<第196回国会 2018年4月19日 農林水産委員会>


◇加計学園の獣医学部新設 愛媛県文書について、農水相に行政文書として説明責任を果たすよう求める/農業経営基盤強化法案 コンクリート農地への規制緩和は行うべきではないと主張

○農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 四月十七日に加計学園に関わる集中審議を行いました。答弁がなかった質問がありましたので、改めてお聞きします。
 愛媛県が作成した文書には、県としては、国家戦略特区申請のため、今治市の意向を踏まえ、加計学園とも協議しながらということで、具体的に加計学園という名前、学校名が出ています。内閣府はこの特区の事業者が加計学園であることを知ったのかというふうに聞きましたら、まあ、徐々にと。
 ちょっとよく意味の分からない回答だったんですけれども、いつ知ったのかという確認はできたんでしょうか。

○政府参考人(内閣府地方創生推進事務局審議官 村上敬亮君) お答えを申し上げます。
 その後も確認をいたしましたが、一部繰り返しになりますけれども、二十六年六月四日に獣医学部新設の規制改革について提案をいただき、ワーキンググループで取り上げられるに至ったことから、事務局として他の特区提案と同様にこの提案に係る過去の経緯などをいろいろ調べていく中で、やはり今治市は、平成十九年の福田政権のとき以来、構造改革特区に提案を続けていること、その当初は想定事業者として加計学園の名前が提案書に記載されていたことなどを確認し、こうした中で、今治市は加計学園を事業者の一つとして想定しているであろうということを認識するようになりました。
 ただ、具体的な期日をということになりますと、やはりいつの段階で組織としてそれを認識したのかといったような意思決定を踏むような場や機会、ツールがございませんので、私どもの方でそれがいつなのかということを正確に特定することは難しかったということでございます。
 いずれにいたしましても、事業者を特定した議論というのは制度論の中ではしてございません。それは公募という前提がございますので、そのようなものとして理解をさせていただいてございます。

○紙智子君 何か、だから分からないんですよね。期日としては答えられないというのはちょっと納得いかないです。だけど、今またこれ聞き直しても同じような答弁が返ってくると思うんですけれども。
 農水省の方にも実はお聞きしたんですよ。文書を受け取ったと思われる四月三日に事業者が加計学園であることを知ったんでしょうか。もう一度聞きます。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 池田一樹君) お答えします。
 国家戦略特区による獣医学部の新設につきましては、平成二十八年十一月九日の国家戦略特区諮問会議におきまして追加の規制改革事項として決定されたということを受けまして、内閣府による公募の手続を経て加計学園が事業者になったと承知しております。
 農林水産省といたしましては、平成二十九年一月十二日に開催されました第二回の今治市分科会におきまして、加計学園が提案者として応募していることが紹介されたということでございますので、事業者の候補と明確に認識をしたというところでございます。
 ただ、今治市は、平成十九年度から構造改革特区における獣医学部の設置の提案をしてございます。その説明資料に加計学園が設置主体として記載されてございまして、その旨公表されてございます。そのため、農林水産省といたしましても、平成二十七年の六月に今治市が国家戦略特区に提案を行った時点で、説明資料に加計学園という記載はございませんが、事業者としての可能性を想定し得る状況にはあったものと考えてございます。

○紙智子君 今、二十七年六月にそういう経過を見て可能性があったというような話なんだけど、これ、四月三日というのは二〇一五年ですよね。この時点で、文書が届いているということの時点では、このときは認識していないということになるんですか。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 池田一樹君) お答えします。
 ただいま申しましたように、平成十九年の十一月でございますが、愛媛県の今治市から、構造改革特区の提案に係る説明資料におきまして学校法人の加計学園が獣医学部の候補となる者であるという旨を記載されておりまして、その後も今治市からの提案が続いていたと。そういうことを踏まえれば、当時でございますが、同学園が獣医師養成系大学の設置を考えているということは認識できたものと考えております。

