<第197回国会 2018年11月15日 農林水産委員会>


◇北海道地震におけるブラックアウト被害について/ブラックアウト被害による離農を生まないために、酪農家への支援策を求める/TPP11の即時関税撤廃によって国内農業に与える影響について/クロマグロの資源管理は、国管理の大型船の漁獲枠を沿岸漁業者の生活が成り立つように、実情に合わせて見直すことが必要と指摘。

○農林水産に関する調査
 (台風、豪雨及び北海道胆振東部地震等による農林水産関係被害への対策に関する件)
 (農林水産分野の貿易等に関する件)
 (水産資源管理に関する件)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 久しぶりの農林水産委員会でありまして、今日は大臣所信ということですので、大臣に質問いたします。よろしくお願いいたします。
 通常国会が延長されたわけですけれども、農林水産委員会は開かれませんでした。それで、七月には西日本で豪雨災害が発生し、九月には台風が相次いで起こる、そして北海道地震と。それからまた、日米首脳会談が行われて事実上の日米FTAの交渉入りと合意がありました。そして、障害者雇用をめぐっては農林水産省も含めて水増し問題が発覚しました。外国人労働者の問題もありました。国会で質疑すべきことが山積している状態だと思います。
 そこで大臣にお聞きしますけれども、今年の夏は西日本豪雨や台風、そして北海道胆振東部地震など、自然災害が相次ぎました。相当のこれ農業被害も出たということでありまして、そのことを考えますと、やっぱり災害対策というのは本当に優先されてやらなきゃいけない課題だと思いますし、しっかり議論すべきだと思いますけれども、大臣の御見解をお聞きいたします。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) 紙委員から御指摘をいただきましたように、今年は本当に、七月豪雨、さらには二十一号、北海道胆振東部地震、そして二十四号台風等々と、災害、地震の多い年でございました。私自身も大臣の就任後に速やかに被災地を訪問いたしまして、被災自治体や生産者の方々と率直な意見交換を行ってまいりました。それは、やはり災害対策というのは迅速に進めて、そして来年にしっかりと営農に向けて頑張っていただきたいという、そういう思いからでございました。
 それぞれの災害に応じてきめ細かい支援対策を決定して農業者の経営者の再建に全力を挙げているところでもございますし、また、今臨時国会におきましても、皆様に御協力をいただきながら、いち早く災害対策の補正予算を成立をさせていただきましたことに心から有り難くも思います。敬意を表したいと存じます。
 また、一連の災害対策国会ということに関しましては国会でお決めをいただくものと認識をいたしておりますので、政府の立場としてはお答えすることを差し控えたいと思っております。

