<第193回国会 2017年6月8日 農林水産委員会>


◇酪農家の所得向上につながると強弁(農水相)/生乳の処理量、5年後には、飲用向けと乳製品向けが逆転すると想定/日欧EPA交渉等で乳製品の輸入を認めれば国内生産に打撃あきらか

○畜産経営の安定に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 六月六日に参考人質疑を行いましたけれども、加工原料乳暫定措置法を廃止して畜安法を改正することで酪農家の所得が増えるのかどうかということ、論点になりました。
 それで、生乳の生産コストと酪農家の所得がどうなっているのかということを調べてみました。生産費は、実搾乳、これ百キログラム当たりの全算入生産費ということですけれども、北海道は、二〇〇五年、平成十七年ですけど、七千五百八十円、二〇一五年、平成二十七年は七千七百四円ですから、十年間で百二十四円増えていると。都府県はということで見ると、八千九百四十七円が九千七百八十九円になって八百四十二円増えているということなんです。それで、酪農の生産コストは、輸入飼料に依存するということが強い、そういう傾向が強いので、為替相場の影響を受けやすい。ですから、生産コスト、この削減といっても簡単じゃないということだと思うんです。
 一方、酪農家の所得なんですけれども、私、JA北海道からも毎年要請を受けるんですけど、JAグループ北海道の目指す姿とあるんですね。その目指す姿として、最低限の所得目標ということでは、実搾乳量キログラム当たりで三十円、ここを目指しているわけですよ。現状は、二〇〇六年度、平成十八年以降でいうと十円台の後半で推移しているという状況です。
 それで、大臣に伺いますけれども、酪農は生産コストの削減といっても簡単じゃないわけですけれども、畜安法を改正して所得を上げることが本当にできるんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) そう簡単ではないわけでございますが、今回の補給金制度改革というのは、指定団体のみ補給金を交付するという現行の方式を見直し、出荷先等を自由に選べる環境の下で生産者による創意工夫を促し、所得を増大させるということを目的としております。具体的に申し上げれば、改正法案で、生産者の生乳の仕向け先の選択肢が広がること、自ら生産した生乳をブランド化することによる、また加工販売する取組、そうした創意工夫による所得向上の機会を創出しやすくしたということでございます。
 また、現在の指定団体である農協、農協連につきましても、生産者の選択に応えるため、流通コストの削減や乳価交渉の努力を促すことになるわけでございます。
 また、これまで補給金をもらえないため飲用向け一辺倒だったものを乳製品向けにも計画的に販売する方向に誘導することができ、これにより冬場等の飲用牛乳の不需要期の廉価販売に歯止めを掛けることができると考えております。
 加えて、新たに導入される年間販売計画におきまして、乳製品仕向けの経営戦略を明確にすることで、より消費者ニーズの高い用途や付加価値の高い国産乳製品の製造が促進される結果、乳業メーカーが得られる利益を基とした乳価の形成が期待されるものというように考えております。
 以上のように、改正法案により酪農家の所得向上につながると考えているところでございます。

○紙智子君 一昨日、参考人質疑があって、石沢参考人も小林参考人も酪農バブルという話が出ました。個体販売価格、子牛が高く売れていると、今。しかし、子牛の価格バブルがはじけたらおっかないというふうに北海道弁で言っていました。石沢さん、おっかないと言っていました。それから、小林参考人は、二〇〇〇年以降、生乳一キログラム当たりの所得は下がっているというふうに言われました。
 大臣は、消費者ニーズに応えていろいろとブランド物を手掛けるとか、そういう商品を作れば所得は上がるというふうに言われるんですけれども、確かに野菜なんかでいったら、今パクチーブームですよね。だから、パクチーをそのブームに乗って作ったらそれは確かに売れるかもしれないけれども、じゃ、ずっと売れるのかといったら、そうとも限らないわけですよね。しかし、求められている農政というのは、やっぱり一部の方の所得を増やすということではないと思うんですよ。酪農家全体の所得を上げるということだと思うんですね。
 畜安法の改正で、酪農家の所得が全体として上がるんでしょうか、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) プロセスは経なければならないと思いますが、やがてはしっかりと上がっていただきたいと念願しております。特に、千二百万トンの消費者需要に対して七百三十六万トンという国内生産量でございますので、そうした意味でも、また乳製品への消費者のニーズが上昇しているところでもございますので、酪農経営というのは発展の可能性としては十分あるわけでございます。そのためにも、特色ある牛乳、乳製品の生産による付加価値の向上、酪農家が創意工夫を生かせる環境の整備、重要だと思っております。
 生産者の生乳の仕向け先の選択が広がることも申し上げましたし、また、多様な消費者ニーズへの対応や創意工夫による個性的な牛乳、乳製品の開発、販売、こうしたことによって、新しい考え方をする意欲ある農業者の取組による所得向上は必ず私はできてくるというように確信をいたしております。より消費者ニーズの高い用途、付加価値の高い国産乳製品の製造が促進される結果、乳業メーカーが得られる利益が生産者にも、乳価、すなわち所得として還元されていくものというように思っております。

