<第196回国会 2018年3月23日 農林水産委員会>


◇大雪被害での離農対策として、倒壊した農業施設解体への支援を確認/被災農業者向け経営体育成支援事業の発動を大臣に求める/種子法廃止に伴う事務次官通知は地方自治への介入ではないかとただす/農業生産に欠かせない種子は、政府が責任を持つべきだと主張

○平成三十年度一般会計予算(内閣提出、衆議院送付)
 平成三十年度特別会計予算(内閣提出、衆議院送付)
 平成三十年度政府関係機関予算(内閣提出、衆議院送付)について(農林水産省所管)

○紙智子君 日本共産党の紙智子です。
 今日は予算の委嘱ということで、予算関連のことについて質問いたします。
 それで、大雪被害についてまずお聞きしたいと思います。
 今年も、例年経験したことがないような大雪によって農林漁業に被害が出ました。被害に遭われた皆さんに対しては、まず心からお見舞いを申し上げたいと思います。
 大雪は日本海沿岸を中心に広範囲にわたっていますが、北陸では昭和五十六年豪雪以来三十七年ぶりの大雪だということです。私たち日本共産党としては、二月七日の日に二〇一八年の豪雪被害対策本部をつくって、関係省庁にも要請をいたしました。経験したことがないような余りにも大きな被害に直面をして、今後の営農の見通し、収入の見通しが立たずに離農者が出ないか心配がされているわけです。被災者の気持ちに寄り添って、展望が持てる支援が必要だと思います。
 農林水産省は、三月十六日に、大雪による被災農林漁業者への支援対策を出されました。それで、大臣の発言などを聞きますと、離農を防ぐというのはキーワードなんじゃないのかなというふうに思っています。離農を防ぐって全く同感なんですけれども、高齢者や担い手不足と言われる中で、今度の対策が離農を防ぐ対策になるというふうに理解をしてよろしいのでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤健君) この冬の大雪では、御指摘のように、北陸を中心に、五六豪雪以来三十七年ぶりの積雪ということで、また北海道の日高地方でも想定を超える大雪が数日間も継続をするということで、農業用ハウスに大きな被害が発生をいたしました。
 この被害の状況を踏まえて、私の対策を講じるに当たっての基本的考え方は、御指摘のように、被災された農業者の皆様が離農されることがないように対策を講ずるというのを基本的考え方で、省内に指示をしながら対策の立案に当たってきたところであります。
先週十六日金曜日にその対策を公表させていただいたところでありますが、被災したハウスの撤去も含めた農業用ハウスの導入、被害のあった果樹の植え替えですとか、それから収益が生ずるまでの未収益期間に要する経費の助成ですとか、そういった対策を決定をいたしたところであります。被災された農業者の皆様が離農されることなく、この支援対策を活用していただきたいと考えておりまして、対策の内容をしっかり説明をして、お使いをいただきながら、一日も早く営農再開ができるように全力で取り組んでまいりたいと思っておりますが。
 なお、やはり施設園芸に大きな被害が出たわけでありますけれども、やはり施設園芸を営む農業者の皆様には、農業用ハウスは経営に不可欠な生産施設であるということを改めて認識していただいて、これからも甚大な自然災害が起こり得るということで、自ら備えていただく観点からも園芸施設共済に是非とも加入をしていただきたいなというふうに考えておりまして、この点についても、あらゆる機会を通じて皆さんにお訴えをさせていただきたいと考えているところであります。

○紙智子君 今回、経営体育成支援事業の優先枠というお話も聞いていますし、農業次世代人材投資資金の前倒しということも加わっているということでよろしいですか、確認します。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤健君) そのとおりでございます。

