<第195回国会 2017年12月5日 農林水産委員会>


◇コメの直接支払い交付金と減反(国による生産調整)廃止方針を見直すよう要求/食料自給率37・57%に低下した主な要因は農家の基盤の弱体化にあると指摘/発効要件を下げたTPP11、自由化路線やめよ/ビキニ核被災、核実験時の水産庁の対応委ただす

○農林水産に関する調査

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 六月十五日以来、半年ぶりの農林水産委員会ということです。通常国会の閉会後、日欧EPAがあり、日米の経済対話など農林水産業に大きく関わる通商交渉が行われました。また、農林水産省が所管する獣医師をめぐっても、加計学園、これは総理の御意向で認可されたんじゃないかという疑惑が消えていないと。それから、米の直接支払交付金、戸別所得補償制度や減反の廃止、そして種子法の廃止を始め、政府が進める農政の多くの不安や意見をこの間聞いてきました。山積する課題を議論するのが国会なわけです。政府は国民の声、野党が求めてきたこの国会開会要求に応えず、衆議院を解散をして総選挙を行って、多数を得るや否や、これ国会でまともな議論もないまま、TPP11は大筋合意したというふうに表明をしました。
 一方、国会の議論が行われていない中で、政府の規制改革推進会議は、この農林漁業に対して相変わらず介入を続けていると。こういう政治のありよう、農政の進め方について、多くの国民や農林漁業の関係者からはおかしいという、そういう声が掛かっています。
 そこで、齋藤大臣に、農林関係者、国民をやっぱり置き去りにしたような農政は改めるべきではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤 健君) まず、国会の召集ですとか衆議院の解散につきましては私の立場からコメントすることはできないわけでありますが、ただ、私が置かれた環境の中で、今御指摘ありましたように、農林水産委員会の皆様とも真摯な議論をさせていただいて、私の職責を果たしてまいりたいと、そう思っております。

○紙智子君 日本農業新聞のモニター調査というのが夏にありましたけれども、その調査では、官邸主導の農業政策は評価しないというのが七八%ですから、今の農政に対する不信というのは本当に大きいものだということを是非認識をいただきたいと思います。
 今日は、米の直接支払交付金の廃止や食料自給率、そして歯止めなき通商交渉などについて時間の範囲でお聞きしたいと思います。
 まず、米の直接支払交付金、戸別所得補償制度の廃止ですけれども、私もあちこち回って歩いたんだけれども、どこを回っても、これ、廃止への不安の強さ、存続を望む意見というのを聞くわけです。
 北海道のある農協は、廃止によって約四十億円から七十億円影響が出るんだということが言われました。北海道のJA中央会は、中核的な担い手で百二十万円以上の農業所得が減少するというふうに言っています。それから、群馬県に行きましたら、十年前に品目横断対策のときに集落組織を相当頑張ってつくったと、個人の単位でいうと四ヘクタールぐらいの人たちが恐らくやめていくんじゃないのかということが言われました。集落の維持が難しくなると、農家所得が減ればいろんな影響が出てくるというふうに言われました。それから、先日は新潟に行ったんですけれども、新潟で米を二十ヘクタール作っている、これは有機で半分作っている人なんですけれども、その大規模農家は百万円の減収になるんだというふうに言われました。
 米の直接支払は、これ減反に参加していた農家に支払われるものですから、米生産に限定されるということですね。米の直接支払交付金を廃止するということは、これ農業者に米生産から撤退を迫ることになるんじゃないのかなと思うんですけど、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤 健君) 先ほど来答弁申し上げておりますように、これからお米の需要がどんどん減っていく中で、いかにして水田は維持していかなくてはいけないという発想の中で、いかなる政策を講じていくのがいいかということを我々は突き付けられているんだろうと思っております。
 その中で、来年、米の直接支払交付金については廃止をして、それから米の国による生産量の配分というものは廃止をするということにしておるんですけれども、これも繰り返し答弁させていただいておりますように、水田をフル活用していくという観点からは、食べるお米の需要が減っていくのであれば戦略作物の生産にシフトをしていただいて、飼料用米を含めて、水田が有効に活用されるように誘導していって、さらに所得も確保できるような水準の助成をさせていただくということで、この人口減少、米の需要減少に何とか対応していこうという政策であります。
 したがいまして、これによりましてお米の所得が大幅に減って撤退をしていくということを目指してやっている政策ではなくて、むしろその逆でありまして、私たちとしては、その需要に応じた生産をしていただき、さらにプラス、水田を活用していただくという、その二方面の政策によりまして、農家の所得それから生産基盤の維持というものを維持していきたいという考えで進めているということでございます。