○紙智子君 やっぱりちょっと、二〇一五年の段階で、実は文書を届けている段階で、普通だと、それを受け取って、あっと思うわけですよ。そこが抜けていて、それで、その今の話は二十七年の六月という話なんだけど、これはやっぱりどうも納得できないんですよね。
 いつ知ったのか、これ是非調査をするように、受け取った方がいると思うので調査をするように要求をします。
 委員長、よろしくお願いします。

○委員長(岩井茂樹君) ただいまの件につきましては、後刻理事会において協議をいたします。

○紙智子君 それで、柳瀬首相秘書官は、四国に獣医大学の空白地帯が解消されることは、鳥インフル対策や公衆衛生獣医師確保の観点から、農水省、厚労省も歓迎する方向という、これ、文書に書いてある中身で言っているわけですけれども、先日、この問題も野上官房副長官に聞いたわけですけれども、はっきりしない答弁だったわけですね。
 ここは、やっぱり柳瀬元首相秘書官に聞くという、本人が言ったことの趣旨を聞くということがどうしても必要になるわけです。今、ただ、野党は柳瀬氏に対しては証人喚問をそろって求めているので、今日はここに来てもらえていないので聞けませんけれども、やっぱり農水省が歓迎する方向だと発言するにはそれなりの確証があったんじゃないかというように思われるんですよ。
 柳瀬秘書官は、元々は経済産業省の出身なわけですよね。獣医師法とか獣医療法についてどれだけの認識があったのかということを思いますし、獣医師の需給調整がどのように行われているのかということは、経済産業省にいたら多分知らないんじゃないのかなと思うわけです。
 それが、首相秘書官になってやっぱり特区を扱うようになってから、この構造特区の時代から獣医師学部をつくるにはどういう越えなきゃいけないハードルがあるのかということを知る立場になったんじゃないかなというふうに思うわけです。だから、獣医師会には直接対決を避けるようにというふうに忠告をしたというのが、そういう状況の中でそういう話をしたんじゃないのかなと思うわけです。
 なぜそういうアドバイスができるかとなると、私はやっぱり農水省と意見交換しているんじゃないのかなと思うんですよ。首相秘書官ですから、首相の秘書ですから、やっぱり呼ばれれば、指示があったら農水省から説明に出かけていくのは当然あるんじゃないかと。柳瀬秘書官から説明を求められたり、相談をしたり、意見交換した農水省の職員がいるんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 池田一樹君) 農林水産省といたしましては、いずれにいたしましても、構造改革特区の頃から需給に関しまして一貫して説明をしてきてございまして、この文書に書かれていることにつきましては、そういう意味から、従来から申し上げてきたということとはちょっと違っているなという感じがしてございます。

○紙智子君 ちょっと違っているなという感じは分かるんですけれども、今聞いたことは、やっぱり実は相談しなかったら柳瀬さんはそういうことを言えないと思うんですよ。だから、本当は誰か相談している人がいるんじゃないかと思うんですよね。
 それで、齋藤大臣は記者会見で、愛媛県の文書は行政文書に該当するというふうにお答えになられました。ですから、これ、愛媛県の文書というのは備忘録ではなくて、全体の、今出ているわけですから、行政文書になっているわけです。行政文書になった以上は、その内容を精査するというのは私たち国会議員の責任だと思いますし、この文書に書かれていることが事実かどうかというのは、行政文書である以上は政府に説明する責任があるんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤健君) 行政文書、確かにそういう位置付けを、今回、最初に受け取ったときは行政文書として位置付けるべきものではないという判断をいたしたんですけれども、こうやって職員が共有をして、なおかつ公表をした以上は、あそこに付いていた別紙も私どもは行政文書として扱うということが適切だろうと考えておりますが、そこに書いてある中身につきましては、私どもが入手をしたその経緯等々は分かりますけれども、その中身の真偽については私どもとしては承知しかねるということであります。