○紙智子君 離農を防ぐということではっきりおっしゃっていただいているんですけれども、今年の大雪は、今、日高のお話も紹介いただいたんですが、日高地方で大きな被害ということでありまして、大雪の直後、実は前衆議院議員の畠山和也議員も現地におりまして、すぐに現場に行って、党の国政事務所が調査にそこに入ったわけなんですけれども、二月五日、六日の両日で積雪が四十三センチに達したと。日高でいえば統計開始以来で最も多かったということなんですね。海岸沿いなんでいつも雪降らないんですけれども、それがどっと来たということで。
 日高というのは、御承知のように軽種馬のところでありまして、軽種馬だけではもう経営が厳しいという中で町を挙げて園芸に力を入れてきたと、そういうこともあって、若い人が戻ってきて営農を始めているということだったわけですね。訪問した若い農業者が、ビニールハウスの多くが損壊した、除雪が全然追い付いていない、先行きが見通せないということで悩みの声を寄せていただいていたようなんです。町役場も訪問すると、新規就農者が雪害で離農の道を選択してしまわないか本当に心配しているというふうに言われたということなんですね。
 そういう不安に応える対策ということで、先ほど紹介もあったんですけれども、農業次世代人材投資資金、これは、前倒しというのは、初めて前倒しされたんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 大澤誠君) 先ほど大臣から御紹介のありました次世代投資資金の交付時期の前倒しは、今回初めての対策でございます。

○紙智子君 前倒しで初めて若い人たちに向けてということだったと思うんですけれども、それで、経験したことのない大雪で農業施設の解体をどうするか、これ関係者は途方に暮れていて、農業施設の解体も含めて支援する必要があるということで現場からも声が上がったんですけれども、ちょっともう一度確認しますけれども、これは解体も含めてということでよろしいんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 大澤誠君) お答えいたします。
 今回の経営体育成支援事業の優先採択におきましては、ハウスの導入や露地栽培への転換に伴う農地の改良等を支援する際に併せて行う撤去も対象とすることといたしております。

○紙智子君 この経営体育成支援事業において、農業を継続するときには撤去費用も支援するという趣旨だと思うんですけれども、この撤去、建設、いずれの場合も最大で三割の助成、そして通常三百万円の上限を六百万円に引き上げるという、こういうことというのも言われているということで確認してよろしいですか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 大澤誠君) 三割助成については御指摘のとおりでございます。
 六百万円については、特別に地域が認める場合にそういう枠、メニュー、コースも用意してございます。

○紙智子君 ちょっと最後はっきりしなかったんですけど、これはもう一度。

○政府参考人(農林水産省経営局長 大澤誠君) 地域の特認としては六百万円も認められるということでございます。

○紙智子君 離農しないようにということなので、離農する人は対象外ということだと思うんですけれども、やっぱり離農しないようにということでこういう対応だと思うんですね。やっぱり、営農が継続できるような支援をするというのが本当に大事だと思いますので、是非この後しっかりやっていただきたいというふうに思います。
 同時に、離農を防ぐ対策としては、私は更に踏み込んだ対策が必要ではないかというふうに思うんです。二〇一四年に関東を中心に発生した大雪被害に対して、農林水産省が打ち出した被災農業者向け経営体育成支援事業、これを活用することですね。この対策というのは、農家はもちろんなんですけれども、市町村からも歓迎されたんですよ。やっぱり思うんですけど、そういう助かったというか良いことをやると、これ自治体関係や農業者ってよく覚えているんですよね。やっぱり、北海道JAの皆さんが要請しているのは、この被災農業者向け経営体育成支援事業の発動ということなんですよ。北海道以外の地域からも、この事業が使えないのかという問合せが何件も掛かってきているんですね。
なぜこの事業を発動しないんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 大澤誠君) 被災農業者向け経営体育成支援事業につきましては、過去に例のないような甚大な気象災害が発生した場合に、被災した農業用ハウス等の復旧等を支援するために発動するものということでございます。
これにつきましては、実際の発動につきましては、例えば、激甚災害に指定されてかつ農業用ハウス等の被害額が相当の規模になるような場合、大雪の場合にはなかなか激甚災害の指定はございませんけれども、大雪の場合でも、御指摘のとおり、農業用のハウス等の被害額が相当程度に達した場合にこの事業を発動してきたことがございます。
 ということで、過去の被害の実情を見ながら対応していくという運用を行っておりまして、今回の大雪につきましては、農業用ハウス等の被害の状況、あるいはこれまでに起きた災害における対応状況、これを勘案した結果、経営体育成支援事業の優先採択という形で支援することといたしたところではございますけれども、今までにないものも幾つかつくってございます。
 これは、例えば施設、先ほど御質問のありました撤去も対象にすると。これは今まで被災農業者向けだけがそういう対象でございましたが、今回はこの通常の経営体育成支援事業でも撤去も対象とすることといたしました。それから、通常の事業については、融資の要件が融資と同じ額の国庫補助という形で一定の縛りがございましたが、その融資の要件も緩和をすることによりまして、地方公共団体が補助を上乗せしやすくするということになりました。それから、平成二十五年の大雪以降は、園芸施設共済についても補填額が格段に拡充されてございます。今回は、この事業と、それから園芸施設共済、さらには地方公共団体による助成、こういうものも活用して、地方公共団体と連携しながら全力で取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。

