<第197回国会 2018年11月27日 農林水産委員会>


◇北海道胆振東部地震による林地の大規模崩壊で、高騰しているシイタケ用の原木の供給への対策を求めた/「防災・安全交付金」を活用した京都府の住宅支援策を紹介し、北海道の一部損壊住宅への支援策を確認した/受取保険金額の取り扱いを変えるなどした中小企業グループ補助金の制度変更をやめるよう求めた

○農林水産に関する調査(農林水産分野の災害関連等に関する件)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 十五日の農林水産委員会で、ブラックアウトで甚大な被害を受けた酪農家の皆さんへの支援策についてお聞きしたわけです。もう少し今日具体的にお聞きしたいんですよね。
 まず、乳房炎対策の乳房炎の予防管理、これ一頭当たり千三百円というふうになっているんですけれども、この考え方を教えていただきたいと思います。

○政府参考人(農林水産省生産局長 枝元真徹君) お答え申し上げます。
 北海道の胆振東部地震の発生の際に、酪農家の方々は、乳房炎の予防のために、乳業工場の稼働が停止し出荷できない期間においても搾乳の継続に精いっぱい努力をされたというふうに承知をしてございます。
 御指摘いただきました乳房炎の予防管理の事業については、このような乳房炎の予防管理の取組に対しまして必要な労働費等の掛かり増し経費を支援することとしたものでございます。

○紙智子君 必要な乳房炎を防ぐための労働時間ということを勘案したということですね、今の答えは。
 それで、廃乳を余儀なくされたこの酪農家の損失に対して何とか応えようとする対策としては、これは歓迎したいと思うんですね。ただ、その上で、これ大臣にお聞きしたいんですけれども、生乳を販売できなかった、ブラックアウトによって生乳の販売ができなかった、本来入るべき収入が減ってしまったと、こういう手取り収入が減収しているということについて、大臣、どう思われるでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) 確かに、紙委員の御指摘のとおりに、ブラックアウトによって、二日間だったと思いまするけれども、それはせっかく搾乳をした生乳も廃棄せざるを得なかった。そのことが、乳業工場も止まっていたということもありまして、それも生産に回すことができなかった。それは確かにもう大きなマイナスの部分でございます。
 しかしながら、私どもが既にやりましたことは、この乳房炎対策はホクレンという機関もしっかりと農家の皆さんのために御支援もいただきました。さらに、私どもも、この非常用電源等々の手当てと併せて乳房炎対策につながるような形で支援もしてきたつもりでもございます。
 これからも更に酪農家の皆さんに対してしっかりとした対策というものも、二次補正もございますので、そういう中にありましても検討もしてまいりたいと思っております。

○紙智子君 やっぱりブラックアウトを招いたという、これは先ほどもありましたけれども、物すごい範囲広く、稚内まで停電になったわけですから、非常に大きな被害が広がっていて、私は社会的なやはりインフラを担っている北海道電力の責任は非常に大きいと思うんですね。やっぱり本来やっておかなきゃいけないリスク分散をしていなかったということというのもあると思うんです。ですから、本当にこの被害に対して北海道電力は社会的な責任を果たすことというのはやっぱり重要だというふうに思っております。
 もう一つちょっと聞きたいんですけれども、停電・給水対策というのもあります。それで、道東のある農協では、搾乳ができない農家のために発電機の運搬、設置工事に掛かった費用を、業者に一括して頼んで、農協が取りまとめてぐるぐる回して歩いたと。それを業者に頼んで五十万ほど請求が来たということなんですけれども、これは今回のこの停電・給水対策の対象になるんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省生産局長 枝元真徹君) お答え申し上げます。
 今の御指摘いただきました事業におきましては、停電時の緊急的な非常用電源の確保のための発電機の借り上げ、運搬、設置工事に要する経費の支援を行ってございます。この運搬ですとか工事を農協が運送業者等に依頼した場合に農協が業者に支払った経費についても補助対象となります。

