<第198回国会 予算委員会 2019年3月14日>


◇日米貿易交渉 米国食肉輸出連合会が牛肉の関税引き下げでTPP以上を求めていることを指摘し、過去の協定の水準さえ守れないのではないかと質す/生産基盤の弱体化を示し、その認識と自給率の引き上げ策を問う/国連の家族農業の10年を紹介し、中小規模の生産者への支援強化を求めた/JR北海道の日高本線の廃線問題について総理に認識を問う

○平成三十一年度一般会計予算(内閣提出、衆議院送付)
○平成三十一年度特別会計予算(内閣提出、衆議院送付)
○平成三十一年度政府関係機関予算(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 安倍総理は、施政方針演説で、農こそ国の基ですと言いました。しかし、安倍政権のこの六年間の農政は、ドミノ的に市場開放を進めて日本の農業と国民に犠牲を強いるものだと思います。
 自民党は、TPPについて野党のときに六つの選挙公約を掲げ、TPP断固反対と言って選挙を戦い、与党になると一転してTPP交渉に入りました。農林水産物の重要五品目は守ると言いながら、米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖の重要五品目も関税撤廃は二八・六%です。国会決議を守っていないんじゃないかと批判されると、それは国会が判断することとごまかして、アメリカ抜きのTPPは考えられないと言いながら、アメリカが離脱したらアメリカ抜きにTPP11を主導しました。
 そして、TPP以上の水準の通商交渉は認めないと言いながら、日欧EPAでは、パスタ、チーズや林産物、ワインなど、TPPを上回る譲歩をしました。今、日米間で四月にも日米貿易交渉を始めようとしていますけれども、アメリカがTPP離脱後に始めた日米貿易協議を、日米FTA交渉と位置付けるものではなく、その予備交渉でもないと言ったことに整合性を持たせるために、日米貿易交渉を物品交渉なんだと、あれはTAGだと言いました。
 こういうごまかしが、日本の国民、農家に不安をあおっているんじゃありませんか、総理。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 交渉を行っておりますのは茂木大臣でございますので、大臣を呼んでいただければ詳細に御説明をさせていただいたわけでございますが。
 農林水産品については、既に先般の日米共同声明において、過去の経済連携協定で約束した内容が最大限である、この大前提を米国と合意をしたところであります。この点が最大のポイントでありまして、当然この前提の上に、今後、農林水産業に携わる皆様の不安にしっかりと寄り添いながら米国と交渉を行っていく考えでありまして、そして我が国の基である農林水産業を必ずや守り抜く決意でございます。

○紙智子君 TPP11と日欧EPAが発効しました。総理は、所信表明のときに、体質改善、経営安定化に万全を尽くすというふうに言われました。ところが、牛肉の関税が三八・五%から二七・五%まで下がって、輸入が急増しています。オーストラリアやカナダからの輸入量は、一月が前年同月比で一・四倍、二月も増えています。TPP影響試算では当面輸入の急増は見込み難いというふうに言っていたわけですけれども、急増したんじゃありませんか。農家が不安になるのは当然じゃないでしょうか。総理。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) 近年、牛肉の需要が拡大している中、一月のTPP11発効国からの牛肉輸入量は三万二千九百五十三トンで、前年度同月比一五六%と増加をいたしております。これは、TPP11の発効に伴う関税の引下げ、二つ目に為替の影響によりまして、輸入業者が昨年十二月の牛肉の通関を控え本年一月に繰り越したという特殊要因によるものではないかと考えられております。
 実際に、二月のTPP11発効国からの牛肉輸入量は二万二千四百八十九トンでございまして、対前年同月二万二千二百五十トンに比べますと一〇一%と落ち着いた水準となっております。
 なお、本年一、二月の国産牛枝肉卸売価格でありますけれども、前年同月に比べて上昇をいたしておりまして、TPP11からの一月の牛肉輸入量の増加が国産牛の枝肉卸売価格に影響を与えているとは考えておりません。畜産農家の方々には安心して生産に取り組んでいただきたいと思っております。

○紙智子君 関税が下がるときを狙ってためておいて、下がった途端にやるという形なんですよ。ですから、また四月から下がるわけですから、今安定していると言うけれども、この後また増えますよ。輸入が増えれば価格が下落して、農家はますます不安になるんですよ。
 それで、次に、日米貿易交渉についてお聞きします。
 昨年の日米共同声明で、日本の農林水産品について、過去の経済連携協定で約束した市場アクセスの譲許内容が最大限であるというふうに書いてありますよね。
 そこで、このパネルを見ていただきたいんですけれども、TPP加盟国の方が青色です。(資料提示)

