<第198回国会 農林水産委員会 2019年5月28日>


◇参考人質疑/未来投資会議で竹中平蔵氏から提案され、トップダウンで立案された経緯を上げ、見解を聞いた

☆参考人
信州大学工学部特任教授 鮫島 正浩君
全国国有林造林生産業連絡協議会会長 高篠 和憲君
愛媛大学名誉教授 泉  英二君

○国有林野の管理経営に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 三人の参考人の皆さん、今日は本当にありがとうございます。
 私、ちょっと議論聞きながら改めて感じていることは、先ほど泉参考人からのお話にもあったんですけれど、資料も出されていたんですけれども、我々自身がどれだけ国有林の実態を正確につかんでいるのかなというところがまず一つあって、その資料の中で見ても、実際の蓄積量が、これ、民有林の平均と国有林ということでさっき示されていましたけれども、実は国有林の方がそんなに蓄積されているわけじゃないという、そういう実態なんかも含めて、やっぱり正確にちゃんとつかんで落ち着いて議論しなきゃいけないなということが一つです。
 それで、なぜかしら、何か、みんなの意識というか、いや、国有林、木は切るところに来ていて、だからどんどん切っていかないと大変だみたいな、何か焦りのような、そういうものがあるんだけれども、実際には、別にどこにも木は逃げていくわけではなくて、落ち着いてやっぱりそういう状況をつかんで、どういう山づくりをしなきゃいけないかというところをもっとやっぱりちゃんと議論をしなきゃいけないんだけど、そこが余りされていないじゃないかということを一つ感じています。
 それで、その上でなんですけど、実は、これは三人の方にお聞きしたいんですけれども、先ほども話がありましたけれども、やっぱり国有林の今回のこの管理経営法案のきっかけというのは、林野庁も認めていましたけれども、二〇一七年の五月の未来投資会議で竹中平蔵氏の提案が始まったと。それで、この会議の中で、成長戦略と構造改革を進めるということで、未来投資会議というのは言ってみればその司令塔という役割なんですけれども、その中で出された提案について、林野庁はそれに対して何か見解言ったんですかと聞いたら、先週、その質問に対しては、いや、出さなかったという答弁だったわけですね。
 それで、その後、六月の時点では、その提案は出していない、見解出していないわけですけれども、方向性が未来投資会議二〇一七年ということで閣議決定をされたと。
 去年、二〇一八年の五月に、竹中氏が再び、国有林野への新たな民間手法の導入の必要性についてという提案を出して、今後は国有林などの分野でいわゆるコンセッションのような考え方を導入して大胆に改革の仕組みをつくることが不可欠ではないかという発言があり、会議の最後のところで、安倍総理が、国有林の一定区域も含めて長期、大ロットで事業を行うことができるように、農林水産大臣は法整備に向けて取り組んでほしいというふうに指示を出したと。
 それで、その間に林政審もやられていて、土屋会長ですかね、衆議院の方で参考人で言われていたのは、トップダウンでやられているという問題と同時に、それでも最小限のその議論はできたというふうに言われたそうなんですけれども、ちょっとこの経過を見ますと、国民の共有の財産である国有林がそういう形で、扱いで議論されて決められていくということで果たしていいのかということを私は強く考えるわけなんですけれども、そのことについて、三人の方からまずは御意見伺いたいと思います。