○紙智子君 是非、力を入れてやる必要があるというふうに御答弁いただきたかったなと思うんですけれども。
 それで、参議院の農林水産委員会としては、閉会中に広島、岡山に委員派遣がありました。それらの災害の問題はまた別の機会にしっかり時間を取って議論したいと思いますが、吉川大臣も私も地元は北海道ですので、今日は北海道で発生した震度七の大地震についてお聞きしたいと思います。
 九月六日の北海道地震から二か月がたちました。震源地の非常に中心となったところの被害も大変だったわけですけれども、やはり全域停電、いわゆるブラックアウトですね、これは北海道の酪農地帯にも深刻な被害を及ぼしました。地震後懇談した北農中央会では、全域停電による生乳の損失は約二十三億円。それから、道東あさひの農協にも行きましたけれども、組合長さんは、二日間の停電というのは予想外だった、約三億円の被害が出たと言われました。酪農家の方からは、こういうことを起こした北電に賠償を求めたいんだという怒りの声も出されました。
 北海道地震の被害は三千六百七十五億円ということなんですけれども、うち停電の被害が千四百八十億円ということで四〇%に及ぶわけです。これだけ大きな被害を出したブラックアウトについて、大臣の認識を伺いたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) 私も、震度七の地震、北海道が今年百五十年を迎えた中で、道民の皆さんが初めて震度七という大きな地震を経験をいたしました。私は札幌でありまするけれども、ここもまた震度六という、今まで札幌市民が経験したことのない大きな地震でございました。
 その地震の震度が六、七という地域のみならず、ただいま御指摘をいただきましたように、ブラックアウトという停電、我々が経験をしたことのなかったことを経験したわけでありますが、私自身も、個人的にはこれは起こしてはならない、絶対起きてはならないことだということを痛感をいたしました。
 まだもちろん大臣に就任する前でありまするけれども、党の立場で、例えば酪農家の皆さんが非常用電源がないという、そういった声も聞かせていただきましたし、そういった中で、電源、通電がなかなかなかったものでありますから、自動車による電源車を回していただいたり、そういったいろんなことも手配もさせていただきました。
 そういう中にあって、オホーツクの農業協同組合の連合会の皆さんが既に非常用電源をお持ちになっていた。そこで、特に酪農向けということではなかったのでありまするけれども、そういった非常用電源を酪農家の皆さんに手配をして、それで搾乳、さらにはバルククーラーでの冷やすこともできたという、そういった話も聞いております。
 様々なことが起こりました。また、さらには、乳業メーカーが僅か二つの工場しか非常用電源がなかったということも実は初めて私も知りました。そういったことも大きな教訓になっておりまして、これからもしっかりと対応、対策というものを打ち出していかなければなりませんけれども、まず、酪農対策につきましても、しっかりと緊急的に非常用電源の確保等について、今回の支援対策の中におきましても手当てをさせていただきましたし、乳房炎等々で大変御苦労をされた酪農家が多くございます。そういったことから、この度の非常用電源等々ということに対策の一環をつくらせていただいたわけでありまするけれども、これからも集中的に三年間でこういった緊急対策というものをしっかり行っていくということも政府の間で決めておりますので、また対応を怠らずにやりたいと、こう思っております。

○紙智子君 ブラックアウトについての認識をお伺いしたんですけれども、ちょっとそれでいろいろ語りたいと思いますけれども、時間が限られていますので、できるだけ答弁は簡潔にお願いしたいと思います。
 それで、今ちょっと話もありましたけれども、酪農家の皆さんは全域停電で搾乳できなかったと。自家発電で辛うじて搾乳できても、受け入れる乳業工場が閉鎖していたので廃棄せざるを得なかったと。
 別海町のある酪農家の方は、牛と目を合わせるのがつらかったというんですね。牛と目が合うと、搾乳してもらえると思って期待して牛が近寄ってくると。だから、目を合わせないようにして芋掘りをしていたと。こういう話なんですね。
 隣の浜中町の獣医さんは、町では約二千頭の牛がいるんですけれども、そのうち三百六十二頭が乳房炎にかかってしまったと。真冬でなかったことと断水がなかったことがせめてもの救いだったというふうに言っているんです。
 地震による直接の被害じゃなくて、ブラックアウトによる被害だったということなんですね。
 これまでも毎年、北海道では約二百戸が離農してきたわけです。生産基盤の弱体化ということが問題となってきた中で、今回のこの大規模停電、これをきっかけにして、例えば根室市の酪農家が離農しているわけです。明治時代から開拓に入って、息子さんで四代目と。二十五年前に建築した牛舎や機械が更新時期に差しかかっていて、搾乳ロボットなどを更新するには億単位の投資が必要となると。それで、莫大な借金をして酪農を続けるのか、それとも離農するのかといって悩んでいたところに今回の停電で生乳廃棄を余儀なくされたということが引き金となってしまったと。このままだったら、離農に拍車が掛かってしまいかねないというふうに思うんですね。
 これ以上やっぱり離農を生まない、そのための、生まないための支援策が必要ではないかと思いますけれども、ちょっと長くならないように一言お願いします。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) 支援策というのはたくさんあろうかと思います。私も、先ほども申し上げましたように、このブラックアウトに関しては絶対起こしてはならない、起きてはならない、そういったことが起きてしまったわけでありまして、この乳房炎ということも深刻な状況だということもお伺いをいたしました。
 さらに、せっかく搾乳した生乳を廃棄しなければならなかったということもございます。そういったことを勘案しながら、今回の対策の一つに、非常用電源をしっかりと各JAを中心として持っていただいて、こういうことが起きてはならないんですけれども、非常用電源をしっかりと酪農家の皆さんに使っていただけるような、そういう体制も進めてきているところでもあり、さらにまた、そういったことも進めていかなければならないと、こう思っております。
 酪農家の離農ということは、本当に私もそういうお話を聞いて、大変心が痛んでまいります。そういったことがこれからないようにするのがいろいろな対策の一つだとも思っておりますので、様々な形、支援策を取りながら、これからも頑張っていかなければなという、今御質問を受けて、そういう思いでございます。

