<第196回国会 2018年5月15日 農林水産委員会>


◇北海道の農作物を運ぶJR北海道の役割について/日米首脳会談で合意した新たな経済協議の枠組みについて/JR北海道の鉄路の存続について、国としての支援や責任を果たすよう求める

○農林水産に関する調査

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今日は、今、北海道の置かれている状態について触れながら議論をしたいと思います。
 北海道は、道民の生活や基幹産業である農林漁業をめぐって大きな岐路に立たされています。道民の生活という面からいいますと、JR北海道が単独維持困難路線を公表したことから、住民の交通権を守るという点でも、それから農産物の物流という点でも大きな岐路に立たされています。基幹産業という点では、農産物の自由化、この影響、問題ですね、漁業、それから水産業における日ロ関係の影響など、産業や北海道の経済という面でも重大な局面に立たされています。
 北海道の農業は、寒冷地であるという条件の中で、先人の多くの努力があって、その中で生産基盤を形成してきました。現場の生産者の皆さんの頑張りで日本の国民の食料を支える大きな拠点になってきたと思います。当然、この生産基盤を確立すると同時に、それを運ぶ物流も確立をして次の世代につなげていかなきゃいけないと、これは私たちに課せられている課題でもあると思います。
 それで、齋藤大臣にお聞きしたいんですけれども、外交交渉が北海道の農業や林業、水産業に与える影響、これ大きいものがあるわけですけれども、加えて、農産物を運ぶ物流としてJR北海道が果たしている役割をどのように認識されているでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤健君) 人手不足から今トラック輸送コストが上昇している中で、農産物はしっかりと安定的な輸送を確保していかなくてはいけないということでありますので、鉄道や船舶への切替えということも含めた物流の効率化ということが今まで以上に積極的に取り組むことが必要になっているのだろうと思います。
 特に、今御指摘の北海道のように、広大な生産地の農産物をいかに効率的に輸送するかということが課題となっている地域につきましては、鉄道輸送の役割というものは私は非常に大きなものがあるんだろうというふうに考えているところでございます。

○紙智子君 それで、これからの農業がどうなっていくのかということで、日米経済関係についてもちょっとお聞きしたいと思うんです。
 安倍晋三首相とアメリカのトランプ大統領が四月の十七、十八と首脳会談を行いました。そこでは、新たに茂木大臣と今度アメリカのライトハイザー通商代表との間で、自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議を開始するということで一致をしました。新たな経済協議というふうに言われているわけですけれども、なぜ新たな枠組みが必要になっているのでしょうか。
 昨年の二〇一七年二月の日米首脳会談で、麻生太郎副総理とアメリカのペンス副大統領との経済対話の枠組みが合意をされたわけです。経済対話で、貿易・投資ルール、それから経済、構造政策、それから分野別の協力の三分野で協議が行われています。こういう枠組みがあるのになぜまた新しい枠組みが必要になったのか、そして経済対話とは一体何が違うのか、説明をしていただきたいと思います。

○政府参考人(外務大臣官房審議官 飯田圭哉君) お答え申し上げます。
 委員御指摘のように、日米経済対話は、貿易・投資のルール、課題に関する共通戦略、それから経済及び構造政策分野における協力、それからインフラやエネルギーなどの分野別協力の三つの柱で議論しているところでございます。このうち、この三つのうち特に貿易と投資について担当閣僚を配置して議論していくのが、今回開始した自由で公正かつ総合的な貿易取引のための協議でございます。この中では、公正なルールに基づく自由で開かれたインド太平洋地域の経済発展を実現するために、日米双方の利益となるように、日米間の貿易、投資を更に拡大させていくとの目的で行われるというふうに理解をしているところでございます。
 なお、本協議は茂木大臣とライトハイザー通商代表の下で行われ、その内容は日米経済対話に報告されることとなっているところでございます。

○紙智子君 ちょっと聞いたことにちゃんと答えられていないなと。どうして新しい仕組みが、枠組みが必要になったのか、経済対話と違うことについて何でわざわざ必要になったのか、その辺ちょっともう一回お願いします。