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このTPPで合意した牛肉の関税の下げ幅なんですが、最初三八・五%なんですけれども、段階的に関税率を引き下げていって、最後のところ、十六年目は九%にすると。これ以上は譲らないということで、総理、よろしいんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) 昨年九月の日米共同声明におきまして、農林水産品につきましては、過去の経済連携協定で約束した内容が最大限との日本の立場が明記をされております。日米首脳間でこの点について文書で確認したことは非常に重たいものと認識もいたしております。
 個別の品目の合意内容につきましては、経済連携協定と異なるものもございますけれども、農林水産品について全体として最も水準が高いものはTPPであるという理解でもございます。

○紙智子君 総理に元々聞いていたので。
 譲らないということでいいんですね。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) ただいま農水大臣から答弁をさせていただいたように、過去の経済連携協定で約束した内容が最大限である、この大前提を米国と合意をしたところでございます。
 いずれにいたしましても、日本の国益をしっかりと確保していく考えであります。

○紙智子君 まあそういうふうな答えするだろうなと思いましたけれども。
 それで、もう一度パネル見てください。アメリカの関税水準は三八・五%です、赤色の方ですね、次。その青い方のTPP11は、二〇一八年、去年十二月に発効して、牛肉の関税率は三八・五%から二七・五%に下がりました。今年の四月からは二年目に入るんですね。そうすると二六・六%に下がります。来年四月になりますと二五・八%に下がると。
 それで、今、日米の関係で、仮に来年度日米が合意することになったら、アメリカの関税水準は初年度は三八・五%なんですけれども、二七・五%に下がると。スタート年度が一年遅れるわけですけれども、そうすると、TPP加盟国の二五・八%とアメリカの関税率二七・五%の差というのは一%を超えるんですね。ずっと追っていって、十六年目どうなるかというと、加盟国、TPPの方が九%になるときアメリカは一二・六%ということで、アメリカの関税が高くなるわけですよね。
 それで、米国食肉輸出連合会が、関税削減率の引下げテンポが先行するTPP加盟国よりも後れを取って不利になると、したがってTPP水準以上を求めたいというふうに言っているわけですよ。過去の経済連携協定の水準も、これ、守ることできなくなるんじゃないですか。総理、いかがですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 先ほど申し上げましたように、日米の間で共同声明において、これはまさに日本と米国は交渉した結果、この共同認識に立ち、この共通認識に立ち合意をしたということでございますが、それは過去の経済連携協定で約束した内容が最大限であるということを合意をしたところでございまして、この大前提の下に、今この関税が下がっていくスピード等を勘案しながら比較をされたんだろうと、こう思うわけでございますが、今後、これを大前提にしっかりと国益を確保していく交渉を行っていくということになるわけでございまして、詳細、どう交渉していくかということにつきしては、これから交渉するわけでございますから、この場でお答えすることは差し控えさせていただきたいと、こう思う次第でございますし、いずれにいたしましても、交渉自体は茂木大臣が交渉していくということになります。

○紙智子君 TPP水準と言うんですけれども、TPP水準と同じだったらアメリカはTPPから離脱した意味がないんですね。
 トランプ大統領は、TPPから離脱したときに、TPP交渉から永久に離脱すると、アメリカの産業振興と労働者の保護につながるあらゆる二国間の交渉を追求するんだというふうに言っていました。TPP水準以上をこれ必ず要求してくると思うんですけれども、守れるんですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) そこが、まさに今委員がおっしゃった点も、言わばこの共同声明を出す段階でのポイントであったわけでございますが、その中において過去の経済連携協定で約束した内容が最大限であるという合意にこれは至ることができたと、こう考えておりまして、この合意を大前提に交渉を行っていくということでございます。

○紙智子君 アメリカは、アメリカでの自動車生産を増やすこと、そしてアメリカ農業の輸出拡大をすることが必要なんだと言っているわけですね。TPPそのものが日本の農業に重大な犠牲を負わせるものなわけですけれども、その合意も守られる保証も何もないと、これからがんがん来るわけですから。そういう無謀な日米の貿易交渉は中止するように強く求めておきたいと思います。
 さて、次に、安倍総理がドミノ的に市場開放を進めている間に、日本の食料自給率、生産基盤がどうなっているか。食料自給率というのは、言わば国民を飢えさせないためにどれくらい国内で賄えているかということを示すものですけれども、この食料自給率と生産基盤の推移のパネルを見てほしいんですね。

