<第196回国会 2018年3月22 日 沖縄及び北方問題に関する特別委員会>


◇沖縄の基地負担軽減について、大臣の認識を問う/沖縄振興予算や一括交付金の減額についてただす/基地経済の依存度をゼロにし、沖縄の自立的な経済発展を求める

○沖縄及び北方問題に関しての対策樹立に関する調査
(沖縄及び北方問題に関しての施策に関する件)

紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 まず、福井大臣に沖縄の振興と基地問題についてお聞きいたします。
 大臣は、三月三日、沖縄県で翁長知事と会談をされました。翁長知事は、相次ぐ米軍機事故を踏まえて、米軍基地負担の軽減を要求し、普天間基地の名護市辺野古沖への移設断念などを求める要望書も手渡しをされたと思います。その際、福井大臣は基地問題に触れなかったということが報道されているんです。
 大臣は、就任後の記者会見で、沖縄の発展のために、特に基地負担の軽減を始めとする基地問題への対応、沖縄振興策の推進を総合的に取り組み、推進すると述べられています。なぜ翁長知事から直接この米軍の基地の負担軽減の要望があったときに基地問題に触れられなかったんでしょうか。

国務大臣(内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策) 福井照君)
 今先生御指摘のように、三月三日、着任後、可能な日の最初の日に訪ねさせていただきまして、もう翁長知事とは一昨年の八月以来、世界津波の日高校生サミット、あるいは交通問題につきまして親しく御相談をさせていただいておりましたので、いきなりの突然の御陳情ではなく、従前からの陳情も含めまして、もちろん新しいものもありましたけれども、親しく御指導いただきました。
 私としては、沖縄の振興を推進する立場であり、翁長知事との面会においては沖縄振興に全力で取り組む方針などを伝えさせていただいたところでございます。
 翁長知事からいただいた基地問題に関する要望につきましては、関係省庁に伝達しており、沖縄の基地負担軽減のため、県民の皆様の思いを深く受け止めながら、関係省庁と連携の上、最善を尽くしてまいる所存でございます。
 なお、念のために、その一つ前の基盤の基本的なスタンスでございますけれども、沖縄には米軍基地の多くが集中して県民の皆様にとって大きな負担となっていることから、引き続きこれを軽減することが重要な課題と認識をしております。
 安倍政権は、空中給油機の本土への移駐など、一つ一つ着実に沖縄の基地負担の軽減の成果を積み重ねてきているわけでございます。普天間飛行場の移設を始めとする沖縄の基地負担軽減に係る政府の取組については、沖縄の皆様方に説明を尽くす、説明を尽くす努力を継続していく必要があると考えているところでございます。


紙智子君 大臣は、基地問題と沖縄振興策の推進を総合的に進めるというふうに述べられたわけですよね、記者会見でね。この公約が実現されるかどうかというのは、知事を始め国民は注目しているんだと思うんです。
 そこで、二月二日に衆議院の予算委員会で沖縄の基地の負担軽減について議論がありました。安倍総理は、日米間の調整が難航したり、移設先となる本土の理解が得られないなど、様々な事情で目に見える成果が出なかったのが事実だというふうに述べたんです。
 これ、目に見える成果が出ていないというのは、これは大臣も同じ認識なんでしょうか。

国務大臣(内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策) 福井照君) 
 今おっしゃいました二月二日、衆議院の予算委員会における安倍総理の御発言でございます。今先生おっしゃった部分も含めて、ちょっとレビューさせていただきたいと思います。
 戦後七十年以上を経た今もなお、沖縄の皆さんには大きな基地の負担を背負っていただいておりまして、今、安倍総理の発言をもう一度レビューさせていただいております。背負っていただいておりまして、この事実を我々は重く受け止めておりますし、現状は到底是認できるものではないというのが安倍政権の考え方であります。
 沖縄の基地の負担軽減につきましては、これも振り返ってみれば、様々なプランを考えても、日米間の調整が難航したり、移設先となる本土の理解が得られないなど、様々な事情でなかなか目に見える成果が出なかったのが事実でございます。まあ、過去のレビューだというふうに思い、このパラはそう思います。
 しかし、ですから、しかし、ですから、だからこそ、しっかりと一つ一つ結果を出していくことが大切であろう、我々はこう考えたわけでございまして、七年越しの課題であった嘉手納基地以南の米軍基地の返還について日米首脳会談で私からオバマ大統領に直接協議をして、面積にして約七割の返還について日米合意に達したわけでありまして、この計画の一つである西普天間住宅地区の返還が既に実現をしておりまして、今後、健康医療拠点として活用することを目指しているところであります。また、宜野湾市の市道を全線開通させまして、交通渋滞を緩和する計画を一部前倒しをし、普天間飛行場の一部土地の返還を実現しました。
 このように我々は一つ一つ結果を出してきているわけでありますが、今後もしっかりとこの負担軽減に取り組んでいきたいと思います。
 この総理の発言の全体が全てだと考えております。

