<第198回国会 2019年3月12日 農林水産委員会>


◇水際対策における擦り抜けを防ぐため、体制強化を求めた/豚コレラの発生農家への支援策や経営再建策を強く求めた/農水省の初動の対応の遅れを指摘/TPP交渉時に、アメリカのライス連合が日本への米の輸出量7万tへの不満を表明したことを示し、希望する15万tを要求してきたら拒否するのかと追及/日米貿易交渉はやめるよう求めた/ポケット農林水産統計の平成30年版にカロリーベースと生産額ベースの総合自給率の図を掲載しなかったのはなぜかと追及

○農林水産に関する調査(豚コレラの現状と対策に関する件)
 (平成三十一年度の農林水産行政の基本施策に関する件)

○紙智子君 紙智子でございます。お疲れだと思いますけれども、最後の質問になりますので、よろしくお願いします。
 私も、今緊急の課題になっております豚コレラについてまずお聞きしたいと思います。
 今回の豚コレラの発生原因、感染ルートは解明されておりません。そこで、ちょっと振り返りますと、口蹄疫、それから鳥インフルエンザ、農作物でいうとジャガイモのシロシストセンチュウなど、日本に存在しないウイルスが原因で被害が発生しているわけです。
 鳥インフルエンザは野鳥が原因ということも言われていて、水際対策といっても、飛んでくる場合に防ぐのはなかなか大変だということはあると思うんですけれども、口蹄疫とか、植物防疫になりますシロシストセンチュウなど、日本に存在しない病気がなぜ国内で発生したのか、この原因や感染ルートが解明されたものというのはこれまであるんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) 越境性の動物疾病や植物の病害虫のうち、鳥インフルエンザは渡り鳥が、沖縄におけるミカンコミバエは東南アジアからの台風が侵入原因と言っても差し支えないのではないかと考えておりますが、しかしながら、それ以外につきましては、生きた動物や植物、畜産物、肥料や飼料、あるいは人や物を介した場合など、様々な可能性が考えられますことから、世界的にも侵入原因を明確に究明することは困難であると承知をいたしております。
 したがいまして、疫学調査によって侵入の可能性の絞り込みを行って、再発防止のための対策に役立てているというところでもございます。

○紙智子君 やっぱり発生原因、それから感染ルートが解明されない、よく分からないということが、より農家の不安を大きくしているというふうに思うんですね。
 それで、TPP11が発効したわけなんですけれども、これ、貿易の円滑化ということで、輸入手続を簡素化することになっているわけです。それで、輸入してから四十八時間以内に国内に流通させるということが原則になってくると。口蹄疫にしても、シロシストセンチュウにしても、今回の豚コレラにしても、感染ルートは解明されていないと。水際対策を強化しても、擦り抜けがあれば、これはリスクはゼロではないというふうに思うんですね。
 そこで、大臣、この四十八時間ルールに対してはどういう体制を取っておられるんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) TPP協定におきましては、可能な限り物品の到着後四十八時間以内に物品の引取りを許可することとされておりますが、引取りの要件が満たされていない、すなわち検疫の終わっていない場合において物品の引取りを許可することまでは求めていないと承知をいたしております。したがいまして、法令に基づく動植物検疫を実施した結果、到着後四十八時間を超えて輸入検査が終了したとしても、TPP協定に違反するものではないと存じております。
 農林水産省といたしましては、これまでも農産物等の輸入の増加等に対応いたしまして、家畜防疫官及び植物防疫官の増員ですとか防疫探知犬の増頭等によりまして輸入検疫体制の強化に努めているところでもございまして、今後とも科学的根拠に基づき、水際対策に万全を期してまいりたいと存じます。

