをちゃんとつかんで、それに対応する支援を廃業する前に是非求めたいというふうに思います。長くならないようにもう一言。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 先ほど申し上げましたけれども、例えば、国が補助をしたとしますね、まだそういうスキームはでき上がっておりませんが。近代的な豚舎を、下をコンクリートにしてしっかり分離をして、暖かくする部屋を造ったりとか、子豚のために、そういうものまでやると相当な金額が、飼養頭数によりますけれども、そのスキームができたとして、じゃその自己負担に耐えられるのかということもそのまた裏側にあって、全額でやりますよといえばそれはベストですけど、それはもう財政規律上できないことは御理解いただけると思うので。
 しかし、私の地元でも、口蹄疫が起こったときに、これを機会にもうやめるという方は、私も随分止めましたけれども、その方の判断の部分もあるんですよ、正直なところ。もう引き止める努力をするのが我々の仕事だと、離農者を出さないということが今回の被災に対する一義的な対応の原則だというように思っておりますので、それはしっかり胸に刻んでやらせていただきますが、豚舎の建て替えについてどこまで踏み込めるかについては、またしっかり生産局とも、彼は牛ですけど畜産業者でもありますので、またしっかり考えさせていただきたいと思います。

○紙智子君 ネックになっていることをつかんで、もう極力それに全面的に応えて、やっぱり気持ちが萎えているわけだから、励ますということを是非極力心掛けてやっていただきたいと思います。
 次に、家族農業についてお聞きします。
 今年から国連が呼びかけた家族農業十年がスタートしました。国連決議は、全ての国家に対して、家族農業に関する公共政策を策定し、改善し、実施するとか、家族農業十年の実施を積極的に支援するなど、五つ提起を行っています。
 臨時国会において、輸出促進するための農林水産省の農林水産物輸出対策本部をつくるという法案が出されているわけですけれども、これ、家族農業を推進する体制というのはつくられているんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 基本的に、日本の農業は、大体九八%、規模の小さい方々が地域を守っていただいているというのが日本の農業の現実でありますから、規模の大小にかかわらず、特に小さい方々については、兼業も含めてですけれども、やはり経済政策だけではなくて地域政策という観点から、こういう方にもきちっとした支援をやらなければならないというふうに考えております。

○紙智子君 体制はつくられていないんですよね。本部体制とかというのはつくっていないということでは、やっぱりちゃんと体制つくって推進すべきだというふうに思うんです。
 今大臣が言われましたように、農業の九八%が家族農業ということで、しかし、これは減少していっているわけですよね。
 農林水産省の補助金は大規模化、法人化を要件にしていたり、経営安定対策も認定農業者や面積要件があると。中山間地は、六次産業化ということで、六次化で高付加価値を図って自ら所得を増やすように自助努力を求めているわけです。多様な米農家を支援する制度として歓迎されていた米の直接支払は廃止されたわけですね。多様な家族農業を支援する制度というのは少ないと思うんですよ。
 国連は七つの行動計画を提起しているわけです。その重要事項の第一は、政策で家族農業の強化を実現できる政策環境を構築するというふうにしています。
 多様な家族農家の営農意欲を引き出す政策が必要だというふうに思うんですけれども、大臣の認識をお聞きします。ちょっと全体として短めにお願いします。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) では、短めにお答えいたします。
 確かに、政策的に十分だと私自身は思っておりません。しかし、農地維持支払とか資源向上支払とか日本型直接支払とか環境維持支払とか中山間直接支払制度とか、それから畜産クラスター事業とか産地パワーアップ事業についても、中山間については要件の緩和をいたしました。そして、中間管理機構のいわゆる奨励金の面積集約要件についても、五分の一でもいいですよというふうに中山間に配慮した制度改革も行っております。
 ですから、十分でないことは自覚しておりますが、政策的に全く抜け落ちているというふうには考えておりません。