○紙智子君 今、政府は、米の生産は需要のある業務用米作ればいいという話をずっとしています。これで本当に意欲ある担い手が育つのかなと思うんですね。
 十アール当たりで七千五百円の交付金を廃止すると、これは生産者米価に直しますと六十キロ当たりで八百円ぐらいの引下げになるわけです。政府の手で米の下支えをなくすと、今給与法の審議もされているんですけれども、国家公務員の給与を政府の手で減らすとか、あるいは民間でいうと労働者の賃下げを迫るような話なんですね。政府・与党の政策は、農家の所得倍増と言ってきたと思うんですよ。その政策に反する政策ではないかと。
 農業者は、戸別所得補償制度、創設当時でいうと十アール当たり一万五千円だったわけです。これで赤字だった経営を何とか立て直したり、農業機械の更新をしたり、施設の整備を行ったり、あるいは生活面でも子供の教育ローンをこれで組んでやっていこうとかいうことで計画作ってきたわけだけれども、安倍政権は廃止するということは前から言ってたじゃないかというふうに言うかもしれないけれども、既に組んだローンは払い続けなきゃいけないということがあるわけです。
 ですから、今資金繰りをどうするかとか、今後何を作るかと、多くの皆さんが悩んでいる状況にあると思うんですね。先日行われた政府の食糧部会でも、廃止は打撃だという声が出ていたと思うんですよ。米の直接支払交付金の廃止というのは、事実上これ政府の手で賃下げを行うことになることと同じじゃないかと。
 農水省は、水田活用交付金などを使って需要のある分野にシフトしてもらうんだと、生産コストは削減していただきたいということを言っているんだけど、この米の生産というのはもう赤字なんです、既に。生産費の方が高く付いているわけですから。だから、赤字だから農業者は、その意味では努力は、コスト削減の努力は既にやってきているんですね。
 政府の農業政策の目玉というのは所得倍増だというふうにずっと言ってきたわけで、ですから、是非大臣のお言葉で、米の生産者に対して、米の直接支払交付金を廃止しても米農家の所得を減らすことにはならないんだということを強くメッセージ出していただきたいと思うんですけれども、どうでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤 健君) 答弁は多分繰り返しになると思うんですけれども、これからお米の需要が人口減少に伴ってかなり大幅に減っていくことが望むと望まないとにかかわらず現実として起こってくると。そういう過程の中において、お米の生産をどういうシステムの中で需給を合わせていくかということが今問われているわけでありますし、同時に、水田をきちんと活用しておこうと。食べるお米の生産量が減るに伴って水田もなくなっていくということは何としても回避をしていかなくてはいけないということで、主食米の生産が需要に応じてどうしても減っていく中で、水田を維持し、なおかつ農家の所得を維持していくというためには、戦略作物の生産、特に飼料用米の生産によって、そしてそこに、生産に助成をすることによって水田を確保しながら何とか農家の所得を確保していこうと。そういう展開をしているわけでありますので、我々がその手を離して農家の所得がどんどん下がっていくのを放置しているということではありませんので、是非そのトータルの絵姿の中で御理解をいただきたいなと繰り返し申し上げさせていただきたいと思います。