○紙智子君 この問題については、先ほども議論になっていましたけれども、この体制でいいのかと。擦り抜けを防ぐためにやっぱり体制を強化するべきだということを強く申し上げておきたいと思います。
 さて、豚コレラの発生を受けて発生農家への支援策が出されました。それで、これは是非農家の手元に早く届くようにお願いをしたいと思います。
 同時に、殺処分を受けた農場は、新たに豚を出荷して収入を得るまでには一年半掛かると言われているんですよね。経営再建の支援策が必要だと。養豚農家は、経営再開を目指すためにも支援策がなかなか見えてこないというふうにおっしゃっているわけですね。飼料代、水道光熱費、借入金の返済や従業員の雇用を維持する、それから生活を保障するということも必要なわけですけれども、この支援策が必要になっているんじゃないでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) 支援策についてでありますけれども、豚コレラ発生農場等への支援につきましては、家畜伝染病予防法に基づきまして、まずは発生農家に対しまして、殺処分された家畜の評価額の全額を手当金として交付をいたします。二番目に、移動制限が掛けられた農家に対しましても、出荷制限による減収分を補填をすることといたしております。
 また、経営再開に向けましては、畜産経営の再開、継続及び維持に必要な家畜の導入、飼料、営農資材の購入等に要する資金につきましても、家畜疾病経営維持資金ですとか農林漁業セーフティネット資金の活用が可能でもございます。
 加えて、家畜防疫互助基金の加入者が新たに豚を導入しまして経営を再開する場合におきましては、経営支援互助基金の交付を受けることが可能となっております。さらに、先月の二十六日でありますけれども、発生農家等を対象に、豚マルキンの生産者負担金の納付を免除する等の新たな支援策も追加をすることといたしました。
 これらによりまして、豚コレラの発生により影響を受けた農家の方々が経営を続ける意欲を失わずに速やかに経営再開ができますよう、きめ細かく対応もしていきたいと考えております。

○紙智子君 豚コレラの発生によって、もう一日、二日でできなくなってしまったということで、農家の方の立場に立ったら、本当に目の前が真っ暗ということだと思うんですよね。ですから、是非、発生農家が安心してこの後再建に取り組めるように万全の対策を取っていただきますように強く求めたいと思います。
 豚コレラの封じ込めがなぜできないのかと、そのことも問われていると思うんですね。
 一例目が九月九日、岐阜市の養豚場だったわけです。そこから少し空いて、二例目の発生が十一月の十六日に畜産センターだと。施設内でイノシシに掘られた地面の整地に使用していた重機を洗浄、消毒することなく、豚の飼養エリア内で豚の死体の搬送などに使用していたというふうに言われているわけです。それから、三例目は十二月五日なんですけれども、畜産研究所なんですね。ここでは、豚舎ごとの更衣というか、服ですね、衣類というか、それを着替えたりするんだけれども、それから長靴の履き替えは一部の豚舎にとどまっていたということですよね。そして、五例目は十二月の十五日なんだけれども、農業大学校で、外部の業者が長靴を履き替えずに作業靴を消毒して使用したということなんですね。
 これ、公的機関なんですよね。飼養衛生管理基準が公的機関で守られていないということなんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) 今、紙先生からそれぞれ御指摘がございましたけれども、私の方からも少しお話をさせていただければと、こう思います。
 これまで岐阜県で豚コレラが発生した九件のうち、三件は岐阜県又は岐阜市が運営する公的機関での発生でありました。二例目は岐阜市の畜産センター公園、三例目は岐阜県畜産研究所、五例目は、今も御指摘いただきましたように、岐阜県農業大学校でございました。
 これらの施設につきましては、拡大豚コレラ疫学調査チームの検討会におきまして、豚舎ごとの更衣や長靴の履き替えが十分でなかった、御指摘もいただきましたけれども、豚舎への小動物や野鳥の侵入が認められたなど、飼養衛生管理上の課題が指摘もされております。
 また、二例目の畜産センター公園につきましては、岐阜市が設置した豚コレラ検証チームによりましても、岐阜市及び公園の管理者は農場の主体者として飼養衛生管理基準を遵守するという意識が低かったこと、さらに、畜産センター公園の運営管理に関する役割分担が不明であったと、こう分析をされております。
 さらに、三例目の岐阜県畜産研究所及び五例目の岐阜県農業大学校につきましては、拡大豚コレラ疫学調査チームによりまして、当該施設は県の関連施設であったことから、施設内部の獣医師が自ら監視、採材等を行うんですが、家畜保健衛生所による立入検査が行われていなかったとも指摘をされております。
 豚コレラなどの伝染病の侵入を防ぎ、健康な家畜を生産をするためには、飼育者が家畜衛生に関する高い意識と知識を持って飼養衛生管理基準を遵守することが重要でありまして、農林水産省といたしましては、今現在も都道府県とも連携を更に強めながら、改めて農場への指導等の対策にも取り組んで今後もまいりたいと思います。

