<第196回国会 2018年5月22日 農林水産委員会>


◇加計学園関係者の出席のもと、獣医師に関わる集中的質疑を要求/森林経営管理法案
 自発的な施業、森林所有者の経営権に介入することになるのではないか

○森林経営管理法案(内閣提出、衆議院送付)
○独立行政法人農林漁業信用基金法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 法案の質疑に入る前に、ちょっと通告をしておりませんでしたけれども、昨日、愛媛県は参議院予算委員会の要求に応えた新たな文書を提出しました。そこには加計学園からの報告があって、平成二十七年二月二十五日、理事長が首相と面談、理事長から、獣医師養成系大学空白地帯の四国の今治市に設置予定の獣医学部では国際水準の獣医学教育を目指すことになるなどと説明をしている、首相からはそういう新しい獣医大学の考えはいいねと、こういうコメントがあったと書かれているわけです。このことが事実だったら、これ重大な問題だと。
 総理は、昨年、二〇一七年の一月二十日に加計学園の獣医学部新設が決定するまで加計孝太郎理事長が獣医学部の新設の意向を持っていることを知らなかったというふうに言っていました。また、今治市に獣医学部をつくりたいといった話は一切ございませんと。加計学園の設立には一点の曇りもないと言ってきました。また、疑惑が持たれないように丁寧に説明するというようにも言ってきたわけです。
 齋藤大臣は、これまでのこの総理の説明を理解、納得されているんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤健君) 新しく、昨日ですか、愛媛県の文書が出てきたわけでありますが、大変恐縮なんですが、私は事実関係についてよく分からないものでありますので、個人的な思いについてはいろいろありますけれども、農林水産大臣として、この新たに出てきた文書について特段新たにコメントすることはございません。

○紙智子君 国民の多くは、誰も納得もしていないわけです。到底これはもう納得できるものじゃないと思います。
 愛媛の文書どおりだったら、総理が国民と国会を欺いていたということになるわけで、これは総理の進退に関わる問題だというふうに思うんですけど、大臣、いかがですか、そう思いませんか。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤健君) 繰り返しになりますけど、事実関係について確定できるほどのものを私持ち合わせておりませんので、しかも農林水産大臣としてここに立たせていただいておりますので、特段文書についてコメントをすることはありません。

○紙智子君 閣僚の一員であり、そして獣医学部に関わる、獣医師に関わる問題であるわけでありますから、だからコメントできないということにはならないと思いますよ。
 獣医師は農水省が所管省庁なわけですよね。農水省から内閣府への出向者が関与していた疑いもあるわけです。出向者がどういうふうに関与したのかという聞き取りをするべきではありませんか。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤健君) これも、そこに書かれているのはたしか四月二日の件ですかね、あの文書に書かれていますのは。これも、五月十日に内閣官房から指示がありまして、当時、我が省から官邸に出向した職員に直接確認をするということでありましたので確認をしたところ、本人は、三年も前のことであることから、出席していた認識はあるんですけれども、具体的なやり取りについては記憶に残っていないということでありますので、私の方からは、何かその推測をしたり、足したり引いたりすることなく、そういうヒアリング結果だったということを申し上げさせていただきたいと思います。

○紙智子君 あのね、記憶がないで済ませられないことだと思います。しっかりと聞き取っていただきたいと思うし、思い出していただきたいと思うんですね。
 なぜ今治市に加計学園の新設が認められたのか。総理の意向、総理案件だから、だから認められたという疑いはますます濃厚になっていると思うんですよ。この問題を解明しないまま法案の審議だけどんどん行こうなんというのはもってのほかだと思います。
 加計学園の関係者を呼んで、是非、獣医師に関わる集中的質疑を要求しておきたいと思います。委員長にお願いします。