○政府参考人(外務大臣官房審議官 飯田圭哉君) 今までは、副大統領とそれから副総理の間で幅広く議論をしていたところでございます。その中で、やはりこの項目については担当閣僚を配置して、まさにTPPの交渉を担当された茂木大臣とライトハイザー通商代表の中でより具体的な議論をしていくということになっているわけですが、この本協議の具体的な在り方については今後日米間で調整をしていくということになっているというふうに考えております。

○紙智子君 日米経済対話は、今お話あったんですけれども、日本の担当者、事務方の交渉というか対話を担ってきたというふうに思うんですね。要所要所では大臣があったと思うんだけれども、だけど日常的にはこの担当者のところがやってきたと。アメリカから見れば、これはなかなか交渉が思うように進まないと、成果が出ないんだったら、もっと迅速に進めるために閣僚級協議にする方がいいということになったんじゃないんですか、違いますか。

○政府参考人(外務大臣官房審議官 飯田圭哉君) アメリカ側の思惑については、なかなか日本政府としてコメントすることはちょっと難しいというか、差し控えさせていただきたいと思いますが、我々としては、やはり目的に従ってこの協議を進めたいと思っておりますし、ただし、アメリカ側の関心にかかわらず、この本協議で具体的にどういうことを議論していくかということについては、今後日米間での調整次第だというふうに理解をしているところでございます。

○紙智子君 アメリカは日米FTAに関心があるというふうに言っているという言い方を日本政府はしているわけですよね。関心がある、関心を示すというだけじゃなくて、実際上FTAを今まで求めてきているんだと思うんですよ、鉄鋼問題もありますし。そういうアメリカの圧力をかわすために経済協議という枠組みをつくったんじゃないかということも、いろいろ読みますと言われているというふうに思うんですね。
 新たな経済協議は、FTAを進める、その交渉を進めやすいという、FTAよりもですね、FTAをなかなか言いにくいということで、FTAよりも進めやすいからなんじゃないかというふうにも思うわけです。
 なぜかというと、FTAになりますと、これは国会の批准手続が必要になるし、FTAをめぐっては様々な議論がありますから、そういう意味では国内手続だけで、この国会の関与もなく国内の手続だけでやるということでは、この日米協議というのはもっと自由にできるんじゃないかと。両国の閣僚級で合意すれば、国会の関与もなく、いろいろ実施に移せるんじゃないかと。新たな経済協議というのは、これはFTAよりも、トランプ大統領が言うところの、要するにディールが好きだというふうに言っているそうですけれども、要するに取引ですね、そういう進め方がやりやすいからということなんじゃないんですか。

○政府参考人(外務大臣官房審議官 飯田圭哉君) 答弁申し上げましたように、この協議は、インド太平洋地域の経済発展を実現するため、あくまでも公正なルール、自由で開かれた貿易、投資というものを実現させていく、あるいは日米で貿易、投資を更に拡大させていくという目的で行われるものでありまして、委員御指摘があった日米FTAの交渉と位置付けられるものでもなく、その予備協議でもないというふうに承知をしております。
 また、米側が二国間ディールに関心を有していると承知はしておりますけれども、我が国としてはTPPが日米両国にとって最善と考えておりまして、その立場を踏まえ引き続き議論に臨んでまいりたいと思っております。
 いずれにしましても、我が国としては、いかなる国とも国益に反するような合意をするつもりはないという覚悟で臨んでまいりたいというふうに思っているところでございます。