○紙智子君 大臣として認めた以上、やっぱり説明する責任が、解明する責任があるし、説明する責任があると思いますよ。政府全体もそうですけれども。
 やっぱり真相を究明して説明責任を果たすということを求めたいと思いますが、もう一回、どうですか。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤健君) この行政文書は、先方が備忘録と言っているものを我々が入手をして、そして調査結果を公表させていただいたというものでありますので、それ以上のものでもないというふうに認識をしております。

○紙智子君 せっかく行政文書として位置付けたわけですから、それは是非責任を果たしていただきたいということを重ねて要求したいと思います。
 次に、法案の質問に入りたいと思います。
 これは農業経営基盤強化法案についてですけれども、農地が農地として活用されることになるのかという、これがコンクリート農地についてということなんですけれども、コンクリート農地の規定というのは、第五章に、雑則にあります。第四十三条、農作物栽培高度化施設に関する特例と、特例というふうに規定されています。
 そこで、農作物栽培高度化施設の定義について御説明いただきたいと思います。

○政府参考人(農林水産省経営局長 大澤誠君) 農作物栽培高度化施設とは、今回の改正によりまして、農業委員会に届け出ることによって底地をコンクリート張りしても農地転用を要しないものとして農地法上取り扱うものでございます。
 具体的な内容は省令で定めることといたしておりまして、省令においては、専ら農作物の栽培の用に供されるものであること、周辺農地の日照が制限されないための施設の高さについての基準や必要な排水施設を設けることなどの要件を定めることとしております。

○紙智子君 高度化施設というのは、環境制御、衛生管理できる施設というふうに言っていますよね。今年の冬は北陸とか北海道で物すごい豪雪の被害もあって、随分農用ハウスが被害に遭ったわけですけれども、そのほとんどが普通の農業用ハウスだったですね。
 農業用パイプハウスというのは、これ農作物栽培高度化施設になるんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 大澤誠君) 農作物栽培高度化施設は、今回の改正案の農地法の四十三条二項に書いてございますが、この定義は、具体的に見ますと、農作物の栽培に用に供する施設であって農作物の栽培の効率化又は高度化を図るためということでございます。ですから、高度化を図ることが必ず必須の要件になっているわけではありませんで、効率化と高度化を仮に高度化でまとめているというだけでございます。
 ですから、高度化をしていない、そういう環境制御をしていないものであっても、先ほどから御説明申し上げているとおり、高設棚を単に設置するとか、そういうものはむしろ効率化の方で入ってまいりますので、結果的にこの農作物栽培高度化施設にも該当するというふうに考えております。

○紙智子君 その高度化とか効率化ということ自体も、なかなかちょっと抽象的でよく分からないんですよね。
 農業用パイプハウスが高度化施設になるのかどうか、これどうですか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 大澤誠君) 底地をコンクリート張りにするにはそれなりの理由があるだろうと思っております。それが環境制御であったり高設棚を設置するとかそういうことですので、それなりの理由があればこの高度化施設に該当すると我々は運用したいと考えております。

○紙智子君 第四十三条に、農業委員会に届け出て農作物栽培高度化施設の底面とするために農地をコンクリートその他これに類するもので覆うというふうにあります。
 それで、農業者が自分で栽培している農業用パイプハウスは、これは高度化施設だというふうに届け出たら高度化施設として認めるんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 大澤誠君) 繰り返しになりますけれども、底地をコンクリート張りする理由、これは農地の違法転用状態を防止するためには必要だと思っておりますけれども、その理由についてはいろいろな理由があると考えられると思っております。また、技術の進歩によっていろいろ変わり得るとも思っております。そういうこともありますので、一律に要件をこの高度化なり効率化のところで定めることまでは考えておりません。

○紙智子君 ちょっとその辺もよく分からなくて。農業用パイプハウスというのは高度化施設なのかそうでないのかと。そうでないんですか。そうなのかそうでないのかというのをちょっと。