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 この食料自給率はカロリーベースで三八%です、今。直近で二〇一七年のところですけれども、青い線ですね、三八%です。これはですね……(発言する者あり)そんなことないですよ、何、上に向かっていくはずのが下がっているわけですから。で、関税率が。
 それで、三八%なんですけれども、これ前年度と同じで、過去二番目に低い水準なんです。二〇一六年のときにどうして三八%に下がったのかと聞いたら、台風被害によって北海道の生産が減少したためだと説明しました。ところが、北海道の生産が回復しても食料自給率は回復していません。
 販売農家戸数は、見てほしいんですけれども、二〇一〇年の百六十三万戸から百十六万戸に三〇%減っているんですね。それから、農地です。四百五十九万ヘクタールから四百四十二万ヘクタール、約二十万ヘクタール減っているわけです。生産基盤がこれ弱体化しているということなんですね。
 総理、これを深刻に受け止めているのかどうか。そして、国の食料自給率の目標を四五%に上げようというんだけれども、食料自給率をどうやって引き上げるつもりなのか。お答えください。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) 我が国の農業を支える農業従事者は、長期的にわたりまして減少傾向が続いております。平均年齢が六十六歳を超えるなど高齢化が著しく進んでおりまして、昭和一桁世代のリタイアなどによりまして今後大幅な減少が見込まれます。また、耕地面積も平成三十年は四百四十二万ヘクタールと、前年に比べまして二万四千ヘクタール減少もいたしております。
 こうした状況を正面から受け止めまして、農業の活性化は待ったなしとの強い危機感の下に、米の生産調整の見直しですとか、農地バンクによる農地集積ですとか、輸出促進、若者の新規就農の支援など、農政全般にわたる抜本的な改革を進めてまいりました。これによりまして、四十代以下の若手新規就農者は統計開始以来初めて四年連続で二万人を超えるなど、着実に成果も出始めてきております。
 こうした施策を更に力強く展開していくことが必要だと考えておりまして、消費面でも、民間企業との連携による米の消費拡大など、国産食材の消費拡大にも取り組んでいきますし、引き続きまして、こうした生産面、消費面での取組に更に力強く進めることによりまして、農業の持つ食料の安定供給の機能がしっかり発揮できるようにしてまいりたいと存じます。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 既に大臣から答弁をさせていただきましたが、安倍内閣では、農業をめぐる非常に厳しい状況が続いていることは私も認識をしておりますし……(発言する者あり)この、こうした、今おっしゃった生産基盤の弱体化ということでございますが、こうした状況を正面から受け止めまして、農業の活性化は待ったなしとの強い危機感の下に農政全般にわたる抜本的な改革を進めてきたところでございますが、今後も若い皆さんが農業に夢や希望を託せるような、そういう農業に変えていきたいと考えております。

○紙智子君 食料自給率どうやって上げるのかという話もされないし、その生産基盤の問題も、どういうふうに受け止めて、厳しいという話はしているけれども具体的な話がないわけですよ。
 それで、日経新聞で、ある農機具メーカーの社長はこう言っています。日本の食料生産基盤は既にかなり厳しい状況にあり、それがどんどん進行している、生産基盤の弱体化で食料問題になってくる可能性があり、国民にとって人ごとじゃなくなると言われているんですね。
 総理は、やっぱり自分たちに都合のいい数字を使って、過去最高とか史上最高というのを連発してきました。でも、国民の命に関わるこの食料を生産する生産基盤、これは史上最低なんですよ。食料自給率は、米の凶作でタイ米を緊急輸入した一九九三年度の三七%を除くと、これも史上最低を更新しているわけです。そのことを深刻に受け止めるべきだと思います。
 食料自給率を高めて強固な生産基盤をつくるために何が必要かということで、やっぱり多様な農業の担い手が必要です。とりわけ、農業生産の九八%を占める家族農業を支援することが大事だと思うんです。
 そこで、国連が今年から家族農業の十年を呼びかけました。国連の定義では、家族農業というのは農業労働者の過半を家族労働力で賄う農林漁業としています。企業的農業、つまり資本的つながりによって結合した社会集団とは区別してこの家族農業を支援するように求めているわけです。
 なぜ家族農業なのかというと、国際社会は十年前にリーマン・ショックで世界的な経済危機に陥って、石油価格や穀物の国際価格が高騰しました。国際的な食料危機に直面したわけです。貧困、格差、飢餓が拡大をして、環境悪化したと、そういうことの反省から、家族農業の役割が欠かせないというふうになっているわけです。
 それで、家族農業の十年のパネルを見ていただきたいと思うんですね。