○紙智子君 意識、知識という問題が今言われたんですけれども、なぜ公的機関で飼養衛生管理基準が守られないのかと思うんですね。
 農水省は、昨年九月九日に、岐阜県に豚コレラが発生したのを受けて、豚コレラ防疫対策本部というのをつくって対応方針というのを出していますよね。九項目示してあるんですけれども、この九項目の中には飼養衛生管理基準の遵守が入っていないんですよ。なぜ入れなかったんですか。(発言する者あり)

○委員長(堂故茂君) 速記を止めてください。

   〔速記中止〕

○委員長(堂故茂君) 速記を起こしてください。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) 指導項目の中に飼養衛生管理基準が入っていないという御指摘をいただきました。今、手元に資料がございませんので、また後ほど紙先生にお答えをしっかりとさせていただきたいと思いますが、よろしくお願いをいたしたいと存じます。

○紙智子君 九月九日の日には入っていないんですよ、九項目に。それで、その次の九月十八日から入っているんですよ。基準の遵守に関する指導を徹底することという項目が入っていて、その次の平成三十年十二月五日のところもまたこの管理基準の遵守の指導を改めて徹底すると追加方針の中に書いてあって、平成三十一年二月六日、ここも再度入っているわけですよね。だから、何度も入れているわけですけど、守られていない、徹底されていないということなのかなというふうに思ったんですけれども、それは何でなんだろうかというのが、ちょっと事前のレクチャー聞いてもよく分からないんですよね。その辺りはどうですか。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) 九月のこの豚コレラが発生をいたしましてから、私も何度も農林水産省としての対策本部も開催をいたしました。官邸の危機管理の関係の会議というものも開催をされました。その都度、この豚コレラが岐阜県で発生をした折、さらには愛知県でも発生をいたしましたけれども、飼養衛生管理の指導というのは、これは本来は自治体が行うということにはなってきておりまするけれども、もう事例が増えてきておりますので、県任せではいけない、農林水産省が主体となってしっかりとこの蔓延防止に努めなければならないという、そういう思いで飼養衛生管理をしっかりやってきたつもりでもございます。
 さらに、岐阜県におきましては、いろいろなイノシシ対策等々も一方ではやりながら、三十三の農場に対して国が主導的になってこの飼養衛生管理、しっかりと守られているかどうかという、そういうチェックもさせていただきました。さらに、愛知県に対しましても、今現在もそういった指導も行ってきているところでございます。
 もし仮に、九月九日の折にその九項目の指導の中に飼養衛生管理がしっかりと位置付けられていなかったということでありますれば、誠に遺憾なことでございました。これからもしっかりと飼養衛生管理基準の遵守を求めていきたいと思いますし、徹底した指導も手を抜かずに行っていきたいと、こう思います。