○政府参考人(農林水産省経営局長 大澤誠君) 底地をコンクリート張りする必要が認められれば、なり得ます。

○紙智子君 本当ですか。コンクリート張れば認めると、高度化施設ということになるんですか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 大澤誠君) どういう用途かにするによります。それは、やっぱり、何かいろいろ届出のときに、どうも施設の大きさとかそういうのを見て、これはもしかしたら倉庫に使うんじゃないかとか、もしかしたら農業用以外に使うんじゃないかと、こういうことになれば、それはどういう計画なのか農業委員会はよく見るということになると思います。

○紙智子君 何か本当、分からないんですよ。私たちの周りの農家の人たちは、いや、今度の法律できたら、ああ、じゃ、自分のところもコンクリート張りにしようかなと思ってやったら、いや、それはもう転用をやってくださいと、手続してくださいと言われる可能性があるのかということなんかも含めて、いろいろ疑問が出ているんです。
 それで、一律には決めないという話もされているんだけれども、農水省の我が国の施設園芸の現状という資料がありますよね。この資料を見ますと、農業用ハウス、農業用の温室の設置面積というのは四万三千二百三十二ヘクタールだと。そのうち複合環境制御装置のある温室というのは九百五十二ヘクタール、二・二%でしかないんです。で、法律案は、農作物栽培施設とは書かずに、わざわざ高度化という言葉を書いてあるわけですね。普通の農業用パイプハウスを高度化施設として認めるならば、わざわざ高度化という言葉を入れる必要はないんだと思うんですよ。高度化施設と高度化でない施設というのは違いは何なんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 大澤誠君) 繰り返して恐縮ですけれども、底地をコンクリート張りするのであればどんないわゆるパイプハウスであってもいいということであれば、それは本来の農地法の目的にそぐわない仕様になる可能性があります。ですので、高度化、具体的には、これ定義を見ますと高度化又は効率化ではございますけれども、やはりそれは一定の底地をコンクリート張りして農業用に使う理由があるんだろうと、それを表した概念でございます。
 他方で、いろいろな事情はあると思いますので、現状においてはかっちりと一律な基準を定めるつもりはございませんけれども、あくまで我々の目的というのは違法な転用を防止するということですから、そのために必要であれば、そういうことが明らかになればそのときにはまた考えたいと思いますが、現状では一律に考えることは考えておりません。

○紙智子君 何か、これレクでも何回も聞いているんだけど、やっぱりはっきりしなくて、普通用のパイプハウスは高度化施設とは言わないんじゃないですか。普通のパイプ用ハウスは言わないんだと思うんですけど、そうだとするとどうなるかというと、普通の農業用パイプハウスで底面をコンクリートで覆った場合は農地としては認めないということになるわけですよね。転用手続を求められることになるんだと思うんです。
 私は、農業生産を発展させる技術革新については必要だと思います。小さいハウスであっても高度化施設を造ることだって可能なのかなと思います。しかし、普通の農業ハウスがこれ高度化施設と認められないならば、誰のために、しかも特例ということでコンクリート化を認めるのか、そのことが問われてくるんだと思うんですね。
 それで、農作物栽培高度化施設には植物工場も入るんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 大澤誠君) 植物工場につきましても、これは定義はいろいろございます。我々としては、あくまでこの法律上の農作物栽培高度化施設の省令で定める基準、具体的には、専ら農作物の栽培の用に供されるものであること、それから、周辺農地の日照の問題等を解消するために施設の高さ、あるいは排水施設の基準等々、こういう要件を該当するものについては農作物栽培高度化施設に該当すると考えておりますので、いわゆる植物工場、人工光を用いた閉鎖型の栽培施設などが該当するかどうかはひとえにこの基準に沿って判断されることとなると考えております。

○紙智子君 植物工場もそういう条件に合えば入るんだということですよね。

○政府参考人(農林水産省経営局長 大澤誠君) 繰り返しになりますが、この省令の基準によって判断されるということでございます。
 ちなみに、ちょっと済みません、小規模、大規模という話がございましたけれども、先ほどの例にも申し上げましたけれども、これは、おじいさん、おばあさんが腰を曲げなくても済むようにということも農作業の効率化に役立つと考えておりますので、そちらの方ではそういう小規模なニーズにも該当し得るものと我々は考えております。