○紙智子君 ありがとうございます。
 次に、森林被害についてもお聞きしたいと思います。
 震源に近い厚真町などでは至る所で林地の大規模な崩壊が発生しました。北海道は林業被害を約二百七十四億円としているんですけれども、被害の全容はまだ分からないままとなっています。苫小牧の広域森林組合代表理事組合長さんは、日本の国土保全という面からも今回の震災復興をモデルの事業に位置付けて取り組んでもらえると業者や森林組合や地方自治体としても助かると、国には木材の取り出しも含めて山の整備に乗り出してほしいということが言われていますので、これ要望として伝えておきたいと思います。
 その上で聞きたいのは原木シイタケについてなんですね。厚真町の林地が大規模崩壊をして、道内の原木シイタケを生産するための木材の調達が困難になっているわけです。それで、作業道が被災して入林できないと、原木搬出ができないと、で、生産が中止となっているということで、道内各地の生産者は原木の調達と、それから原木価格が前年比でも四〇%アップしてきているということで、非常に苦境に直面しているわけなんですね。
 原木シイタケを生産するために、北海道では、ほだ木への植菌、種、菌を植え付けるんですけれども、例年二月から三月に行うわけですけれども、ところがほだ木の調達の見通しが立っていないと。生産者は経営を継続するかどうかということで悩んでいる状況にあります。どのような対応を取ろうとしているんでしょうか。

○政府参考人(林野庁長官 牧元幸司君) 御指摘ございましたように、北海道胆振東部地震におきましては、厚真町を中心にいたしまして大きな森林被害が発生をしているところでございます。そのうち、広葉樹の被害がどれぐらいあるのかということについては、これは現在調査中というふうに伺っておりますけれども、いずれにしろ、当該地域は北海道における主要なシイタケ原木の供給地域でございましたので、大変大きな影響が生じているというふうに認識をしているところでございます。
 このため、現在、北海道庁が中心となりまして、被災森林の復旧方法あるいは木材の安定供給確保に向けた取組等を検討いたします胆振東部森林再生・林業復興連絡会議というものが設けられております。こういう会議等におきまして、森林組合等の関係者に対しまして、被害木の有効活用を含めまして原木の供給確保の協力を依頼するなどの取組を行っているところでございます。
 農林水産省といたしましては、これらの取組で得られました情報を生産者団体に適切に情報提供いたしますとともに、次回の収穫期に向けた植菌、これは今先生からの御指摘で、通常二、三月行われているということでございますけれども、可能な時期ということであれば来年五月頃まで可能というふうに聞いておりますので、この植菌が可能な来年五月頃までに原木調達が間に合いますように、関係者と協力をいたしまして全力で取り組んでまいりたいと考えております。

○紙智子君 経営不安が続いています。それで、生産者が将来にわたって安心して栽培できるように、ちょっと何がどういうふうになっているか分からない状態だったんですけれども、小まめに是非情報を伝えていただきたいと思います。
 次に、国土交通省に今日来ていただいているんですけれども、住宅の支援についてお聞きします。
 住宅被害は、北海道で、全壊とか半壊とか一部損壊とかあるんですけれども、一部損壊は八三%なんですね。災害救助法でも被災者生活再建支援法でも一部損壊には支援策がないということなんです。
 それで、国土交通省には、防災・安全交付金等の基幹事業である住宅安全ストック形成事業というのがあります。それで、京都府では、この効果促進事業というのを使って、大阪北部地震の際に府の独自の耐震改修助成制度を活用して、全壊、半壊、一部損壊問わずにこれ支援を行ったということです。
 京都府のこの制度というのは、防災・安全交付金を活用しているということなんですよね。ちょっとその確認なんですけれども、そして、その考え方を端的に説明していただきたいと思います。

○政府参考人(国土交通大臣官房審議官 眞鍋純君) 交付金の活用について御質問がございました。
 地方公共団体が自ら定める防災、安全のための整備計画、その目標を達成するために地方公共団体が自ら行う事業あるいは民間に対して補助を行う事業に対して幅広く財政的な支援を行うものとして、今御指摘のございました防災・安全交付金などの仕組みがございます。
 例えば、例に出していただきました京都府内、具体的に言いますと、京都市内におきましては、住宅・建築物の耐震性の向上等を図るため、今申し上げました交付金の基幹事業である住宅・建築安全ストック形成事業というメニューを活用して、住宅や建築物の耐震改修費に対する補助を実施しています。これに併せて、京都市では、劣化、ゆがみ、ひび割れなどの補修工事、屋根の工事、壁、床、小屋組みの補強工事などの簡易な工事費に対しても、基幹事業と一体となってその効果を一層高めるための必要な事業、これ効果促進事業と言っておりますが、そのメニューを活用して補助を実施していると承知しています。京都市では、大阪府北部地震により被災した木造住宅もその対象にするということで補助を実施しているということを聞いてございます。