○紙智子君 やっぱり私は農水省の初動の対応が遅かったんじゃないかなと思うんですね。そして、公的機関ですから、やっぱり守らなきゃいけないところをしっかりやらなきゃいけなかったんだけれども、そこができなかったというのは何でなのかというのは、ちょっと改めてよく調べないといけないんじゃないかというふうに思うんです。頭数が多過ぎて、分かっていたけど対応できなかったのかとか、ちょっとそんなことも含めてよく分析をしていただきたいと思います。
 先ほども議論の中で出ていましたけれども、口蹄疫が発生したときというのは、私も宮崎に飛んでいったんですけれども、物すごい緊張感といいますか、張り詰めた空気の中で、やっぱりあれは空気感染ということもあったと思うんですけれども、ここからもう入っちゃ駄目というぐらい徹底して広げないということでやっていたということを考えると、やっぱりそういうことも含めてしっかりと対応していただきたいというふうに思います。
 次に、日米貿易交渉についてお聞きします。
 日米貿易交渉をめぐって、物品交渉なのか、その他の分野も含むのかということで、日本は日米物品貿易交渉、TAGだというふうに言いました。アメリカの方は日米貿易協定、USJTA、ジャパン・トレード・アグリーメントというんですか、というふうに言っていると。
 なぜTAGと言ったのかなというふうに思うわけだけれども、それは、安倍総理が昨年の日米貿易協議、FFRですね、このときに、日米FTA交渉と位置付けるものではなく、その予備交渉でもないというふうに言ったわけですよ。その言ったことと整合性を持たせるために、いや、今度は物品なんだと、包括的なFTAとは違うんだと、で、TAGと言ったんじゃないのかなと思うんですね。
 トランプ大統領は、TPPからの離脱に際して、アメリカの労働者にとってこれ大変良いことだと、アメリカの産業振興と労働者の保護につながるあらゆる二国間交渉を追求するんだというふうに言っています。アメリカの産業、労働者のために二国間交渉をするんだというふうに言いました。
 昨年の九月二十六日の日米首脳会談で公表された日米共同声明では、米国としては、自動車について、市場アクセスの交渉結果が米国の自動車産業の製造及び雇用の増加を目指すというふうにあります。アメリカは早速、これ自動車については、日本との間には貿易赤字があるんだと、日本に輸出がうまくいかないから貿易交渉を進めるんだというふうに報告書でも書いてあると。安全環境基準など非関税障壁の撤廃を求めるということで交渉目標を明らかにしました。
 一方、日米共同声明では、日本としては、農林水産品について、過去の経済連携協定で約束した市場アクセスの譲許内容が最大限であるというふうに言っていますよね。TPP11、日欧EPAの譲許内容以上は譲らないということでよろしいんでしょうか。大臣にお聞きします。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) 紙先生御指摘のように、昨年九月の日米共同声明において、農林水産品につきましては、過去の経済連携協定で約束した内容が最大限との日本の立場が明記をされました。日米首脳間でこの点について文書で確認したことは私は非常に重たいものと認識をいたしておりまして、個別の品目の合意内容につきましては経済連携協定ごとに異なるものもありまするけれども、農林水産品につきましては、全体として最も水準が高いものはTPPであるという理解でもございまして、今後の日米交渉において、全体としてTPPの内容を上回ることは到底考えられないというのが私の認識でございます。

○紙智子君 譲許内容以上は譲らないということでいいんですね。(発言する者あり)はい。
 それで、加えてお聞きするんですけれども、アメリカのライス連合が、TPP交渉で日本への輸入枠を最終で十五万トン求めたんだけど、七万トンだったというふうに不満を述べたんですね。それで、日米貿易交渉ではTPP水準を上回る市場開放を求めているわけですよ。アメリカがこの先十五万トンの輸入枠を求めてきたら、これは拒否するということでよろしいですか。(発言する者あり)

○委員長(堂故茂君) 速記を止めてください。

   〔速記中止〕

○委員長(堂故茂君) 速記を起こしてください。

○政府参考人(内閣官房内閣審議官 大角亨君) 日米共同声明の中には、日本としては農林水産物について過去の経済連携協定で約束した市場アクセスの譲許内容が最大限である、これについて他方の政府の立場を尊重する、そういったことが明記されているわけでございます。この共同声明に沿って今後精いっぱい交渉してまいりたいというふうに考えております。