紙智子君 要するに、目に見える成果が出ていないというふうに言ったのは大臣も同じということですよね、そういう意味では。一つ一つ解決をしていくんだという話だったと思うんだけれども、私、なぜ目に見える成果が出ていないのかということなんですよね。
 それは、やっぱりオスプレイの事故を取っても、基地があることで危険になるというふうに多くの人が思うわけですし、私が住んでいる北海道でも、これまで沖縄の負担軽減だといって、矢臼別というところありますけれども、ここに移転して行われている実弾射撃訓練、これ当初、移転するときに、沖縄と同質同量でというふうに言ったんですよ。それで、負担軽減だからといって北海道に持ってきたんだけれども、そういいながら、今はクラスター弾とか白燐弾とか、沖縄でもやっていなかったような訓練が行われているんですよ。
 だから、約束まで守られていないし、そういう不信感もある。事故が起きるんじゃないかという不安もあると。沖縄では、翁長知事が言われているように、事故が相次いでいるわけですよ。もう相次いでいて、しかも米軍はまたすぐ飛ばすわけじゃないですか。沖縄の人から見たら、本土の理解が得られていない、そういう危険な基地を沖縄で受け入れて我慢せよというのかと。本土の理解が得られていないものは沖縄だって得られないんですよ。
 だから、この際、やっぱり本土でも沖縄でも理解が得られないようなやり方は見直すべきではありませんか。

国務大臣(内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策) 福井照君) 
 繰り返しになりますけれども、安倍政権は、空中給油機の本土への移駐など一つ一つ着実には、今先生からも引用していただきました、一つ一つ着実に沖縄の基地負担の軽減の成果を積み重ねてきているということでございます。
 なお、飛行機の安全については、これは基本であるというふうにもう一度申し上げさせていただきたいと思います。

紙智子君 全然軽減にはなっていないと思いますよ。辺野古の基地建設に対しての反対の審判ということで言えば、もう沖縄では既に決着付いていて、もう選挙の度にノーだということが出ているわけで、沖縄の皆さんと、それから本土も含めて新基地建設は反対という連帯も今広がっていますよ。そういう方向でこそ、やっぱり沖縄でも本土でも理解が得られる道なんだというふうに思います。そのことはちょっと指摘しておきたいと思います。
 それから、振興予算の問題についてなんですけれども、これ、平成三十年、二〇一八年度は三千十億円、これ前年比で百四十億円減と減額しています。一括交付金は百七十億円の減で一千百八十八億円と。総額では二年連続で、一括交付金でいえば四年連続減額なんですよね。平成二十四年度の創設以来最低になっているわけです。
 翁長知事は、三千億円台が確保されているんだけれども総額については前年度を下回っていることや、増額を求めていた一括交付金については県や市町村の切実な要望が反映されなかったことは極めて残念だというふうに述べているんですね。
 それで、大臣は、知事の政治姿勢が直接振興予算にリンクすることはないというふうにおっしゃっているんですけれども、実態見ると、これやっぱりリンクしているんじゃないかと言われても仕方がないんじゃないでしょうか。

国務大臣(内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策) 福井照君)
 一括交付金につきましてもう一度整理をさせていただきたいと思います。平成三十年度予算案において一括交付金は対前年度で百七十一億円の減となったところでございます。先ほど言及をしていただきました。これは、沖縄県が作成している平成二十九年度の事業計画上、平成二十九年度に終了する事業が百九十五億円あったことなどを勘案したものでございます。
 現下の国の厳しい財政状況の下ではありますけれども、一括交付金について依然として千百八十八億円を確保しておりまして、所要額が確保されたものというふうに認識をしております。

紙智子君 これ、グラフにしてみると一目瞭然なんですよね。仲井眞前知事のときに、辺野古を受け入れた後に一括交付金が増えたんですよ。で、二〇一四年に知事選があって、翁長知事に替わってから連続して四年間減額されているんですよ。だから、沖縄県がやっぱり辺野古の新基地建設に反対しているからこんなふうになっているんじゃないかというふうに言われても仕方がないんじゃないか。
 しかも、二月の名護市の市長選挙の結果を受けて、稲嶺市長時代に受け取っていなかった、これ防衛省の予算ですけれども、米軍再編交付金を二〇一七年度分から再開して、再生交付金を役立ててもらいたいというように言っているわけで、これは明らかに辺野古への新基地建設を容認してほしいという新市長に対するメッセージと受け取れるんですね。
 リンクさせていないというふうに言うのであれば、やっぱり振興予算や一括交付金を元の仲井眞前知事の時代に戻すべきじゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

国務大臣(内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策) 福井照君) 
 今先生御心配の、政治的な姿勢と予算の総額とのリンクはないものというふうに認識をしております。

