<第198回国会 農林水産委員会 2019年5月30日>


◇日米貿易交渉について/日米協議は、国民の前に明らかにすべきだと主張/大規模な林業経営者が地域外から参入すれば、地域振興や住民の福祉の向上に寄与するという国有林の使命に反することにならないかと懸念を表明/木材の供給過剰が発生すれば、中小規模の林業経営者の経営が困難に陥ることになりかねない。国有林が持つ地域振興という使命にも反することになると指摘

○国有林野の管理経営に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 私も、冒頭、日米貿易交渉についてお聞きをします。
 五月九日の質問の際に、内閣府から交渉はパッケージ合意だという答弁がありました。それで、そういう取決めがあるんであれば資料を提出してくださいというふうに求めたわけですけれども、内閣府からは文書は出せないということだったので、改めて確認をしますけれども、昨年九月二十六日の日米共同声明においてパッケージというのは何を示すのか、説明をしてください。

○政府参考人(内閣官房内閣審議官 大角亨君) 日米貿易交渉では、昨年の九月の共同声明に書かれた内容に沿って進めることとしておりまして、この点は、先月の協議で茂木大臣がライトハイザー代表と改めて確認しているところでございます。また、協議においては、物品貿易とともにデジタル貿易の取扱いについて議論を行うこととされております。
 貿易交渉というものは全てが決まらなければ何も決まらないものでございまして、ある分野だけ先行して合意というやり方は取らないと、こういったことが交渉では基本中の基本だと考えているところでございます。これをパッケージ合意として説明したところでございます。

○紙智子君 その他の分野のその他とは何ですか。

○政府参考人(内閣官房内閣審議官 大角亨君) お尋ねは、昨年九月の日米共同声明では、日米物品貿易協定について、また、他の重要な分野(サービスを含む)で早期に結果を生じるものについても交渉を開始するとされたところというふうにございます。
 これにつきましては、四月十五日、十六日の茂木大臣とライトハイザー通商代表との協議において、早期に結果を生じる分野としてデジタル貿易が米国側から提起されまして、この取扱いについて適切な時期に議論を行うこととされているところでございます。

○紙智子君 共同声明の訳について言うと、日本語では、日米物品貿易協定について、また、他の重要な分野というふうになっているわけですけれども、アメリカ大使館の訳は、物品又はサービスを含むその他重要分野というふうになっていますので、この全体がパッケージということだとすると少し幅広いのかなという感じがいたします。
 それで、昨年九月の共同声明は、農産物について、日本としては過去の経済連携協定で約束した市場アクセスの譲許内容が最大限であるというふうにあります。これは日米間の約束なんでしょうか。

○政府参考人(外務大臣官房審議官 飯島俊郎君) お答えいたします。
 昨年九月の日米の共同声明ということになります。

○紙智子君 まあ約束ということですよね、平たく言えば。

○政府参考人(外務大臣官房審議官 飯島俊郎君) お答えいたします。
 共同声明ということですので、両国間の合意内容ということになりますので、約束というふうに言い換えてもよろしいかと思います。

○紙智子君 この五月の日米首脳会談では、安倍総理が農産物の市場開放についてTPPの水準が上限だというふうに発言したことに対して、トランプ大統領は、TPPは私とは全く関係ない、アメリカはTPPに拘束されないというふうに述べたというんですけれども、これ事実ですか。

○政府参考人(外務大臣官房審議官 飯島俊郎君) お答えいたします。
 トランプ大統領は、共同記者会見におきまして、私はTPPとは関係ない、米国はTPPに加盟していない、他国が合意したことに米国は全く拘束されない等の発言をしたものと承知しております。
 これらの発言は、米国はTPP締約国ではないことから、TPP協定は米国に対して拘束力を持たないことを述べたものというふうに理解しております。
 他方、日米の貿易交渉に関しましては、昨年九月の日米共同声明の内容に沿って進めることで米国と一致をしているところでおります。その中で、農産品につきましては、過去の経済連携協定で約束した内容が最大限であることが明記されており、これを大前提に交渉していく考えでございます。