○紙智子君 十分ではないということはお認めになりつつ、いろいろやっているということなんですけれども、やっぱり米の直接支払交付金をこれ廃止した、これ、多様な農家を支援するものになっていないというふうに思うんですよ。
 むしろ、今、農業政策でいうと、よく言われるのは、官邸農政と言われていますよね。官邸農政と言われていますけれども、農家に希望を示すんじゃなくて、やっぱり不安を与える農政になっているんじゃないかというふうに思うんです。
 今もよく言われるんですが、二〇一二年の十二月の総選挙がありました。このときは、まだ自民党さんは野党だったと思います。安倍総裁率いる自民党は、うそつかない、TPP断固反対、ぶれないというポスターを貼って、ISD条項は合意しないなどを含めた六つの公約を掲げて、それを訴えて有権者から支持をもらって政権に復帰したわけですよ。ところが、政権に就くと、断固反対と言っていたのを忘れたかのようにTPPに突き進んだわけです。アメリカ抜きのTPPなんてあり得ないと、こう言いながらアメリカ抜きのTPPを主導したと、さらに、日欧EPAも、この協定も締結をしたと。そして今度、この国会では、トランプ大統領がアメリカの農民の勝利だと、巨大な勝利だというふうに言ったこの日米貿易協定を承認しようとしているわけですよ。
 大臣は、この日米貿易協定というのは日本の農民の勝利だと言える内容だと思いますか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 厳しい交渉過程の中で、私も、一時官邸農政の、まさに補佐官で官邸におりましたので、総理にも随分お会いする機会も極めて多くて、この交渉の過程においては随分意見を言わせていただいてまいりました。
 その結果として御存じのような結果になったわけでありますけれども、私としては、いいところに最終結論が収まってくれてほっとしております。正直な気持ちです。ほっとしております。これであれば政治家としても農林水産大臣としてもしっかり受け止められる内容に収まったと思っております。
 トランプ大統領が大勝利だと言うことは大統領の御自由なので、それは止めはいたしませんが、私どもは、じゃ、大勝利の反対側で我々は負けたというような認識は持っておりません。

○紙智子君 多くの生産者の皆さんは、誰も日本の農業の勝利だなんて思っていないですよ。本当に思えていないですよ。そういう人いないと思います。
 安倍政権になって農産物の市場開放がどんどん進んできたんですよね。二〇一二年の総選挙でTPP断固反対と言ったのは何だったのかと。いまだに、どこに行っても、これ、農政への不信消えていないです。多くの農家からは経営意欲や経営マインドを奪った農政と言われても仕方がないんじゃないかと。
 関税という言ってみれば農業を守る障壁、これが崩れる状況の中で、生産基盤の弱体化が進んでいます。今年、食料自給率が過去最低になりました。今年の四月に吉川前大臣に私は食料自給率の低迷が続いている要因について聞いたら、吉川前大臣は、農業従事者が減少していると、それから耕作面積も減少しているということが要因だと答えられたんですね。
 これ重要な指摘だと思うんですけれども、江藤大臣の認識はどうでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 前のことをちょっと話してもいいですか。もう駄目ですか。(発言する者あり)
 交渉の内容について、私の地元の話をいたしますけれども、例えば、今回六万五千五トン、アメリカに対するいわゆる四・四セントという低関税枠、これにアクセスできるという状況が整いました。日本の和牛生産は十四万九千トンしか総数でありませんので……(発言する者あり)もうやめます。
 ですから、宮崎の和牛生産農家は、よっしゃ、海外市場に向けて頑張ろうと、これについては非常に有り難いという評価もあるということでございます。
 この吉川大臣の評価について、確かに農地面積減少していると、これはもう事実でありますし、やはり生産面積が減ればそれは生産量も減ることは当たり前ですから、それはもちろん正確な御指摘だと思います。
 農業従事者については、先ほど若干申し上げましたけれども、新規就農が増える一方で、高齢化が理由であったり様々な理由でやめる方もまた片方ではおられますから、やはり従事者が減っている、それから高齢化が進んでいることも背景にあると思っております。
 そういうことも考えながら、私がまだこの職に就く前ですけど、棚田法案のようなものをやらせていただいたりいろんな政策を総動員でやらせていただいて、中山間地域とかそういうところでもスマート農業を導入したいし、それは、条件のいい圃場として整備されたところでも更に生産性を向上するようなことをやらせていただくことがこれからは大事じゃないかなと。
 それから、輸出について若干触れられましたけど、GFPのようなことも取り組ませていただきたいと思っております。

