<第198回国会 農林水産委員会 2019年5月16日>


◇農地中間管理事業の推進に関する法律等の一部を改正する法律案に対する反対討論

○農地中間管理事業の推進に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党を代表して、農地中間管理事業の推進に関する法律等の一部改正案に対する反対討論を行います。
 第一に、反対する理由は、安倍官邸農政の基本を維持するものだからです。
 安倍政権は、日本再興戦略で示した農地面積の八割を担い手に集積するために農地中間管理事業をつくりましたが、農地集積が目標どおり進まず、地域の話合いを再活性化するなど、改善を余儀なくされました。しかし、農産物の自由化に合わせて担い手の生産コストを下げることや、企業の参入を促進すること、農業委員会の関与を極力減らすこと、耕作放棄地は置き去りなど、中間管理機構が持つ本質的な問題は変わっていません。
 第二は、農地利用集積円滑化事業を廃止するからです。
 円滑化事業は、市町村が基本構想を策定し農用地の利用の集積目標を定めて実施するもので、基本構想は自治事務であって、県の方針を参考にはするが、地域の実情を踏まえて独自に設定することができます。日本再興戦略で示した目標を市町村に押し付けてはなりません。参考人からは、円滑化事業で頑張っているところはこれからも頑張ってもらう道を残しておくべきだという意見が出されました。円滑化事業を廃止する必要はなく、中間管理事業と連携するなど、地域の実情に委ねるべきです。
 第三は、農地事業は農地行政で最も重要な事業ですが、農地の番人である農業委員会の役割を弱め、農地中間管理機構の下請機関にするものだからです。
 規制改革会議や産業競争力会議の求めに応じて農業委員会を排除しましたが、農地集積が目標どおり進まなくなると、農業委員会に協力を求めるといいます。初めは排除し、うまくいかなくなったら協力を求める、こんな御都合主義はやめるべきです。農業委員会の関与を高めるべきです。
 第四は、土地持ち非農家の増加や高齢化、農産物価格の低迷で耕作放棄地、荒廃農地の再利用が課題になっているのに、耕作放棄地対策、中山間地対策がないからです。
 第五は、全国的に農業経営を展開できる認定農業者をつくり、農地所有適格化法人の中でグループ経営を行う際に役員要件を緩和して労務管理を広域で行うなど、アグリビジネス化を推進しています。国連は家族農業十年を提唱していますが、家族農業への支援を強化すべきです。
 参考人からは、農業と農村を再生させるためには、農地だけでなく集落全体をどうするか地域で話合いを進めながら、所得補償など農家の生活を保障することが大事だと言われました。地域の維持、再生という角度からの対策が必要であるということを申し上げて、反対討論とします。

委員長(堂故茂君) 他に御意見もないようでありますから、討論は終局したものと認めます。
 これより採決に入ります。
 農地中間管理事業の推進に関する法律等の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。

〔賛成者挙手〕

委員長(堂故茂君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、田名部君から発言を求められておりますので、これを許します。田名部匡代君。

田名部匡代君 私は、ただいま可決されました農地中間管理事業の推進に関する法律等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・国民の声、立憲民主党・民友会・希望の会、国民民主党・新緑風会、公明党、日本維新の会・希望の党及び日本共産党の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。

農地中間管理事業の推進に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  農業者の減少及び高齢化、農地面積の減少が進む中、農業の生産性を向上し、持続可能なものとすることが不可欠である。そのため、担い手の育成・確保を図りつつ、担い手への農地の集積・集約化を加速化させること等により、農用地の利用の効率化及び高度化を一層促進することが重要である。
  よって政府は、本法の施行に当たり、次の事項の実現に万全を期すべきである。
 一 地域における農業者等による協議の場において作成する人・農地プランが、単に支援措置を活用するためのものではなく、地域の農業の将来像を見通すことのできるものとして実質化されるよう、地域の農業事情に精通した市町村、農業委員会等が、農業者等の協議において調整能力を発揮しうるよう、その活動に対して十分な支援を行うこと。
   また、農業者等による協議の場が適時適切に開催されるとともに、その協議の場に地域の農業者はもとより、新たに農業経営を営もうとする者等多様な農業者等が参画し、十分な議論を行い、関係者の合意が形成されるよう留意すること。その際、これらの取組に対して十分な支援を行うこと。
 二 農地利用集積円滑化事業の農地中間管理事業への統合一体化に当たっては、これまで旧円滑化団体が実績を有している地域において混乱が生じないよう、旧円滑化団体の機能が存続し、効果を発揮していることを明確化した上で、本改正内容を丁寧に周知すること。
 三 農地中間管理機構が、農用地利用配分計画案の提出等の協力を求めることができる対象として追加される市町村が指定するものの基準については、各地域における農地の集積・集約化の取組等を踏まえ、旧円滑化団体を位置付ける等、地域の実情に即した実効ある体制を整備すること。
 四 中山間地域等の条件不利地域においては、農地の受け手不足等、平坦地との格差により農地の集積・集約化を進めることが困難であることに鑑み、当該地域の実情を考慮した事業運用を図るとともに、関連施策との連携を図る等効果的な支援措置を講ずること。
 五 複数の市町村にわたる農業経営改善計画の認定等に当たっては、申請する農業者に混乱を生じさせず、円滑な認定等が行われるよう、農林水産省、都道府県及び市町村が相互に協力・連携する体制を整備すること。
 六 農用地利用改善団体が農用地利用規程に利用権の設定等を受ける者を認定農業者及び農地中間管理機構に限定する旨を定めようとするため、農地の所有者等の同意を得るに当たっては、極力、全ての農地の所有者等の同意が得られるよう努めること。
 七 認定農業者及び認定新規就農者に関する情報の利用等に当たっては、本法の施行に必要な限度を超えることのないよう十分に配慮すること。
 八 新規就農者の定着状況について把握・分析し、その結果と現場のニーズ等を踏まえながら、新規就農に係る支援措置を講ずること。
 九 農地転用の不許可要件として追加される、地域における効率的かつ安定的な農業経営を営む者に対する農地の利用の集積に支障を及ぼすおそれがあると認められる場合について、具体的な事項を早急に示し、転用期待の抑制につながる実効性あるものとすること。
 十 この法律の施行後五年を目途として、施行状況等の勘案を行うに当たっては、施行直後より、農地及び農業経営をめぐる多様な状況、農地の集積・集約化によるコストの低減効果等について、常時、きめ細かく把握し、分析すること。
   右決議する。

 以上でございます。
 何とぞ皆様の御賛同をお願い申し上げます。

委員長(堂故茂君) ただいま田名部君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。

 〔賛成者挙手〕

委員長(堂故茂君) 全会一致と認めます。よって、田名部君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。