<第193回国会 2017年6月13日 農林水産委員会>


◇参考人質疑/農業共済制度は後退させることなく拡充を/新たな収入保険よりも、現行の共済制度とナラシ対策にメリット

○農業災害補償法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

☆参考人
 公益社団法人全国農業共済協会会長 高橋博君
 北海道農民連盟書記長 中原浩一君
 農民運動北海道連合会委員長 山川秀正君

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 三人の参考人の皆さん、本当に今日はありがとうございます。
 それで、今日は、北海道から、生産活動に取り組んでおられる農業経営者が二人そろって来られているという、ちょっとなかなか珍しいことなんですけれども、それで、中原参考人は上川の地域で農業法人を立ち上げて大規模にやっておられるし、山川参考人は十勝の畑作を中心にしながらやっぱり頑張っておられて、お二人とも本当に頑張ってこられたと思うんですけれども、それで、これまでお二人とも様々な自然災害や気候変動やいろんなことに遭遇をし、そしてそれらと向き合いながら乗り越えてこられたんだろうと思うんですけれども、そこで二つ、二点お聞きしたいと思うんですね。
 農業共済制度の目的というのは、自然災害で被害を受けた農業者の損失を補填をし、再び農業生産力を高めるというところにあるわけです。この目的が今回の改正で削除されるということになります。
 そこで、一つなんですけど、一つは、農業共済制度の役割をどのようにお考えでしょうかと。あわせて、改善すべきことがあれば、今までの共済制度、どういう改善が必要なのかというところを一つ目にお聞かせいただきたいのと、二つ目は、今回の改正についてなんですが、当然加入制それから一筆方式の廃止、無事戻し制度の廃止ということがあります。それから、家畜共済は診療費の自己負担制度が導入をされると。こうした改正についてどのように思われるかということで、それぞれからお聞かせいただきたいと思います。

○委員長(渡辺猛之君) それでは、中原参考人からお願いいたします。

○参考人(中原浩一君) ありがとうございます。
 先ほど紙先生からお話がありましたように、私も初めて参考人が北海道同士なんだなというふうには思ったんですけれども、経営は全く多分違うと思います。私どものところはもう米作でずっと頑張ってきた地域で、と言いながらも、国のそういったいろんな施策に翻弄もされてきました。ただ、逆を言えば、やはり農家、農業者のための農水省だというふうに思っていましたし、またそこから、いろんなお話をすると、農業者がその都度その都度困ったときに対策、政策を打っていくのが農水省なんだよといったようなお話もずっと私も青年部時代から聞いてきました。ここに来て、そういったことが少しやっぱり変わってきたのかなという思いもありますけれども。
 今質問のあった、農業共済制度の本質の目的も含めてお話をいただきましたけれども、私は、現行の共済制度については、やはり収入に着目するのか、また災害のときの減収を補うのかという、そういった部分は違いますけれども、私はやっぱり大きな役割を果たしてきたのかなというふうに思っております。そういった中で、個々の努力も含めながら、やはりその努力に報われない災害と、それに対して、私はセーフティーネットの役割を十分果たしてきたんじゃないかと。
 ただ、入れない作物もやっぱりいっぱいあったというのは事実ですし、高橋参考人が言われたように、それをクリアできていない部分も四〇%以上あるんだといった形の中で、収入保険についてはそこを補うような仕組みにしていただきたいなというふうに思っておりますけれども、ただ、経営全体を捉えると、私も先ほど言ったように、野菜も作り、米も作り、畑作四品も作りという形の中で、先ほど言ったように、そこに該当になっていないものだけを収入保険というわけには今回はいかないので、その辺はやはりちょっと、私としては、加入するかしないかも含めて経営としてどう考えていくかというのをやはり勘案しながら進めていかなきゃいけないのかなというふうに思っております。
 それと、改正の部分の無事戻しも含めて、そういったいろんな部分はありましたけど、私はちょっとそちらの方の関係については余りよく分かっていません、済みません。その辺については、また勉強させていただきながら、紙先生の方にまたお話をさせていただければというふうに思っております。