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 国連は、国際連合家族農業十年に向けて五つの取組を提起しました。全部読みませんけれども、アンダーラインで示したところを見たいと思います。二番目、全ての国家に対し、家族農業に関する公共政策を策定云々とあります。それから、四番目のところは、政府及び国際的なまた地域的な機構はということで、ここは国連家族農業の十年の実施を積極的に支援するというふうに書いてあるわけですね。ですから、日本でも我が事としてこれ取り組むべきではありませんか、総理。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) 農林水産省におきましては、地域農業の担い手を育成するために、経営改善の意欲のある農業者に対しまして、規模の大小ですとか法人、家族の別にかかわらず、今、支援もいたしているところでもございます。大規模化を目指さない中小規模の農家の方たちも、六次産業化ですとか、あるいは高付加価値による農業者の所得を向上していく手段を用いて、地域農業の担い手となるように幅広くまた支援もしているところでもございます。
 さらに、中小規模の農家を営む関係者の幅広い参加により、草刈りですとか水路の管理など、地域の営農を支える活動を日本型直接支払制度により支援もいたしているところでもございます。
 国連家族農業の十年におきましては、各国に対して、家族農業に関する政策を各国と共有をすることなどを求めているところでございまするけれども、我が国といたしましても、本年五月に新潟で開催をいたしますG20農業大臣会合等の国際会議の場におきましても、これまでの我が国の経験を発信をしてまいりたいと存じます。

○紙智子君 私、総理に聞きたいわけですね。
 それはなぜかというと、二〇一四年のときも一度やっているんだけど、そのとき総理は家族農業は自民党の政策だというふうにおっしゃっていて、ところが、ほとんど何もやっていなかったんですね。ですから、今回、十年というわけですから、是非取り組んでいただきたいということで、一言どうぞ。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) そのときの答弁は、正確に言いますと、家族経営が地域において地域の文化や伝統も継承してきた、これはまさに共産党の主張というよりも自民党の主張だというふうに、自民党こそ家族経営を大切にしてきたと、こう申し上げてきたところでございますが、先ほど農水大臣から答弁させていただきましたが、農地バンクの創設によって農地集積を進めるなどとともに、日本型直接支払制度を創設をし、中山間地域に対する直接支払など、地域を元気にする施策も進めてきたところでございまして、こうした観点から、まさに、規模拡大をしていくということと同時に、しかし家族で経営をしている方々もしっかりと支援をしていくという、この日本型の家族経営もしっかりと支援をしていきたい。
 これは、最初に申し上げましたように、元々自由民主党が強く主張し、守ってきた政策でもあろうと、こう思っております。

○紙智子君 家族農業は、一定の土地でどれだけ収穫できるかという土地生産性で、大規模経営よりも小規模経営の方が高いと。それから、米生産や果実の生産でも、中小規模の経営の方が農業所得率が高いんですね。しかも、コミュニティーとして、地域経済、祭り、神事を含めた伝統的な文化を発展させてきたと。ところが、どこに行っても、さっき大事にしていると言うんですけれども、補助金は大規模化とか法人化が条件になっているんですね。
 中小規模で頑張っている家族農業の経営の支援を強化すべきだと思いますけれども、一言どうですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) まさにこれ、大規模化だけではなく、六次産業化や高付加価値化により農業者の所得を向上していくことも重要であると考えております。大規模化を目指さない中小規模の農家の方たちも、このような手段を用いて地域農業の担い手となるよう幅広く支援をしております。
 また、我が国の美しい田園風景、そして食を支えるためには、中小規模の農家を含む関係者の幅広い参加により、草刈りや水路の管理など、地域の営農を支える活動が維持されることも重要でありまして、これについては日本型直接支払制度により支援を行っているところであります。
 私の地元なんかは棚田等もあるわけでございますが、これは当然大規模化はできないわけでございますが、地域の景観を支えている、こういうものをしっかりと支援をしてまいりたいと思います。

○紙智子君 そうであるならば、規模拡大とか法人化を条件にしないでほしいということを改めて申し上げたいと思います。
 次に、JR北海道の存続問題についてお聞きします。
 JR北海道は、北海道経済を支える農林漁業と道民の生活を支えています。物流の基軸であるJR北海道の存続が求められています。
 二〇一七年の衆議院の予算委員会で、総理は、我が党の本村伸子議員の質問に、JR北海道を支援すると言われました。今もこれは変わりませんか。