○紙智子君 希望はそうなってほしいということだと思うんですけれども、やっぱり消費者ニーズに応えれば、何かすごく聞こえはいいんですけれども、それで全てうまくいくのかといったら、既にもういろいろ努力をされてきているわけですよね。
 それで、私はやっぱり基本となる生乳の生産で所得を上げることが必要だというふうに思います。そして、参考人質疑で出されていましたけれども、指定団体を通さないで全てを飲用向けに出荷する酪農家、プール乳価よりも高い乳代を受けるわけですよね。一部の人の所得は増えるんだけれども、ほかの人の所得は減ると。第二、第三のホクレンができれば収入や所得は増えないというふうに言われたわけですけれども、畜安法の改正でそういう事態が生まれないというふうにはっきり言えますでしょうか。

○政府参考人(農林水産省生産局長 枝元真徹君) 今回、二つあろうかと思います。
 一つは、事業者の単位で参りますと、指定団体以外、指定団体を通さずにいろいろ加工される方に補給金を渡すということでございますが、ここ数年の傾向でございますけれども、今は部分委託も非常に限定的でございますので、指定団体の中から指定団体以外に完全にゼロ、一〇〇で飲用だけに行かれる方というのが増えているのはもう先生も御案内のとおりだろうと思います。
 今回のそういう補給金制度の改革、また部分委託の取組によりまして、様々な指定団体と共存しながら創意工夫をされていく方々、そういう方々が増えていくというふうに考えてございますので、そういう意味からいたしますと、補給金制度の改革によって全体としてのいろんな取組が進み、所得が上がっていくというふうに思ってございます。
 また、指定事業者の方に関しましては、午前中も申し上げましたけれども、今回二つの要件に合致する場合に申請があれば指定するわけでございますが、今現在の指定団体は、その要件から見て、指定団体として今後も、申請があればの話ではございますが、になっていただけるんだろうというふうに考えてございます。
 また、それ以外の方についてもイコールフッティングでございますので、可能性として、そういう事業者の方々が指定事業者としてなり得るということではございますが、現時点においてどの程度そういうのが可能性があるかということについてはちょっとまだよく分かっていない状況でございます。

○紙智子君 現時点ではまだよく分からないと。私は、そんな自信持って絶対そういうふうにはなりませんと、全体で上がりますというふうに自信持って本当に言えるのかなというふうに思うわけですよ。酪農家の所得が全体として上がらなかったら、これは地域全体の発展にはつながらないんですね。やっぱり全体が上がらないといけないと。
 それで、今、部分委託の話も出ましたけれども、前回の質問に続いて、部分委託がこの需給調整、需給状況にどういう影響を与えるのかということについても聞きたいと思うんです。今は、生乳生産者と指定団体との取引は全量無条件委託というのが原則になっています。参考人から、全量無条件委託が効果的だという意見がありました、これ土屋参考人から出たんですけれどもね。
 そこで、全量委託原則ということについて聞きたいと思うんです。
 平成十三年の二〇〇一年、指定生乳生産者団体の受託規程についてという、これ生産局長の通知が出ています。第二条においては委託の原則、第三条においては生乳受託契約の締結を定めて、その契約は全量委託というふうにしています。そこで、この全量委託を原則にしている理由を説明してください。