○紙智子君 なかなか無理があるという声も今上がりましたけれども、TPPに拘束されないという発言は、安倍総理とトランプ大統領が約束した日米共同声明に反することになると思うんですね。トランプ大統領は四月にも実は、日本が米国の農産物に掛ける多大な関税を除きたい、農業関税の撤廃を要求した、四月にもそういうふうに発言しているわけです。これらは日米共同声明に書かれていないわけですよね。トランプ大統領は安倍総理との約束、共同声明を守っていないということになるんでしょうか。

○政府参考人(外務大臣官房審議官 飯島俊郎君) お答えいたします。
 繰り返しになりますけれども、トランプ大統領は、米国はTPP締約国ではないことから、米国に対してはTPPが拘束力を持たないということを述べたものと理解しております。
 いずれにしましても、交渉につきましては、この日米共同声明を大前提に、双方にとってウイン・ウインとなるような合意達成に向けて交渉を続けてまいる所存でございます。

○紙智子君 今、私聞いたのは、トランプ大統領が農業関税の撤廃を要求したと言っている四月の発言、これ共同声明に反しているんじゃないですかと聞いたんですよ。

○政府参考人(内閣官房内閣審議官 大角亨君) 茂木大臣とライトハイザー通商代表で行われている協議、この中では、先週の土曜日におきましても率直に意見交換が行われまして、双方の立場、考え方に対する理解が深められたと、こういったような状況でございます。それぞれの立場が完全に一致していると、こういったような状況ではございませんけれども、今後そのギャップを埋めていくために、実務者レベルでの協議の可能性も含め、更にお互いに努力していくと、こういった形でライトハイザー代表と一致していると、こういった状況にございます。
 トランプ大統領の御発言につきましては、日米の交渉が双方にとって利益となるように、できるだけ迅速に進めたいと、こういったような期待感から述べられているものと理解しておるものでございます。

○紙智子君 期待感というふうに言ってごまかすんだけど、やっぱり違うでしょうと。農業関係のその撤廃を要求したんだと、日本に対して、四月、そういうふうに言っていたわけですから。これ自体が、それまで安倍総理が、共同声明に一致してやっているんだと、つまり、今、過去の経済連携協定が最大限だと、そう言って一致しているはずなのに、そうじゃない話をしているわけですよ。トランプ大統領の一連の発言を見ると、安倍総理との約束、日米共同声明を守る意思はないんじゃないかと思わざるを得ないんですね。
 農林水産大臣にお聞きするんですけれども、これ共同声明から逸脱した発言というのは、直ちに訂正を求めるとか抗議すべきじゃないんでしょうか。六月にも、これからもまたあるわけですから、首脳会談が予定されるということになりますと、安倍総理がその場で何も言わないということになったら、農水大臣としてはそれに先立って何らかのことを言わさないと、黙って何の反論もないということになれば、日本はそれでのんでいるということになってしまうわけで、これ農林水産大臣がきちんと総理に言うべきじゃないんですか。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) 五月二十七日の日米首脳会談後の共同記者会見におけるトランプ大統領の発言についてはもちろん承知をいたしております。この記者会見において安倍総理も明言をしておりますとおり、この両首脳は、昨年九月の日米共同声明に沿って茂木大臣とライトハイザー通商代表との間で議論が進められていることを歓迎をして、日米ウイン・ウインとなる形での早期成果達成に向けて、日米の信頼関係に基づき議論を更に加速させることで一致したものと承知をしていると、総理もこうおっしゃっております。
 この日米交渉につきましては、昨年九月の日米共同声明において、農林水産品については過去の経済連携協定で約束した内容が最大限との日本の立場が日米首脳間で文書で確認をされておりますので、私はこれ以上に重たいものはないとの認識でございますし、さらに、交渉というのは政府一体となって取り組むことになりますけれども、農林水産大臣としての私の責務は、この日米共同声明を大前提に、将来にわたって我が国の農林水産業の再生産を可能とする国境措置を確保することでございまして、このため最大限の努力をしていく考えでございます。