○紙智子君 それで、植物工場を建設するにはどれぐらい費用が掛かるのかということについて、農林水産研究開発レポートがあって、そこには七百二十平方メートルの完全人工型施設の十アール当たりのコストは、設置コストは三億一千万円、光熱費等の運営コストは千八百六十万円になるということが紹介されています。
 完全人工型施設の経営を、例えば三、四人の個人経営とか家族経営でできるんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省生産局長 枝元真徹君) お答え申し上げます。
 ちょっと今先生おっしゃったもの、ぱっと出てまいりませんけれども、私どもは補助でいわゆる完全人工光型の植物工場についても補助している例がございますけど、その例で見ますと、一設備当たりの投資規模、様々ございまして、一番小さいものですと一千万円、平米当たりの単価で二十万円、一番高いものですと十五億九千万円、これ平米当たり単価の三十九万円ということで、非常に幅がございます。
 そういう意味では、完全人工型の植物工場でございましても投資規模も様々なので、施設規模に応じました資金調達を行うことができれば家族経営であっても取り組むことは可能だろうとは思いますけれども、私、全てを承知しているわけではございませんが、完全人工型につきましては実態としては法人経営が中心じゃないかというふうに考えてございます。
 これは多分、先生も今御指摘あったとおり、完全人工型ですと光熱費などのランニングコストが非常に大きいので、運転資金も含めた資金調達が比較的容易となるなど、法人経営というのが事業運営に適していると、そういうことからじゃないかというふうに考えてございます。

○紙智子君 そうですよね。やっぱり家族でやろうと思っても、掛かることを、投資しなきゃいけないとなるから相当やっぱり慎重だと思うし、すごく大変なことなんだと思うんです。
 今年、二〇一八年二月に野村アグリプランニング&アドバイザリー株式会社というのが植物工場経営の現状と将来展望というのを出しています。そこに、太陽光型植物工場について、規模的には栽培面積一ヘクタール程度までは家族経営で運営可能だと考えられるが、一ヘクタールを超える規模になると組織的な経営が必要になり、正社員は直接作業に関与するのではなく、マネジャーとしての役割を担い、作業はパートが担当するオペレーションを採用しているということを報告しているんですね。
 一ヘクタールを超える施設というのは、これは資金面だけでなくて、やっぱり運営面でも家族経営では限界があるんじゃないかと思うんですけど、どうでしょうか。

○政府参考人(農林水産省生産局長 枝元真徹君) お答え申し上げます。
 大規模な施設園芸になりますので、例えば環境制御の面ですとか、生産ロットを確保した有利販売するとか、そういうメリットがございますけど、当然ながら設備投資とか労働力の確保というのが問題にはなります。
 それで、一ヘクタール以上の太陽光型の施設園芸の運営主体は、私どもが日頃からの情報として収集している感じでいいますと、農地所有適格化法人が多いというふうに思いますけれども、家族経営であっても雇用労働を活用して運営している事例も少なからず全国にございます。例えば、そういう場合、今先生がおっしゃったように、経営管理専属の従業員を配置する例ですとか、あとパートさんを雇う例だとか、その雇い方はいろいろございますけど、家族経営で雇用労働を活用するという例も少なからずございますので、法人化するかどうかというのはそこの農業者の選択でやられているんだろうというふうに思います。
 いずれにしても、家族経営にせよ法人経営にせよ、農業者がそういう雇用を活用するですとかいたしまして、効率的に作業を行うようなマネジメントの技術ですとか、作業の台車ですとか、自動かん水なんかの活用によって省力化を図るとか、そういうことが技術面が非常に重要でございますので、農林省としても地域の中心的な農業者が行いますマネジメント技術ですとか省力化技術の実証、またその実証温室での研修の受入れ、そういうことに対して支援を行っているところでございます。