○政府参考人(農林水産省生産局長 枝元真徹君) お答え申し上げます。
 まず、今先生おっしゃったのは、改正された、改正といいますか、改正のときの通知だろうと思いますが、この全量無条件委託を規程例に入れましたのは、昭和四十一年、この暫定措置法を作ったときでございます。その昭和四十一年の暫定措置法施行以前は小規模な生産者団体が乱立をいたしまして、乳価交渉力が弱くて、生産者と乳業者との乳価紛争が多発しておりました。
 それで、何回も答弁申し上げておりますが、この暫定措置法を作り、指定団体を通すものに対する加工の補給金を支給するということを通じて、生乳の一元集荷というのをやろうといたしました。その際に、当時の乳価紛争の状況から見ますと、その生乳の一元集荷に伴う交渉力を実質的に行使する必要がございました。
 これには、その団体に対して全量が、全量委託されるというのは非常に有効な手段というふうに考えられました。ただ、組合にこれを強制することはできませんので、昭和四十年十月、暫定措置法の施行令及び施行規則の公布に合わせて、模範受託の規程例と、例という形でお示しをいたしまして、これを参考に、当事者間、指定団体と組合の方で双方合意の上、生乳取引契約が締結されており、実態上は全量委託が原則といいますか、になっているという状況でございます。

○紙智子君 だから、指定団体にまとまって量を集めてそういう全量委託にして、価格交渉力もそれで付けていくということだったと思うんですよ。
 それで、この生産局通知は、これを廃止するんでしょうか。廃止されるということになると、全量委託の原則がなくなるということになるんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省生産局長 枝元真徹君) この生乳受託規程例等の生産局長通知については、今回の法律改正の趣旨でございます、酪農家が生乳の仕向け先の選択肢を広げるという観点から見直すということにしております。
 形式を廃止して新しく出すのか改正かは別といたしまして、見直す必要がございます。その際に、部分委託を今回きちっとあれするという観点からすると、その全量無条件委託というものを原則にするというつもりはございません。ただ、もちろん生乳の取引契約につきましては当事者間の協議により締結いたしますので、契約当事者間の合意があれば全量委託についても可能でございます。
 こういうことも明確になるように、改正法の施行に合わせまして、例えば廃止して新たな生産局長通知を発出して広く周知していく必要があるというふうに考えてございます。

○紙智子君 午前中も議論になっていましたけど、生乳の生産量は気温や季節や牛の体調などで左右されるわけですね。乳牛の体力が落ちる夏場というのは生産量が落ち込むと。冬から春にかけては伸びる傾向にあって、需要については、飲用牛乳のピークというのは夏場で、学校給食がない夏休みを挟んで再び伸びて、冬場が減少するというのが一般的だというふうに言われているわけですね。
 そこで、部分委託が導入されるとどうなるのかと。需要の多い夏場は乳価が高い飲用向けに独自に販売をする、売れ残った生乳を加工原料乳に充てる、飲用の需要が落ちる冬場は加工原料乳に充てて補給金を受けようというふうに経営者は考えると思います。この全量委託の原則がなくなって部分委託を行う経営者が増えれば、これ、生乳の需給調整が機能しなくなるんじゃありませんか。

○政府参考人(農林水産省生産局長 枝元真徹君) お答え申し上げます。
 御指摘のようなこともございますので、今回、改正法案におきまして、その指定事業者が生乳取引を拒むことができる正当な理由を省令で定めるということにしてございます。改正法案の十条の一項二号で、委託又は売渡しが年間を通じて安定的に行われる見込みがない場合というのを法律上例示として、具体的には省令に定めることとしてございます。
 省令の中身はこれからの検討でございますが、現在考えておりますのが、夏場に減少して冬場に増加するという生乳生産の季節変動を超えまして委託又は買取りの申出の数量が変動する取引である場合、例えば年末年始のみに指定事業者へ委託等を行うような短期間の取引である場合、自分の生乳は飲用向けだけに売ってほしいというような特定の用途仕向けへの販売を条件とする場合、生乳の品質が指定事業者の定める統一基準を満たさないものである場合、生産した生乳のうち売れ残ったものを持ち込むような取引を求められる場合には生乳受託販売を拒否する、指定団体の方が拒否することができるというふうにしたいというふうに考えてございまして、法案成立後、関係者の御意見も聞きながらできるだけ早く定めたいというふうに考えてございます。

