<第196回国会 2018年6月1日 沖縄及び北方問題に関する特別委員会>


◇日ロ首脳会談について/北方四島の元島民によるビザなし交流について、ロシア側へ改善を求めるよう主張/秋田県・山口県に配備予定のイージス・アショアについて、計画の中止をせまる

○沖縄及び北方問題に関しての対策樹立に関する調査(沖縄及び北方問題に関しての施策に関する件)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 最初に、安倍総理は、二〇一六年の十二月に行った日ロの首脳会談を受けて、領土問題では七十年間一ミリも動かなかった、今回、日ロの交渉に大きな一歩をしるすことができたというふうに前回言われていたんですね。
 今回、この日ロ首脳会談で領土問題は一ミリでも動いているでしょうか。外務大臣、お願いします。

○国務大臣(外務大臣 河野太郎君) 二〇一六年十二月の日ロの首脳会合で、プーチン大統領と安倍総理は、平和条約を解決する自らの真摯な決意を表明するとともに、北方四島において双方の法的立場を害することのない形で共同経済活動を実施するための交渉を開始しようということで合意をいたしました。
 共同経済活動の実現に向けた取組を通じて、日ロが共にこの北方四島の未来像を描き、その中から双方が受入れ可能な解決策を見出していくという未来志向の発想により、今まで動かなかったこの北方領土問題を解決し、平和条約の締結にたどり着くことができるのではないかというふうに考えております。
 平和条約締結問題につきましては、安倍総理とプーチン大統領との間も含め、日ロ間で今率直に対話を重ねてきております。
 五月二十六日の首脳会談でも、おととし十二月のプーチン大統領訪日の際の日ロ首脳会談の合意事項の具体的な進展を確認をしており、北方四島における共同経済活動の実現に向けた作業が新たな段階に入ったということを確認したと言えると思います。
 具体的には、今年七月、八月を目途に事業者中心のビジネスミッションを四島に派遣する。その後、日ロ次官級協議を開催するということで一致し、さらに、五件のプロジェクト候補、海産物の共同増養殖プロジェクト、温室野菜栽培プロジェクト、島の特性に応じたツアーの開発、風力発電の導入、そして、ごみの減容対策といった五つのプロジェクト候補の内容について具体的な進展を確認をいたしました。
 政府としては、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するとの一貫した政府の方針に基づき、引き続きロシアとの間で粘り強く交渉を進めてまいりたいと思っております。

○紙智子君 今いろいろお話をいただいて、共同経済活動、五件のプロジェクトという話もされて、私も説明を聞いているんですけれども、肝腎のこの主権の扱いということをめぐっては、これやっぱり法的枠組みをお互いに崩さない形でということ自体が、どういう審議になっているのかというのはなかなか、事前にいろいろお話を聞いているんですけれども、はっきりしないなというふうに思っているわけです。
 それで、この間、北方領土がどうなっているかということで見てみると、ロシア政府は昨年の八月に色丹島に特区を設けて進出企業に対する優遇措置を整備しているんですね。アメリカ企業によるディーゼル発電所の建設が計画をされていたり、ロシア企業が水産加工場の建設を進めているということが報道されて、択捉島と国後島に、ここには最新鋭のミサイルシステムを導入すると。軍事演習も行っているということも言われているわけなんです。こういう実態についてはつかんでおられるんでしょうか。

○国務大臣(外務大臣 河野太郎君) 地対艦ミサイルの北方四島への配備等、北方四島におけるロシア軍の動向については、北方領土に関する我が国の立場と相入れず、日本国民の懸念を呼び起こすものであり、極めて遺憾でございます。これまでも累次抗議をしてきております。また、北方四島における先行発展領域の創設についても、情報収集と分析を進めつつ、ロシア側に対して北方領土問題に関する日本の立場を伝えてきており、これは引き続き適切に対応していきたいというふうに考えております。
 こうした問題を根本的に解決するためには北方領土問題それ自体の解決が必要であり、政府といたしましては、粘り強くロシアと交渉し、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結してまいりたいと考えております。

○紙智子君 ラブロフ外相は、ロシアには十分な経済特区があって国の枠を超えた制度をつくる必要はないというふうに言われているんですね。こういうスタンスでロシアの実効支配を進めているんじゃないのかと、企業の誘致もされているんじゃないかと。
 これに対して、今抗議をしているという話なんですけれども、日本政府としてやっぱりどういうふうにこれを止めるなり申入れをしているのか、抗議をしているのかということなんですけど、そこ、もう一度お願いいたします。簡潔にお願いします。

