<第196回国会 2018年4月4日 東日本大震災復興特別委員会>


◇東日本大震災から7年が経過し、被災者支援策の打ち切りについて、再度支援策を求める/津波補助金の辞退者が多いことについて/津波補助金の制度設計や審査体制、審査内容について/自主避難者への住宅の無償提供の打ち切りについて/自主避難者を支援する仕組みを作ることを求める

○東日本大震災復興の総合的対策に関する調査

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 東日本大震災、東京電力福島原発事故から七年がたちました。引き続き被災者の生活となりわいの復興を支援することが必要であるということは当然ですけれども、七年たって、更に充実させる事業もあれば、事業の打切りによって新たに苦難になっていることもあります。
 例えば、復興公営住宅の家賃が六年目から段階的に引き上がる、あるいは収入超過者の家賃が高額になる問題ですとか、公的補助を活用したために仮設住宅に入れなかった在宅被災者の問題もあります。災害援護資金、この返済が始まりますので、生活への影響が心配されると。それから、なりわいの再生では、仮設施設、店舗の入居の期限が切れる問題があります。それから、固定資産税の減免が打ち切られたという問題もあります。
 七年たって今まで行われてきた制度が打ち切られることが被災者に苦難を強いるものにならないかどうかということでは、大臣、この総合的な制度のチェックを行って、被災者に寄り添った対策を取ることが必要な時期に来ているのではないんでしょうか。

○国務大臣(復興大臣 吉野正芳君) 東日本大震災から七年が経過し、地震・津波被災地域については、生活インフラの復旧や住まいの再建など、ハード面を中心に復興は着実に進展をしております。復興・創生期間に復興をやり遂げるという決意の下、復興事業の加速化に全力をまずは尽くしていきたい、このように考えております。
 原発事故で大きな被害を受けた福島については、帰還困難区域を除くほとんどの地域で避難指示が解除され、復興再生に向けた動きが本格的に始まっております。ふるさとへの帰還促進のため、介護サービス、医療提供体制の確保、子供たちの教育環境の整備、福島イノベーション・コースト構想の推進などに取り組んでまいります。
 一方、復興のステージの進展に伴い地域や個人が抱える課題は細分化してきており、これらに適切に対応していくことが重要となっております。そのため、心のケアや被災者支援に携わる方々への支援、風評払拭のための放射線リスクに関する情報発信など、ソフト面の施策の充実を図り、地域や被災者のニーズにきめ細かく対応してまいります。
 引き続き、現場主義を徹底し、被災者に寄り添いながら、被災地の実情を踏まえた施策の効果的な活用に配慮しつつ、被災地域の復興を後押しをしてまいりたいと思っております。
 また、総合的なチェックをすべきだというおただしでございます。
 平成二十八年の三月に策定された復興の基本方針というのがございます。ここに、三年後を目途に必要な見直しを行うという規定が書かれております。二十八、二十九、三十、まさに今年度は見直しの始まる年でございますので、基本方針の見直しを行う予定でございますので、その際に復興施策の実施状況等を把握しながら所要の見直しを進めてまいる所存でございます。

○紙智子君 見直しの年に入るということでは、総合的に自治体における進捗状況も把握されるということをお答えいただきました。
 そこで、今日は津波補助金についてお聞きをしたいと思います。
 津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金、これは、東日本大震災によって被害を受けた津波浸水地域、福島県を対象に、工場等の新増設を行う企業を支援し、雇用の創出を通じて地域経済の活性化を図る補助金です。ポイントは、災害復旧ではなくて新増設と雇用の創出ということに説明を聞いています。
 水産加工業などでもこれは活用されているわけですけれども、申請状況などを聞きましたら、申請数で八百七十一件、不採択数が二百二十九件だと。約二六%が不採択になっているんですね。なぜ四分の一もの事業者が不採択になっているのか、お答え願いたいと思います。

○副大臣(経済産業副大臣 武藤容治君) 先生から御質問いただきました、いわゆる津波補助金の件であります。今先生おっしゃっていただいたように、いわゆる工場の新増設、あるいはその雇用の創出というポイントがあります。
 御指摘の不採択の実績につきましては、本補助金に関する事務手続を取り扱う事務局、これが、いわゆるみずほ情報総研に設置された外部有識者による第三者委員会において、投資計画の熟度ですとか、雇用創出効果ですとか、被災地への貢献度などの審査項目について審査をされた結果であると承知しております。
 被災地の復興の現場では、事業者にとって事業環境の不確実性が高い中で、例えば用地や雇用の確保等で困難な状況にあるのは私ども承知をしております。このため、審査の結果に、投資計画の熟度が低いなどの理由によりまして不採択となる事業が出てくるものと承知をしております。
 他方で、本補助金につきましては、これまでの実績といたしまして、二百九十四件の交付決定を行い、三千七百五十四名の地元雇用を創出することとなっております。
 被災地の迅速な復興に向けて、このような雇用創出の効果が期待できる本補助金を事業者により一層御理解、御活用いただくことが大事なことと思っております。