○紙智子君 拒める中身を省令で決めていくんだと、これからなんだという話があるんだけど、衆議院の議論の中でも、担保できる保証がないということが出されていました。
 全量委託の原則がなくなれば、生乳取引や酪農間の公平性を確保して生乳需給を安定させる機能というのは明らかに弱体化をするんですね。部分委託の割合が増えれば、生乳の需給調整の機能が弱まるということの懸念はやっぱり晴れないというふうに思うんです。
 それから、北海道と都府県の間の需給調整についてもお聞きします。
 現在、生乳の流通は、全国十の指定団体が管内の乳業メーカーの需要量を把握をして、年間計画、月別計画に基づいて毎日の需給調整を行っています。そこで、北海道と都府県の関係ですけれども、北海道の酪農は、生産条件としては大消費地から遠いと、そういう立地条件を踏まえて保存性が高い乳製品向けが中心になっているということだと思うんですね。大規模な乳製品の工場が各地に立地をされて、地域経済を支える重要産業として発展をしてきました。他方、都府県は、大消費地に近いという立地条件があって、飲用向けの生乳が主力になるわけです。そして、都府県で生乳が不足した場合には北海道から送ると。北海道の生乳は、都府県との需給調整の役割も果たしているわけです。
 この都府県の調整がどうなるんでしょうか、これから。

○政府参考人(農林水産省生産局長 枝元真徹君) 北海道と都府県のみならず、現在、指定団体がほかの指定団体の地域にあります乳業者へ生乳を販売するような場合に、今先生おっしゃいましたとおり、それぞれの需要、供給、そういうことをやるために、円滑にそこの取引を行うために、例えば全農などの全国連に販売を委託して、全国連が当該乳業へ生乳を販売するというような取引を行っております。これはもうまさに指定団体といいますか、農協、農協連相互間に取引をしておりまして、これに国が関与するものではございませんけど、今回の法律が仮に通ったとして、施行された後もこういうことは必要ですし、今後も行われるんだろうというふうに考えてございます。
 なお、制度論で、ちょっと技術的でございますけれども、こういう取引を行った場合に、それが仮に加工に仕向けられたとすると、その全農に販売を委託しますと、何も規定がないと、全農に対してまず補給交付金を支払って、全農から農家に払うという仕組みになるので、現行の法律もそうでございますし、改正法案もそうでございますけど、そういう場合は委託元の指定団体、例えば全農に委託したとしても、ホクレンに対して補給金を交付するという規定を改正法案の二条四項一号で設けているところでございます。

○紙智子君 だから、生産者団体が全体として行っていく、非常に大事な役割担っているんですけど、北海道と都府県の需給調整が可能になるのは、やっぱり生乳の無条件の販売委託、一元的な集荷があるからだというふうに思うんですね。
 次に、EPA等の通商交渉と畜安法の関係についてお聞きします。
 畜安法改正案の趣旨には、我が国の生乳生産量及び飲用牛乳需要が減少する傾向にあると書かれています。今、日本では人口が減少しつつありますけれども、この飲用の需要が伸びないということなんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省生産局畜産部長 大野高志君) お答え申し上げます。
 飲用牛乳等向けの生乳処理量につきましては、平成六年の年間五百二十六万トンをピークとしまして近年減少傾向で推移しておりまして、平成二十八年度は三百九十八万トンとなっております。
 このような牛乳等の消費量の減少につきましては、茶系飲料やミネラルウオーターといった他飲料との競合が激しいこと、また、少子化による学校給食用牛乳の供給量の減少等によりまして消費量の大幅な伸びが見込み難いこと、こういった要因によるものでありますことから、今後とも基本的には減少傾向で推移するものと考えております。

