<第198回国会 2019年3月20日 農林水産委員会>


◇消費支出が減少する中での消費税増税に対する見解を問う/仕入れ税額の増税分を価格に転嫁できない生産者は手取りが減少しかねないと指摘/消費税免税事業者の生産者はインボイスの発行ができないため、取引から排除されるか、課税業者になることを迫られるのではないかと追及/インボイス制度は、複雑な手続きと混乱をもたらし経営悪化をもたらしかねないと指摘し、消費税10%増税の中止を求めた

○平成三十一年度一般会計予算(内閣提出、衆議院送付)
 平成三十一年度特別会計予算(内閣提出、衆議院送付)
 平成三十一年度政府関係機関予算(内閣提出、衆議院送付)について(農林水産省所管)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。  今日はちょっと消費税の質問をいたします。  最初に、消費税が八%から一〇%へと増税になります。それについてお聞きします。  総務省の家計調査によりますと、二人以上の世帯の実質消費支出は、第二次安倍政権発足後の、直後の二〇一三年、平均三百六十四万円から直近一年間の平均で三百三十九万円ということで、二十五万円減りました。消費支出が増えないということは、これは生産者にとっても喜べることではありません。  このような状況で消費税を増税することがいいのかということについて、まず大臣に御見解を伺います。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) 消費税率の引上げにつきましては、法律で定められたとおり十月に現行の八%から一〇%に引き上げられる予定であると承知をいたしております。  農林水産省といたしましては、この消費税率の引上げに伴いまして、低所得者の負担を軽減するための飲食料品等を対象に実施される軽減税率制度や政府全体で措置されている各種関連対策につきまして、財務省、中小企業庁等の関係省庁や業界団体とも連携をいたしまして、農林水産関係事業者に丁寧に説明をしながら、その理解や準備も促してまいりたいと存じます。

○紙智子君 それで、具体的に聞いていきたいと思います。  まず、農業者の消費税の課税状況ということについてです。まず、農業者数は何人いて、そのうち免税事業者、それから簡易課税事業者、課税業者は何人でしょうか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 大澤誠君) お答えいたします。  二〇一五年の農林業センサスによりますと、農業者数という御質問ですが、農業経営体数は百三十八万経営体でございます。  このうち、農産物の販売金額が一千万円未満の経営体、これはほとんどが免税事業者ですけれども、ただし、その中でも課税事業者選択することは可能ですので、正確には一緒ではございませんが、ほとんど免税事業者が、これが一千万未満の方が百二十五万経営体、それから、逆に言いますと、農産物販売金額が一千万円以上は全体で十二万七千経営体、これがほぼ課税事業者の数に相当いたします。そのうち、農産物の販売金額が一千万円以上五千万円未満、この方のほとんどが簡易課税事業者に相当いたすと思っておりますけれども、これが十一万経営体となっております。

○紙智子君 農業の場合、この免税事業者が百二十五万人で、これ全体の九一%なんですよね。ほとんどが家族経営だと思いますけれども、消費税の増税が生産者にどういう影響があるのかということをお聞きしたいと思うんです。  それで、まず財務省にお聞きします。消費税の事業者免税点制度があります。これ、なぜこういう制度をつくっているんでしょうか。

○政府参考人(財務大臣官房審議官 小野平八郎君) お答え申し上げます。  事業者免税点制度についてのお尋ねでございます。  消費税の事業者免税点制度につきましては、前々年又は前々事業年度の課税売上高が一千万円以下の小規模な事業者につきまして、消費税の納税義務を免除する制度でございます。これは、制度の公平性や透明性を著しく損なわない範囲内で、中小事業者の事務負担に配慮し、実務の簡素化のために設けた特例措置でございます。