○紙智子君 まあ熟度が低いというのは、果たして全部そうなのかというのはちょっと疑問なんですが。
 不採択数も多いんですけれども、驚いたのは辞退者が多いことなんですね。採択数で六百四十二件のうち辞退者数が二百八十一件もあるんです。約四三%の方が辞退されているんですね。それで、採択されても半分近くの方が辞退しているというのは、これちょっと多過ぎるんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○副大臣(経済産業副大臣 武藤容治君) 紙委員の御指摘のとおり、本補助金の辞退数は今の数字のとおりであります。採択後に辞退される案件が結果的に多いと私も承知をしております。
 本補助金の採択後の辞退につきましては、事務局が事業者に確認しているところによりますと、事業費の高騰等による事業計画の見直し、あるいは、用地交渉の不調ですとか資金不足による事業計画の変更、廃止などが主な理由だというふうに承知をしております。

○紙智子君 それで、ちょっと復興大臣にお聞きしたいんですけれども、震災からの復旧復興を支援するためにいろんな制度や事業が活用されているわけです。今年に入って、本委員会において例えば二重ローンの対策法を延長したり、それからまた、水産庁は水産加工資金法を延長しました。
 私、二月に岩手県に訪問して被災地の現状をお聞きしたんですけれども、例えば陸前高田市では、震災から再建した水産加工業者八社で二百五十人を雇用しているとか、そういう漁業者の経営や雇用に大きな役割を発揮しているというのもあるんですけれども、地域経済を活性化させるための支援というのは引き続きやっぱり大事だということを痛感しました。
 ところが、津波補助金は、申請して採択されたのに今のお話のように辞退される方が二百八十一件もあると。これはやっぱり多過ぎるというように思うんですけど、いかがでしょうか。

○国務大臣(復興大臣 吉野正芳君) 津波立地企業補助金については、ただいま経産省の答弁のとおり、事業者側の様々な事情によって一定数の辞退が生じているものと承知をしているところです。他方、本補助金は、被災地に雇用を生み地域経済を活性化させるための重要な施策と認識をしております。
 私も今年に入り、経済三団体のトップに対して企業立地補助金等の支援施策を会員企業に周知していただくよう改めて要請をしたところでございます。今後もこうした支援施策の積極的な対外周知を図り、被災地に一社でも多くの企業が立地するよう取り組んでまいりたい、このように考えております。

○紙智子君 それで、ちょっと先ほどの続きなんですけど、津波浸水地域の補助率は、中小企業は二分の一から六分の一というふうに幅があるんですよね。辞退した業者から話を聞くと、補助率が二分の一だというふうに聞いて応募したんだけど、実際に蓋を開けてみたら四分の一だったと。それで、自己負担が二分の一と四分の一ということになるとこれ全然違うわけで、なぜ四分の一になったのかということは分からないんだと言うんですね。それで、二分の一を期待したのに四分の一ということになると、資金繰りが今度大変になるわけですよね。
 補助金の目的というのは、工場等の新増設、雇用の創出のはずなんですけれども、四分の一になった理由を現場でどういうふうに説明されているんでしょうか。

○政府参考人(経済産業政策統括調整官 田川和幸君) お答えいたします。
 先ほど武藤副大臣から答弁ありましたように、採択後の辞退につきましては、事業費の高騰による事業計画の見直し、用地交渉の不調、あるいは資金不足による事業計画の変更などが主な要因であるというふうに承知をしております。
 では、この補助率につきましては、採択される、私ども、この補助制度の内容につきましては、公募の開始後に複数回にわたりまして被災地及び東京で説明会を開催するほか、事業者に対しまして事務局が一対一で対応するなど、個別相談会での対応等を行っております。その中では、申請書の記載方法でございますとか、あるいは補助率等についてもきちんと丁寧に細かい説明を行っているところでございます。

○紙智子君 丁寧に説明していると言うんですけど、丁寧に説明されていないから分からないと、どうしてこうなるんだろうかといって辞退しなきゃいけなくなったわけですよ。
 やっぱり郵送で通知しているだけで、一方的に言っているというだけでは、これ納得できないというように思うんですね。
 それで、津波補助金の制度設計や審査体制、それから審査内容がどうなっているのかということをちょっと長くならないように端的に説明してください。

○政府参考人(経済産業政策統括調整官 田川和幸君) お答えいたします。
 この補助金でございますけれども、被災地の雇用創出を通じた地域経済の活性化を図るという観点から、投資額に応じた一定の雇用の創出を主な要件としているところでございます。
 まず、補助率につきまして幅を設定しているという趣旨でございますが、限られた予算の中で、審査の結果高い評価となった事業を重点的に支援するということで、復興を加速するという趣旨での制度設計でございます。
 審査体制につきましては、事務局みずほ情報総研に設置をされ、財務会計あるいは企業立地等の分野に知見を有する外部有識者で構成される第三者委員会で審査を行っているところでございます。
 この審査の内容につきましては、立地する県の知事から提出された意見書を踏まえまして、投資計画の熟度、雇用創出効果、被災地への貢献度等の審査項目について審査を行っているところでございます。
 さらに、きちんとした事業者に対する説明、引き続き私ども取り組んでまいりたいと思います。