○紙智子君 ですから、それ以上は超えないと言うんだったら、アメリカがこの後十五万トンだと言ってきても、これは拒否するということでよろしいですか。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) 過去の経済連携協定の内容に鑑みれば、米についてTPPを上回る譲許を行うことは到底考えられないというのが私の認識でもございます。

○紙智子君 考えられないということなんですけれども、アメリカはもっと要求してくるというつもりでいるわけですよ、言っているんだから。今までは七万トンという枠はあるんだけれども、それを超えてくるという可能性があるわけで、そのときは考えられないという、実際に起こった場合は拒否するで貫くということでやってほしいと思うんですけれども、はっきり言っていただけないでしょうか。

○政府参考人(内閣官房内閣審議官 大角亨君) 先ほども申し上げたとおり、共同声明の中で、農林水産品については過去の経済連携協定で約束した譲許内容が最大限であるとの日本の立場が明記されております。そして、過去の経済連携協定で最大限のものはTPPであると考えておりまして、その旨をアメリカ側に伝えているところでございます。さらに、今後の交渉でもこの立場は変わらないとアメリカ側に重ねて伝えております。
 この種の声明文でのレスペクトという言葉、非常に重い意味を持っております。これが日米共同声明で確認された意義は大きいと考えておりまして、農業者の方々にも御懸念がない形で交渉を進める環境が整えることができたものと考えております。
 いずれにしましても、我が国として、いかなる国とも国益に反するような合意を行うつもりはございません。

○紙智子君 そんなに長々と言わなくたって、はっきりもう断りますと言ってくださいよ。
 やっぱりTPPにはカナダとメキシコが加盟しているわけですよね。カナダとメキシコはTPPに入っていると。しかし、トランプ大統領は、TPPから離脱をして、カナダとメキシコとの間でNAFTAの見直しなどを行ったわけですね。アメリカは両国と二国間交渉を行って見直しに成功したと言われているわけです。TPP以上にアメリカの労働者やビジネスの発展につながったんでしょうか。これ外務省にお聞きします。

○政府参考人(外務大臣官房審議官 塚田玉樹君) アメリカ政府の第三国との交渉の意図について私どもとして云々する立場ではないんですけれども、アメリカ政府の対外発表あるいはその対外説明などを見ますと、まず、NAFTAというのはもうできてから二十年以上たっておりまして、それを二十一世紀にふさわしいものに改定する必要があると、こういうことを言っております。
 同時に、アメリカの製造業、農業、サービスといった、こういった分野での市場アクセスを改善し、もってアメリカとカナダ及びメキシコが享受する利益のバランスを取り戻すことがNAFTAの見直しの大きな目的だと、こういうことを述べてきているというふうに承知しております。

○紙智子君 バランスを見直すという話なんだけど、アメリカの労働者やビジネスのためにとずっと言ってきたわけですから、それに今回役立ったというふうに思っているわけですよね、トランプ大統領は。

○政府参考人(外務大臣官房審議官 塚田玉樹君) アメリカ政府が今般メキシコ、カナダとの間で協定を結んだということにつきましては、アメリカの労働者の労働条件、これを指示し、アメリカの雇用を増加させて、農業あるいは酪農の従事者に対してより公正な市場アクセス、これをもたらして、ひいてはアメリカ企業の成長を確保して、全体としてアメリカ経済、これに良い影響を与えるものだというふうにアメリカ政府は国内にも対外的にも説明してきていると、こういうふうに承知しております。

○紙智子君 カナダは酪農で新たな譲歩をしたんじゃないですか。

○政府参考人(外務大臣官房審議官 塚田玉樹君) この協定の細目については、今ちょっと手元にはないんですけれども、旧NAFTAと比べると若干の新しい内容があるというふうに承知しております。