○国務大臣(国土交通大臣 石井啓一君) ちょっと、まず具体的な中身を私の方から申し上げたいと思いますが、JR北海道は、地域の人口の減少や高速道路等、他の交通インフラの発達によりまして、路線によっては輸送人数が大きく減少し、大量高速輸送といった鉄道の特性を生かすことのできない路線を抱え、厳しい状況に置かれております。
 JR北海道におきましても様々な経営努力を重ねてきておりますが、国土交通省といたしましても、JR北海道の厳しい経営状況に鑑みまして、経営安定基金の運用益の下支え、経営安定基金の自主的な積み増し、また平成二十三年度から八年間で六百億円の補助を含む設備投資に対する総額一千八百億円の支援を行うなど、これまで累次にわたる支援を行ってきたところであります。
 加えて、国土交通省では、昨年七月に監督命令を発出しまして、JR北海道に徹底した経営努力を求めるとともに、これを前提としまして来年度からの二年間で総額四百億円台の支援を行うこととしておりまして、こうした方針に変わりはございません。
 国土交通省としましては、北海道における持続可能な交通体系を構築していけるよう、地域において鉄道の存続を支える取組に対しまして引き続き必要な支援を行ってまいります。

○紙智子君 ちょっとパネルを見ていただきたいんですけれども、これ、今いろいろ長々と言われたんだけれども、今一番焦点になっている話をしたいと思うんですね。

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 それで、このパネルの点線部分というのは、JR北海道が、全路線の半分以上、千二百三十七・二キロを維持困難な区間と発表した区間なんですよ、点線のところが。ここのところの日高線ですね、この日高線、北海道の日高本線は、二〇一五年に高波の被害を受けて以来、不通になっているんです。四年間続いているんです。日高地方の皆さんは早く復旧してほしいと願っていると。
 ところが、今年の一月二十八日に開かれた沿線の七町長の会議に、JR経営陣に代わって北海道の幹部職員が、路線の廃止を受け入れるのであれば二〇一五年から放置してきた護岸復旧に着手すると言ったんですよ。この四年間放置してきて今更何言うんだと怒りの声が広がっています。
 路線の廃止を条件にして復旧してやるというのはおかしいんじゃないですか、総理。これ、国土交通じゃなくて、総理。

○国務大臣(国土交通大臣 石井啓一君) 具体的な路線の話でありますので、私の方から答弁いたします。
 日高線につきましては、平成二十七年一月の低気圧による高波の影響によりまして線路脇の盛土の土砂が流出する被害が発生をしまして、鵡川駅から様似駅間の運転を休止していますが、そのたびも、度重なる台風等によりまして護岸の倒壊などの被害が発生をしております。
 これを受けて、平成二十七年四月以降、JR北海道は、被災箇所の被害の拡大防止及び道路や民間家屋等に対する……

○委員長(金子原二郎君) 簡潔に、答弁は簡潔にお願いします。

○国務大臣(国土交通大臣 石井啓一君) 被害防止のために、大型土のうや消波ブロックの設置等の応急対策工事など、必要な対策を講じていると承知をしております。
 こうした中で、平成二十九年二月、JR北海道は、鵡川駅から様似駅間の鉄道事業の廃止を正式に地元に申し出ております。
 また、その二年後……

○委員長(金子原二郎君) 答弁は簡潔に。

○国務大臣(国土交通大臣 石井啓一君) JR北海道は、本年一月の日高線臨時町長会議において、過去の災害により被災している鉄道護岸の補修及び維持管理について……

○委員長(金子原二郎君) 時間がありませんので、簡潔にお願いします。

○国務大臣(国土交通大臣 石井啓一君) 地元と協議したい旨を北海道庁を通じて関係自治体に示したところと聞いております。
 こうした経緯を踏まえますと、日高線の存廃に関する在り方と鉄道護岸の補修や維持管理に関します地元との協議につきまして、直接の関係はないものと考えております。

○紙智子君 関係ないことないですよ。地元は受け入れていないんですからね。それを、何で廃止することを条件に直してやるという話になるんですか。これ、おかしいと思いませんか。これがね、これが国の方針なんですか。総理、答えてください。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 既に石井大臣から答弁をさせていただきましたとおり、本件については、国土交通省も参画した上で、地域の関係者により丁寧な議論をしていただくことが重要であると考えております。

○委員長(金子原二郎君) 紙さん、時間が来ています。

○紙智子君 より丁寧な議論と言うんですけれども、今私が聞いたのは、廃止を前提にして直してやるということがおかしいでしょうと。国の立場からいったら、そういうことはやめなさいと言わなきゃいけないんじゃないですか。国の役割は路線をむしろ守っていくということにあるんじゃないですか。
 本当に許されないというふうに強く怒りを申し上げまして、質問を終わりたいと思います。