<第196回国会 2018年4月10日 農林水産委員会>


◇日米首脳会談 鉄鋼・アルミなど追加関税の適用除外について/日米FTA交渉入りへアメリカから要求があったのではないか/TPP11など、食料主権や経済主権を守らない通商交渉はやめるべきだと主張

○農林水産に関する調査

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 日米関係とTPPについてお聞きするんですが、その前に、昨日から今日にかけて加計学園問題をめぐって愛媛県の面会記録に首相案件ということで書かれていたこと、そして柳瀬首相当時秘書官の主な発言が報道されているわけです。その中には、獣医師会、抵抗する獣医師会に対して、それを説得するようなことも含めた指示とも取れるような中身も書かれているわけでありまして、この一年間いろいろ議論してきているんですけれども、虚偽の答弁をしていた可能性もあるという中で、やっぱりちゃんと解明しなきゃいけないということでは、与野党超えて真摯にそこに向き合っていただきたいということをまずは申し上げておきたいと思います。
 その上で、日米関係とTPP11についてなんですが、四月十七日から日米首脳会談が開催されますので、幾つか聞きたいと思います。
 テーマは通商政策と北朝鮮への対応ということです。通商政策では、公平で互恵的な日米の貿易投資の在り方について議論すると報道されています。アメリカは、鉄、アルミニウム製品の輸入制限を実施すると。日本もその対象国に入るということです。日米首脳会談で対象国から日本を外すように求めるんでしょうか、外務省。

○政府参考人(外務大臣官房参事官 林禎二君) 米国の鉄鋼及びアルミニウムの輸入に対する追加関税についての御質問でございますが、我が国は現在も対象となっております。
 今般の安全保障を理由とした広範な貿易制限措置は、世界の鉄鋼、アルミ市場を混乱させる懸念があるほか、同盟関係にございます日米の両国の経済協力関係、ひいては多角的貿易体制全体や世界経済に大きな影響を及ぼしかねないと考えております。
 これまで様々なレベルで日本の懸念を米国にしっかり説明してきたにもかかわらず、日本が除外されない形で追加関税の賦課が開始され、現在も除外されていないことは極めて遺憾でございます。
 引き続き、輸入制限措置の内容や日本企業への影響を十分に精査した上で、WTOの枠組みの下で必要な対応を検討していくとともに、我が国の対象からの除外を米国に働きかけていきたいと考えております。

○紙智子君 今の話でも、いろいろ言ってきたけれども解除はされていないということですね。
 日米のトップ会談で、日本が鉄、アルミニウム製品のこの輸入製品の対象国から外すように求めるというふうになった場合、アメリカから日米自由貿易協定、FTAの交渉入りを求めてくる可能性があるんじゃないんでしょうか。

○政府参考人(外務大臣官房参事官 林禎二君) 日米FTAについての御質問でございますが、これまで日米経済対話の議論の中では二国間FTAに関するアメリカ側の考え方が示されてきております。また、ライトハイザー米国通商代表が連邦議会における発言にもあるとおり、将来的な可能性として米側にそのような見解もあることは承知しております。
 いずれにしましても、アジア太平洋地域の現状をよく踏まえた上で地域のルール作りを日米が主導していくことは重要と考えております。その中で、どのような枠組みが日米経済関係及びアジア太平洋地域にとって最善であるかを含め、日米経済対話を通じて建設的に議論をしていきたいと考えております。

○紙智子君 アメリカは以前から日米FTAを求めているというふうに言われているんですね。
 三月にアメリカ議会の下院歳入委員会の公聴会で、米国通商代表部、USTRのライトハイザー代表は、適切な時期に自由貿易協定を結ぶことに関心があると日本に伝えているというふうに証言をしているわけですけれども、このアメリカがFTAに関心があるというふうに伝えてきたのはいつでしょうか。