○紙智子君 報道によりますと、カナダは供給管理制度を維持したんだけれども、乳製品などアメリカ向けの品目別の無税輸入枠を設定したというようにあるんですよね。そうすると、クリームとかはTPP以上の譲歩をしたんじゃないですかね。

○政府参考人(外務大臣官房審議官 塚田玉樹君) 具体的な酪農に関する個別の内容については、済みません、今手元に情報がないんですけれども、先ほど申し上げましたとおり、旧NAFTAに比べますと、より市場アクセスが改善する方向で改定がなされたというふうに承知しております。

○紙智子君 日米貿易交渉をするに当たって、新NAFTA、USMCA、アメリカ・メキシコ・カナダ・アグリーメントというようですけれども、アメリカの交渉方針を日本としては分析しないんでしょうか。

○政府参考人(内閣官房内閣審議官 大角亨君) 日本として、第三国間で合意された協定についてコメントする、こういった立場にはないものというふうには考えておりますが、一定の研究は進めているところでございます。

○紙智子君 アメリカは自動車産業を保護する姿勢を前面に打ち出しています。それで、高関税の発動をちらつかせながらこの妥協を迫ったということが報道されているわけですよね。
 それで、ライトハイザー通商代表は、NAFTAの新協定はアメリカ政権の将来の通商交渉のひな型になるというふうに言っていると。内容としては三つあって、一つはアメリカでの自動車生産を増やす、アメリカ農業の輸出拡大、二つ目は知的財産権の保護、三つ目は不公正な貿易慣行を防ぐ、この三つの枠組みで転換をもたらすというふうに言っているわけです。
 それで、新NAFTAは今後の通商交渉のひな型だというふうに言っていて、そういうふうにひな型を持ってこれから日本に対して交渉を迫ってくるのかということも考えられるわけですけれども、それに対して日本政府がどういうふうに対応しようとしているのかというのが見えていないんですよね。交渉するというのであれば、そういうことについての戦略なども示す必要があるんじゃないでしょうか。

○政府参考人(内閣官房内閣審議官 大角亨君) 今後の日米交渉につきましては、まさに九月の共同声明に書いた内容に沿って交渉を進めることとしておるわけでございますが、そこで具体的に決まっていないことにつきましては、全て茂木大臣とライトハイザー代表との今後の協議によって決まるものでございます。
 いずれにいたしましても、具体的な交渉はこれからでございます。決して簡単な交渉ではございませんけれども、国益に沿った形で今後の交渉を進めてまいりたいと考えております。

○紙智子君 アメリカは、アメリカ農業の輸出拡大というふうに言っているわけですよね、はっきり言っているわけです。そして、アメリカの農業団体はTPP以上の対日輸出を求めていると。過去の経済連携協定が最大限という、まあ言い方としては抽象的な言い方なんですけれども、やっぱり具体的な交渉戦略さえ示していないわけです。
 ですから、そういう中で交渉に入っていくということは非常に危険性をはらんでいるというふうに思いまして、こういう無謀な交渉はやっぱりやるべきではないということを思いますけれども、大臣、どうでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) 今後の交渉ということになりますと、政府一体となって取り組むことになろうかと思いまするけれども、農林水産大臣としての私の責務は、いかなる貿易交渉であれ、将来にわたって我が国の農林水産業の再生産を可能とする国境措置を確保することでございまして、このために最大限の努力をしていく考えでもございます。