○紙智子君 米は主食なわけですよね。それで、米の直接支払交付金は、生産者米価で生産費を賄えないと、赤字で米を作っても俺たち米食えないぞというような悲鳴が上がっていたからこそできたものだと思うんですね。今、政府は農業者に対して、需要があるものを作れと、コストを削減せよと自助努力を求めているんですけれども、米の生産者の所得を確実に増やす政策、手だてというのはないんですよ。この状況だとやっぱり離農者が増えかねないと思うんです。
 加えて、減反政策の廃止についてもお聞きしますけれども、政府は米の減反政策を廃止するわけですね。生産者は、需給調整できるのか、価格が安定するのかということでは疑心暗鬼の状態に今あるんです。
 政府は、需給見通しは公表しますと、細かくやるんだと言っている。各県は、農業再生協議会で生産ビジョンを作って現場に周知しますというふうに言っているんですね。それはいいですよ。だけど、一体どこが需給調整するのかということですよ。調整するところないんですよね。市場価格任せになるんじゃないのかと。農産物は生産者よりも業者の方が力が強いわけです。買いたたきがあるという話もある。需給調整の機能がなかったら、米がだぶつけば、これ買いたたきに遭うわけですね。そして、米が不足するときとか、あるいは国内の米価が高いときはSBS米などの輸入米にシフトするんだと思いますよ。
 ですから、政府は米の需給と価格の安定に責任を持つと、このことがやっぱり主食である米の安定生産につながるし、農家の所得を増やすことにつながるんじゃないんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤 健君) これも繰り返しになって恐縮なんですが、米政策につきましては、三十年産米から米の直接支払交付金及び行政による生産数量目標の配分が廃止されますけれども、引き続き需要に応じた生産を通じて米の需給及び価格の安定を図っていくということは重要であるという認識をしておりまして、ただ、そこから先の手法において恐らく見解の相違があるんだろうと思っております。
 私どもは、どんどん需要が減っていく中で、皆さん方に配分する生産量というものがどんどんどんどん減っていくということは、いずれどこかでこれは破綻をしていくというふうに思っておりますものですから、そうなる前に需要に応じた生産をしていくと、そのためには戦略作物への転換がしやすいようなそういう政策を併せて講じて、全体としての所得が確保できるようにということが基本的考え方でありますので、繰り返しになりますが、お米の需給や価格の安定を図っていくことは重要であると私どもも考えているということでございます。

○紙智子君 政府は、減反をした上で、農家には需要のある米、業務用米なんかなどを含めて作れというふうに言っているわけですけれども、少し振り返ると、農水省の政策というのは、食味の良い米を作れと、ブランド化しようと、そういうふうに言ってきたと思うんです。その際に力を発揮してきたのは都道府県で、種子法が食味の良い種子を作るという上では重要な役割を果たしてきました。ブランド化に向けて国も県も一体で取り組んできたと思うんですよ。
 ところが、今は食味の良い米作りではなくて、需要のある低価格米を作れと、業務用米を作れというふうに、まあ中食とか外食が使いやすいようにということを言っているわけです。だから、種子法の廃止と併せて、これ安い米にシフトしようとしているんじゃないのかと。従来の米政策を根本的に変えていくことになるわけですね。
 食味の良い米とかあるいはブランド米、これはもう力は入れないということなんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省政策統括官 柄澤 彰君) 私ども今、需要に応じた生産というのを進めているわけでございます。主食用米全体の需給は比較的安定している中で、今委員御指摘の業務用米に対するニーズに対して、そこに供給する生産の方が追い付かないものですから、そこのところにミスマッチがあるということを申し上げております。
 一方、ブランド米はブランド米でもちろん一定の需要がございますので、そこにはしっかり供給していくべきだということで、何か全部を業務用米にしろとかブランド米はもう要らないとか、そういうことを申し上げているわけではなくて、まさに需要のボリュームに応じた的確な供給をすべきだということをミスマッチの解消として進めているところでございます。