○紙智子君 ありがとうございます。
 基幹事業と一体となって基幹事業の効果を一層高めるために必要な効果促進事業をプラスしたということですよね。だから、北海道でも実は既にこの住宅、社会資本の整備の基幹事業に基づいての制度をつくっているわけなんですけれども、京都府のように効果促進事業をプラスして耐震性が上がるようなメニューをつくれば、住宅・建築物安全ストック形成事業の対象となるということですよね。確認します。

○政府参考人(国土交通大臣官房審議官 眞鍋純君) お答えいたします。
 今御指摘のありましたように、北海道におきましても、住宅・建築物の耐震化等を図るために、住宅・建築物安全ストック形成事業を活用して耐震診断あるいは耐震改修などに対する支援が行われている市町村があるというふうに承知してございます。
 また、この基幹事業、住宅・建築物安全ストック形成事業の活用のほか、それと一体となって効果を一層高めるために必要な事業については効果促進事業のメニューがございますので、そうしたものを活用していただきますれば、交付金の支援対象にすることも検討し得るものかというふうに思います。
 まずは、地方公共団体、つまり道あるいは市町村でございますけれども、補助制度をどのように整えていただくのかと御検討いただく必要があろうかというふうに思います。

○紙智子君 ありがとうございました。
 北海道は、今、平地も雪が降ってまいりました。窓のサッシにずれて隙間ができているようなところがあると冷たい風が入ってくるわけで、冬の北海道ではとてもそのままいるというのは大変です。
 家の外壁が崩れて一部損壊と診断されている札幌の清田区の女性からは、取りあえずは修繕したんだけれども、やっぱりちゃんと写真で再度診断してほしいという要望も出されました。冬本番を目の前にして、被災者が安心して年を越せるように早い支援策を求めたいと思います。
 それで、ちょっと次に、質問の順番を変えます、次に中小企業グループ補助金についてお聞きをしたいと思います。
 施設復旧に関わるグループ補助金の計算方法が変わったんですよね。それで、今回の西日本豪雨の災害では、保険でカバーされる金額、つまり受取保険金額を控除した額が補助対象経費になるわけですけれども、実は熊本地震では受取保険金額は控除する必要がなかったと。
 保険というのは、これ、民間保険のことなんでしょうか。なぜこの受取保険金額に対する取扱いを変えたのか、お答えいただきたいと思います。

○政府参考人(中小企業庁長官 安藤久佳君) お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、方式を変えさせていただいたわけでございますけれども、自然災害が頻発する中におきまして、中小企業また小規模事業者の方々に民間の保険も活用していただく、すなわち、起きてからの復旧ではなくて起きる前に準備をしていただく、あるいは起きることを想定した対策を講じていただく、こうしたことは大変重要であると、このように考えさせていただいております。
 グループ補助金における保険金の考え方につきましては、今、熊本地震の際、そして今回の西日本豪雨の際に取扱いを今委員御指摘のとおり変えたわけでございますけれども、これは、熊本地震の場合には、受け取る保険金額を自己負担額から差し引いていくという仕組みでございます。したがいまして、自己負担額を保険金が超えてしまいますと、自己負担額はゼロになります。それ以上保険料を厚くし保険金が増えましても自己負担額はゼロのままという、こういったことが発生をいたします。こうなりますと、手厚い保険に加入をしようというインセンティブが言わば頭打ちになるんじゃないかと、このようなことが懸念をされるわけでございます。
 言わずもがなでございますが、保険は、平時における保険料の支払金額に応じて災害発生時に保険金が支払われる仕組みでございます。補助金の制度設計におきましても、支払保険料に応じた公平性のある仕組みを構築していくことが保険加入へのインセンティブを促すために重要であろうと、このように考えております。
 両方の災害で保険の加入の実態が相当異なっていると、こういうことが推測をされます。私どもの調査によりますと、地震の保険、熊本地震もそうでございますけれども、地震保険に加入している割合は約、大体一割程度と推定をされます。これに対しまして、西日本豪雨のような水害に対する保険の加入割合は約六割程度であろうと、このように考えております。
 したがいまして、保険加入者の割合が高いと思われます西日本豪雨のような災害におきましては、グループ補助金の設計におきましても、保険加入者間の公平性、すなわち、多く保険料を払った方とそうでない方が合理的な意味である種の差が付くと、こういった制度設計を図っていくことがより適切であると、このように考えた次第でございます。