○紙智子君 それで、いろいろな対策ということで、九月には農水省としては被害の対策を打ち出しました。しかし、現場に行きますと、酪農家の皆さんからは、支援策はあると聞いているんだけれども、いつになったら対応してもらえるのかと、具体的に教えてほしいと言われるんですね。
 それで、この間、新たな牛の導入とか、それから乳房炎対策とか発電機とか、いろいろ示された施策というのがあるわけですけれども、これは一つ一つちょっと時間の関係でそれは紹介しなくていいんですけれども、見通しとして、スケジュール感でいうと、いつまでにどうなるかということについて示していただきたいんですけれども。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) 非常用電源に関しては、今もいろいろな要望を聞きながら行っているところでありまするけれども、十一月二十六日を期限に要望調査を実施をいたしておりますので、その後速やかに交付申請、交付決定の手続が行われるものと考えています。

○紙智子君 それで、その支払がいつになるかと聞いたら、年度末だというふうに言われるんですけれども、いや、それで間に合うのかというのが、もう年を越せるかどうかという感覚なんですよ、現場は。だから、そこの支払がどうなるのかというのは非常にせっぱ詰まっているというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) 私の方からちょっとお伺いしていいですか。乳房炎対策の非常用電源の支払ですか。

○紙智子君 それぞれなんですけれども。今まとめていると聞いたんですけれども。現場は、要するにスピードを持って早くやっていただけないかという声が出ているんですけれども。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) 乳房炎対策の非常用電源に関しましては、これは個人ではなくて各JAに対して支援をするALIC事業がありますから、個人の負担というものはございません。そのほかに関しましては、この度の災害対策の予算も成立をさせていただきましたので、速やかに行っていきたいと思います。

○紙智子君 是非速やかに、本当に年内に支払わなきゃいけない人たちもいると思うので、是非そこはスピード感を持って早急な対策をお願いしたいと思います。
 次に、通商交渉についてお聞きします。
 閉会中、通商交渉をめぐっても大きな変化がありました。九月の日米首脳会談もありましたけれども、TPP11がこれ十二月三十日に発効すると。発効初年度というのは十二月三十日から来年の三月末まで、四月以降は二年度に入るわけですね。例えば牛肉だったら、今三八・五%の関税が十二月三十日から二七・五%にすぐ下がるわけです。来年四月からは、今度二六・六%に下がるわけですね。
 農林水産品の品目はライン数で二千五百九十四あるわけですけれども、関税が即時撤廃される品目が幾らあるかということで聞きましたら、五二・九%もあるんですよね。半分以上の千四百近くが即時関税が撤廃されると。
 大臣、半分以上の関税が即時撤廃ということについてはどのように認識されているでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) ただいま御指摘をいただきましたように、十二月三十日に発効することと、TPP11でありますけれども、なりますが、今、農林水産品の即時撤廃の割合が約五割、数字で五二・九%とお示しをいただきました。これらのうちの約四割の品目が既に無税の品目であると承知をいたしております。
 発効とともに無税となる品目につきましても、一つは低関税率の品目であること、さらに、輸入実績がないか僅少な品目であること、さらには、国産品とすみ分けができておりまして競合しない品目など、品目ごとに貿易、生産、流通実態等を一つ一つ勘案して、そのセンシティビティーに十分配慮しながら、影響のない品目に限って即時撤廃をしたと承知をいたしております。
 新たな国際環境の下で農林漁業者の皆様が安心して生産に取り組めるように、引き続き総合的なTPP等関連対策等に基づく対策を講じることによって、その体質強化をしっかりと図っていきたいと考えております。