参考人(信州大学工学部特任教授 鮫島正浩君) いろいろな重要なことを、意見を言われているんじゃないかなと思うんですが。
 まず、質問に入るかどうか分からないんですが、国有林の蓄積量が少ないというのは、一つは、私は、地域、場所の問題があるんじゃないかなと思います。国有林はやはり北に多いということで、当然南には民有林が、九州なんかは多いわけで、そうすると、アベレージで見るとやはりこういう結果になるんだと思うので。あと、国有林、やはり奥山もありますし、いろいろ考えるとやはり量だけで議論はできないかなと、個別にきちっと見なきゃいけないなと思います。
 それから、山づくりの議論が少ないんじゃないかということなんですが、私は、山づくりの議論は林野庁さんを始め相当やっぱり議論されていると思います。
 それから、先ほどの儀間議員の御質問の中にもあったんですが、今の人工林というのは、これから、今一千万ヘクタールあるんですが、これ、百年後ぐらいを想定するんだと思うんですが、六百六十万に減らすという方向で、やはり戦後、奥山まで造林をして、本来そこに人工林持っていくような場所じゃないところまで人工林になっているということで、これは育成複層林に移行していくという、そういう施策も森林・林業基本計画の中にはちゃんと盛り込まれています。
 ですから、そういう意味では、山づくりの議論は一方でされているということであると思いますし、これは、足らないと思うんだったらもっと議論をしていただいて、徹底的にやっていただきたいというふうに思っています。
 それから、長期、大ロットということなんですが、下流の人間、私、木材とかバイオマス利用するための立場の人間ですけど、そこから見ると、今計画しているものは決して大ロットではありません。あくまで試行です、これは。今の規模でやるんだったらそんなに大きくないから、試行ということで、ここでやはりいろいろ経験を積んでいただきたいというぐらいの気持ちで見ております。ですけど、これが、要するに、更にどんどん大ロットで展開していくとなると、やっぱりこれはちょっと余り急ぎ過ぎない方がいいというふうに私も思っています。
 それから、長期といっても、五十年という話が出るとまあ長期なのかもしれないですけど、五年です。五年というのは、どんなプロジェクトもやるにしても最低期間五年なんですね。ですから、決して長期ではなくて、何かをやるには五年、そしてもう一回で十年、これは基本的な単位だと思います。現在の再生可能エネルギーのものも二十年まで見ているわけですね、あれも。でも、小規模なやつは十年とかですね。大体、ですから、そういう意味では妥当なところかなと思います。
 それから、トップダウンということなんですが、トップダウンはいつも付き物で、森林・林業再生プランのときも菅首相のトップダウンで、私から見たら突然始まった議論だと思っているんですね。でも、そういうことを言う人はいていいんじゃないかと思うんですね。それをどう受け止めて、どう議論して、どう展開するかということが一番私は大事だと思います。ですから、最初にそういうことを言ったというのは事実かもしれないけど、それは余り気にしなくていいというのは私の思うところです。むしろ、この議論をきっちりやるということだと思うんですね。それで、今やはり議論を更にきっちり継続していくということが大事かなと思います。
 ということで、以上でございます。

参考人(全国国有林造林生産業連絡協議会会長 高篠和憲君) ちょっとお答えにならないかもしれないんですけれども、感想的に。
 国有林では、人工林の場合、僕らが聞いているのは伐期六十年と聞いていて、北海道の道有林の場合は五十年と聞いているんですよね。その辺も含めて、我々にとって、先ほど議論の中で、泉参考人の方から、五十年じゃなくて百年、百五十年と長く見ていかなきゃならないでしょうという御質問もあったんですけど、今我々の現実では、長期に太くして売ろうと思って皆さん造林しっかり頑張ってきたんですけど、そのいい例が、今、林業協会というか、いろいろマスコミにも出ていらっしゃる速水林業のオーナーが、私どもも見学行ったんですけれども、長伐期でいいヒノキを作るといって、百年と長くやっていたんだけど、全然売れないわということで、今は杉を四十年、五十年、早くに切って売っている方に方針変えたよと言っているんですよね。
 我々自身も、東北でも私ども見学してましたけれども、三十センチ、四十センチと大きくなった木を高く売りたいんですけれども、いや、そんな木、太い木は重いし、別に今は製材機械いいから、どんどん切れるから太くなくていいよと、逆に二十センチ台の方が高くて三十センチ台が低いというような現実があるんですよね。
 それとあと、人工林の場合は、私どもどうも、切っているんですけど、六十年、七十年たった木は、本当、先ほど私言ったんですけど、ちょっと腐れが多くて、高い木の比率、我々はパルプ率、原材料率というんですけど、山から出てきたやつがひどいときは六〇%がもうパルプ原料材、あるいはバイオマスに向けるしかないというような木が、もう節だらけ、あるいは腐れが入ってくるような木が結構あって、やはり五十年というのは一つのサイクルかなと。やはり、五十年でやはり人工林は植えて育ててというふうに回していけば、その中でちゃんと仕事動いていくんじゃないかと。中には、はりとかで太い木が欲しい、高く売りたいというのはあるんですけど、実際は今集成材の技術とかもあるので、太い木要らないよと今はなっているんです。でも、やはり一本の無垢でどんといい柱をやってみたいというのは私ども今でもそう思っていますけれども、現実はそうではないかなと。
 それに含めて、我々も議論をかなり林野さんとはしているつもりなんですけれども、林業そのものは議員さんとかそれほど余りお願いもしていないし、PRが悪いんですけれども、やはり林業のことをもっともっと深く知ってほしいなというふうにはいつも思っています。それはちょっと答えにならないかもしれないですけれども。
 そういう意味で、いろんなところで今こうやって関心が出てきたので、皆さんで議論をして、いい方向で、それにうちらも対応したいと思っておりますので、よろしくお願いします。