○紙智子君 生産基盤が弱体化していることの背景の問題は否定していないと思うんですね。弱体化している背景の話は吉川大臣の発言を否定しているわけではないというふうに思います。
 それで、生産基盤をどう強化するかと、これ本当に深刻な問題だと思うんです、今。これをどう強化するのかというのが今のこれからの農政に問われる重要な課題だと思っていて、来年は食料・農業・農村基本計画を作る年ですよね。なぜ生産者が減少しているのか、その分析が重要になると思うんですよ。七十過ぎて高齢になってきて、もういよいよ農業をやめなきゃいけないという人もいると思いますよ、確かに。一方で、農家子弟でも農業をしない、それから、まだ農業ができるのに離農する人もいる。
 なぜ離農するのか。これ、新規就農者に対する調査はあるんですけれども、全体を網羅した調査ってないんですよね。先日、香川県に行ったら、米生産の赤字を補填していた直接支払がなくなって経営が苦しくなったという話を聞きました。だから、実際苦しいと言っているんですよ、削られたことが。
 岩手県の盛岡市が年代別の離農理由を書いて調べています。高齢化、それから後継者がいないのに続いて、次が、きつい労働の割には収入が不安定というのが三位なんですね。そして、JA北海道が二〇一四年に公表した離農調査では、後継者がいるもののTPP交渉、投資への不安感から経営を断念したという答えが離農農家の三〇%いたわけですよ。
 農政で大事なのは、やっぱり生産者に希望を持ってもらうことだと思うんです。そのためにも、年代別のやっぱり離農の理由なんかちゃんと調査をすべきだと思いますけれども、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 江藤拓君) 希望を与えるために農政をやれという御指摘は、そうしたいと極めて強く思っております。
 年代別に離農の理由ということを調べることが、どうなんでしょうかね、平成七年、二百五十六万人、基幹的な農業従事者数、六十代が百四十九万人、いろんな統計はありますけれども、多分、地域地域によって理由は違うと思うんですよね。
 私は否定いたしません。私の地元でも、細々と繁殖農家をやっていた人が和牛の繁殖をやめてしまった理由はTPPであったという事実はあります。あります。でも、今は若干後悔されて、また始めた方もおられます、ノウハウは持っていらっしゃるわけでありますから。
 ですから、先生から御指摘いただいたことは外れているとは思いません。所信の中でも申し上げましたけど、いわゆる世代間の年代構造的なバランスというものはいかなる産業でも取っていく必要があると思いますので、そういう人たちがどういう理由で去られたかについて、内部でも、やるやらないも含めて検討させていただきたいと思います。

○紙智子君 生産基盤、農地、それから農業を担う農業者、生産基盤が弱体化した背景に、やっぱりその自由化路線が経営の意欲を奪っているということが大きいと思うんですよ。家族農業に光を当てて支援を呼びかけた国連が家族農業年ということで進めるわけだけれども、この方向にも反することになる。農産物の自由化はTPP水準でやるからいいんだと、行け行けどんどんというのが今ですよね。これではやっぱり自給率を上げることもできないし、生産基盤を強化することもできないと思うんです。
 やっぱりこれは、安倍農政が農業を支える制度や団体を岩盤だといって攻撃をして、総理は自らそれをドリルになって破壊するんだと言ってきたわけで、この路線がやっぱり将来不安をあおっているし生産基盤の弱体化を招いたんじゃないかというふうに思います。
 もうちょっと時間になりましたので、何で生産基盤が弱体したのか、農産物の自由化が影響していないのか、安倍政権の農政がどうなのかということをしっかりとやっぱり検証すべきだと、検証なしに進んでいるのは問題なので検証すべきだということを最後申し上げまして、質問を終わります。