◇加工原料乳生産者補給金等暫定措置法の廃止並びに畜産経営の安定に関する法律等の一部改正案に対する反対討論
○畜産経営の安定に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○紙智子君 私は、日本共産党を代表して、畜産経営の安定に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部改正案に対する反対討論を行います。
指定生乳生産者団体制度ができてから約五十年がたちました。当時は、小規模な酪農生産者が多く、乳業メーカーによる集乳合戦が繰り返され、生産者側の乳価交渉力が弱かったため乳価が乱高下し、酪農家の所得が安定しない状況が続きました。
こうした状況を打開するために、一、輸送コストの削減、二、条件不利地域の集乳、三、乳価交渉力の確保、四、飲用向けと乳製品向けの調整機能を有する指定団体制度をつくり、さらには、加工原料乳生産者補給金等暫定措置法でその機能を強化してきたのです。その下で、一元集荷多元販売、プール乳価と共同計算が確立され、有利な農産物の販売、価格交渉力を強化する役割を果たしてきました。
今回、岩盤規制を打破するという安倍政権は、規制改革会議を力に、乱暴な形で、現場の実態を踏まえず、加工原料乳生産者補給金等暫定措置法の廃止と畜安法の一部改正などを国会に押し付けました。こうした強引なやり方に抗議します。
以下、反対討論を述べます。
第一の理由は、複数の指定事業者が参入することで生産者の所得が低下するおそれがあるからです。
本法案は、農林水産大臣や都道府県知事が、対象事業者のうち受託販売等の要件を満たせば指定事業者とすることができます。この指定事業者には外資や株式会社などの民間事業者がなることもできます。複数の事業者間の競争になれば、価格交渉力が弱まることは明らかです。資本力のある事業者が低価格競争に持ち込めば、更なる生産者の所得低下につながりかねません。
第二の理由は、部分委託の拡大も生産者の所得が低下するおそれがあるからです。
これまで部分委託は日量三トンという上限がありました。量的上限を撤廃され、部分委託が際限なく認められれば、高く売れる飲用向けが過剰になり、乳価が低下し、逆に所得低下につながりかねません。
第三の理由は、酪農家のよりどころになってきた指定生乳生産者団体の役割を弱体化させるからです。
酪農を中心とした生産基盤の弱体化が指摘されています。指定団体が持つ需給調整機能が弱まれば、生産基盤が更に弱体化する危険性があります。
安倍政権が進める一連の農協解体と一体の改悪案は断じて容認できないことを強調して、反対討論とします。
―――(略)―――
○委員長(渡辺猛之君) 速記を起こしてください。
森委員に対し出席を要請いたしましたが、出席を得ることができませんでしたので、やむを得ず議事を進めます。
他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
これより採決に入ります。
畜産経営の安定に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕
○委員長(渡辺猛之君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
この際、徳永君から発言を求められておりますので、これを許します。徳永エリ君。
○徳永エリ君 私は、ただいま可決されました畜産経営の安定に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・こころ、民進党・新緑風会、公明党及び日本維新の会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
案文を朗読いたします。
畜産経営の安定に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
我が国の酪農は、生産者の努力の積重ねにより、先進的な経営を実現させてきた。しかしながら、担い手の高齢化や後継者不足を背景に飼養戸数、飼養頭数ともに減少しており、生産基盤の強化に向けて、生産現場では総力を挙げての取組が懸命に続けられている。こうした状況を踏まえ、補給金制度の改革は、生産現場における不安や混乱を払拭し、経営意欲の維持向上が図られるよう、消費者への国産牛乳・乳製品の安定供給と生産者の所得の増大を旨として進める必要がある。
よって政府は、本法の施行に当たり、生産者が将来に明るい展望を描けるよう、次の事項の実現に万全を期すべきである。
○委員長(渡辺猛之君) ただいま徳永君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕
○委員長(渡辺猛之君) 全会一致と認めます。よって、徳永君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。