◇農業災害補償法の一部改正案に対する反対討論
○農業災害補償法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○紙智子君 私は、日本共産党を代表して、農業災害補償法の一部改正案に反対の討論をいたします。
初めに、昨日から本日にかけて、自民党、公明党、与党は、委員会質疑を拒否し、いきなり本会議で中間報告を押し付け、共謀罪を強行採決したことに強く抗議します。こんなひどいやり方はかつてありません。審議を尽くすという議会制民主主義を踏みにじる行為です。また、加計学園問題は、農林水産委員会において、参考人を呼んだ集中審議、関係資料の提出を要求してきましたが、自民党からは党の方針として応じられないと言われました。私たちは、総理出席の予算委員会を開くよう要求していますが、これも与党は応じようとしません。ゼロ回答です。
悪法は強行する、疑惑は隠す、農林水産省が提出した法案だけは審議してほしいと。国会軽視としか言いようがありません。こうした姿勢に強く抗議をしておきます。
反対する第一の理由は、改正案が現行の農業災害補償制度を弱体化させ、農業者に不利益を与えるものだからです。
改正案で、農作物共済は当然加入から任意加入制へ移行します。保険や共済における逆選択を防ぐための手法である当然加入は、自賠責保険など社会政策的目的を持った保険で適用されているものです。任意加入制に移行することで、逆選択が進むとともに、農業共済組合の財務や農村集落における相互扶助の仕組みに影響を与えかねません。また、収量の三割減でも補償してきた一筆方式を廃止することで、圃場ごとのきめ細かい被害補償がなされなくなります。無事戻しの廃止や家畜共済の自己負担制度の導入も共済加入者に不利益をもたらしかねません。
反対する第二の理由は、収入保険の導入に併せて、米の生産調整や直接支払交付金など、岩盤制度の廃止を進める政策は認められないからです。
新たに設けられる収入保険は、青色申告を前提とし、現状では対象が三割の農業者に限られる上に、農業共済、収入減少影響緩和対策、野菜価格安定制度、加工原料乳生産者経営安定対策の各加入者はその制度から離脱しなければ加入できません。参考人からは、加入要件を青色だけに限定すべきでない、収入保険より現行の共済とプラス、ナラシ対策にメリットがある、基準収入が下がり続ける仕組みになりかねないなど言われました。
収入保険は、農業収入を緩和するだけで、所得を下支えするものにはなりません。所得補償の復活を求める動きが全国に広がり、独自に所得を補償する自治体の動きもあります。今必要なことは、こうした要求に応えるとともに、先進国で当たり前になっている所得補償に踏み出すことです。岩盤を壊すのではなく、岩盤をつくることが日本の農業の再生につながると確信します。
以上述べて、反対討論とします。
――(略)――
○委員長(渡辺猛之君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。これより採決に入ります。
農業災害補償法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕
○委員長(渡辺猛之君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
この際、徳永君から発言を求められておりますので、これを許します。徳永エリ君。
○徳永エリ君 私は、ただいま可決されました農業災害補償法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・こころ、民進党・新緑風会、公明党及び日本維新の会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
案文を朗読いたします。
農業災害補償法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
農業災害補償制度は、制度発足以来、七十年以上の長きにわたり、災害によって農業者が被る損失を補填することにより農業経営の安定に大きく貢献してきた。しかしながら、同制度は、価格低下等は対象となっておらず、対象品目が限定されているといった問題が指摘されている。このため、自由な経営判断に基づき経営の発展に取り組む農業経営者のセーフティネットとして、個々の農業者ごとに農業収入全体を対象に総合的に対応し得る新たな保険制度の創設等が喫緊の課題となっている。
よって政府は、本法の施行に当たり、農業経営の安定を図るため、次の事項の実現に万全を期すべきである。
○委員長(渡辺猛之君) ただいま徳永君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕
○委員長(渡辺猛之君) 多数と認めます。よって、徳永君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。