○紙智子君 約束していたことを言ってみれば足蹴にされているような発言を黙っているのかということなんですよ。トランプ大統領は、恐らく八月に両国にとってすばらしいことが発表されると思うと言っているのに、安倍総理は抗議一つしなかったわけですよ。
 私は、思い出すのは二〇一四年のときの四月の安倍総理とオバマ大統領の銀座でのすし会談です。今回はゴルフ会談で、これ、参議院選挙の後にパッケージ合意するような行程を確認したんじゃないかというふうに思ってしまうわけですよ。これ、争点隠しするんじゃなくて、堂々と日米協議の状況を国民の前に明らかにするべきだと、そのことを強く求めておきたいと思います。
 さて、国有林の法律に入ってまいります。
 改正案は、昨年成立した森林管理経営法を補完するもので、意欲と能力のある林業経営者、大規模林業経営者の仕事量を確保するために国有林を提供するという法律です。
 それで、前回の質問で、大規模林業経営者の経営は安定するけれども、現状を維持しながら自分に合った経営をしている中小の林業経営者、自伐型林業経営者が排除されるんじゃないかというふうに聞いたところ、意欲と能力のある林業経営者及び同等の者は対象になるんだと、排除されることはないんだという答弁がありました。
 そこで、何度も使われる経営者像として、意欲と能力のある林業経営者という、これちょっと抽象的な言葉なんですけれども、使われているわけですけれども、意欲と能力のある経営者というのはどういう経営者をいうんでしょうか。

○政府参考人(林野庁長官 牧元幸司君) お答えを申し上げます。
 意欲と能力のある経営者でございますが、森林経営管理法第三十六条の規定に基づきまして、都道府県が公表する林業経営者のことを指しております。具体的には、同条第二項におきまして、経営管理を効率的かつ安定的に行う能力を有すると認められること、二点目として、経営管理を確実に行うに足りる経理的な基礎を有すると認められることをその要件として定めているところでございます。
 また、都道府県に対しましては、林野庁長官通知によりまして、一つには、素材生産に関しまして、生産量又は生産性を一定の割合以上で増加させる目標を有していることに加えまして、主伐後に再造林を実施する体制を有すること、また、直近の事業年度における経理状況が良好なことなどをその選定の際の要件とするように指導しているところでございます。

○紙智子君 ちょっと今まとめていっぱいしゃべられたので分かりづらいんですけど、要するに、森林経営管理法の質疑の中で林野庁長官は、経営規模を拡大することに着目した法案だというふうに答弁をされています。ですから、意欲と能力のある経営者というのは経営規模を拡大しようとする経営者だというふうに思うんですね。
 今お話ありましたけど、昨年、二〇一八年十二月二十一日に、林野庁長官名で森林経営管理法の運用についてという通知を出したと。この経営管理を効率的かつ安定的に行う能力を有すると認められる者ということで、素材生産に関しては、生産量を一定の割合以上で増加させる目標を有している又は生産性を一定の割合以上で向上させる目標を有しているというふうにしているわけです。
 この一定の割合というのは、ちょっともう一回確認しますけれども、どういうことなのか。

○政府参考人(林野庁長官 牧元幸司君) まず、この意欲と能力のある経営者については規模を拡大する経営者だという御指摘でございますが、この意欲と能力のある林業経営者につきましては、森林経営管理法に基づきまして、市町村が一旦集約化しました森林について、その経営管理実施権を受ける者ということを想定しているところでございます。したがいまして、現在のやっております仕事に加えて、そういう市町村が集約化したものを受けていただける方々という意味でございます。
 そのため、御質問ございました一定程度、一定割合についてでございますが、森林経営管理法では、意欲と能力のある林業経営者に、経営管理が現に行われております森林に加えまして、経営管理が行われていない森林のうち林業経営に適するものの経営管理も担ってもらうこととしておるところでございます。このため、その選定基準については、林野庁長官通知において、生産量を一定の割合以上増加させる目標又は生産性を一定の割合以上で向上させる目標を有していることを要件としているところでございます。
 御質問にございました一定の割合につきましては、五年間で約二割又は三年間で約一割を目安としているところでございます。