○紙智子君 いろんなものを、今あるやつをかき集めて何とかやろうという話だと思うんですけど、この事業が再建、修繕の補助率を十分の三から二分の一に引き上げると、残りの部分に対する地方公共団体の補助に関して、その七割について特別交付税措置を講ずると。これによって、農業者の負担を最小化できる仕組みということで構築をしてきたわけですけど、地方公共団体の補助が十分の四となった場合には、農業者の負担は十分の一になると。つまり、九割補助されるんですよね。
 なぜそこまで当時支援したのかということでいうと、これ要綱によりますと、一つは、過去に例のないような甚大な気象災害により、経営の安定に支障を来す事態が発生しているからだということだったと思うんですよ。
 それで、今回の被害がどうなのかというふうに言うと、全国的に見れば確かにばらつきはありますよね。やっぱり局地的なんですよ。局地的なんだけれども、でも、これ局地ごとに見ると過去に例を見ない被害なんですよ。局地的に見ると過去に例がないし、経営の安定に支障を来す、離農しかねないような事態だと思うんですよ。
 だから、やっぱり、離農を防ぐというためには、この被災農業者向けの経営体育成支援事業、この発動を強く求めたいと思うんですけど、ここはちょっと大臣、お願いします。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤健君) 災害対策におきましては、それぞれ国、県、市町村で対応すべき話だと思うんですね。それで、規模の小さいものはそれは市町村レベルで対応ができるでしょうと。これは、ところが規模がだんだん大きくなってくれば市町村の財政負担では対応できないとか、こういうふうになってくるわけでありますので、規模が大きくなってきて対応できないときには国が出ていきましょうと、これが基本的な考え方なんだろうと思うんですね。
 ですから、あらゆる災害、何でもかんでも国が全部やるんだということではなくて、災害というのは誰の責任で起こったわけでもありませんので、そういう形で大まかな考え方の整理ができているんだろうと思いますので、この被災農業者向け経営体育成支援事業については、そういう過去に例を見ないような大規模なものでとても自治体では対応できないというようなものについて、それじゃ国が出ていきましょうということでつくられている制度だというふうに私は認識をしておりますが、今回のケースについても、今回の被害状況を見ながら、かなり今までと違った特別なものも組み込んでおりますので、これを最大限活用をしていただければ有り難いなと考えているところでございます。

○紙智子君 国としては精いっぱいやっているということなのかもしれませんけど、被害に遭った方から見れば、これ本当に大変な、このままだったらやっぱり溺れてしまうということだと思うので、やっぱり離農を防いで安心して営農できるようにするように対策は必要だと思うし、予算の問題ということでいえば、やっぱりTPP対策で補正に組んだ三千億とかあるわけだから、それを例えば緊急的に真剣にそれを活用するなんということも考えるべきだというふうに思うんです。
 引き続き検討していただきたいということを申し上げて、次に移りたいと思います。
 それで、種子法、先ほど来質問がありましたけれども、この種子に関しての事務次官通知についてお聞きしたいと思います。
 昨年の通常国会において、主要農作物種子法が廃止されました。理由は、民間事業者が参入できないからだと。農協法や農業委員会の改正と同じように、現場の意見を聞かない安倍政権の姿勢を象徴する廃止だったと思うんですね。今、各地で種子法の廃止後の対応どうするのか検討が進んでいます。種子法を廃止しなければこんな事態にならなかったわけですけれども、農政に対する不信にもなっていると。
 種子法の廃止後、昨年十一月に、稲、麦類及び大豆の種子についてと題する事務次官通知が出されました。今後は、法律上の根拠もないのに行政指導で都道府県に圧力を掛けようというような、通知の中身というのは驚くべき内容なんですね。初めにこの経過の説明があるんですが、そこでは種子の開発、供給体制が地方公共団体中心のシステムで、民間の品種開発意欲を阻害しているのが主要農作物種子法だ、だから廃止したと書かれているわけです。そして、種子法の廃止後の都道府県の役割として、民間事業者による稲、麦及び大豆の種子生産への参入が進むまでの間、種子の増殖に必要な栽培技術等の種子の生産に係る知見を維持し、それを民間事業者に対して提供する役割を担う、役割を担うと書いているわけです。
 通知は技術的な助言だと言っているんですけれども、それなのに役割を担うといって役割を規定するんでしょうか。廃止して根拠法もないのに行政指導でここまで書くというのは、地方自治への介入になるんじゃありませんか。大臣。