○紙智子君 インセンティブを働かせるという話があったんですよね。結局、自分で努力できるところはしなさいということなんだと思うんですけれども、被災された事業者は、やっぱり熊本地震の際に実施されていた中小企業グループ補助金と比べると大きく後退したという訴えが出されているわけですよ。
 それで、私も愛媛のあの宇和島のミカン農家の山の崩れるところを見ましたけれども、もう本当に大変な状況ですよ。やっぱり必死の思いでやらないと、もう諦めちゃうかもしれないというような大変な状況の中で、そのインセンティブを働かせるというようなことで、熊本のときにはその負担がなかったわけだけれども、今回は負担してもらうという形になっているというのは、被災した側から見ると、やっぱり本当にどうしてなんだというふうに出されるのは当然だと思うんですけれども。現場からは、大きく以前より後退したじゃないかという声があるんですけれども、これに対してどう思われますか。

○政府参考人(中小企業庁長官 安藤久佳君) 今申し上げましたように、七月豪雨、こういった水害におきましては保険でカバーをされている方がかなりおられるのではないかと、このように推定をされるわけでございます。したがいまして、保険でカバーされている中で、日頃から保険料をたくさんお払いになられて備えておられる方とそうでない方との間で一定の合理的な差が付くこと、これは致し方ないのではないかと、このように考える次第でございます。

○紙智子君 言ってみれば、保険に入るということは、自分も保険料を払って何かに備えて入るわけですよ。そちらの方から被害に遭ったときに出てくると。
 国の制度は国の制度としてあるんだけれども、結局、例えば、モラルハザードということを言われているんだけれども、それを防ぐという話もあるんだけれども、そもそも、備えて保険料を支払って保険に入っている方が、それを受け取るということ自体が、その受け取ったものを差し引くということ自体が何かおかしくないですか。国の制度は制度としてやらなきゃいけないのに、民間の保険のものと合体してしまって、一体にする必要があるんですかね。

○政府参考人(中小企業庁長官 安藤久佳君) 今申し上げましたように、基本的には、保険に加入をしていただく、中小企業の方、小規模事業者の方でも頑張って日頃からやっぱり保険に加入をしていただいて災害時に備えていただく、こういったことが重要であろうと考えております。
 それは、基本的には、中小企業の方々の財産、自然災害に遭われた方におきましてもこの復旧は自助努力でやっていただく、こういったことが基本であると考えておりまして、そういった中において保険の利用を合理的に進めていただく、こういったことは、制度設計を行って、言わば補助金の交付の仕組みの中においてもこれをビルトインさせて、補助金をできるだけうまく合理的に活用していただく、こういったことの背中を少しでも押させていただきたい、このように考えている次第でございます。

○紙智子君 なかなかちょっと納得できないんですよね、よく分からないというか。
 例えばの例で言うと、例えばがん保険に入っていると。それで、だけど、もしがんが発生したときには入院して手術して、もう多額のお金が掛かるわけです、何百万と掛かるわけですよ。そういうときに、その保険が下りるということがあるから、だったら、高額医療制度が国の制度でありますけれども、これを、じゃ、そこから差っ引いて少なくしますねということと似ているんじゃないのかなと。そういうことがいいのかなというふうに思うんですけどね。
 そういう民間保険に個人でお金を払って入っていてそれが出るのに、こっちの方はそういうことを差引きしてその国の方のは減らすというのは、何でそれを一つにしなきゃいけないのかというのがどうも納得できないんですけれども、いかがですか。

○政府参考人(中小企業庁長官 安藤久佳君) 御指摘のがん保険の仕組みについて今私答える立場にないわけでございますので、その御答弁は控えさせていただきますけれども、先ほど来申し上げているように、これだけ災害が頻発をして、様々な形で保険を講じられている方、そうでない方との間で後の復旧の仕方等々についてかなり合理的な差が付いてくると、こういったことが見受けられるわけでございまして、私どもとしては、国の支援制度と併せて民間の保険利用を合理的な形で進めていただきたい、このように考えている次第でございます。
 そういった観点から、今回、七月豪雨で取らせていただいた対策というのが、災害の種類に応じて、熊本のときのような地震災害という形で保険のカバー率が非常に低かった状態と異なった言わば災害であると、このように考えられる中で、合理的な設計であったのではないかと、このように思っております。

○紙智子君 私は、やっぱり違う制度をこういう形で一体化するのはおかしいというふうに思いますし、そういう制度変更はやめるべきだということを申し上げて、質問を終わります。