<第196回国会 2018年5月10日 農林水産委員会>


◇農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案に対する反対討論

○農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 私は、日本共産党を代表して、農業経営基盤強化促進法等の一部改正案に反対する討論を行います。
 反対する理由は、国家戦略特区諮問会議や植物工場を推進する民間企業の要求を受け入れ、農林水産省の見解まで変えて、農地をコンクリート化しても農地と認めるものになっているからです。
 農作物栽培高度化施設とはどういう施設なんでしょうか。農林水産省は、水耕栽培のみならず、環境制御や衛生管理の高度化を図る施設と言っていますが、一般的な農業用パイプハウスが高度化施設になるとは思えません。農家が活用している農業用パイプハウスが高度化施設として認められないなら、コンクリート化した農地は農地と認められず、違法転用になってしまいます。農林水産省は、農地とは棚やシートの上で農作物を栽培してもいつでも耕作できる状態に保ったのが農地である、コンクリートで固めると土がなくなるから耕作できないと言っていました。それなのに、なぜ農地のコンクリート化を農地として認めるのでしょうか。
 大手の企業が会員になっている団体は、植物工場の研究開発を加速するための国内法整備と規制緩和として、農地法、建築基準法などの規制緩和を求めてきました。国家戦略特区諮問会議において、竹中平蔵氏、八田達夫氏ら有識者は、植物工場等は農業の競争力向上にも貢献している、農地を転用せずとも農地として円滑に農業が行えるようにすべきだという要望が出されると、農業振興を図る観点から検討するなどと答え、農地のコンクリート化を認める方向にかじを切ったことを認めました。農地のコンクリート化が認められると分かると、植物工場を推進している民間企業は、植物工場は工場や学校施設を活用することでコストを軽減してきた、コンクリート張りは農地として扱われなかったが農地扱いになる方向だ、農地扱いではなかったために建築基準法が適用されたが、農地扱いになれば制約が緩和される、建設コストの低減は可能になる、固定資産税など税金面でもコスト低下になると言っています。こうした要望に応えた改正案であることは明らかです。
 コンクリートで固めた農地は、資材置場など農業以外に利用される可能性もあれば、そもそも農地に戻すことが困難になるという問題があります。都市部の生産緑地で植物工場が推進されると、都市農地の多様な機能を損なうことになりかねない問題もあります。農地は、いつでも耕作できる状態に保ってこそ農地です。農政の岩盤中の岩盤である農地の安易な規制緩和は行うべきではありません。
 以上を述べて、反対討論といたします。

○委員長(岩井茂樹君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
 これより採決に入ります。
 農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
 〔賛成者挙手〕

○委員長(岩井茂樹君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、田名部君から発言を求められておりますので、これを許します。田名部匡代君。

○田名部匡代君 私は、ただいま可決されました農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・こころ、公明党、国民民主党・新緑風会、立憲民主党・民友会及び日本維新の会各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
 農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
 農業生産の基盤である農地は、国民のための限られた資源であり、かつ、地域における貴重な資源であることを踏まえ、農地の利用の効率化及び高度化の促進が図られるよう、政府は、本法の施行に当たり、次の事項の実現に万全を期すべきである。
 一 相続未登記農地の発生を防ぐため、相続等による権利取得に際しての農地法第三条の三の届出義務の周知を図るとともに、相続登記の重要性について啓発を図ること。また、相続未登記農地問題の抜本的解決に向けて、登記制度及び土地所有の在り方、行政機関相互での土地所有者に関する情報の共有の仕組み等について早期に検討を進め、必要な措置を講じること。
 二 農作物栽培高度化施設に係る農林水産省令を定めるに当たっては、周辺の農地に係る営農条件に支障を及ぼさないよう当該施設の規模等について必要な基準を定めるとともに、農地の面的集積や農業の有する多面的機能の発揮への影響について考慮すること。また、現場における運用に当たり、混乱が生じないよう、基準は具体的に定めるとともに、農業委員会が適切に判断できるようきめ細かく方針を示すこと。加えて、施設の周囲や複数の施設を一体として扱うことによって広範囲をコンクリート等で覆うことを許容するなど、法改正の趣旨を逸脱する運用が行われることがないようにすること。
 三 底面をコンクリート等で覆った農作物栽培高度化施設の適正な利用を確保するため、農業委員会による利用状況調査、勧告等が適時に行われるようにすること。また、適切な利用が行われていない場合には、速やかに必要な是正措置が講じられるようにすること。
 四 貸し出した農地に農作物栽培高度化施設が設置される農地の所有者には、民法上の手続き、当該施設が利用されなくなった場合に発生しうる責務などについて、必要な事項が伝わるよう体制整備すること。
 五 農業委員会が、共有者不明農用地等に係る不確知共有者の探索や農作物栽培高度化施設に係る業務を円滑に実施することができるよう、必要な支援及び体制整備を図ること。
 右決議する。
 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

○委員長(岩井茂樹君) ただいま田名部君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
 〔賛成者挙手〕

○委員長(岩井茂樹君) 多数と認めます。よって、田名部君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。