○紙智子君 つまり、課税売上高で一千万円以下の事業者はこの消費税納税を免除すると、それは小規模事業者の事務負担を軽減すると、そういう制度ということです。  今年十月から消費税が八%から一〇%に引き上げられると。八%を適用する品目、軽減税率ですね、それと一〇%を適用する品目、標準税率に分かれますので、これ複雑になってまいります。  そこで、免税事業者のケースについてお聞きします。生産者は、種子や肥料やこん包材、燃料などの仕入れには一〇%の消費税が課税されますけれども、食料品や米や野菜、食肉などですね、飲食料品に出荷するときには八%ということになります。生産者は自分で価格を決めることが困難です。免税事業者のケースですけれども、仕入れで消費税が二%上がりますけれども、その費用を価格には転嫁できないと。そうなると、農家の手取りが減少するんじゃないでしょうか。これ、大臣、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) 免税事業者でありましても、仕入れやこの諸経費の支払において消費税を負担をいたしております。この分は転嫁する必要があると存じますが、取引先が免税事業者であることを理由に消費税の転嫁を拒む場合は、消費税転嫁対策特別措置法の転嫁拒否、いわゆる買いたたきに該当することになります。このような場合におきましては、内閣府や農林水産省の転嫁等相談窓口に通報をいただけますれば、消費税転嫁対策特別措置法に基づきまして、消費税の転嫁を拒む事業者に対して調査、指導等を行い、改善を求めることになろうかと思います。  いずれにいたしましても、必要な消費税の転嫁が円滑にできますように十分配慮をしてまいりたいと存じます。

○紙智子君 免税業者も、ですから負担はしなければならないということになっているわけですけれども、それで、仕入れの税額が二%上がると、価格に転嫁できないから、その分は農業者の取り分は減少すると。  それで、消費税の一〇%に上がることに伴ってインボイス制度が導入されるわけですけれども、財務省にお聞きしますけれども、このインボイス制度について説明をお願いします。

○政府参考人(財務大臣官房審議官 小野平八郎君) お答えいたします。  インボイス制度につきましては、売手が買手に対し正確な適用税率や税額を伝える仕組みといたしまして導入するものでございます。課税事業者であります売手は、買手の求めに応じまして適格請求書、これがいわゆるインボイスでございますけれども、適格請求書の交付が義務付けられます。その上で、インボイスの保存というものが買手の方の仕入れ税額控除の要件となるという制度でございます。  この制度は、欧州諸国も含め、諸外国の付加価値税制度の中で幅広く採用されているものでございます。複数税率が導入されますと、その下で、例えば売手が軽減税率で申告し、買手は標準税率で仕入れ税額控除をするといったような食い違いを防ぐことがこの制度によってできるのではないかと考えております。

○紙智子君 なかなか聞いていても分かりづらいというふうに思うんですけれども、要するに、今、仕入れるときも出荷するときも今は税率は一本で八%ということなんですけれども、それが複数税率になると、出荷するときに八%なのか一〇%なのかと、こういうどちらの税率で売り渡したのか分からなくなってしまうと。だから、八%で売ったのか一〇%で売ったのかということを明確にするということでこういうインボイスなんだと思うんですね。  それで、生産者は、出荷先や取引先がこの仕入れ税額控除を使いたいと、で、生産者にインボイスの発行を求めてきた場合どうするのかというふうに聞きますと、農水省は、それは経営者の判断だ、課税事業者になることもできるんだと、経過措置もあるんだというふうに言っております。しかし、現実的に、この免税事業者の生産者が出荷先、取引先から仕入れ税額控除ができないので取引を断られるというケースもこれ生まれるんじゃないんでしょうか、いかがですか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 大澤誠君) お答えいたします。  まず、免税事業者である農業者が農産物を販売するルート、いろんな場合がございますので、それぞれに分けて御説明をしたいと思います。  まず、農業者が消費者に直接農産物を販売する場合、これはもう最終消費者でございますので、それを消費者の方がまた売るとかいうことは考えないから消費者でございますので、そもそも仕入れ税額控除の問題が生じないということでございまして、この点につきましてはインボイス制度導入後も条件が変わるものではないというふうに考えてございます。  それから次に、免税事業者である農業者が農協や卸売市場に委託して農産物を販売する場合、これは非常に多いと思いますけれども、これにつきましては、農協等の発行する請求書で仕入れ税額控除ができるという特例が措置されております。そういうことでありますので、これが多くの場合だと思いますが、これもインボイス制度導入後の条件は変わらないものと考えてございます。  次に、免税事業者である農業者が農協などに委託しないで農産物を事業者に販売する場合、こういう場合でございますが、この場合につきましては、むしろ質や鮮度に着目した取引なので直接販売をするということになると思います。ですので、ここについては仕入れ税額控除の、インボイス導入後に条件は変わりますけれども、仕入れ税額控除ができるか否かという観点のみで取引が行われたり行われなかったりするというよりも、その鮮度それから質、こういうものに着目している場合が多いと思います。  先ほど先生からも御指摘ございましたけれども、インボイス導入は二〇二三年の十月からでございますし、その後、三年間はこの仕入れの、免税事業者の仕入れの八〇%について仕入れ控除が可能でありますし、その後三年間はまた、ちょっと比率は減りますけどまだ可能だということで、十分な経過措置期間が設けられております。  この十年間、ほぼ全体で十年間、今から数えると十年間でございますけれども、この十年間の中に、今お話ししたような利害得失いろいろ考えながら、免税事業者の方々が免税事業者のままでいるのか、それとも、一千万円未満であっても課税事業者に転換することは可能ですので課税事業者になるのか、それぞれの販売の仕方の形態を考えながら考えていただくということになると思っております。