○紙智子君 目的に反する合意はないというふうにおっしゃるんですけれども、私、やっぱり思い出すのが、日本がTPPに参加する際に入場料を払ったことなんですよ。アメリカに合わせてBSEの当時対策の輸入規制を緩和をすると。それから、自動車とか保険もこれ米国の要求を受け入れて、それを入場料としてやったという記憶が残っているわけでありまして、トランプ大統領は日米貿易赤字について削減を求めて、これまでも、それを問題にしてきたというふうに思うんですね。
 一方で、TPPには戻りたくないというふうに言っているわけですよ。二国間協議がいいんだと一貫して言っていまして、短期間でやっぱり何らかのことができると、二国間でやった方がということを言っているわけで、日米経済対話で協議されるであろうBSE対策の月齢制限の撤廃とか、あるいは牛肉のセーフガード制度の見直し、こういうことが一気に進むんじゃないかというふうに思うんです。
 ハガティ駐日大使は、新たな枠組みというのは日本の農産物市場開放や自動車が優先的に話し合われるだろうというふうに言っているわけですよ。そうなれば、アメリカの対日要求の格好の場を提供する枠組みになるんじゃないんですか、いかがですか。

○政府参考人(外務大臣官房審議官 飯田圭哉君) そういう発言の趣旨については、私からちょっとコメントすることは差し控えたいと思いますが、ただし、いずれにしても、一方的要求という御指摘もございましたけれども、我々は日米相互に貿易、投資を拡大していく、それぞれの関心をお互いにアドレスをしていくという、そういう姿勢でこの協議に臨んでまいりたいというふうに考えているところでございます。

○紙智子君 昨年の経済対話で、日本国内でも説明もないままアイダホ産のバレイショの輸入が解禁されたわけですよ。北海道の人たちは驚きと怒りの声が出ました。
 国民の皆さん、そして北海道の農家が求めているのは、これ、交渉で何が議題になっているのか、どんな交渉が行われているのか、交渉状況をやっぱり知りたいと、情報を提供していただきたいということなんですよ、結果だけでなくて。やっぱり、ハガティ駐日大使は日本の農産物の市場開放が議題になるというふうに言っているわけです。
 何が議題になっているのか、何が論点なのか、これはやっぱり情報提供するべきだと思いますけれども、齋藤大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤健君) 今御指摘の新しくできる日米の協議については、私どもが承知をしているのは、正確に言えば、自由で公正かつ総合的な貿易取引のための協議である、そしてそれはFTA交渉と位置付けられるものではない、それからその予備協議でもないと。そして、議題はこれから調整をしていくということが今私ども承知をしているこの協議でありまして、アメリカとこれから調整をしていくんでありましょうが、農林水産省としては、いつも申し上げているように、いかなる交渉におきましても我が国の農林水産業の維持発展を旨としてきちんと対応していくということは変わりありません。

○紙智子君 今までも情報を出さないでずっと来ているわけですよ。やっぱり新たな経済協議をこれアメリカからの譲歩を迫られる場にしない、そこのところは強く求めておきたいと思います。
 それから次に、農産物を運ぶ物流、JR北海道について聞きますけれども、JR貨物によりますと、二〇一四年、北海道から本州に陸上貨物輸送の総出荷量は五百四万トンだと。そのうち鉄道が約半分の二百四十八万トンを占めています。主にジャガイモとかタマネギが主力なわけですよね。カーリングで有名になった北見。北見から出る北見タマネギ列車というのは、八月から翌年の四月までタマネギを送っています。
 道外に発送する農産品のこの鉄道のシェアというのは非常に高くて、食料を安定供給するための大切なライフラインだというふうに思っているんですけれども、大臣、この点の認識も伺いたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤健君) 先ほど申し上げましたように、今やトラック輸送コスト上昇している中で、鉄道や船舶の輸送というものの重要性というのはむしろ増大しているということだろうと思います。
 したがいまして、特定の路線どうするかということもさることながら、そういう状況を踏まえて、今、国土交通省、経済産業省のほか、全農、全日本トラック協会、日本物流団体連合会等と協力して、鉄道や船舶での輸送を含めた効率的な物流対策の検討、実施ということに取り組んできているところでありまして、この中で問題があれば適切に議論して対応していきたいというふうに考えているところでございます。