○委員長(岩井茂樹君) ただいまの件につきましては、後刻理事会にて協議をいたします。

○紙智子君 それでは、法案の質疑に入ります。
 安倍晋三首相は、施政方針演説で、「戦後以来の林業改革に挑戦します。」と言われました。戦後以来ということですから、これ、戦後林政の大転換になると思うんです。何を転換するのかと。
 これまでの林業経営は、森林経営は、森林所有者による自発的な施業を国、都道府県が支援するスキームだったわけです。これからは市町村が主体的に関与する仕組みにすると。言い方変えれば、これ、公権力を行使して関与するスキームに変えるということになるんだと思いますけれども、いかがですか、大臣。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤健君) 確かに、総理が施政方針演説で戦後以来の林業改革ですか、そういう表現を使ったと思いますが、我が国の森林が、戦中戦後の木材需要を受けた過剰な伐採による荒廃期を経て、その後、昭和四十年代にかけて積極的に植栽を行い、近年ようやく資源の造成期から主伐期を迎えつつあると。こういう環境変化の中で、資源造成のために、林業は間伐を中心に行われてきたことに加えまして、木材価格の低下などにより林業が勢いを失ったということで、林業の発展のみならず森林の公益的機能の維持にも支障が生ずる、そういうことが懸念される事態となってきたと。
 このため、森林・林業の現状を抜本的に改善をして、林業の成長産業化と森林資源の適切な管理の両立ということを図ることが喫緊の課題になってきたということで、このことを総理大臣の施政方針において述べられた戦後以来の林業改革という表現で表したということだろうと思います。
 そのための具体的な方策としては、本法案において、経済ベースに乗る森林については林業経営者に集積、集約化するとともに、経済ベースに乗らない森林については市町村が公的に管理をするということで、こういう新たな森林管理システムが必要であり、それを創設をお願いをしているということであります。

○紙智子君 森林所有者が自発的に施業を行う仕組みを市町村に移すということだと思うんです。従来のスキームをそういう意味では抜本的に変えることになると。
 次に、法案の説明資料についてお聞きします。
 昨年六月九日に閣議決定された基本方針二〇一七年で、意欲ある持続的な林業経営者という言葉が出てくるんですね。ここでは、小規模であるかどうかまでは書いていないんですよ。一方、十一月六日の規制改革推進会議、未来投資会議は、小規模零細で意欲を失っている森林所有者というふうに、対象が小規模で零細な森林所有者に絞られていると。
 林野庁は、新しく法律を作るために、三年前、二〇一五年に行った森林資源の循環利用に関する意識・意向調査というのを持ち出して、森林の経営意欲は低いというのが八割もいることを強調しました。しかし、現状維持をしたいという七一・五%の人を含めて森林の経営意欲が低いと説明したために、みんなから批判を受けて、資料を書き直しました。
 なぜ安易にこの意向調査を使ったんでしょうか。それは、小規模零細で意欲を失っている森林所有者という、言わば未来投資会議の指摘に合わせて、意欲が低い森林所有者がたくさんいるんだということを意図したからではないんですか。

○政府参考人(林野庁長官 沖修司君) 日本のその森林の所有構造を見てまいりますと、主に十ヘクタール未満の森林所有者というのが全体の九割を占めてございます。こうした者について小規模の森林所有者ということで考えてございまして、そうした中において、森林経営計画ということで、これ二百二十万ヘクタール、先ほどの資料の中にもございますけれども、二百二十万ヘクタールの既に集積が終わっているところもございます。
 ただ、これがなかなか進まないということを結果的に併せて照らしてみれば、小規模のところがなかなか進んでいないという判断を我々はして、こういう形で同じように考えているところでございます。

○紙智子君 衆議院で、現状維持したいという人を含めて経営意欲が低いと説明したことに批判が高まると、この森林の経営意欲が低いというのを経営規模の拡大への意欲が低いというふうに修正したわけです。しかし、森林資源の循環利用に関するこの意識・意向調査では、経営規模の拡大をしたいというふうに答えた人というのは一四・六%だけなんですよね。
 だから、規模拡大することが法案を提出する理由になるんだとしたら、これ、現状維持を望む人というのは法案の対象から外されることになるんじゃないですか。