○政府参考人(外務大臣官房参事官 林禎二君) 先ほど申し上げたとおり、繰り返しになりますが、これまで開催してきております日米経済対話の議論の中では二国間FTAに関するアメリカの考え方が示されております。
 また、委員御指摘のとおり、ライトハイザー通商代表の連邦議会における発言でも、将来的な可能性として米側にそのような見解があるということは承知しております。

○紙智子君 いつですか。

○政府参考人(外務大臣官房参事官 林禎二君) 日米経済対話についてはこれまで二回ほど開催してきてございます。
 また、ライトハイザー通商代表の発言は、米国時間の三月二十一日の歳入委員会での御発言と承知しております。

○紙智子君 あのね、レクチャーで事務方の方から、ブリーフィングで昨年十月の日米経済対話において関心が示されたと言っていますよ。そうじゃないんですか。

○政府参考人(外務大臣官房参事官 林禎二君) 日米経済対話二回目につきましては、今委員御指摘のとおり昨年十月に開催しております。その中で二国間FTAに関するアメリカ側の考え方は示されてございます。

○紙智子君 あのね、本当にこれ、真実を語っていただきたいんですよ。
 昨年十月の日米経済対話でアメリカがFTAに関心があると伝えてきたわけですよね。十一月の首脳会談でも日米FTAは協議されていたんじゃありませんか。

○政府参考人(外務大臣官房参事官 林禎二君) 十一月の会談でも日米FTAについてのお話はございました。それについて、詳細につきましては相手国もありますことですので差し控えさせていただければと思います。

○紙智子君 ですから、今あったというふうに言われたんだけど、安倍総理は、トランプ大統領との会談では日米FTAに関するやり取りはありませんでしたと言っているんですよ。
 しかし、昨年の十一月十七日にウィリアム・ハガティ駐日米国大使は日本の記者クラブで率直に語っているわけですね。ハガティ大使は、トランプ大統領と安倍首相の詳細な議論に立ち会った、我々は自由貿易協定を含む貿易分野の様々な選択肢について協議した、日米FTAのスケジュールは全く今白紙だが、貿易赤字是正のために活用できるあらゆる手段について話し合いましたと、それにはFTAも含まれますというふうに答えているわけですよ。FTAも含まれると、こういうふうに言っているわけですね。
 日米首脳会談でこれ話題になったんじゃありませんか、いかがですか。

○委員長(岩井茂樹君) 速記を止めてください。
   〔速記中止〕

○委員長(岩井茂樹君) 速記を起こしてください。

○政府参考人(外務大臣官房参事官 林禎二君) 今、確認をいたしましたけれども、十一月の首脳会談の中で日米FTAについて議題、話題に上ったということはございません。

○紙智子君 あれ、十一月の中で話ししている、ハガティ大使が言ったことというのは違うんですか。

○委員長(岩井茂樹君) 速記を止めてください。
   〔速記中止〕

○委員長(岩井茂樹君) 速記を起こしてください。

○政府参考人(外務大臣官房参事官 林禎二君) そのような関係がハガティ氏からあったことを承知してございますけれども、事実と違うということで我々としても抗議をしているところでございます。

○紙智子君 ちょっと全然それ納得できません。だって、日本記者クラブで語っているんですよ。それ、うそだったということになるんですか。

○政府参考人(外務大臣官房参事官 林禎二君) 我々の認識としては違うということで抗議をさせていただいております。

○紙智子君 いや、ちょっと全く納得できないですよ。それで、これ、ちゃんと精査しなきゃいけないと思うんですけれども、どうして真実を語らないのかと思いますよ。それで、これも情報隠ししているんじゃないかというように言いようがないと思います。
 それで、齋藤大臣にお聞きしますけれども、日米FTAについて、四月三日の私の質問に対し、日米経済対話は関税交渉するというふうに認識しておりませんという答弁をされました。確かに、日米経済対話でその関税の問題で交渉するかどうかというのは分かりませんけれども、しかし日米経済対話でアメリカは関心したのは事実だと思うんですね。アメリカがこの間の言動から、四月十七日から始まる日米首脳会談で日米FTAが議題になる可能性があるわけです。齋藤大臣、農水大臣ですから、是非農業に大きな打撃のある日米FTAの協議には入らないようにということを総理大臣に言うべきではありませんか。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤健君) まず、首脳会談において日米FTA交渉を求められるかどうかというのは仮定の話でありますので、一つ一つ仮定の話にお答えをしていくと交渉をやる前に全て戦略が明らかになってしまいますので、私の方からその仮定、こうした場合どうするかという仮定の質問についてはお答えを差し控えさせていただきたいと思いますけれども、私ども農林水産省としては、日本の農林水産業の維持発展を旨としてきちんとした対応をしていきたいというふうに考えているところであります。