○紙智子君 私、新潟に先日行ったときに、新潟は実際には米の生産でいうと全国今一位だし、それから価格も、一番おいしいと言われている、価格も高いわけですけれども、その新潟ですらもう業務用米ということで、相当意識がそっちの方に動いているなということを感じたわけです。
 米の直接支払交付金と減反を廃止して、事実上これ米生産から、さっき舟山さんも質問していましたけれども、政府が手を引くということになると、これは農家のモチベーションを下げることになるというように思うんですよ。これが一体、攻めの農業なんて言うのかなというふうに思うわけです。
 各地から強い要請が出されている問題ももう一つだけちょっと触れておきたいんですけど、これはちょっと後の時間があるので、要請、要望として言っておきたいんですけれども、今年度の産地交付金、これの、戦略的作物の作付け拡大によって留保分の一部が戦略作物助成に充てられて、各地域の産地交付金が減額配分になっているんですね。北海道では約十一億円が不足しているんだという話なんです。必要な予算を是非確保してほしいということを、要請上がっていますので、多分検討はされていると思うので、是非応えていただきたいということは、これは要請にとどめておきたいと思います。
 それから、米の直接支払交付金の廃止、減反廃止についてなんですけれども、米の生産は食料自給率にも大きく影響すると思うんですね。今年発表された平成二十八年度、二〇一六年度の食料自給率は三八%に低下をしました。小数点まで言うと三七・五八%です。前年度と比べると一・九%も下がっているわけです。
 政府は北海道の台風被害が要因なんだというふうに言ったんだけど、本当にそれだけかと。三八%になった要因は自然災害だけではないと思うんですね。農地は毎年二万ヘクタール程度減っているわけですよ。そして、販売農家は毎年七万人程度減っているわけですよ。米は国民の主食だと。食料自給率が低下したのは農業の基盤が弱体化しているということにも要因があるんじゃないんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤 健君) 今御指摘のように、平成二十八年度のカロリーベースの食料自給率は三九から三八%となったと。これは、小麦やてん菜等について長雨や台風などの天候不順により生産量が減少したことが理由としてありますけれども、それに加えて、食料自給率は長期的に低下傾向で推移しておりまして、これは、お米の消費が減少して畜産物や油脂類の消費が増大する等の食生活の変化に国内生産がうまくシフトできていないということが主たるこの長期的低落の要因ではないかと思っております。
 まあ、もうこれ委員御案内だと思いますが、政府としては、現行の食料・農業・農村基本計画で定められております平成三十七年度までに食料自給率を四五%に引き上げるという目標達成に向けて、国内外での国産農産物の消費拡大とか食育の推進、消費者ニーズに対応した麦、大豆の生産拡大や、飼料用米、これ飼料用米は先ほど進藤議員、議論されていましたけれども、飼料用米の推進ですとか、優良農地の確保や担い手の育成の推進といった各種の施策を総合的かつ計画的に講ずることによって食料自給率の向上を図っていくという、そういう考えで進めていきたいと思っています。

○紙智子君 主たる要因をそこに求めているようでは本当に困るなと思うんですよ。
 政府の食料自給率目標四五%と今お話しになりましたけれども、自然災害があったら低下したというふうに言い訳を言い続けるわけにはいかないと思うんですね。本当に上げていこうと思ったら、小麦や大豆などの戦略作物を生産する対策というのは当然必要ですけれども、やはり食料自給率を引き上げるためには、生産基盤を再生させながら確かな手法として輸入農産物を国産に置き換えると、こういうことをやらなければいけないんだと思うんです。輸入農産物を国産に置き換えるためには、生産、流通、消費全体を見直すことが必要なんだと思います。
 次に、通商交渉についてお聞きします。
 日本の農産物は、自由化政策で安い外国産と過酷な競争にさらされ続けているわけです。政府は、七月に、日欧EPAは大枠合意したと発表しました。また、政府は、十一月に、十一日ですね、アメリカを除く環太平洋連携協定、TPP11が大筋合意したと。EPAは大枠合意ですね、イレブンは大筋合意したと発表しました。米でいえば、オーストラリアに無税輸入枠を設定すると。小麦についても、オーストラリア、カナダに無税枠の輸入枠を設定すると。アメリカが抜けてもこのTPPの本質は変わらないわけですね。一方、アメリカのライス協会は、TPP枠でも不十分だと言ってきたんですよ、あの五万トン枠でも不十分だと言ってきたと。日米経済対話でこの後圧力を掛けてくるの必至だと思うんですね。
 政府は、大枠合意とか大筋合意という言葉を使って、何かあたかもまとまったような発表をしているんですけれども、本当にまとまったのかというふうに思うんですけれども、これ、いかがでしょうか。