○政府参考人(林野庁長官 沖修司君) 今回の法案でございますけれども、最初に、今日、委員会の始まる前にお話をさせていただきましたけれども、私たちといたしましては、この現状維持を一律に、この現状の者を一律に経営意欲が低いとする整理、今、表現ぶりの誤解を与えたという御指摘を受けたわけでございますけれども、今回の法案の趣旨は、経営意欲を低下している森林所有者、こうした人たちのところを誰が担っていくか、それをポイントにして法案の要件として考えてございますので、経営の規模を維持したい、現状を維持したいということではなくて、やはり我々としては経営規模を拡大をしたいといったところに着目をして今回の法案の整理をしているところでございます。

○紙智子君 支援する対象をやっぱり規模拡大する人だけに絞っていくことになるんだと思うんですよ。多数の森林所有者は外されることになっていくんじゃないかと思うんです。小規模零細という言い方をした未来投資会議の指摘に合わせた立法ではないかと、これは、というふうに思います。
 規模拡大を志向する人には手厚い支援が用意されているわけですよね。今回、独立行政法人農林漁業信用基金法が改正されるわけです。概要では、林業者等が経営規模の拡大を図るために債務保証をするというふうになっています。経営規模を拡大する林業者等を支援するための改正ですよね。

○政府参考人(林野庁長官 沖修司君) 委員御指摘の話でございますけれども、ちょっと前へ戻りますけれども、現状を維持したいという方については、これまでどおりきちんと森林整備、林業をやっていただきたいと我々は考えてございます。こうした方々に対してもこれまでどおりの支援を続けていくということが基本でございます。
 また、今御指摘ございました農林業信用基金法についてでございますけれども、これは、従来やっている方も当然踏まえて、特に林業を森林経営者がその意欲と能力に応じて効率的、安定的に行えるようにするために行うということで、具体的には規模を拡大したいという方も含めてこういったところに着目してやるということを考えております。
 そのためには、やっぱり経営者が高性能林業機械の導入などのコストを削減を図りながら安定的な林業経営を行うことができるように、支援とか、それから資金調達の円滑化、こうした経営の環境を図るということが重要であるというふうに考えておりまして、こうしたことを踏まえて、本法案では、林業者の債務保証を長年行ってまいりました農林業信用基金が蓄積しております知見を活用するとともに、債務保証をより利用しやすいものとなるように見直しをすることで主に林業経営者の安定的な事業規模の拡大を支援するということを目指すものでございます。

○紙智子君 ですから、債務保証の対象の拡大というところに、林業を営む会社が債務保証を受けるための資本金に係る要件を一千万円以下から今度三億円以下に引き上げるわけですよね。これってかなり違うんですけど、どうしてですか。

○政府参考人(林野庁長官 沖修司君) お答えいたします。
 これは、意欲と能力のある林業経営者と普通の人たちも全部条件は一緒でございます。

○紙智子君 条件は一緒と言うんだけど、やっぱり一千万以下というのは、やっぱり小さな規模が多かったからなんじゃないですか。だけど、三億まで拡大していくということは、やっぱり大規模なところも対象に広げていくということが想定されているんじゃないですか。私、これ、林業の成長産業化というのは、まさに規模拡大路線なんだろうと思うんですね。
 それから、森林所有者の責務と市町村への経営管理権の集積についてもお聞きします。
 法案では、森林所有者に適時に伐採、造林又は保育を実施するその責務を負わせて、市町村に森林所有者の経営状況の見極めもさせた上で、経営管理できないと判断したら取り上げるということになる内容です。しかも、森林所有者が不同意でも取り上げるというふうに言っているわけですね。
 なぜ不同意でも取り上げるのか。衆議院の質疑では、林野庁長官は、それは経営管理集積計画の作成に支障が生じるからだというふうに答弁されているんですけれども、こういうのを強権的と言うんじゃないですか。