参考人(愛媛大学名誉教授 泉英二君) 竹中さんのようなところから下りてきていることについてどう思うかということでよろしいんでしょうか。

紙智子君 そのことと、それから、国有林に対する扱いということについて。今、下ろされてきて、そういう人が、言う人がいてもいいんじゃないかって話ありましたけど、そういうことでもってこの流れで閣議決定されて今法律として出されてきているという、そういう国有林野そのものの扱いについて。

参考人(愛媛大学名誉教授 泉英二君) 国有林の何の扱いを。

紙智子君 何というんですか、どう山づくりをするかということも含めて、要するにトップダウンで下ろされてきたものを議論していくという、そういうことでいいのかどうかということなんですけど。

参考人(愛媛大学名誉教授 泉英二君) それでは、まず、未来投資会議等からの強い力でという今回のこと、これがあったことはもう事実だと思います。
 それで、政府、林野庁の方におかれてはかなり苦慮されたと思います、私。やはり、林野庁という、林業にとっては最大組織ですけど、林野庁にとっては国有林は一番ランクの高い位置付けになり、二番目に治山、林道、森林整備という公共事業、三番目が民有林と、これ十年ぐらい前までずっと言われている、国有林はもう林野庁にとっては最も重要な問題ということ。
 ですから、恐らく今回非常に苦労されて、それで法案自身も半分ぐらい骨抜きにして、それから、運用というところでどうして十年十年とそう言うのと。そんなの今頃から十年と言っていていいのぐらい、いろんな運用について情報を出しまくりというような形というので、結果的に、恐らく一番しんどいと思われたストレートなコンセッション方式ということはほぼ、運用も含めて、法案の条文及び運用を含めてある程度抑え込めたということで、良かったと思っていらっしゃるんじゃないんでしょうかね。
 ただ、私は、実は竹中さんの方もそれほど不機嫌じゃないんじゃないかと思うのは、やっぱり道は開いたんですね。道は開くんですね、今回。道は開いた上で、政権が替わってしばらくしたらこれを廃止するのか、はたまた省令、政令で更に強化してうまく使っちゃおうというような形の方が強まるのかということは、これは今後の運用次第という。それはもう国会にかけなくても政令、省令でできますということで、今、十年と言っていますけど、あれ根拠がないわけですというようなこと。五年でやっている、その契約を交わしますという、それももう、どういう制度を変えることも実は国会を通さなくて変えられるわけです。ですから、そういうところに向けて今回道を開くんだということはやっぱり大きく残ることだろうということ。
 それから、国有林の問題、もうやはり一般論、総論というような形の段階かどうかということについては、事態は、国有林、それから民有林も去年の場合というような形を含めて、今、去年、今年を通じて日本の林政は戦後恐らく極めて大きい転機に来ているという、そこの転機に当たっていろんな問題、課題が噴出してきている。
 先ほど、五十年で皆伐論ということについても、高篠参考人とか、いろいろ私ども意見がちょっと違っているようにも見えるかもしれませんが、いろいろ話し合えば余り違っていないとは思うんですけれども、そういうところがどうもオープンに議論されない。
 なかなか担当している林野庁さんが、これまでやはり自然保護運動から始まる様々な社会的な運動を、非常に痛め付けられてこられている省庁ですので、どうもオープンに議論してみんなにもっと問題を投げかけていくという姿勢に欠けていると、全部自分でしょい込んでしまって苦労していらっしゃると。それはやっぱり全部、森林・林業基本法だ、森林法だ、国有林野管理経営法だ、全部に縛られた形の中で御苦労されているということを、ぼつぼつ、この林政大転換期に当たってもう一度大きく見直していただくということを是非参議院の皆様方にもお願いできたらということでございます。

紙智子君 ちょっとあと二つ聞こうと思ってたんですけれども、時間が来てしまっているので、御意見をこの後の議論に生かしていきたいと思います。
 どうもありがとうございました。