○紙智子君 つまり、生産量、生産性を一定の割合で増加させる能力があるというのが条件になると。今、五年間で二割、三年間で一割と言いましたけれども、それが条件になると。
 そうすると、現状を維持しながら自分に合った経営をしている林業経営者というのは、これ林野庁通知で言う経営者の対象からは外れることになりませんか。

○政府参考人(林野庁長官 牧元幸司君) お答えを申し上げます。
 この森林経営管理法におきましては、経営管理が行われていない森林につきまして、今後の経営管理を意欲と能力のある林業経営者に委ねるということとしていることから、都道府県に対しまして生産量又は生産性を一定の割合以上増加することなどを要件とするように指導しているところでございます。
 なお、この生産量又は生産性の増加の要件に関しましては、現在の生産量の大小でありますとか生産性の高低を問うものではございませんので、したがいまして、御指摘ございました自伐林家等につきましても意欲と能力のある林業経営者になり得るというふうに考えております。

○紙智子君 対象になるということで、ちょっと確認します、対象になるということでいいんですか。

○政府参考人(林野庁長官 牧元幸司君) 自伐林家等は意欲と能力のある林業経営者の対象になり得ると考えております。

○紙智子君 そうだとすると、ちょっとその通知そのものを変えないと、これ誤解するんじゃないのかなというふうに思いますよ。なかなかそこのところは分かりづらいと思うんですよね。もし対象になるということであれば、通知そのものを分かりやすく変えるべきだと思います。
 今回の改正に当たって、今後供給量の増加が見込まれる国有林の一部について、公益的機能の維持増進や地域の産業の振興等を条件に一定期間、安定的に原木を供給できる仕組みを拡充するというふうに言っています。
 まず、この地域振興という角度からお聞きするんですけれども、現在国有林で伐採を行っている事業者数とその内訳を説明してください。

○政府参考人(林野庁長官 牧元幸司君) お答えを申し上げます。
 現在、平成二十九年度に国有林で伐採を行った実績のある事業体は六百二十八事業体でございます。なお、造林事業を行っている事業体を含めますと七百五十六事業体となりますが、このうち伐採を行った実績のある事業体については六百二十八事業体でございます。六百二十八事業体のうち森林組合が九十四事業体、その他林業事業体が五百三十四事業体となっているところでございます。

○紙智子君 現在、六百二十八事業体ということで、こういうところは契約年数というのは一年から数年ということだと思うんですけれども、今後、意欲と能力がある経営者が地域外から、今まで、今現在やっているのはそうなんだけれども、地域外から国有林に参入してくることになると。しかも、最長で五十年もの木材採取権を手に入れて、販売面でいうと、大手の工場と契約をして販路も確保する、流通コストも削減できる、大型機械も導入して労働コストも削減すると。こうなると、現在の業者よりも外から参入してきた大規模林業経営者というのは有利になるんじゃないんでしょうか。

○政府参考人(林野庁長官 牧元幸司君) お答えを申し上げます。
 まず、今回の新たな仕組みにつきましては、今後供給量の増加が見込まれます国有林材の一部について導入をすることとしておりまして、これまでの供給量に当たる部分につきましては現行の入札による方式を引き続き行っていくということでございます。御案内のように、現行の入札による方式において事業をやっていただいているのは地元業者ということでございますので、地元業者の受注が圧迫されるということは想定をしていないところでございます。
 加えまして、今回の制度におきましては、まずは地域の産業の振興につながるように、樹木採取区は、地域の意欲と能力のある林業経営者が対応できる規模を基本といたします。また、複数の中小事業者が協同組合等として申請することも可能といたします。
 また、樹木採取権者の選定に当たりましては、地域の産業振興への寄与の観点から、樹木料の高低だけではなくて、地域への貢献度合い、雇用の増大とか事務所があるのかといったようなことを総合的に評価をするということでございますので、決して大企業を優先するというものではなくて、地域の林業経営者の育成につながるものであると考えているところでございます。