○政府参考人(農林水産省政策統括官 柄澤彰君) 今般、十一月に発出しました通知につきましては、種子法の廃止に至りました経緯ですとか、それから今後の種子法廃止後の新たな枠組みなどにつきまして関係者に私どもの考え方を分かりやすく記述しているところでございます。
 今御指摘がございました都道府県の役割につきましては、この通知の中で、種子法廃止後の都道府県の役割ということで一固まりの記述を設けておりまして、そこのパートにおきまして、例えば、「都道府県内における稲、麦類及び大豆の種子の生産や供給の状況を的確に把握し、それぞれの都道府県の実態を踏まえて必要な措置を講じていくことが必要」というようなことですとか、「必要な場合には、都道府県段階における稲、麦類及び大豆の種子の安定的な供給や民間事業者の参入の促進を行うための協議会を設置すること等により、情報の共有、課題の解決策の検討を行うことも考えられる。」というようなことで都道府県の役割を位置付けているところでございます。

○紙智子君 必要なんだったら、やっぱり法律に基づいて国の役割を明確にするべきなんだと思うんですよ。
 すごく不思議に思うのは、主要種子法の廃止に伴って従来の通知を廃止すると書かれているんですね。通知は四つあると。主要農作物種子制度運用基本要領、主要農作物種子制度の運用について、それから一代雑種稲種子の暫定審査基準等について、もう一つが主要農作物に係る指定種苗制度の運用についてと、この四つについては廃止すると。この通知を廃止するけれども、参考にされたいというのがその後から出てくるわけですよ、従来の通知参考にされたいと書いているわけですよ。
 その上、新たに事務次官通知を出すと。都道府県を、言ってみれば、これ通知でがんじがらめにしているというふうに思うんですけれども、見解を伺いたいと思うんです。

○政府参考人(農林水産省政策統括官 柄澤彰君) 今御指摘がございました従来までの要綱等の通知につきましては、いずれも当然のことながら種子法の存在を前提として構成されているわけでございます。したがいまして、種子法廃止後においては構造的にもう成り立たないということで、今般の新しい通知に切り替わるということで、これは廃止するということにしているわけでございます。
 一方、これまでの通知の中身につきまして、法律を前提にしたところもございますけれども、例えば都道府県が引き続き行う部分もあると思われます奨励品種の決定ですとか圃場の審査、生産物の審査、あるいは原種、原原種の生産のための基準というような部分につきまして、種子法廃止後においても今後の都道府県における業務の実施に当たって参考にしていただける部分もあるのは当然事実でございます。
 こういった観点から、今般の通知におきまして、「従来実施してきた業務を実施する場合には、必要に応じて、従来の通知を参考とされたい。」というふうにしているわけでございまして、特段矛盾するものではないというふうに考えております。

○紙智子君 何回聞いてもおかしいと思うんですよね。もう現場を混乱させるだけだと思いますよ。
 地方自治の介入だけじゃなくて、さらに、稲、麦類及び大豆の種子の品質の確保と題して、検査の在り方を変えると書かれています。従来は都道府県が指定した稲、麦類及び大豆の種子圃場に限っていた品質の確認をやめると。従来は都道府県による流通前の全ロットでの審査及び証明書の発行によって品質確認を行っていたけれども、これもやめると。なぜ従来行っていた品質確認をやめるんですか。