○紙智子君 政府がこの間出してきた影響試算というのは、関税率一〇%以上かつ国内生産額で十億円以上の十九品目の農産物と十四品目の林水産物ですから、即時撤廃される品目についてどういう影響が出るかということはそもそも明らかになっていないんですよね。
 それで、農産物でいうと、トマト、ニンニク、ブロッコリー、ニンジン、大根、里芋、レタスなど、相当市場に出回っている農産物が多く今回即時の中にも含まれているわけです。関税率が比較的高い品目でいうと、ストロベリーでいうと一二%がゼロになる。かんきつ類のジャムも一二%がゼロになる。生鮮のブドウは、季節によって変わりますけれども、一七%がゼロになる。ブドウジュースも一九%がゼロですよ。
 ですから、確かに三%とか低いのもあるけれども、これでどうして安心して営農ができるというふうに言えるのかというふうに思うんですけれども、この辺はどうですか。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) 今それぞれ御指摘をいただきましたけれども、例えば国産ブドウ、巨峰とかピオーネだとかシャインマスカット等、味や外観等が極めて優れておりまして、産地ごとにブランドが確立されているため、輸入品とすみ分けが、先ほどもすみ分けができていると申し上げましたけれども、できていると、こう承知をいたしております。関税を、ですから即時撤廃しても影響は見込み難いと考えられるのではないかと存じております。
 しかしながら、先ほども申し上げましたように、農林漁業者の皆さんが安心して生産に取り組めますように、引き続き総合的なTPP等関連対策大綱に基づく対策を講じていく必要があるということを思っております。

○紙智子君 安心して営農できるようにと言うんだけれども、実際上は安心できない状況もあって、TPP12のときにJA長野中央会が十九品目以外の生産減少額を出しているんですね。長野生産のブドウについては、TPP十二か国のときは約三十九億円マイナスになる、レタスも三十億円マイナスになると。政府の影響試算は信用できないという意見が各地で出されました。それにしても、まともな説明なしにこれTPP11で突き進むというのは、重大な問題だというふうに思います。
 続けて言えば、非関税分野というのも、これ発効と同時に効力を生じるわけです。例えば、貿易の円滑化ということでは、輸入手続を簡素化するということで、輸入食品は到着してから四十八時間以内に国内で流通をさせるというのが原則になるわけですね。そうすると、政府は消費者のメリットになるんだというふうに言うわけだけれども、食料品が安くなるというふうに宣伝しているけれども、しかし、食の安全、安心がどうなるんだということですよね。
 今現在は、輸入通関手続の所要時間が海上貨物で六十九・九時間、二・六日掛かっていますけれども、当然この後、簡素化、迅速化を求める要請が出てきて、輸入食品の検疫がどうなっているかというと、サンプル検査率は毎年下がってきています。二〇一七年の検査率でたった八・二%です。BSEが発生したときは一〇%超えていたと思うんですけれども、下がっているわけですよ。食品衛生監視員が増えているかというと、増えたのは一人だけなんですね。こういう中で、本当に安全、安心が確保できるのかという問題もあります。
 ここはちょっと質問はいたしませんけれども、ちょっと次に行かせてもらいます。いずれにしても、食の安全、安心への備えが不十分だと言わざるを得ません。
 それから、クロマグロの問題についても一言質問しておきたいと思うんですけれども、太平洋クロマグロ漁業規制と資源管理です。
 水産庁は、国際約束を口実に、沿岸クロマグロ漁民の強い反対と改善要求があるにもかかわらず、今年七月から罰則を伴う数量管理、TAC規制に踏み切りました。現場に丁寧な説明も納得も合意もなしに強行したと言わざるを得ません。その結果どうなったかというと、私も大臣もそうですけど、地元の北海道では漁獲枠はゼロなんですね。それも、第四管理期間、来年の三月までだけではなくて、六年間続くわけです。
 漁業者は魚を捕って何ぼの世界ですよね。クロマグロ漁に依存している漁業者は深刻だと。漁をしないで生活しろというのかという声が上がっているわけですけれども、これについて、大臣、どのように思われますか。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) 本年五月に示しました第四管理期間における太平洋クロマグロの漁獲可能量の配分について、一部漁業者から大型魚の配分等について不満の声をいただきました。大変私どもも遺憾に存じております。
 そのため、パブリックコメントや各都道府県で開催をいたしました意見交換会などの意見などを踏まえまして、もう既に、九月七日になりますけれども、海洋生物資源の保存及び管理に関する基本計画を変更をいたしまして、第四管理期間における大型魚の追加配分というものを実施をしたところでございまして、さらに、第五管理期間以降の配分に向けまして、九月に水産政策審議会資源管理分科会の下にくろまぐろ部会というものを設置をいたしました。そこで専門家や漁業団体の皆さんの代表の委員として様々な漁業者の意見を聴取した上で、クロマグロの配分の考え方について審議をしたところでございまして、今回の一連の経過を踏まえて、今後の配分に当たりましては、漁業者の実情に一層配慮できるように丁寧に対応をしてまいりたいと考えております。