○紙智子君 要するに、取引断られるようなケースというのは全く出ないというふうにお考えなんですか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 大澤誠君) 個々の取引の場合でございますので、我々が、何というんですか、全くとかそういうことを言うというのは適当ではないと考えておりますけれども、今るる御説明しましたように、まず、そもそも大部分の場合は農協、卸売市場に関する特例がございますし、それから、実際上、直接委託しないで販売する場合も、現在においては、要するに、高く買い取りたい、安定的な取引先を見付けて、通常、そういう農協を通して委託販売をする場合よりも高く売りたいと、こういう合意が成り立ったときにできるものでございますので、消費税額控除ができるか否かという観点のみで取引が行われていることはないのではないかと。  そういう意味で、いろいろな場合に対応した措置は行われているというふうに考えております。

○紙智子君 その想定ではいろいろ言われるんだけど、これ、いや、本当にそうなんですかと、私、逆に聞きたいんですよね。もちろん、その質の問題だとかそういうところに着目しているから、そういう場合はないんじゃないかということもあるかもしれないけど、そうじゃない場合だってあるんじゃないですか。可能性全くないと言えるんですか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 大澤誠君) 先ほども御答弁いたしましたとおり、個々の経済実態の話でございますので、可能性が全くないということは私は申し上げませんけれども、大部分の場合である農協に委託するような場合については既に措置がされておりますし、直接販売する場合であっても、それについては価格の決め方の中で対応できる場合もあると。また、加えて、この十分な経過期間の中で、今免税事業者の方がこちらの方がいいということであれば課税事業者になる道も残されているということでございます。

○紙智子君 みんながみんな農協を通すとは限らなかったり、それから課税業者に選択するかもしれないというのは、しない人だっているかもしれないじゃないですか。  だから、可能性ないとは言えないんですよ。やっぱり懸念は残っていると思うんですよね。その時間があるんだからその中で考えるだろうと言うんだけれども、やっぱり、それはそれぞれの考えですから、ないということは言い切れないんだと思いますよ。  それで、取引からもし排除されるという事態になった場合は、これは生産活動を続けられなくなるということにもなりかねないわけで、これは経営意欲をそぎかねないことも出てくるというように思います。  それで、ちょっと次に行きたいんですけれども、農産物の直売所について聞きたいんですね。  それで、一つは、全国の農産物の直売所の数、どれだけ売上げを上げているのかという売上額、説明してほしいということが一つ、もう一つは、生産者はなぜ直売所を活用するのかということ、それから三つ目に、農産物の直売所というのはこれ生産者が自分で価格を決められるんじゃないのかという三点、ちょっとお答えください。

○政府参考人(農林水産省食料産業局長 新井ゆたか君) 農産物直売所についてのお尋ねでございます。  まず、数、売上げについてお答えしたいと思っております。直近の調査によりますと、農林水産物の直売所は全国で二万三千四百四十事業体、年間総販売額は一兆三百二十四万円でございます。これを、直売所一事業体当たりの年間販売額を計算いたしますと、四千四百五万円ということでございます。趨勢といたしましては、事業体数は横ばいでございますが、販売額は増加傾向にあるということでございます。  直売所のメリットでございます。直売所は近隣にあるということでございますので、小規模あるいは高齢の生産者が出荷可能であるということ、それから、かつ販売価格を生産者が決められる場合が多いということでございまして、生産者の所得向上につながっている。  それから、もう一つ重要なことは、出荷した農林水産物の販売状況が分かるということで、生産の意欲の向上にもつながっているというふうに認識をしているところでございます。