○紙智子君 そこのところがとても心配でもあるんですよね。つまり、一部の大規模な経営者のために国有林を伐採する権利を与えていくということになると、本来国有林が持っている地域振興とか住民の福祉の向上に寄与するという国有林の使命に反することにならないかという心配を実は持っているということであります。これは答弁要りません。
 加えてお聞きしますけれども、国有林野管理経営法について、林業関係者は冷やし玉が投げられると言っているらしいんです。冷やし玉って何ですかと聞いたら、今回の改正によって木材の供給量が増えて市場価格が冷やされるんじゃないかということなんですね。供給量が増えて木材価格が暴落するんじゃないかという話も言っていました。
 そういう事態になるんじゃないか、そういう心配なんですが、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) 今回の樹木採取権制度につきましては、今後の国産材需要の更なる拡大に応じた供給量増加の流れの中で、国有林においても増加する供給量の一部において導入をしていく考えでございます。
 樹木採取権の設定を受ける者につきましては、木材需要の開拓等を行う川中、川下事業者と安定的な取引関係を確立することを要件とすることによりまして、民有林の木材供給の圧迫と木材価格の下落を回避することといたしております。
 今後も引き続き、CLTや非住宅分野等における新たな木材需要の創出と国産材の安定供給体制の構築を車の両輪といたしまして併せて実施をしていくことにより、この木材生産量の増加と適正な木材価格の両立を図ってまいりたいと思います。

○紙智子君 林業関係者が言うところの冷やし玉というのは二つあると思うんですね。一つは、今回の改正によって国産材の供給量が増加することと、二つ目は、市場開放、自由化で海外からの輸入量が増加することです。
 それで、確認をしておきたいんですけれども、二〇一六年の林業・森林基本計画において、国産木材の供給量と輸入量がどう変化するのか、これ二〇一四年と二〇二五年の量を説明していただきたいと思います。

○政府参考人(林野庁長官 牧元幸司君) お答えを申し上げます。
 この二〇一六年の森林・林業基本計画におきましては、二〇二五年の木材の総需要量の見通しを七千九百万立方、国産材の供給量の目標を四千万立方としておりまして、残りの三千九百万立方については輸入により賄われるものと想定をしているところでございます。
 二〇一四年の実績でございますけれども、木材の総需要量は約七千六百万立方、国産材の供給量は約二千四百万立方、輸入量は約五千二百万立方となっているところでございます。

○紙智子君 今お話あったんですけれども、国産の木材供給量は今の話だと二千四百万から四千万になると、輸入でいうと五千二百から三千九百万になるということだと思うんですけれども、現在のこの林業・森林基本計画の見通しというのは現実的な見通しかというと、そうではないんじゃないかと思うんですね。なぜならば、昨年来、林業改革と市場開放が行われているからです。今回の国有林野の改正によって、基本計画以上に国産木材の供給量が増えるんじゃないかと思うんですけれども、いかがですか。
 それともう一つ、しかも、基本計画では供給量は二千四百万立方メートルから二倍近い四千万立方メートルに増えるわけですから、これ木材価格は下がるんじゃないかと思うんですけど、いかがですか。

○政府参考人(林野庁長官 牧元幸司君) お答えを申し上げます。
 御指摘ございましたように、二〇一六年に閣議決定をした現行の森林・林業基本計画におきましては、国産材の供給量の目標は、二〇二〇年に三千二百万立方、二〇二五年に四千万立方となっているところでございます。
 この見通しに対しまして実績ということでございますけれども、国産材供給量につきましては、二〇一四年の二千四百万立方から二〇一七年には三千万立方まで増加をしているというふうに承知をしております。
 なお、価格についての影響ということでございますが、基本的には国産材の需要に応じて供給が伸びていることから、この間におきまして大きな価格の変動がなかったものと承知をしております。