○紙智子君 それで、クロマグロ漁の漁獲規制というのは資源管理のためというふうに言われているわけですけれども、問題になっているのは、混獲とか資源の無駄ということが話題になっています。イカ釣りの漁にクロマグロが食い付くという話も聞きました。イカ漁、ブリ漁が成り立たないということもあります。
 漁具被害も発生していると。東北の三陸沖では、沿岸の定置網にクロマグロが入ってしまって、逃がそうということで網を下げるとほかの魚も一緒に逃げちゃうと。しかも、高速で、クロマグロって六十キロとかすごい高速で泳いでいるということがあって、定置に入ると傷ついて弱ってしまうという話なんですね。逃がしても死んでしまうと。だから、現場の漁業者は、資源を管理するといいながら、死んでしまったらこれ資源管理にならないですよねと、資源の無駄になるんじゃないかという声も出ているんです。ちょっとこの認識も後で聞きたいんですけど。
 もう一つ続けて言いますと、こういうやっぱり無駄なことがあっても、北海道の漁獲枠はゼロだと。TACのための資源評価が本当に万能なのかということも出ているわけです。漁業者の中には、TAC制度についての不信があります。
 一九九六年に、千葉県の沿岸小型イカ釣りの船の漁業者は、東北沖まで巻き網船のイカの乱獲に苦しんでいました。夏イカの価格暴落や房総沖の秋イカの資源の枯渇で生活に深刻な打撃を与えているということで訴えて、当時、千人もの漁民が集会を開いたんですね。自民党とか水産庁に要請行動に取り組んだと。そのとき水産庁の説明は、巻き網との因果関係は立証できない、イカは一年魚だから分からないと言いながら、イカはTAC魚種に指定するから経営は安定するという説明をしていたんですよ。