○紙智子君 生産者は、市場に出せば自分で値が決められない部分が多いという話がありました。直売所は自分で値が決められるわけで、所得が増えていくということがメリットとしてあると。消費者の反応を知ることもできるというのも、これメリットなんだと思うんですね。それで、だから直売所がずっとこの間増えてきたんだと思うんです。  それで、生産者が免税事業者の場合、インボイスを発行できないわけですけれども、これ、農産物直売所に食材を買いに来た事業者がインボイスを求めたときに、誰が発行するのですか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 大澤誠君) 農産物直売所の主なユーザーは消費者だと思っておりますけれども、例えば、レストランなどの事業者が、新鮮で高品質な農産物を求めて直売所に行って、直売所で買手となっていう場合はあると思っております。数は多くはないと思いますけれども、あると思います。その場合にインボイスの交付を求めたらどうなるのかというのが先生の御質問だと理解しておりますけれども、これも二つの場合があります。  まず、売手である生産者が課税事業者の場合には、これは二つの方法があります。一つは、農協など直売所を運営する事業者が売手である生産者に代わって、これ代理交付という形でインボイスを交付する、これはできます。それから、農協などの名前、登録番号でインボイスを交付するという制度も認めておりまして、これはいわゆる媒介者交付特例ということでございます。  こういう二つの方法によりまして、直売所において、取引の実態を踏まえて対応を検討していくものと考えております。  次に、売手である生産者がこれ免税事業者の場合でございます。このときには、先生の御指摘のとおり、インボイスを交付することはできません。  その場合、買手である事業者は、やはり仕入れ、先ほどお話ししたとおり、レストラン等で、新鮮である、高品質であるというものを売りとして、それに魅力を感じて直売所で買うということだと思っておりますので、必ずしも仕入れ税額控除を行うことができるか否かという点だけではなくて、農産物の質や鮮度などを考慮して購入するかどうかを決めていくということになります。その際に、適切な値決めの中で考えていくということだと思っております。

○紙智子君 免税事業者はインボイスを発行できないということなんですよね。それで、食材を買いに来た事業者がインボイスの発行を求めてきたらどうするのかというと、その業者との取引ができない場合も出てくるかもしれないと。で、課税業者に選択すればいいんだという話があるんだけれども、そういう道もあるかもしれないと。そういうことを結局生産者に対して迫ることになるんだと思うんですね、どちらかを選びなさいと。  それで、課税業者になることを迫ると、これ税負担が発生しますよね。で、所得を向上できるという直売所のメリットにこれ反することになるんじゃないかと、免税点制度の役割も損なわれることになるわけです。農産物の直売所の運営がこれ混乱することになるんじゃないのかと、免税事業者にとってのメリットが損なわれることになるんじゃないかというふうに思うんですけれども、いかがですか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 大澤誠君) 我々、この制度を円滑に導入するために、農業団体、JA等の関係団体も含めまして丁寧な説明に現在努めているところでございます。  先生の御指摘の、直売所でむしろ、の販売促進が行われなくなるんじゃないかと、レストラン等が直売所で買う場合ということだと思いますけれども、その場合に、やはり、私が申し上げたとおり、最終的には適切な値決めをするということによって全ての問題を解決するということが一番だと思っておりますので、直売所の開設者でありますJA等も含めて、ケース・バイ・ケースでいろんなことを考えて、考慮点などを適切に指導してまいりたいというふうに考えてございます。