○政府参考人(農林水産省政策統括官 柄澤彰君) 種子の品質の確保に関して、従前の枠組みと今後の枠組みを比較して申し上げたいと存じます。
 従前、種子法に基づく状況の中では、種子法に基づく告示がございまして、これは主要農作物種子法第四条第五項の農林水産大臣が定める基準というものがございました。従前はこの基準に基づきまして、都道府県が指定された稲、麦類及び大豆の種子生産圃場で生産する種子に対象を限っておりまして、その種子につきまして、栽培段階では圃場審査を、種子の現品となる段階で生産物審査を実施するということをやってまいったわけでございます。
 今後、種子法廃止後におきましては、稲、麦類及び大豆の種子の品質の確保は、種子に関する実は一般法の種苗法という法律があるわけでございます。今後は、この種苗法に基づく告示、これは指定種苗の生産等に関する基準というのがございまして、この種苗法に基づく基準に、今後、稲、麦類、大豆の種子を位置付けるわけでございます。
 そうなりますと、実は、都道府県の種子のみならず、民間事業者が生産する種子も含めた流通する全ての種子が対象になりますし、流通する種子の検査によって確認が行われるということになりますので、前後を比較した場合に、従前と同水準の品質基準による品質の確保が図られると同時に、都道府県が供給する種子のみならず、民間事業者が生産する種子についても全て品質が確保され、全体として良質な種子の流通が図られるというふうに考えているところでございます。

○紙智子君 要するに、今まで圃場で品質の確認、入口規制だったんだけど、今後は出口管理に変わるんじゃないですか。そして、販売段階で抜き打ち検査になるんじゃないですかね。事前検査をやめて事後検査にすると。しかも、販売段階での抜き打ち検査はサンプル検査。これ、粗悪品が出回らないかというふうに心配になるわけです。品質の信頼性が後退するんじゃないですか。これ、出口管理ですよね。確認します。短くお願いします。

○政府参考人(農林水産省政策統括官 柄澤彰君) 種苗法は、今現在も野菜、果実等の種子の品質管理を担っているわけでございまして、そのやり方というのは、おっしゃるとおり、流通過程の種子を検査、確認するということになりますが、一方、その出口におきまして、種苗法上、農林水産大臣の勧告ですとかあるいは公表という種子法にない手段も規定されているところでございます。

○紙智子君 結局、品質に対する信頼性を崩すことになりかねないと思います。
 今日は総務省にも来ていただいているんですけれども、地方交付税措置について聞きます。
 総務省は、二〇一八年の一月二十五日に、平成三十年度の地方財政の見通し、予算編成上の留意事項等についてと題する総務省自治財政局の財政課事務連絡を出しました。予算編成上の留意点に、種子法の事務については種苗法等に基づき従前と同様に実施するとされることから、当該事務に要する経費については引き続き地方交付税措置を講ずることとしているとあります。
 そこで、具体的な事務についてお聞きしますけれども、ちょっと配付資料あります、一枚物ですけれども、これ抜粋したものなんですけれども、平成二十九年度地方交付税制度解説から抜粋しました。地方交付税の単位費用の算定基礎になるものです。主要農作物種子法等に関する事務が具体的に書かれていて、行政事務内容ごとに根拠法令が書かれているんですね。(7)、指定種子生産圃場の指導に関する事務、根拠法令はその横に書いてありますけれども、主要農作物種子法とあります。種子法が廃止になるわけだから、これからはこれ何が根拠法になるのでしょうか。

 地方交付税資料(種子法)