○国務大臣(外務大臣 河野太郎君) プーチン大統領と安倍総理の間で、平和条約問題を解決する自らの真摯な決意というものが表明をされているわけでございます。そういう中で、例えば今回の五月二十六日の首脳会談の中でも、少人数会合では四島における共同経済活動と元島民の方々の四島へのより自由な往来について議論が行われ、また、両首脳のみのテタテ会談では、平和条約締結問題を中心に突っ込んだ議論が行われております。
 政府としては、繰り返しになりますが、ロシアとの間で粘り強く交渉してまいりたいと思います。

○紙智子君 元島民の皆さんは、自分の土地がどうなっているのかさえ分からないわけですよ。
 それで、昨年の領土問題に関する参考人質疑が参議院においてありましたけれども、千島歯舞居住者連盟の脇紀美夫理事長も、経済活動だけが進んでいって領土問題が置き去りにされるんじゃないかという懸念を示しています。
 この元島民の皆さんにどのように説明をして、どう対応するのかということも簡潔に一言お願いします。

○国務大臣(外務大臣 河野太郎君) 領土問題が置き去りにされるという指摘は当たらないと思います。
 政府としては、北方四島の帰属の問題を解決してロシアとの平和条約を締結するというのが基本方針でございます。また、プーチン大統領も、かつて共同記者会見において、最も重要なのは平和条約の締結であるという旨、また平和条約を後回しにすることはしない旨はっきり述べておられます。
 共同経済活動の実現に向けた取組を通じて、日ロが共にこの北方四島の未来像を描き、双方が受入れ可能な解決策を見出していくという未来志向のアプローチをしっかりとやってまいりたいと思っております。

○紙智子君 一貫してやっぱり元島民の皆さんはそういう不安感を抱きながらやっていますから、そこは是非しっかりとやっていただきたいというふうに思います。
 それで、福井大臣にお聞きしますけれども、元島民の方たちは、生まれ育ったふるさとを追われたまま、もう七十年以上いまだに自由にふるさとに行き来できないと。再びふるさとに帰りたいということを一心に願っておられるわけで、そういう元島民の皆さんの気持ちに寄り添って考えていただくならば、今回確かに航空機で行けるようになったというのは、負担も軽減されて、それはいいんですけれども、しかしながら、一回一回確認しなければいけないということではなくて、やっぱり毎年そういうふうに使って行けるようにしていくべきではないかと思うんですけれども、この点いかがでしょうか。

○国務大臣(内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策)福井照君) 先生、脇さんとのお話も私直接伺いました。今先生御指摘のように、元島民の方々のお気持ちに寄り添いながらというところが一番大事だという御指摘、誠にそのとおりだと思います。
 そして、一定のプログレスがあったと思います。元島民の方々のための人道的措置について、航空機による特別墓参を天候が許せば七月にも実施するということで一致をしたわけでございますので、誠に大きい、そして具体的な成果だというふうに私どもは捉えておりますし、島民の皆様にもそういうふうに捉えていただけるものというふうに信じております。
 その後のことについては外交交渉で決めていただくということで、期待をしております。

○紙智子君 昨年、ビザなし交流のときに、瀬石と東沸とオホーツク海岸のニキシロという三か所が、結局、ロシア側からの立入禁止で認められなかったんですね。四島交流や元島民による墓参の際も、軍やあるいは国境警備隊の施設周辺に立入り制限区域があって、訪問団にロシア側の公安関係者が随行するということが常態化しているという話も聞いているんですね。その点についてもロシア側に改善を強く求めていただきたいというふうに思います。
 それから、軍事基地化の問題も重大だというふうに思っていて、ロシアは領土問題を基地化の口実にしようとしているというふうに思うんですね。三月の日ロの外相会談でラブロフ外相は、日本が秋田県と山口県に配備するとしている陸上配備型の新型迎撃ミサイルシステム、イージス・アショアについて、米国の弾道ミサイル防衛システムの一部であり、ロシアの懸念材料だというふうに表明しているわけです。これ、領土交渉の大きな妨げになるんじゃないでしょうか。外務大臣。