○委員長(渡辺猛之君) 続いて、じゃ、山川参考人、お願いいたします。

○参考人(山川秀正君) 共済制度の必要性については、特に十勝の畑作、歴史を見ると、以前は四年に一回冷害が訪れる、そういう歴史の中でずっと悪戦苦闘してきたのが十勝の畑作の歴史なんですよね。この間、農業の基盤整備だとか品種改良だとか、そういった農業に関わる技術の向上、取組の向上の中で一定程度物が取れるようになってきたと。しかし、自然災害、これはもう間違いなくやってくると。そういう状況の中で共済制度が果たしてきた役割は私は大きいと思いますし、ですから、畑作共済のそれこそ、試験段階と先ほど話しましたけれども、モデル町村になったのはきっとうちの町だったと思います。
 うちの町は全体で試験共済をやって、モデルの町になって畑作共済制度の根幹をつくっていったと。そういう中で、いろいろ制度改正、先ほど詳しくは触れませんでしたけれども、足切りを減らす。今でも、例えば小豆はまだ三割足切り、要するに半相殺、一筆ごとで、そういう評価しかできないと。今、圧倒的に畑作共済も全相殺、出荷量による調査が可能な作物については出荷量で調査するわけですから、そういった部分でいえば、何といいますか、人的な部分で人の確保、共済部長なり損害評価員なり、そこを確保するのが難しいという話ありましたけれども、そういう今の現代の文明の機器が発達している中で、出荷量で調査できるものはどんどん出荷量で調査することは私は全然問題ないというふうに思っています。
 それで、今後、共済に望むという点でいえば、今、私の去年の共済掛金賦課金払込通知書というのを持ってきたんですけれども、やはりその中で、やっぱり一番、先ほど、岩盤をつくるんだと、生産費を下支えしてほしいという話しましたけれども、要は、キログラム当たり共済金額、ここを何ぼで引き受けるかということが一つ大きな鍵だと思うんですよね。
 今、例えば小豆の場合はキログラム二百九十九円、三百円に一円切れるだけということですから、六十キロ一俵換算すると一万八千円と。今の相場、去年辺りですと、小豆一俵なかなか一万八千円は取れなくて、一万五千円前後という世界なんですけれども、まさしくそこの部分できちっと再生産ができるような、引受けの単価を、生産費を償えるような、そこを担保できたら今の共済制度は私はもっともっと逆に言えば充実すると思うし、安心して加入できるようになるんではないかなというふうに率直に思っています。そういった点が一点です。
 それから、無事戻しというのも、これもなかなか、私に言わせたら、制度が後退してきたと言うんですけれども、今まで無事戻しというのは、最初始まった頃の無事戻しは二分の一だったんですよね。共済事故が発生しない場合は掛金の二分の一を三年に一遍戻すと。それが三分の一になったんですよね、無事戻しが。だから、そういった点でいえば、そういう後退はされてきているんですけれども、やっぱり無事戻しの制度というのは、一定程度やっぱり被害が発生していないわけですし、共済組合に行ってお金が積み上がっているというような状況であれば、やっぱりそれを組合員に還元するというのは当たり前のことでないかなというふうに率直に思っています。
 そういった点で、当然加入の維持だとか一筆ごとの評価、ここはなかなか、一筆ごとの評価を残すか残さないか、特に水田が難しいのかと思うんですけれども。だから、水田地帯でも、北海道でいっても、カントリーエレベーターがあって、そういうところについては全相殺でやっている水田の調査もあるということを考えると、やっぱりケース・バイ・ケースの中で臨機応変に対応していく必要があるというふうに率直に思っていますけれども、そういう部分での合理化も図りながら、是非、今の農済制度を後退させることなく維持してほしいということを望んでおきたいと思います。
 以上です。

○紙智子君 もう一点、山川参考人にお聞きしたいんですけれども、先ほど、御自身の収入を基にして、現行制度と新たに創設される収入保険制度の比較がありました。収入保険では農家の減収分をカバーできず、補填が下がる仕組みであって、しかも農家の負担が増えるという話あったんですけど、この辺もうちょっと、どうして負担が増えていくのかという辺りも話をしていただければと思います。