○政府参考人(内閣官房内閣審議官 澁谷 和久君) TPP11のことについて御説明いたしますが、先月、ベトナムのダナンでTPPの閣僚会合、都合四回やりましたが、その最初の第一回の閣僚会合におきまして、新協定の条文、それから凍結リスト等を含む合意パッケージについて全閣僚が合意することが大筋合意だということを事前にまず確認をいたしました。その結果、合意パッケージに全閣僚が合意したということでございますので、大筋合意だというふうに考えているところでございます。

○紙智子君 大枠合意とか大筋合意という定義はないと聞いたんですけれども、ある意味いいかげんだなと。これ、見せかけの合意だったんじゃないのかなというふうに思うんです。
 TPP交渉の際には、元々の原型のTPPですけれども、当時は、甘利担当大臣は、全体がまとまって全体が固まると、パッケージで合意するんです、つまり、TPPの二十一分野全体がまとまって大筋合意なんですと言いました。TPP11は、国有企業など四項目が合意に至っていないわけですね。パッケージ合意していないのに大筋合意というふうに言っているわけで、何か本当にこれはもうおかしいなと思います。調整する分野が残っているのに大筋合意というのはおかしいわけですね。中核について合意したと、こういう発表をすればいいんじゃないですかね。大筋合意というのはどういう状況をいうのか。
 WTO協定もちょっと調べてみました。平成三年、一九九一年、当時外務省は、ウルグアイ・ラウンド交渉は全分野を一括して解決する、合意に至ると言っているわけです。大筋合意という定義はないと言っていますけれども、従来の政府の立場というのは、全分野一括して解決することを大筋合意と言ったのだと思います。従来の見解を変えてあたかも大筋合意したかのように言う、これは物事を既成事実化しているだけなんじゃないかと。
 加えて、もう一つ聞きたいんですけれども、TPP11の発効条件は、十一か国のうち六か国の締結完了から六十日後に発効するとなっています。TPPの発効要件にあったGDPの合計の八五%以上を占めるというのを削除したわけです。これ、なぜ削除したんでしょうか。二点お聞きします。

○政府参考人(内閣官房内閣審議官 澁谷 和久君) 先生御指摘のとおり、TPP12の発効要件は原署名国のGDPの合計の八五%以上を占める六か国以上が締結をすると、こういうのが要件だったわけですけれども、TPP11では、十一か国で議論した結果として、おっしゃるようにGDP要件を外しまして、単純に六か国の締結完了としたわけでございます。これは、発効が一部の国の影響を受けにくくなるということを十一か国が志向したということでございます。

○紙智子君 今までは全分野一括解決を大筋合意と言ってきたわけですね。今、全分野で合意していないのに大筋合意だと。そして、元のTPPは、高い基準を維持して、TPP11として既成事実化するために発効要件のハードルを下げたということですよね。全くこれ御都合主義だと言わざるを得ないと思うんです。
 しかも、調印もしていないのに大綱を出して予算を組もうとしているわけです。私は、今年の三月に、過去の経済連携協定において調印する前に大綱を出したことや予算を組んだことがあるのかというふうに質問しました。そうしたら、財務省の主計局次長は、調印前に大綱を策定した例も予算を措置した例もありませんと答えたんですよ。前例のないことを前回やっておいて、今回もまたやろうとしている。
 国民の皆さんは情報を開示してほしいと言っているわけです。大綱を出す前に影響試算を出してほしいと言っているわけですよ。総選挙後に、安倍政権の政治姿勢というのは謙虚な姿勢ですと、国会で丁寧に説明するということを言ってきたわけですけれども、この合意の仕方から大綱や予算の出し方、これ従来の手法と全く違っていると思うんですよ。丁寧とも謙虚でもないと。
 国内農業に重大な影響を与えるような日欧EPA、そしてTPP11、これは秘密保持契約はないですから、米政策を変えるときには現場にきめ細かく情報を流すと言っているわけだから、是非この日欧EPA、TPP11についても、交渉内容についてはきめ細かに情報を提供していただきたいと、そうすべきだと思いますけれども、これ、大臣、いかがでしょうか。