○紙智子君 今答弁の中で、家族でもできなくはないような話があったんだけど、雇用労働だとかいろいろな技術面とかそういうことも含めると、私はやっぱりそう簡単ではないんじゃないかなというふうに思うわけですね。
 それで、家族経営でもコンクリート化を認めるということにするのであれば、高度化という言葉を入れる必要はないわけです。なぜ高度化施設に限定したのかということでいうと、これ先ほど舟山さんも質問の中にありましたけれども、二〇一七年の一月二十日、国家戦略特区諮問会議に、この日はあれですね、竹中平蔵氏、八田達夫氏ら有識者から、国家戦略特区、追加の規制改革事項などについてという要望が出ているわけですよね。で、農地へのコンクリート打設についてと、規制担当官庁の主張、いろいろ出されています。国家戦略特区のワーキンググループの主張、出ていますけれども、これをちょっと読み上げていただけますか。

○政府参考人(内閣府地方創生推進事務局審議官 村上敬亮君) 御指摘の諮問会議では、規制改革事項の追加に向けて、国家戦略特区ワーキンググループでの議論の状況について……(発言する者あり)はい、失礼いたしました。
 御指摘の諮問会議では、お話のあったとおり、国家戦略特区ワーキンググループでの議論の状況について八田議員から報告がなされ、該当部分でございますけれども、報告された規制改革事項、民間議員ペーパーの中の一つに農地へのコンクリート打設があり、規制担当官庁である農林水産省の方からは、農地は一旦コンクリートで固めると耕作不能となるという主張の紹介が、それに対して国家戦略特区ワーキンググループの側からは、植物工場等は農業の競争力向上にも貢献、転用せずとも農地として円滑に農業が行えるようにすべきという二つの御主張を対比して御紹介をさせていただいているところでございます。

○紙智子君 今紹介されているように、農水省としては、一旦コンクリートで固めると耕作不可能になるというふうに言っていたわけですよ。この見解をなぜ変えたんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 大澤誠君) 過去の経緯ですので私の方から御説明を申し上げますが、まず、この先生の御指摘のありました一月二十日の資料につきましては、農林省の主張として書いてございますけれども、農林省の言っていることをこの資料の提出委員が書いたものでございまして、私らは相談にあずかっておりません。ただし、そこに書いてあります農地は一旦コンクリートで固めると耕作不可能になるというのはある意味で当然のことでございまして、農地法の定義上、その耕作というものが定義されておりますので、コンクリートで固めると土がなくなるから耕作ができないという現行農地法上の解釈を述べたということでございます。
 その証拠と言ってはなんですが、我々もこの紙を見まして、これはちょっと誤解を招くおそれがあるということで、平成二十九年二月二十二日に農林省として資料を提出させていただいておりまして、そのときには、その文言を引用しながら、農地を一旦コンクリートで固めると耕作不可能となると回答していますが、それをもって別に提案に対応できないと回答しているわけではありませんということを言った上で、農業用施設を全面コンクリートで地固めすることについては、例えば農作業の効率性が向上するなどの農業経営上のメリットがあると考えられ、特定の地域に限らず全国各地で行われているところであると。これは特区での議論でございましたので、そういうことを言った上で、このため、農林水産省としては、農業政策上どのように取り扱うことが農業振興を図る上で望ましいのかという観点から検討すべきものと考えていると言ったところでございます。
 これに対して特に規制改革会議からは意見があったわけではなく、以後、我々が主体的に検討していったというふうに理解しております。

○紙智子君 今のその説明も何かすごく言い訳的に聞こえていて、やっぱり主張を変えたということになるんじゃないんですか、変えていないんですか。元々そうじゃなかったんでしょう。

○政府参考人(農林水産省経営局長 大澤誠君) 繰り返しになりますが、この会議における委員の提出資料に書いてあるものでございまして、農林省はいろんなことを言っている中のこの一部だけ書いてあるので、それを訂正すべく、二月二十二日に、我々の主張を体系的に述べた上で、農林省としてどういうふうにすれば農地法の趣旨を全うし、かつ農業政策上、農業振興を図る上で望ましいかどうかを検討したということでございます。