○紙智子君 加えて、概要には、今後需要の増加が見込まれる乳製品に生乳を仕向けるとあります。牛乳・乳製品の生産・流通等の改革という農水省の資料がありますけれども、そこには、生クリーム等の液状乳製品向けやチーズ向け生乳処理量が順調に増加をし、消費の増加が見込まれるというふうに書かれています。そして、飲用向けは、平成二十七年、二〇一五年の三百九十五万トンが十年後、平成三十七年には約三十六万トン減って三百五十九万トンになると、乳製品向けは、約三百四十万トンですけれども、これ十年後には約四十六万トン増えて三百八十五万トンに増えると予測しているわけですね。つまり、生乳の処理量は、五年後、平成三十四年頃には飲用向けと乳製品向けが逆転するというふうに予想しているんですよね。
 この乳製品向けが伸びているのは分かるんですけれども、飲用と逆転するということになるんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省生産局畜産部長 大野高志君) お答え申し上げます。
 近年、生乳の使用量につきましては、牛乳等向け、御指摘のとおり減少傾向で推移しておりまして、乳製品向けにつきましては、脱脂粉乳、バター向けが低下する一方で、生クリーム等の液状乳製品向けやチーズ向け、順調に拡大しているところでございます。
 今後の見通しとしましては、牛乳等向け、引き続き減少傾向で推移する一方で、液状乳製品やチーズの消費量が引き続き増加することが見込まれまして、乳製品向けの生乳処理量は増加していくものと考えております。このため、将来的には、乳製品向けの生乳処理量、飲用牛乳等向けを上回っていくものと考えておりまして、酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針における長期見通しにおきましては、現状からその平成三十七年度まで一定の割合で推移すると仮定した場合に、平成三十五年度にその乳製品向け需要が飲用牛乳向けを上回ると見込んでいるところでございます。

○紙智子君 日本国内では今後乳製品の需要が伸びると想定されているということなんですね。
 それで、乳製品は、TPPや今交渉が行われている日欧のEPAで焦点になっている分野だと思います。TPPでは、脱脂粉乳やバターでTPP枠が設定されると、チェダー、ゴーダ等の熟成チーズ、それからクリームチーズの関税はいずれ撤廃されるわけですね。日欧のEPAでは、TPP以上の譲歩が迫られるという報道もあるわけです。乳製品は、日欧のEPAにとどまらず、日本の今後の通商交渉の重要な焦点になるんだと、そういう認識でしょうか、大臣。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 国民生活にとって最も基本的な物資でございます食料供給という、このことにおいて私どもしっかりと国内生産を確保していかなきゃなりません。また、このチーズや乳製品等、脱脂粉乳、バター等でTPP合意もございましたが、そういうような意味も含めて、今後しっかりと対応していく決意でございます。
 特に、農林水産業の重要性に鑑みて、我が国の農林水産業を守っていくために、貿易、生産、流通実態等を一つ一つ勘案して、そのセンシティビティーに十分配慮しながら今後こうした貿易交渉に臨んでいきたいというように思っております。

○紙智子君 聞いていることにちゃんと答えになっていない答弁なんです。だけど、ちょっとこれでまた繰り返し聞くと同じような答弁になると思うので。
 日豪のEPA、こっちの方は、プロセスチーズやシュレッドチーズの原料用のナチュラルチーズなど、一定量の国産品の使用を条件に無税枠を設定しました。TPP等でこの乳製品の輸入が増える可能性があると。一方、国内では生乳を乳製品に仕向けると。つまり、供給量が国産でも輸入でも増える。人口が減少傾向を続けている中で供給過剰になる可能性もあるんじゃないかと思うんですけれども、一体これはどこが需給調整するんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省生産局長 枝元真徹君) 需給調整と申しますか、通商交渉の問題だろうと思いますが、乳製品が無秩序に輸入されますと、乳製品のみならず牛乳を含めた牛乳全体の国内需要に影響を及ぼすことから、バター、脱粉等について現在国家貿易の対象とするなど、その無秩序な輸入を防止しているところでございます。
 我が国の酪農をしっかり守っていくために、国際交渉に当たりまして、引き続き、貿易、生産、流通実態等を一つ一つ勘案して、そのセンシティビティーに十分配慮しながらしっかり交渉に取り組んでまいりたいと存じます。