○参考人(山川秀正君) 先ほど説明しましたとおり、収入保険は五中五、今の畑作の専業地帯にとって、五中五という評価の中で計算されると。共済事業、共済の引受単収等々については七中五、要するに、七年のうち一番上位の数字と一番下位の数字を捨てて、その平均の五年間で引受単収を決めますよということなんですけれども、収入保険の部分での収入の評価の仕方といいますか、算出の仕方もそういう、先ほど中原委員から発言もありましたとおり、天変地異、当然発生するわけですから、五中五ということになっていくと、どんどんどんどんやっぱり数字が下がっていく懸念は率直に感じています。
 そういったことの中で、私は、単純に比較をしたということで、ナラシ対策というのは実際に現金収入になったのは年明けといいますか、私どもの口座に振り込まれるのは今月なんですけれども、いずれにしても、これも二十八年度収入というふうに考えると三千五百八十六万九千円の収入になると、去年、災害年であってもですね。これはまさしく、共済制度があって、ナラシ対策があったからなんですけれども。これが収入保険になると、この数字は収入そのまんまといいますか、五中五の平均三千七百何がしをそのまんま九割補填されるというふうに計算して三千三百と書きましたけれども、九割の九〇%ということになれば、八一%になると、さっきも言いましたとおり、五百万も収入が変わってしまうと、去年みたいな年でも。それがやっぱり私の経営の中では現実としてあるので、やっぱりそこは是非、そういう状態の中ではなかなか、私は、収入保険に今の畑作地帯は必要がないんじゃないかと率直に思っています。
 それで、去年といいますか、今年年明け、三月十五日までに税金の申告するわけですけれども、そういう部分で多くの方から声を掛けられました。収入保険がスタートするので、青色申告やっていないと収入保険に加入できないから、青色申告をするという手続をする必要があるかないかという相談がたくさんありました。そのときにどう答えたかといったら、今の現行の収入保険制度では畑作経営ではメリットないんじゃないのという話をしました。だから、今すぐ自分の、何といいますか、農業経営をやっていく上で青色申告がメリットあるなら青色申告やめろとは言わないけれども、収入保険のためだけに青色申告に飛び付く必要はないぞという話をしたんですけれども、まさしく私は今そういう評価をしています。
 それから、負担が増えるという部分では、問題は掛金ですよね。掛金を、先ほど一%で落ち着くのか二%かという、いろいろな話がありますけれども、例えば、一千万の収入保険に入るには約三十万円の保険料だというような数字が出ているようにお聞きをしているんですけれども、その数字がちょっと間違っていたら指摘もしてほしいと思いますけれども、一千万で三十万であったら、三千五百万あったら百万超えるという、まさしくそういう掛金になってしまうわけですから、そういった点では、現行より掛金は上がって補填が少ないという点でやっぱり私はそういう意見を持っております。
 以上です。

○紙智子君 ありがとうございます。
 ちょっと時間が詰まってきたんですけど、高橋参考人のお話を聞いて、やっぱり今回の改正が制度発足以来最大の改正となったという御認識をお話しされていて、これまででいうと試行期間が結構な時間を取ってやってきたと思うんですけど、それがやっぱり十分持っているわけではないので、この後いろいろ予測される問題に柔軟に対応する必要があるという話をされたんですけれども、その点では、本音としては、やっぱりちゃんと、じっくり本当だったら試験の期間設けてやるべきだというふうに思われているんじゃないのかなと思ったんですけど、その本当のお気持ちと、それから、やっぱり最大と言われる部分のその最大というのは何をもって最大と思われているのかということをお聞きしたいと思います。

○委員長(渡辺猛之君) 高橋参考人、申し訳ありませんが、時間が来ておりますので、簡潔にお願いいたします。

○参考人(高橋博君) はい。
 やはり試行期間、これまでの三つの大きな共済のときありました。ただ、今回は制度設計をするために調査事業だけで既に三年間掛かっております。かてて加えて、そこから試行ということになると、制度設計を二十六年の法附則の御決議いただいたときからやってくると一体いつ始まるのかというようなこともありましょうし、水田の問題もいろいろあります。ですから、それでそこまでは多分できなかったのではないかなと。理論的とか万全を期せればそうですが、やはり実態を考えればやむを得ないと、私は、残念とは思いますが、やむを得ないと思っています。
 それから、最大と申し上げましたのは、農業保険法になったということを端的に言いましたけれども、やはり先ほど言いましたように、対象作物が無限定のそういうセーフティーネットと、これは今までとは違った、保険数理では同じでありますけれども、今までの共済制度とは違います。
 それからもう一つは、全国一律の制度であるということであります。これまでの共済事業はそれぞれの地区で決められることが相当数多かったんですけれども、今回は全国一本で行う。ただし、これを支えているのは、先ほど言いましたように、農業共済でないとこれはなかなかできないでしょう、信頼関係の間でもということで、支える組織は農業共済制度でありますが、こういう全国一本、しかも全農業収入ということで、最大の改革であったというふうに評価をさせていただいています。

○紙智子君 終わります。