○紙智子君 後付け的に言っているようにしか聞こえないんですよね。この間何度もやり取りしたときには、そういう説明なかったですよ。後から付けたんじゃないですか。
 いろいろ、先ほどのやり取り聞いていても、要するに現場からの要望があったからだという話もありましたよね。だけど、やっぱりいろいろ要望で、例えば日本農業法人の協会、ここの要望があったのは二〇一七年の六月十五日だとか、全中の要望は十一月だと。だけど、その前に、結局規制改革のこの実行計画が閣議決定されているわけですよ。
 だから、何で閣議決定のときにはもうこういうふうに解釈を変えたのかということなんですね。民間からの強い要望が出されたからではないんですか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 大澤誠君) 先ほどのお話のしたとおり、二月、ずっと前、それこそ平成二十三年当時からですね、政府の閣議決定、当時の政府の閣議決定でも検討するということは位置付けられておりますけれども、近年でいえば、この二月二十二日、二十九年の二月二十二日に全国的な課題として検討するということを言った上で、具体的にはこの規制改革会議の決定の前に、二十九年の五月に農林水産業・地域の活力創造本部において、当時の農林水産大臣から、この農地をコンクリートとすることについてはどうするかを取扱いを検討するということをお話ししておりまして、規制改革はそれを後追いしているというふうに我々は理解しております。

○紙智子君 先ほどの舟山さんとのやり取り聞いていても、今、違いますよ、言っていることが。
 民間の産業競争力の懇話会という団体がありますけれども、大手の企業が会員になっている団体ですよね。二〇一六年の三月に植物工場の研究開発を加速するための国内法の整備と規制緩和として、農地法ともう一つ、建築基準法などの規制緩和を求めているわけですよ。
 なぜ農水省は解釈を変えてまでこのコンクリート農地を認めるのか。それは、農業者のニーズに応えるとか農業者のためになるかのように何かその期待感を強調しているんですけれども、それだったら、どうして高度化施設に限定するのかということですよ。認められないハウスがビニールハウスなんかに出てくるという可能性があるわけです。
 そうすると、実態としては、これ農地のコンクリート化する制度を使えるのは、結局は植物工場が中心になるんじゃありませんか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 大澤誠君) どうしてもその高度化という言葉にこだわりがあるようでございますが、繰り返しますけれども、農地法のこの改正案そのものをよく見ていただければ、これは高度化施設というのは高度化だけの施設ではありませんで、四十三条の二項に書いてあるとおり、効率化又は高度化というのをたまたま高度化に縮小、縮約といいますか、縮めて定義をしているだけでございます。
 ですから、植物工場だけということでは一切ありませんで、何回も申し上げているとおり、腰を折らないでも農業ができるとか、そういうことも主に想定しているところでございます。

○紙智子君 先ほどのちょっと舟山さんの資料を見ても、もう五月の段階でそれに応えて、決まっているわけですよね。だから、いろいろ言い訳されるんだけれども、ちょっとそれは矛盾しているというふうに思いますし、やっぱり言い訳にしかすぎないというふうに思うんですよ。
 それで、先ほど紹介した野村アグリプランニングの報告はこう書いているんですね。植物工場は工場や学校施設を活用することでコストを軽減してきた、コンクリート張りの場合、これまでは農地として扱われなかったが、農地扱いになる方向になると。農地扱いではなかったために建築基準法が適用されたけれども、農地扱いになれば制約が緩和される、建設コストの低減は可能になる、固定資産税などの税金面もコスト低下になるというふうに言っているわけですよ。これ、企業のための制度になりかねないと思うんです。
 もう一つ聞きたいんですけれども、都市農地円滑化法が先日参議院で可決されました。生産緑地にも植物工場を設置することができるんでしょうか。