○紙智子君 ちょっとはっきりしないですけれども、やっぱり本当にこの問題をめぐっても非常に大きな影響が日本に与えられる可能性がある問題ですし、やっぱり農水大臣ですから、そういう深刻さを受け止めるならば、ちゃんと閣内においても発言すべきだというふうに思いますよ。
 ハガティ大使の発言を事実だと思っていないという話、さっきあったんですけど、本当にこれおかしいと思いますよ。そのほかにもこう言っているんですよ。米国の対日貿易赤字をある程度是正する手段を協議したと、率直に言って非常に不均衡な状況に目を向けると、肉類では米国産牛肉に五〇%の関税が掛けられている一方で、オーストラリア産牛肉への関税は僅か二八%、この不均等を是正する必要があるんだというふうに言っているんです。物すごく具体的な話を言っているんですよ。こういう形でターゲットを決めているわけですよね。これ、違うんですか。

○委員長(岩井茂樹君) 速記を止めてください。
   〔速記中止〕

○委員長(岩井茂樹君) 速記を起こしてください。

○政府参考人(外務大臣官房参事官 林禎二君) 牛肉のセーフガードにつきましては、日米経済対話の中では議論してきているというふうに承知しております。

○紙智子君 あのね、一連のずっと発言した中に入っているんですよ。だから、場所が違うところで言っているわけじゃなくて、一連の中で言っている話なんですよ。ちょっとそれはもう一度確認しますので、調べておいていただきたいと思います。
 それで、四月十七日から始まる日米首脳会談で、これ、日本が鉄、アルミニウムの製品の輸入製品の対象国から外してくれというふうに求めた場合に、アメリカから日米自由貿易、FTAの交渉入りを求めてくる可能性はあるし、懸念は消えないわけですね。
 その際、日本としては拒否できる切り札、特に日本農産物について拒否できる切り札というのはあるんでしょうか。これ、齋藤大臣にお聞きします。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤健君) FTAをアメリカがそもそも求めてきたときにどうするかとか、そういう話は仮定の質問なので、繰り返しになって申し訳ありませんが、ここでお答えは差し控えたいと思いますけれども、私もこの事の重要性は十二分に理解しているつもりでありますので、先ほど御答弁申し上げたように、我が国の農林水産業の維持発展を旨としてきちんとした対応をしていくということは申し上げておきたいと思います。

○紙智子君 仮定のことに答えられないというんだけれども、もう目の前じゃないですか、実際に四月十七日から始まるわけですから。日本の農産物の市場開放を目指すような日米FTA交渉は拒否するように強く求めておきたいと思います。
 続いて、TPP11についてなんですけれども、TPP11の第一条に、TPPを取り込むという規定があります。なぜこういう規定があるのか、そして、TPP協定の全条項を、元のですね、取り込むということなんでしょうか、確認します。

○政府参考人(外務大臣官房参事官 林禎二君) いわゆるTPP12協定は、アメリカが離脱を表明いたしまして、アメリカが締結しない限り発効が不可能になってございます。
 そうした状況の中で、アメリカ以外の十一か国の間でTPP12の協定の内容を実現する方法として、新たな国際約束でございますいわゆるTPP11協定に12協定を組み込んだ上で発効させることを通じて、TPP12協定の内容を十一か国の間で実現するための法的枠組みとしたものでございます。