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 ちょっと資料を配りましたので見てほしいんですね、この漫画の入ったやつですけれども。
 これは水産庁が出しているものなんですけれども、パンフレットで出していたんですね、当時。TAC制度実施の前と後と題して説明してあります。TAC制度の実施前は、魚を捕りまくり、船を大きくし、残ったのは借金だけ、経営困難に陥ると説明しています。TAC制度の後はどうかというと、魚を減らすことなくいつまでも捕れるぞ、資源回復、経営安定というふうに説明しています。このパンフレットを使って、千葉の漁民に、大丈夫だと、安心してほしいというふうに説明したんですね。TACが明日の漁業を守りますというポスターも当時あったようです。
 本当にこれ資源が回復して経営が安定したのかということで、その下の資料を見てほしいんですけれども、その下に千葉の沿岸イカ釣りの漁獲量を書きました。一九九六年千百五十六トン、二〇〇〇年は千百三十七トン、二〇一〇年は五百四十六トン、二〇一五年は十八トンまで下がって、二〇一七年はゼロです。だから、二十年前に言っていたことが違うんじゃないかと、漁業者はそういうふうに言っているわけですよね。
 大臣、この漁業者の声についてどのように思われるでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) 今、TAC制度導入によりまして資源が回復すると水産庁は説明しているけれどもスルメイカの資源が減少しているのではないかという、そういう御指摘だったと思います。
 水産資源は、漁業がなくても海洋環境の変動に伴い資源そのものが変動するとの特性を有していると承知をいたしておりまして、変動の仕方は資源により異なりますけれども、一般に、表層を回遊する魚種の方が変動の幅が大きいとされております。御指摘のスルメイカの現在の減少の主要因は産卵場の水温変化等の環境変動にあると認識をいたしておりますが、一方で、資源が減少傾向にあるときに無秩序な漁獲を行えば、減少に一層の拍車が掛かり、回復に時間が掛かることと思います。
 ですから、一定以上の資源を捕り残すことが資源管理上最低限必要であると考えておりまして、漁獲量可能量、いわゆる今はTACでありまするけれども、設定することは必要なのかなということも考えております。

○紙智子君 今の説明を聞いただけだったら、漁業者の人はなかなか納得できないんだと思うんですよ。大丈夫だと言われてやってきたんだけど、実際上はもういなくなってきていると。いろんな環境の変化もあるということなんだけれども、今の話を聞いても、TACが明日の漁業を守りますという、そういう宣伝をしてきたんだけれども、でも、実際、資源評価というのは万能でもなければTAC制度は万全でもない、不確実性があるんだということだと思うんですよ。陸上の畑と違いますからね。海の中なので常に魚群がいろいろ動いて歩くという、環境の影響を受けるという中ですから、やっぱり確実にいるというわけじゃないということだと思うんですね。
 そういう意味では、沿岸漁業というのは資源のバロメーターなんだと思うんですよ。資源管理に反対する人は誰もいないと思います。これは大事なことだとみんな思っています。しかしながら、TACだ、資源管理だということで形の上だけのことを強調しながら、漁業者のなりわいと生活を壊すということはいけないと思うんです。
 北海道のクロマグロの漁獲枠がゼロということで、年間に何本か釣り上げてそれで生活している人というのは、一つも捕っちゃ駄目と言われたらどうしたらいいのかということなわけですから、やっぱりこのまま六年間禁漁するということを押し付けるのかというふうにも思うわけです。
 ですから、まずは言いたいことは、国管理の大型船の漁獲枠を、やっぱり沿岸漁業や家族漁業の生活が成り立つようにして、機械的じゃなく、その実情に合わせて見直すことが必要じゃないかということを申し上げたいんですよね。それに対して、最後、一言御答弁願います。

○国務大臣(農林水産大臣 吉川貴盛君) 沿岸漁業の漁獲量に関しましては、直ちに導入するということは考えておりません。導入する場合にありましても、様々なことを、やっぱり現場の皆さんの意見もしっかりと聞きながら導入していくということになろうかと思いますけれども、大型魚の枠はありますけれども、今申し上げましたようなことで、しっかりと意見を聞きながらやっていくことをお約束をさせていただきます。

○紙智子君 小さな漁業者がやめなくてもいいように、やっぱり大きなところを削って回すということで是非考えていただきたいということを申し上げまして、質問を終わります。