○国務大臣(外務大臣 河野太郎君) 陸上配備型イージスシステムを含む我が国のミサイル防衛システムについては、我が国の国民の生命、財産を守るための純粋に防御的なシステムであるとともに、我が国が主体的に運用するものであり、ロシアを含めた周辺諸国に脅威を与えるものではないということは累次ロシア側に説明をしております。三月の外相会談におきましても、ラブロフ外相に対して同様の説明を行っておりますので、外務大臣はよく御理解をいただいているはずでございます。
 その上で申し上げれば、二〇一六年十二月の日ロ首脳会談で、両首脳は平和条約問題を解決する自らの真摯な決意を表明しており、こうした両首脳の合意に基づいて、平和条約締結問題について、今回の首脳会合も含め、日ロ間で率直に対話をしているところでございますので、しっかりと粘り強く取り組んでまいりたいと思います。

○紙智子君 本日、防衛省の福田政務官が秋田県と秋田市に説明に行ったというふうに、このイージス・アショアですね、報道されています。
 それで、佐竹知事は、複数の候補地から調査を行った上で最適地を選ぶのが一般的だけれども、配備を前提にした調査と受け取られるんじゃないかというふうに言われたようです。イージス・アショアの配備、先にありきということじゃないのかと。
 私、実は一月に現地に行きまして、それで調査をしたんですけれども、候補地の秋田市の陸上自衛隊新屋の演習場一キロ圏内に、もう住宅地密集していますし、学校もあると。住民の生活の場になっているわけですね。住民からは、地域にどんな影響が及ぶのか、電磁波による人体への影響とか、施設を造ることによって攻撃対象にならないかとか、不安でいっぱいなんですよ。そういうやっぱり配備についてはやめてほしいという声が出されました。
 それで、防衛副大臣、今日説明に行っておられると思うんだけれども、こういう住民に対して、反対だという声が上がっているわけで、説明して反対されたらやめるんでしょうか。

○副大臣(防衛副大臣 山本ともひろ君) お答えを申し上げます。
 委員御指摘のとおり、本日、福田防衛大臣政務官が秋田県に訪問をしまして、秋田県知事、秋田市長にお会いをし、イージス・アショアの配備の候補地としての今後の調査について、地元自治体の御理解と御協力を賜るべく御説明をさせていただいたというところでございます。その際に、秋田県知事及び秋田市長からは、現時点での配備の必要性などに関する御質問、また住民の方々の不安を踏まえて丁寧な説明を行ってほしいというような御要望があったと報告を受けております。
 今後とも、今委員御指摘の点も踏まえて、レーダーの電波による影響、地元の皆様に影響が生じないよう十分な調査を行い、必要に応じて対策を講じるとともに、地元の皆様から頂戴する様々な疑問や不安、それらに対して一つ一つ丁寧にしっかり説明をしてまいりたいと考えております。
 また、イージス・アショアの配備についてでございますが、北朝鮮には我が国を射程に収める各種の弾道ミサイルが依然として多数存在をしております。弾道ミサイル防衛能力の向上は喫緊の課題であると考えておりまして、このイージス・アショア、配備し運用するというには相当の期間を要しますので、我が国の国民の生命と財産を守ると、そういった責務を負う我々防衛省・自衛隊としては、可及的速やかな導入に向け必要な取組を引き続き進めていくと、そういった考えには変わりはございません。

○紙智子君 現地では、もう候補地としての名前が挙がって以来非常に不安で、説明を求めていても、全くそういう中身すら決まっていないということで説明がないままに来ているわけですよ。それで、今、説明に行ったときはもう配置することを前提にしたような話になってきていて、非常にそういう無視した配備はやめていただきたいという声が上がっているわけです。
 これは秋田県や山口県だけの問題じゃないと思うんですね。沖縄県では、辺野古の新基地建設に反対するオール沖縄や県知事の切実な訴えも聞かずに基地造りが強行されているわけで、同じようなことを絶対にやっぱりやるべきじゃないというふうに、もう一度お答えください。

○委員長(石橋通宏君) 簡潔に答弁をお願いいたします。

○副大臣(防衛副大臣 山本ともひろ君) 我々防衛省・自衛隊は、従前より、基地あるいは防衛施設等があります自治体の皆様、関係者あるいは地域の皆様には丁寧に説明をしてきておりますし、今後ともそういった工程を経てしっかりと職責を果たしてまいりたいと思っております。

○委員長(石橋通宏君) まとめてください。

○紙智子君 時間になりましたけれども、沖縄にしても、秋田、山口にしても、これはもう絶対やるべきでないということを申し上げまして、質問といたします。