○紙智子君 免税事業者は農産物の販売金額が一千万以下なわけですよね。それで、免税事業者に課税業者になれというふうに迫ると、これ直売所のメリットが損なわれることになると、まあ値決めという話もありましたけれども。事業者サイドでいえば、仕入れ額の税額控除を取るか、それとも自分が負担するというか身を削るのかという判断をすることになるわけですよね。それはそうですよね。  それで、例えば私の知っている人で、こだわりの食材を使っている和食、フレンチ、焼き肉店などの飲食店についてお聞きするんですけれども、被災したところで、被災地で農業を再建して、評判のミニトマトを作っていると、そういう免税業者、家族農業ですけれどもいます。知り合いの飲食店がそのトマトがすごく気に入って、非常に甘くて安心できるということで食材に使っていると。ところが、生産者は免税事業者なので、インボイスが発行できないと。飲食店は仕入れ税額の控除を受けることはできないわけです。  こういうケースの場合は、結局飲食店は、質がいいトマトだから契約は切りたくないという場合は、やっぱり自分がその身銭を切るということになるんじゃないんですか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 大澤誠君) 先ほどから申し上げていますとおり、最終的には適切な値決めの中で決まっていくということの中にも先生の御指摘したようなものは入ってくると思います。それは、その場合には、その決断を決める際にいろいろな要素がございまして、例えばその飲食店でありますと、飲食店に占める野菜なら野菜のその評判というのが自分にとってはどの程度であるか、それからそのコストがどの程度あるか、そういうものを総合的に判断して決めるものではないかというふうに考えております。

○紙智子君 免税業者との取引をやめるか身銭を切るかということを迫ることになるというのが、果たして本当に生産者や飲食店のためになるのかというふうに思うんですね。  実は、ちょっとこの後、農協についても聞こうと思ったんですけれども、ちょっと時間が来ましたので、一つに絞って聞きますけれども。  今、生産者の九割が免税業者なんだけれども、農協に出す場合にはインボイスを導入しても影響はないと言っているんだけれども、農協が農産物を買い取る場合にはどうなるかというと、農林水産省としては、今、農協改革の一環として、農家の所得を一円でも二円でも上げるために、この農協に対しては農産物を買い取るように求めているんですよね。そうすると売手と買手を特定することができるということで、これ免税業者に課税業者になるように求めることになるんじゃないのかと。  これ、農協改革ということなので大臣にお聞きするんですけれども、そうなんですか。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) 農協改革におきまして進めている買取り販売は、農協が自ら価格交渉等を行いまして有利な条件で農産物を安定的に販売できる販路を確保した上で、委託販売より有利な価格で農業者から買取りを行うことを目的としているものでございます。  インボイス制度における農協特例でありますけれども、一般的に農協はどの農業者が生産したものか区別することなく農産物をまとめて販売しているため、農業者は自ら生産した農産物の買手を見付けてインボイスを発行することはできないということだと思います。  流通プロセスの課題を解消する目的で設けられたものでございまして、農業者にとっての有利販売を目的とする農協改革とはそもそも目的が異なるのではないかと承知をいたしております。

○紙智子君 要するに、先ほどから農協を通せばという話が出て、特例があるんだと。つまり、無条件委託方式、共同計算方式を行っているということで、これが仕入れ額の控除ができる特例というふうになっているわけだけれども、実際に今農協改革で進めているのは、買い取れと言っているわけで、買い取るということになったら、相手が分かるわけだから、そうするとこの控除の対象からは外れることになるんだと思うんですよね。そうじゃないですか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 大澤誠君) 御指摘のとおりでございます。

○紙智子君 そうすると、やはり事業者のその免税点の制度という、まあ元々小規模な事業者への事務負担への配慮ということで、課税業者になることを求めることになれば、この制度の趣旨に反することになるわけですよ。  結局、誰が相手先か分かるかということになったら特例は適用できないことになるわけで、そうすると、その場合は、やっぱり農水省が農協に農産物を買い取れと言っているわけなんだけれども、そういうことになったら、結局、農協を通しても特例が使えないということになるわけですよね。  それで、やっぱりこういう制度そのものがやっぱり生産する側にとっても非常に困ることになるんじゃないかと。特に、免税業者について言えば、仕入れの税額が二%上がると価格に転嫁できないから、その分農業者の取り分は減少すると。一方で、課税業者になる道を選択しなければいけないということになったら、これ、税負担が発生するので所得が下がると。  インボイスというのは、生産者を応援するんじゃなくて、やっぱりこういう複雑な手続と混乱をもたらして経営悪化をもたらしかねないというふうに思いますので、したがって、結論として、消費税の一〇%増税は中止すべきであるということを求めて、質問を終わります。