○政府参考人(総務大臣官房審議官 境勉君) お答えいたします。
 これまで、主要農作物種子法に基づきまして都道府県が実施することとされております圃場審査、生産物審査の実施や、原種圃、原原種圃の設置などに関する事務に要する経費につきましては、この資料にもございますが、地方交付税措置を講じてきているところでございます。
 御指摘のとおり、平成三十年度に主要農作物種子法が廃止されることとなりますが、先ほど御説明にもございましたが、都道府県は引き続き、圃場審査などに関する事務につきましては種苗法に基づきまして、また原種圃、原原種圃の設置などに関する事務につきましては農業競争力強化支援法に基づきましてそれぞれ従前と同様に実施することとされておりますので、これらの事務に要する経費につきましては引き続きこの新しい根拠法律に基づきまして地方交付税措置を講じることとしたいと考えているところでございます。

○紙智子君 種苗法というんだけど、主要農作物種子法には第三条に圃場の指定という規定があるんですね。種苗法には圃場の指定という条文があるんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省政策統括官 柄澤彰君) 種苗法自体には圃場の指定という規定そのものはございません。

○紙智子君 ないわけですよね。種苗法は、品種の育成の振興と種苗の流通の適正化を図っているというだけで、圃場の指定というのは定めていないんですよ。
 行政事務の内容を一つ一つこれ何が根拠になるのかということを説明しなきゃいけないんだと思うんです。全部これ時間がなくなっちゃったので確認できませんけれども、(10)の主要農作物の原種圃及び原……(発言する者あり)原が足りないな、済みません、設置に関する事務、根拠法は種子法になっていますけれども、これ、根拠法は今度何になるんですか。

○政府参考人(農林水産省政策統括官 柄澤彰君) 私どもが承知している限り、今後の体制におきまして、多くの都道府県におきまして種苗法を根拠といたしますけれども、その種子の品質のチェックにおきまして、従来から用いられている圃場審査や生産物審査に準じた手法を用いられるところが多いということを聞いておりますので、恐らく総務省におかれましてはそういったことも勘案された措置だというふうに理解しております。

○紙智子君 根拠法ないんですよ。だから、これなくなったら、廃止したら、何に基づくんですか。根拠法を聞いたんです。

○政府参考人(農林水産省政策統括官 柄澤彰君) 根拠法としては、先ほど来申し上げていますように、種苗法ということでございますが、その品質の確認についていろいろな実質的なやり方があるというふうに理解しております。

○紙智子君 あのね、よく分からないんですよね。何回もちょっと、この書き方じゃよく分からないと。
 農業競争力強化支援法にあるので、それに基づいて同様にやると言ったんだけど、実際に競争力支援法を見ると、その条文というのは八条になると思うんだけど、その中には書いていないんですよ。中に書いていないんですよ。それでやれるのかと。支援法は知見の提供を求めているだけで、原種とか原原種などの設置規定はないんですよね。
 だから、本当にいいかげんなんですよね、全くいいかげんだと思います。根拠法令がなかったら事務が発生するかどうか分からないわけだし、今、都道府県では、条例を作る県もあれば作らない県もあると。今までも条例がない県があったけれども、種子法という法律があったから地方財政の措置がとられてきたわけですよ。根拠法がなくなって条例も作らない県が出てきたら、今まで、現在の体制が維持されるかどうか分からなくなるわけですよね。
 大臣にお聞きしますけれども、この現場が混乱するようなことを農水省がやっていいんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤健君) 現場の混乱を招くようなことをやってはいけないと思いますが。
 本件は、法案の審議の際にも随分と御議論があったというふうに承知をしております。つまり、根拠法がなくなったら今までやっていた交付税の措置がなくなってしまうのではないかという議論をさんざんした上での附帯決議も決めていただいた上で、その附帯決議を重く受け止めて、総務省の方で根拠規定がなくても支障がないように交付税措置をするということを決断をしていただいて、今日に至っているということであります。
 説明が不十分だったり下手だったりする部分についてはおわびを申し上げますけれども、そういうことでございますので、今後この法律が廃止されてこの交付税措置がなくなってしまうとかいうことがないように、附帯決議を踏まえてきちんと対応していきたいということに尽きると思います。

○紙智子君 ちょっと時間になりましたけど、もう本当によく分からないんですけれども、法律上の根拠がなかったら地方交付税を算定する理屈が成り立たないわけですよね。ですから、総務省任せにするんじゃなくて、農産物の生産にとって欠かせない種子にやっぱり政府が責任を持つべきだということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。