○紙智子君 TPPが発効して、牛肉などの輸入が増えているというのはさっきも話がありました。TPPでも日本の農業に打撃を与えているのに、この上、日米貿易交渉で事実上のFTAということになるわけですけれども、これは是非ともやめるべきであるということを強く求めておきたいと思います。
 次に、食料自給率についてお聞きします。
 二〇一七年度の食料自給率は三八%です。それで、一六年度と同じく低い水準になっているわけです。
 初めにポケット農林水産統計についてお聞きするんですけれども、今度の国会では厚生労働省の毎月勤労統計の不正が問題になって、政府の統計がどうなっているのかというのが注目されています。
 お配りした資料を、ちょっと小さくて見にくいんで申し訳ないんですけれども、これちょっと見てほしいんですけれども、これはポケット農林水産統計二十九年版に掲載されているカロリーベースと生産額ベースの総合食料自給率です。

配布資料 ポケット農林水産統計平成29年度版 2017 
カロリーベースと生産額ベースの総合食料自給率(平成28年度)

それで、これが平成三十年版、二〇一八年には掲載されていないんですよね。なぜ掲載されていないのでしょうか。お答え願います。

○政府参考人(農林水産大臣官房総括審議官 光吉一君) お答えいたします。
 食料自給率につきましては、例年八月に公表しております。その際、併せまして、参考資料として食料自給率に係る状況等を分かりやすく説明した資料を公表しております。
 御指摘のカロリーベースと生産額ベースの総合食料自給率の絵、図につきましては、おととし八月に自給率を公表したときの参考資料に掲載したものでございます。それをポケット農林水産統計に転記をしたという形、流れになっております。
 昨年の話でございますが、昨年の八月に食料自給率を公表した際も参考資料というのを公表しておりますけれども、その際に、品目ごとの生産努力目標に向けた取組が重要であるという認識の下に、御指摘のような図ではなくて生産努力目標の達成状況についての図を掲載したことから、ポケット農林水産統計に御指摘の図が載っていないということになります。
 今申し上げましたように、生産努力目標に向けた取組が重要であると考えて新しい図を載せたところでありますけれども、その際、品目ごとの総供給熱量と国産熱量、これを分かりやすく整理した表、これはまさに委員御指摘の図の基となる数字の表でございます。これ自身を別途同じ参考資料の中に掲載していることから、同様の内容のものが重複しているということから御指摘の図は載せなかったということでございます。

○紙智子君 ちょっと分からないんですよね。
 いろいろ、参考資料ですか、参考資料でもっていろいろ作っているのはいいですよ、それはやらなきゃいけないでしょうけれども、どうして今年のこの平成三十年版に載せなかったんだと。毎年今まで載せてきていて、それで、この表を見てもらえば分かるように、このカロリーベースと生産額ベースの総合食料って黒い帯がありますけど、ちょっとちっちゃくて見にくいんで、その下に総供給熱量というのと国産供給熱量とありますよね。これでもって割り算をして、すぐ自給率が今どれだけかって分かるわけですよ。それが載っていないわけですよ。今回もそれでもって調べようと思ったら載っていないわけですよ。何で載せなかったのかということを聞いているんです。

○政府参考人(農林水産大臣官房総括審議官 光吉一君) ただいま御説明申し上げたとおりなんですが、このポケット農林水産統計独自でどうこうするの前に、まず自給率の公表をするときにどういった参考資料に資料を載せているかという話がございます。
 それで、従来その参考資料に御指摘のような図を載せているわけでございますが、今回は、先ほど申し上げましたように、生産努力目標に向けた取組が重要だと、自給率向上のためにはその取組が重要だということでその図を載せました。その際に、このカロリーベースと生産額ベースの委員御指摘の図に相当するような、むしろそれの諸要素をきちんと整理した表、品目ごとのキロカロリーを国産熱量と総供給熱量、あるいは合計でも表した整理した表が別途同じ参考資料に出ています。全く同じものでございます。絵で描いたものなのか、あるいは表でちゃんと整理したものなのか。今回新しい図を入れたということから、内容が重複してきちんと表で整理をしていることからこの絵を入れなかったと、そういう整理でございます。