○副大臣(内閣府副大臣 越智 隆雄君) 私の方から、TPP11の今交渉経緯の情報公開についてというお話がございまして、まずそこの点についてお話をさせていただきます。
 TPP11は、今年五月にハノイにおいて十一か国による閣僚がTPPの将来に向けた今後の方向性を議論した後に、七月に我が国において首席交渉官会合を開催して以来、実質的に四か月で大筋合意に至ったものでございます。その間の会合の状況につきましては、内閣官房TPP等政府対策本部のホームページにて公表してきております。この情報開示に関しましては、十一か国で協議した上で行っておりまして、合意に至る背景につきましても含めて閣僚声明等でも公表しているところでございます。
 最後に、経済効果分析でございますが、TPPの経済効果分析は既に公表しているところでありますけれども、アメリカがいない十一か国の場合は効果はおよそ半減するということもこれまで申してきております。TPP11に関しては、できるだけ早期にお示しすることとしたいと考えております。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤 健君) 農林水産分野の分析につきましては、TPPのときと同様に、現実に起こり得る影響を試算すべきだと考えておりまして、国内対策の効果も併せて、内閣官房において取りまとめられる経済効果分析と併せて国民の皆様に分かりやすく提示したいと考えています。

○紙智子君 影響試算について言えば、対策打った後に出すんじゃ駄目なんですよね。順序が逆だというのが国民の皆さんが非常に今までも繰り返し主張していることですから、それはきちっと影響調査については出して、その上で必要な対応策という形にしていただきたいと思います。
 安倍総理は、アメリカ抜きのTPPは意味がないとずっと言ってきたんですね。アメリカがいなくなると、アメリカをお待ちしていますということで受皿をつくって、日本の農業や地域に大きな打撃を与える通商交渉に突き進んでいるわけです。この歯止めなき自由化路線はやめていただきたいということを強く求めたいと思います。
 最後に、もう一点質問いたします。
 ビキニの核被災についてです。アメリカが一九五四年に太平洋ビキニ環礁で行った水爆実験で日本の漁船一千隻が被曝した問題で、山本有二前農水大臣には、八月、高知県の関係者に会っていただきました。これは感謝いたします。そして、記者会見で、県が健康被害、健康不安に寄り添う形で様々な施策を展開している、国が県に支援できればと思っているというように言われたわけです。国の支援も是非お願いしたいと思います。
 そこで、私は、四月に、核実験が予定された際に水産庁としてこの海域で操業停止とか回避指示をされたのかと聞きましたら、そのときに水産庁長官は、調べてみると、事実を確認するというふうに言われたんですけれども、是非現状を、その後の御説明をお願いします。

○政府参考人(水産庁長官 長谷 成人君) 昭和二十九年のビキニ環礁における核実験の際に、その周辺海域で漁船に対して操業停止等の指示を行ったかについて調査いたしましたけれども、その指示の有無を裏付ける資料は発見されておりません。
 一方、その後の昭和三十一年のエニウェトク環礁における核実験以降、昭和三十七年までに米国が累次実施した核実験につきましては、米国政府から核実験の準備や実施、危険区域の設定等について発表があり、これを受けて水産庁は都道府県、関係団体を通じ、当該情報を関係漁船に周知徹底するよう依頼文を発していることにつきましては確認されたところでございます。

○紙智子君 出されてきた資料を見ると、どれだけの賠償額が必要かということの資料にはあるんだけれども、実際に被災したその被害者の人たちに対してどうなのかということについては何も検討された記録がなくて……

○委員長(岩井茂樹君) 申合せの時間が参りましたので、質疑をおまとめください。

○紙智子君 はい。
 そういうことで、引き続き、大変だと思いますけれども、探していただけるようにお願いいたします。
 終わります。