○紙智子君 TPP11はTPPの全条項を取り込むことを定めているわけですね。
 私、四月三日の質問で、TPP11の第一条に、十二か国のTPPと、TPP協定を組み込むとの規定があるけれども、新しい協定を作るに当たって発効もしていない協定を取り込んだことがあるのかというふうに聞きました。外務省の答弁は、WTO協定の一部を成すTRIPS協定を例に挙げて、取り込んで実施する例は存在すると言われたんですね。
 ちょっと確認しますけれども、TRIPS協定に取り込む規定はあるのかないのか。規定です。

○政府参考人(外務大臣官房参事官 林禎二君) WTO協定の一部を成しますTRIPS協定、知的財産所有権の貿易関連の側面に関する協定では、未発効でございます集積回路についての知的所有権に関する条約の関連条項に従った保護を規定してございます。
 具体的には、TRIPS協定の三十五条で、加盟国は、集積回路の回路配置について、集積回路についての知的所有権に関する条約の第二条から第七条まで、ただし、第六条の(3)の規定を除く、それから、第十二条及び第十六条(3)及び次条から三十八条の規定に従って保護を定めることに合意するというふうにしてございます。

○紙智子君 ですから、一部のところについて合意するということであって、取り込む規定ではないんですよね。外務省は取り込んでとか取り込まれたと答弁されたんだけど、取り込む規定そのものはないんですよ。
 先日は、さらに、一九七八年の議定書の例を出しました。答弁は、千九百七十三年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する千九百七十八年議定書というのがあって、その中で一九七三年の条約を丸ごと取り込みながら、一部を修正しておりますと、取り込んだ例はあると、ここでも取り込んだと説明をされたんですよね。しかも、丸ごとと言われたんですよ。一九七八年議定書に丸ごととか取り込むという規定はあるんでしょうか。規定です。

○政府参考人(外務大臣官房参事官 林禎二君) 委員御指摘のお話、一九七八年の議定書、これは船舶汚染防止に関する議定書でございますけれども、これに対しての規定につきましては、正確に申し上げますと、第一条で、「この議定書の締約国は、次の文書を実施することを約束する。」とした上で、その対象として、「千九百七十三年の船舶による汚染防止のための国際条約」を明記し、「ただし、この議定書における条約の修正及び追加の規定に従うことを条件とする。」という記述をしてございます。

○紙智子君 ですから、その修正することに従うことを規定するというふうになっていて、これ取り込む規定じゃないんですよ。TRIPS協定にも一九七八年議定書にも取り込み規定はないのに、何で取り込み規定があるような言い方を、しかも、丸ごと取り込んだなんていうことをこの前説明されたんですけれども、これは議論を迷わす答弁じゃないんでしょうか。ちょっと余りにも言い過ぎじゃないのかと思うんですけれども、どうですか。

○政府参考人(外務大臣官房参事官 林禎二君) 個々の条約の文言につきましては、それぞれ交渉当事国の間で、またそれぞれの交渉の固有の文脈の中で決まっていくものでございます。したがいまして、おのずからその文言や表現についても差異が生じるというふうに考えております。
 その上で、先般、御紹介をしました条約については、いずれもある未発効の協定の規定の効力を発生させるために新たに作成する他の協定の発効を通じてこれを実現するという点では同様の例ということで御紹介した次第でございます。

○紙智子君 言い過ぎだったと思いますよ、完全にこの前の答弁というのは。丸ごとなんて言っているわけだから。議論を混乱させるようなやり方はやめていただきたいと思います。
 TPP11の第一条でTPP協定を取り込むと規定をしていると。これが丸ごと取り込むということですよ。新協定なのに異例な協定だと思います。しかも、第六条でTPP12の発効が見込まれる場合又は見込まれない場合の見直し規定まであるわけですよね。まさにアメリカに合わせているということですよ。アメリカとアジア太平洋地域において、高い基準の貿易、経済ルールを作るために準備をするということだと理解します。
 農林水産業などの食料主権や経済主権を守らないような通商交渉は、協定はやめるべきだということを申し上げて質問を終わります。