○紙智子君 津波補助金は、大震災で被害を受けた津波浸水地域を支援する制度ということになっているんです。財源は税金ですよね。それで、津波補助金は、国が基金を造成して、一般社団法人地域デザインオフィスが民間事業者等に補助するという複雑なちょっと仕組みになっていると思います。審査は民間事業者の第三者委員会が行っていると今ちょっと説明ありましたけど、辞退した事業者は、国の制度なのに希望どおり支援されていないと、第三者委員会が審査しているようなんだけれども何が問題なのか分からないというふうに言っているんですね。
 それで、宮城県議会が三月に、内閣と衆参議長宛てに津波補助金の改善を求める意見書を出しました。被災地は人手不足だと、補助金制度上の雇用要件の緩和が必要だとして、被災地の実情に合わせて、雇用要件の緩和を含めて審査基準の見直し、改善を求めているんですね。
 それで、この審査内容、審査結果の透明性を図って、やっぱり事業者が納得できる仕組み、使い勝手の良い仕組みに改善すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○副大臣(経済産業副大臣 武藤容治君) 紙先生おっしゃるとおり、透明性は大変私も大事だというふうに思っております。
 本補助金につきましては、先ほど復興大臣からもちょっと御答弁ありましたけれども、これまでの政策効果や被災地の復興の状況をしっかりとこれを検証する必要がございまして、その上で、吉野復興大臣を始めとして関係省庁と連携をしまして、御指摘の点も踏まえて今後の在り方を議論していきたいというふうに考えております。

○紙智子君 津波補助金の申請期間が二〇一八年度の末ということなのでもうすぐなんですけど、この制度を使いたいと言っている業者もいます。意見書では、土地の区画整備が終わっていない地域があるので、本年度でこの制度が終わったら活用できないというふうに言う人もいるんですね。
 津波補助金を延長するように求めたいというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。是非お願いしたいということなんですが。

○副大臣(経済産業副大臣 武藤容治君) 延長といいますか、先ほど申しましたとおり、吉野大臣を始めとして関係省庁と連携をしながら今後しっかりと詰めていきたいと、議論させていただきたいと思います。

○紙智子君 是非、事業者が困らないように、延長の方向でというか、検討いただきたいんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(復興大臣 吉野正芳君) まさに、一番ダメージを受けた地域が遅れているわけでございますので、これから十分経産省とも議論をして検討してまいりたい、このように思います。

○紙智子君 前向きに、是非、いい方向に喜ばれるように検討していただきたいと思います。
 最後、ちょっと自主避難者の問題もお聞きしたいと思います。
 二〇一七年の三月末に自主避難者への住宅の無償提供が打ち切られました。この問題は、先日、我が党の岩渕議員が詳しく質問いたしました。福島県と連携しながら、支援団体と意見交換を行うというふうに大臣答弁でも言われました。
 昨年度、住宅の無償提供が打ち切られて以降、これ復興庁が行った新たな支援策というのはあるんでしょうか。復興庁が行った新たな支援策。

○国務大臣(復興大臣 吉野正芳君) 復興庁として新たな支援策はございませんけれども、住宅打切りについて、福島県が独自の家賃補助制度、また住宅確保のための相談支援、これは福島県が主体的に行っているところですけど、そういう相談支援のところは、復興庁も一生懸命、県と一体となって今やっているところです。

○紙智子君 だから、今までの答え方って、大体もう福島県がやっていることを復興庁としても応援するというやり方でしかないんですね。直接復興庁が支援していないと、やってないということなんですよ。
 やっぱり今回のこの東電の福島原発事故の責任というのは、東電と国にその責任があるわけです。自主避難者への支援というのは、災害救助法の枠組みで行ったわけですけれども、事故が発生してから二年、三年ならともかく、五年、六年たってもやっぱり自治体任せにしてきていると。やっぱり新たな枠が必要だったんですよ。この災害救助法の枠組みでは限界があったわけで、国がやっぱり新たな制度をつくらなかったということが自主避難者に新たな苦難を強いているんじゃないかというふうに思うんですね。ですから、その検証を是非行うべきだというふうに求めたいと思います。どうですか。

○国務大臣(復興大臣 吉野正芳君) 私も、自主避難者の相談窓口が全国で二十六か所ございます、そのうちの約十八か所訪問をさせていただきました。そういう意味で、自主避難者の、支援する団体、NPO等々は生活再建をまずやってほしいという、そこのところに全力を尽くしておりますので、本当に全てのよろず相談でございますので、一生懸命やっている姿を見させていただいて、そこは福島県がやっている事業なんですけど、県も市も一体となってやっている。
 そして、一番大事なのは、被災を受けた被災者自身の生活をどう再建していくかというところが一番大事なところで、国がやっている、県がやっているというところよりも、国と県が一体となって取り組んでいるというところが、私は、被災者が一番大事なんだという点が一番私にとっての大事なところというふうに認識をしておるところです。

○紙智子君 時間になりましたので、是非自主避難者を支援する仕組みをつくっていただきたいということを申し上げて、質問を終わります。