○政府参考人(国土交通大臣官房審議官 榊真一君) お答えを申し上げます。
 生産緑地地区内におきましては、農地等が有する良好な生活環境の確保の機能を維持するため、建築物の建築等を市区町村長の許可に係らしめております。
 市区町村長は、建築物の建築等が農産物等の生産の用に供する施設等の設置又は管理に係る行為で、かつ良好な生活環境の確保を図る上で支障がないと認めるものである場合に限り許可することができることとされています。農作物栽培高度化施設は農産物等の生産の用に供する施設に該当いたしますことから、市区町村長が当該施設の設置が良好な生活環境の確保を図る上で支障がないと判断した場合には生産緑地地区内での設置が可能となります。

○紙智子君 今の答弁、もう生産緑地も対象になるということです。
 改正案には、周辺の農地の営農条件に支障を与えない施設というふうになっています。生産緑地は農地というよりも宅地に囲まれているんですよね。せっかくある生産緑地が植物工場になってしまったら、緑豊かな景観の形成とか防災空間の確保とか、この都市農地の多様な機能を保全することにならないんじゃないかと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤健君) 現実に、先ほどから申し上げていますように、これを設置するに当たりましては、周辺の営農状況にどう影響を与えるかと、与えないようにということはちゃんと見させていただく仕組みになっていますので、それは生産緑地かどうかに限らずそれはしっかり見るということに尽きると思いますし、現実にそういう技術が出てきて、それをやりたい人が増えてきていると。それを禁止をするということであるなら別なんですけれども、それをやっぱり活用しようと思えば、どういう形で農家あるいは生産法人の人たちがそれをやることが一番農政にとっていいかという見地から提案をさせていただいているところでございます。

○紙智子君 技術の進歩は私も否定はしないですけれども、それであれば、もう一回ちゃんとよく元に戻って議論していただきたいと思います。
 生産緑地で植物工場が推進される懸念もあって、植物工場が失敗した場合は今度は農地に戻すことが困難になるという問題がある。それから資材置場になりかねないということもあるわけです。やっぱり、いつでも耕作できる状態に保ってこそ農地なんだと思います。農政の岩盤中の岩盤である農地の安易な規制緩和は行うべきではないということを申し上げて、あと一問だけ質問をいたします。
 相続未登録農地についてですけれども、農地が荒廃すると、これ病害虫の発生や災害の要因になってしまいます。周辺農地や宅地にも影響が及ぶ可能性があります。日本共産党は、この農地を農地として活用する対策は必要だと思います。
 改正案では、農業委員会が共有者の探索を行う仕組みがつくられました。第二十一条の二の二で、農業委員会は相当な努力が払われたと認めるものとして政令で定める方法、そしてまた、公示を行う条件としては、第三十二条で、農業委員会として相当な努力が払われたと認められるものとして政令で定める方法によって探索を行ってもというふうになっています。
 この相当な努力というのはどういう探索かということを端的にお願いします。

○政府参考人(農林水産省経営局長 大澤誠君) 二つの条文について相当な努力という文言が用いられておりますが、これはいずれの場合も具体的には同じ要件を考えております。
 まずは、共有者不明農地の分かっている共有者に対して書面の交付その他の方法によって照会する、それから、登記事項証明書の交付をまず請求する、そこの登記事項証明書に記載されている所有権の登記名義人の戸籍をまず請求する、戸籍に記載されている者、具体的には配偶者と子供まで記載されておりますが、その住民票を請求する、この全ての措置をとります。かつ、当該措置により分かった共有者に関する情報に基づいて共有者と思われる者への書面の交付その他の方法によって照会する、この全てを行うということが政令で考えていることでございます。

○紙智子君 ちょっともう一つあったんですけれども、時間になりましたのでまとめたいと思います。
 それで、やっぱり慎重にも慎重を期してやっていただきたいというふうに思います。未登録農地をどうするかというのは、やっぱり財産権に絡む話でもありますので難しい問題なんですけれども、やっぱり農地を農地として活用するというところが基本だと思います。そのことを申し上げまして、質問を終わります。