○紙智子君 JR北海道の問題で、次、国土交通省にお聞きしたいんですけれども、JR北海道が単独維持は困難だとする路線を公表して以降、JR北海道の線路、鉄路の存続を求める運動が広がってきているんですね。私の議員事務所にも多数の方が要請に来られています。私たち日本共産党としては、鉄道政策懇談会ということで提言も出して開きました。多くの団体でもこれ懇談会やシンポジウムなどが多彩に行われています。今年四月には、農協の総代会でJR北海道の路線存続に向けた特別決議も採択をされています。
 国土交通省にお聞きするんですけれども、北海道新幹線がこれ営業を開始して札幌までの延伸工事が進んでいるんですけれども、完成すると三十年間の平均で年間三十五億円の収支改善効果があるということが言われているんですけど、端的に、これそうなのかどうか、説明をお願いしたいと思います。

○政府参考人(国土交通省鉄道局次長 山上範芳君) お答え申し上げます。
 整備新幹線の新規着工に当たりましては、整備新幹線事業を実施する前後を比較いたしまして、整備新幹線の営業主体に生ずる収支の改善効果を算定をしてございます。
 北海道新幹線、新函館北斗―札幌間の着工に当たりましても、同区間を整備した場合と整備しなかった場合を比較し、整備新幹線に加えまして既存線の関連線区の収益の変化も踏まえ、全体でJR北海道に生ずる収支の改善効果として年間三十五億円の収支改善効果があるとの試算結果になってございます。

○紙智子君 それで、開業して以降、北海道新幹線は赤字が続いているんですよね、今、函館までなんですけど。財務省は、北海道新幹線は赤字だが、在来線の単独維持困難路線の赤字がなければ経常損益の黒字化が見通せたなどと、これ新幹線と在来線のセット論を論じているんですね。
 国土交通省、立場について、これに対して説明していただきたいと思うんです。どういう立場なのかということをおっしゃっていただきたいんですけど。

○政府参考人(国土交通省鉄道局次長 山上範芳君) 四月二十五日の財政制度等審議会財政制度分科会における財務省からの説明の中で、現時点の概算に基づき、北海道新幹線の平成二十九年度の営業収支が百三億円の赤字となる見込みが示されたものと承知をしてございます。
 JR北海道は、北海道新幹線の収支改善に向けまして、営業施策の展開や新幹線の運営の効率化など様々な取組に努める方針であると承知をしてございまして、国土交通省としても収支改善に向けて指導を行っているところでございます。
 他方、JR北海道は、地域の人口減少、マイカー等の他の交通手段の発達に伴い、輸送人数が減少し、大量高速輸送という鉄道特性を生かすことのできない路線が増加をしていることから、平成二十八年十一月に単独では維持困難な線区を公表いたしまして、各線区の置かれた状況を踏まえた持続可能な交通体系の在り方について地域の関係者の方々への説明、協議を進めているところでございます。
 国土交通省といたしましては、JR北海道の厳しい経営状況を踏まえて、JR北海道の事業範囲の見直し、経営自立に向けた方策につきまして関係者とともに検討を進めているところであり、夏頃までに大まかな方向性について取りまとめてまいりたいと考えているところでございます。

○紙智子君 つまり、新幹線は新幹線と、在来線は在来線と、それぞれで改善を図るという立場ということでよろしいんですよね。

○政府参考人(国土交通省鉄道局次長 山上範芳君) いずれの課題も大変重要でございまして、JR北海道の北海道新幹線、収支改善は図る必要があると考えておりまして、国交省としても指導をしていきたいと思っておりますし、他方で、地域の路線の問題につきましては、地域の関係者の方々への説明、協議、これがJR北海道において進められておりますので、これを踏まえまして、国土交通省としてもその話合いに参画をいたしまして解決策の方向性を出していきたいと考えてございます。

○紙智子君 やっぱり、新幹線という稼ぎ頭の赤字を理由にして、この地方路線を廃止してもやむを得ないなんというのはとんでもない意見だというふうに思いますよ。JR北海道が困難になっているのは、元々はやっぱり国鉄民営化以来の問題があるわけで、やっぱり国としては線路を存続させる支援や責任があるんだと思うんです。
 廃止やむなしというメッセージはこれは出すべきではないということを申し上げまして、時間になりましたので質問を終わります。