紙智子君 ないと言うのであれば、元に戻したらどうですか。

国務大臣(内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策) 福井照君) 
 一括交付金の減額、先ほども申し上げました百七十一億円の減額につきましては、沖縄県が作成している平成二十九年度の事業計画上、先ほど申し上げましたように、繰り返しになりますが、平成二十九年度に終了する継続事業が百九十五億円ある、二十九年度に終了する事業の金額が、予算が百九十五億円あるということなどを勘案したものでございまして、残る事業の所要額は確保されたものというふうに認識をしております。

紙智子君 やっぱり、現場ではいろいろ要望があったんだけど、それを求められなかったということを非常に残念に思っているということですよ。
 それから、基地経済についても一言触れたいんですけれども、沖縄県の経済と基地問題を切り離すことはできないと思うんですね。かつては基地中心であった沖縄経済も、今は観光やリゾート産業などが大きく成長していると。そして、基地への依存度も、復帰当時は一五・五%だったのが五・七%台まで低下していると。ところが、平成二年、約五%台のこの依存度、これが実は三十年近くずっと五%台のまま停滞しているということなんですよね。
 ですから、基地経済への依存度がこの五%台から下がらないで三十年近くも変化していないというのはなぜなんだろうかと。素朴な疑問なんですけれども、これはいかがでしょうか。

国務大臣(内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策) 福井照君) 
 本土復帰直後、昭和四十七年度直後の県民総所得に占める軍関係受取の割合は確かに一五・五%でございました。それが、昭和五十七年度には七・四%になりました。そして、昭和六十一年度には五・六%になりました。その後、現在に至るまで五%前後で推移しているところでございます。
 これは、復帰後十年間で軍関係受取の占める割合が大きく低下した理由は、沖縄経済全体が急激に成長したためでございます。 その後、軍関係受取の占める割合が五%前後で推移している理由は、復帰直後に比べますと沖縄経済の成長が緩やかになっているためと認識をしてございます。
 沖縄経済を着実に成長させていく観点から、私といたしましては、沖縄の自立型経済構築への道筋を確かなものとして、さらには、沖縄が日本のフロントランナーとして経済再生の牽引役となるように、那覇空港の滑走路増設、クルーズ船の受入れ環境整備などを通じた観光振興、アジア主要都市を結節する国際物流拠点の形成などを国家戦略として総合的、積極的に推進してまいりたいというふうに存じているところでございます。

紙智子君 ちょっと答えになっていないなと。聞いたことに違う答えになっているなというふうに思います。
 沖縄県のこの米軍基地の返還が進展すると、効果的な跡地利用によって経済発展はもっと進むと。だから、基地の経済への依存度はもっと低下するというように沖縄県は分析をしているんですね。沖縄県の自立的な経済を進める上でも、この米軍基地をなくし、基地経済への依存度をゼロにしていくということが必要だと。
 安倍総理は、二〇一四年に努力するというふうに述べている普天間基地の飛行場、五年以内の運用停止期限というのは、来年、二〇一九年の二月に迫っているわけです。来年返ってくるのかどうかと。来年、普天間飛行場がこれ返ってこない、返還されないってことになったら、沖縄県が策定している二十一世紀ビジョンの基本計画というのは、これは実現することが難しくなるんじゃないでしょうか。沖縄の自立的な経済の発展を政府がこれ邪魔することになるんじゃありませんか。いかがですか。

国務大臣(内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策) 福井照君) 
 沖縄県が策定いたしました沖縄二十一世紀ビジョン基本計画、沖縄振興計画におきまして、御指摘のような記述があることは承知をしてございます。
 沖縄には米軍基地の多くが集中しております、七〇・三%集中しております。県民の皆様にとってとてつもなく大きな負担となっていることから、引き続きこれを軽減することは重要な課題と認識をしております。
  普天間飛行場の移設を始めとする沖縄の基地負担軽減に係る政府の取組につきましては、沖縄の方々に説明を尽くす努力を継続していく必要がございます。私どもといたしましては、引き続き沖縄の振興策を推進する立場で、基地の跡地利用の推進など、沖縄振興に努力し、邁進してまいりたいと思います。
 お尋ねの普天間飛行場の五年以内の運用停止が難しい状況になっていることにつきまして、普天間飛行場の五年以内の運用停止の実現につきましては、辺野古移設について地元の御協力を得られるということが前提であると承知をしております。
いずれにしましても、普天間飛行場の固定化は絶対に避けなければならないという方針の下、同飛行場の全面返還を実現するため、引き続き全力で取り組むというのが政府の考えでございます。
 私どもといたしましても、引き続き沖縄の振興策を推進する立場で、基地の跡地利用の推進など、沖縄振興に努力して邁進してまいる所存でございます。

紙智子君 もう全然なんか魂が入っていないんですよ、答弁に。

委員長(石井浩郎君) 時間が過ぎておりますのでおまとめください。

紙智子君 それで、辺野古は駄目だって現地で言っているじゃないですか。やっぱりこういう、来年本当は返還すべきものも返ってこないということになったら、沖縄の振興を進める立場の大臣としては言っていることとやっていることが違ってくることになるわけで、この問題、引き続き質疑させていただきたいと思います。
 質疑終わります。