○紙智子君 需給調整するのどこですかと聞いたんだけど、できないんでしょう。結局、市場に任せることになるから、できないんですよ。
 それで、EPAでは国内価格よりも安い価格で乳製品が入ってくる可能性があるわけです。北海道の酪農は加工原料乳が中心になっています。輸入で打撃を受けて、この畜安法の改正で指定団体が持つ需給調整機能が弱まれば、生産基盤が更に弱体化する可能性があるんですね。
 北海道では離農に歯止めが掛かっていない。先ほど、午前中、徳永さんもどれだけ離農しているかというのを示しましたけれども、この改正で新規就農者が増えて離農に歯止めが掛かるというふうに言えるんですか。

○政府参考人(農林水産省生産局長 枝元真徹君) この法律の改正によりまして、乳製品の需要に対して様々な創意工夫を持った意欲のある生産者に対していろんな支援ができるというふうに思ってございます。
 当然ながら、この法律だけでということではなくて、様々な生産基盤の対策、労働環境の問題、様々な課題がございますので、それを総合的にやっていくということだろうと思っております。

○紙智子君 本当に心もとないなと思うんですよ。日本の酪農経営を支援をして支えるためには、この日欧のEPA交渉においても、日本の酪農をしっかり守る、そういう立場でやらなきゃいけないということですよね。そして、酪農経営の自由な選択肢という言い方で暫定措置法を廃止するのをやめるべきだと思いますよ。指定団体が持つ需給調整機能、これむしろ強化しなきゃいけない、これが酪農を支援する最も近い道だと思います。
 これ、国がやるということで、大臣、いかがですか。見解を求めたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 今現在ある制度のままで消費者需要に対応したり、あるいは酪農家の経営の所得を上げたりという考え方も、努力で一つはあり得るとは思いますけれども、新しい考え方の下に、特色ある商品あるいは販売先、こういったものを開拓していただくことによって全体としての牽引力を付けて、言わば特色、付加価値あるそういう製品が出てくることによる刺激というようなことが一つ今の状況の中で求められているテーマではないかというように思っております。
 したがいまして、この日EUの合意等がありましても、国産の優れた品質のチーズ、乳製品が言わば安定的な価格で供給されるということになれば、私は、どのようなものが入ってこようが国内の酪農家の皆さんが頑張っていけるというように思っておりますので、そうしたことの一つのきっかけになりたい、なれればというように思っておる次第でございます。

○紙智子君 繰り返し希望的な話はされるんですけど、実際に外から入ってくること考えたときに、ちゃんと需給調整を行うという機能を持たないと壊れていくことになると思うんですよ。
 ちゃんと、もう一回きちっと答えてもらえますか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) この法案の目的の中に、畜産物の需給の安定等を通じた畜産経営の安定を図ることを明記をさせていただいております。さらに、制度を適切に運用することによって、生乳の需給の安定を通じた酪農経営の安定も図っていくということを政府の責任とするわけでございます。
 また、乳製品が無秩序に輸入されると、乳製品のみならず、牛乳を含めた生乳全体の国内需要に影響を及ぼすわけでございますので、バターや脱脂粉乳について国家貿易の対象とするなどして乳製品の無秩序な輸入は防止させていただくというように考えるところでございます。

○委員長(渡辺猛之君) 時間が参りましたので、おまとめください。

○紙智子君 はい。時間が来ましたので。
 本当に国内生産重視するんだったら、EPAなども含めて、経済交渉でしっかりと日本の農業を守るということでやらなきゃいけないということと同時に、指定団体が担ってきた一元集荷多元販売、これを壊すんじゃなくて強化をする、支援をすることこそが求められていると思います。農協解体の一環である改革をもうやめるべきだということを強く求めて、質問を終わります。