○紙智子君 これは新しいやつね、こう見てみますと、全体の総熱量のところは分かるんですよ、書いてあるんですよ。だけど、もう一つの国産供給、だから、一人当たり一日どれだけかという、そこのところが、これ開いても出てこないんですよね。一生懸命探さなきゃいけないという。
 どうして今まで出してきたものをやり方を変えたということでここから落としたのか。それを多分どこかで、今回のやつは入れるか入れないかという判断があったと思うんですけど、そういう議論したんですか。

○政府参考人(農林水産大臣官房総括審議官 光吉一君) 繰り返しになりますけれども、ポケット農林水産統計のその絵については、この図をそもそも参考資料のときに入れているか入れていないかで機械的に判断して、たまたま載っていないという話でございます。参考資料のときにこの図を入れるかどうかということについての判断があって、その際に、昨年の自給率を公表したときの参考資料の考え方としては、生産努力目標について、自給率向上のためには目標に比べてどれぐらい行っているかというのをきちんとチャートで示した方がいいということで図を入れたんです。その代わりに、じゃ、この図をどうするかというと、この図の基になるきれいに整理したキロカロリーを品目ごとに、参考資料Aというふうに書いてございますけれども、資料の中に、それ自身をきちんと載せているので、内容的にはこの絵と全く重複するんですね。ですから、この図を入れないで新しい生産努力目標の図を入れたと、そういう整理でございます。

○紙智子君 ちゃんと説明できる資料、別資料を作っているという話だと思うんです。それは別にいいんですよ。これに載せるべきでしょう。
 じゃ、遅れてでも載せるんですか、この後。図にして、分かりやすく。

○政府参考人(農林水産大臣官房総括審議官 光吉一君) ポケット農林水産統計にその絵を載せるかどうかで、正直、積極的に強い判断をここであえてしたということではなくて、参考資料のやつを転記する形で載せていたのに、参考資料の方に載らなかったので機械的に入れていないというだけで、参考資料の中ではきちんと生産努力目標のチャート、グラフとともに、この各品目、あと全体のキロカロリーも極めて細かくきちんと整理をした分かりやすい表を載せております。

○紙智子君 何回聞いてもよく分からないんですよ。
 それで、詳しくいろいろやっているんだと言うんだけど、載せないことを判断しているはずなんですよ。だから、どこかで議論して、今回やめようとなっているんですよ、誰かが判断して。それで、それがどうしてなのかというのがずっと分からないままなんです。
 それで、委員長、ちょっといいですか。
 安倍内閣になってから統計が軽く扱われているんじゃないかという、そういう疑念があるわけです。それを払拭するためにも、この掲載をやめるに至った経緯を全て提出をしていただきたいと思います。

○委員長(堂故茂君) 後刻理事会で協議します。

○政府参考人(農林水産大臣官房総括審議官 光吉一君) むしろ、この絵の形じゃなくて、その絵を作っている基となる諸要素を細かく詳しく、しかし分かりやすく表にして参考資料に載せているわけでございます。

○紙智子君 かみ合っていないんです。
 要するに、どこかで判断している人がいて今回載っていないということなので、今委員長にお願いしましたので、お願いします。
 それで、二〇一七年の食料自給率、ちょっともう時間になりましたけれども、三八%というのは、二〇一六年と同じく過去二番目に低い水準なんですね。二〇一六年に自給率が三八%に下がったときにその理由を聞いたら、台風被害によって北海道の生産が減少したためだと言っていたんですよ。二〇一八年に北海道の生産が回復しても、食料自給率は回復していないわけですよね。なぜ回復しないのかということを一言、これは大臣にお願いします。

○委員長(堂故茂君) 時間が参っておりますので、簡潔に、大臣、答弁願います。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) しっかりと分析を踏まえて、また別の機会でお答えをさせていただきたいと思いまするけれども、食料自給率に関しましては大切なことでもございますので、上昇に転じますように我々もまた努力をさせていただきたいと思っております。

○紙智子君 じゃ、時間になりましたので、またこの問題は質問したいと思います。
 ありがとうございました。