○紙智子君 いや、本当に価格に影響ないのかなと。現場の感覚としては、今までの経験上、これはやっぱり供給が増えてくると下がるんじゃないかという感覚で受け止めていて、本当にないのかと。基本計画どおりに輸入が減っていくのかということもあると思うんですけれども。
 TPP11が年末に発効しました。林野庁が示した影響試算なんですけれども、合板などの関税は十一年目あるいは十六年目で関税は撤廃になるわけですよね。製材とかSPFの関税は、カナダは十六年、それからカナダ以外は十一年目までに撤廃されると。ニュージーランドは即時撤廃ですよね。それぞれ長期的には国産材の価格の下落も懸念されるという分析をされているわけです。
 日EU・EPAも発効しました。構造用の集成材、SPF製材、合板の関税というのは、一部を除いて八年目には撤廃されます。これ、関税引下げの影響が懸念されるというふうに分析もしているわけですよね。
 TPP11、日EU・EPAの発効によって、国産材の価格が下落するんじゃないんでしょうか。その点はいかがですか。

○政府参考人(林野庁長官 牧元幸司君) お答え申し上げます。
 TPP11におきましては、合板、製材等の国境措置といたしまして、委員御指摘ございましたように、即時関税撤廃を回避をいたしまして、長期間の関税削減期間の設定、またセーフガード措置を確保したところでございます。また、日EU・EPAにおきましても、製材、構造用集成材の国境措置として一定の関税撤廃期間を確保しているところでございます。
 他方、長期的には関税引下げの影響による国産材の価格下落が懸念をされることから、農林水産省といたしましては、総合的なTPP等関連政策大綱に基づきまして、木材加工施設の生産性向上支援、競争力のある品目への転換、また、効率的な林業経営が実現できる地域への路網整備、高性能林業機械の導入といったような国内対策を講じているところでございます。
 引き続きまして、木材製品の輸入動向を注視してまいりたいと考えております。

○紙智子君 対策は打っているから大丈夫なのかというような話なんですけれども、北海道は、安価な輸入製品の流通拡大によって道産の木材、木製品の価格が低下をし、木材関係者への影響が懸念されています。価格の低下に伴って原料となる丸太の価格も低下をし、素材生産者への影響も懸念されるというふうに言われております。
 市場開放、貿易自由化によってこの木材価格が下落する危険性があるのに、そこに国有林から国産材を大量に供給すればこの木材価格が下落する危険性があると思うんですね。言わば、国有林の改革、通商交渉、この二つの冷やし玉によって、木材の供給量が全体としては増加をし、価格が低下するんじゃないかと。大臣、これいかがですか、受け止めておられますか。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) その二つの懸念でありますけれども、特に、今林野庁長官からも答弁をしましたとおり、日EU・EPA、TPP関連で御答弁を申し上げたいと思いますけれども、協定の発効に際して、この長期間の関税削減期間の設定ですとかセーフガード措置など国境措置を講じておりますほか、総合的なTPP等関連政策大綱に基づきまして、この林業、木材産業の生産性の向上、国産材の消費拡大など万全の国内対策を講じているところでもございますので、協定発効後の動向も注視しながら、我が国のこの林業、木材産業の方々が安心して事業に取り組めますよう環境をしっかりと確保できるように、政府一体となって必要な施策を講じてまいりたいと、こう思っております。
 また、もう一つの御懸念でございまするけれども、この樹木採取権制度等について、今後の国産材需要の更なる拡大に応じた供給量増加の流れの中で、国有林においても増加する供給量の一部において導入していく考えでもございますので、この設定を受ける者については、木材需要の開拓等を行う川中、川下事業者と安定的な取引関係を確立することを要件とすることによって民有林の木材供給の圧迫と木材価格の下落も回避することといたしておりますので、今後も、木材生産量の増加ですとか適正な木材価格の両立を図ってまいりたいと思っております。

○紙智子君 ちょっとなかなかすっきりと確信が持てるような話じゃなかったと思うんですけど。
 冷やし玉と言ったんですけれども、この木材の供給過剰が発生すれば、これは中小規模の林業経営者の経営が困難に陥ることになりかねないと思うんですね。国有林が持っている地域振興という使命にも反することになるんじゃないかということを指摘しまして、あと残りはまた次回にしたいと思います。
 終わります。