○政府参考人(林野庁長官 沖修司君) まず、森林経営管理法案におきまして、その所有者なしに経営管理権を設定する特例のことでございますけれども、これにつきましては、森林の経営管理の意欲が低い所有者の中には市町村と行う調整に係る手間を敬遠して不同意の意思を表示する者とか、同意、不同意すら明らかにしないような者も存在すると思われまして、経営管理権の取得に支障が生じることが想定されるところでございます。
 このために、本法案におきましては、森林所有者が市町村の定める経営管理権集積計画に同意しない場合でも、市町村の長による勧告、それから都道府県知事の裁定等の一定の手続を経まして市町村に経営管理権を設定することができるようにしたところでございます。

○紙智子君 まだ所有者が分からなくて、捜してもなかなか分からなくてという場合、致し方ないのかなというふうにも思うんですけれども、こうやっていて、同意が得られないと、得られない場合でも支障を来すからということでこれをやるというのは、やっぱり強権的だというふうに言わざるを得ないんですね。意見を述べる機会はあるんだというふうになっているけれども、しかし、それもたった二週間だけですよね。
 市町村の仕事に支障が出るという理由で取り上げる、これはやっぱり私は強権的だと、そのものだというふうに言わざるを得ないんです。自発的な施業、森林所有者の経営権に介入することになるんだというふうに思います。
 ちょっと角度を変えて質問したいんですけれども、森林所有者に経営意欲がない、規模拡大意欲がないということだったら、例えば山を買い取るという方法もあるんじゃないかと思うんですよね。森林吸収源対策税制に関する検討会の中では、森林の売却、寄附に関する問合せを受けたことがある市町村及び森林組合の割合が、それぞれ約三割、約七割と答えています。
 小規模零細で意欲を失っているというのであれば、市町村が買うまでもなく、規模拡大したいという意欲も能力もある林業経営者が買い取ればいいんじゃないかと思うんですけれども、これはいかがですか。

○政府参考人(林野庁長官 沖修司君) お答えいたします。
 森林所有者から買い取ってもらいたいとの申出があった場合のお尋ねでございます。
 本法案によりまして、経営管理権の設定の対象とはなりませんけれども、こうした場合なりませんけれども、市町村がまず寄附を受けたりという、そういう場合もあると思いますし、それから、森林の買取りの意向がある林業経営者に紹介するといったような対応が考えられるものと想定してございます。

○紙智子君 ちょっともうひとつ分からないんですけれども。意欲も能力も持っていて、それだったら、山持っている方で大変だと思っている人で、いっそ買ってくれたらいいという人もいるんだと思うんですよ、中には。だけど、買い取るというふうにはならないようにしているじゃないですか。あくまでも、その管理権だけでしょう。それはどうしてなんですか。

○政府参考人(林野庁長官 沖修司君) 今回、その所有権の移転をしていないことのお尋ねだと思います。
 これまで森林法を改正いたしまして、森林所有者が不明な場合でも間伐の代行を可能といたします制度など、所有権の移転を伴う制度を整備してきたところでございますが、残念ながら、これまで実績がなくて、制度が活用されていない状況にございます。これは、森林所有者が所有権の移転に難色を示すことが多いこと、それから、このため行政側も所有権移転を伴う措置の執行に慎重になることなどが要因として考えられるところでございます。
 このため、本法案では、所有権移転を伴わないが市町村が実質的に処分が行える権利として、経営管理権を設定する制度として創設したものでございます。

○紙智子君 結局、意欲と能力もあるのに、山を買うことまではしないと。なぜか。それは、売買をあっせんしないというのは、まとまった山でないとコスト削減ができない、あるいは税負担もしたくないということがあるんじゃないかと。つまり、リスクを負うことになるかもしれないと。そうであれば、結局、森林所有者の状況については、その所有者を置き去りにしたまま、勝手なやっぱり理屈ということになりかねないというふうに思うんですよ。
 まだまだちょっと、この後も素材生産者の問題もあったんですけれども、時間になりましたので、次回またこの続きはやらせていただきたいと思います。
 終わります。