<第193回国会 2017年5月25日 農林水産委員会>


◇農村地域工業等導入促進法の一部改正案に対する反対討論

○農村地域工業等導入促進法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党の紙智子です。
 日本共産党を代表して、農村地域工業等導入促進法の一部改正案に反対する反対討論を行います。
 改正案に反対するのは、安倍政権が進める農業の構造改革、農地の集積、集約化に従うことを条件に農業誘致を進めるものだからです。
 安倍政権は、日本再興戦略で、今後十年間で全農地面積の八割が担い手によって利用され、米の生産コストを全国平均四割削減することを目標にしています。改正案は、政府が進める農業の構造改革に合わせることを明確にするために、目的に農地の集団化その他を加え、任意であった農業構造の改善に関する目標を義務規定に変えることで、都道府県の基本計画並びに市町村の実施計画に縛りを掛けるものになっています。地方の自主性、創意性を生かすことこそ重要です。
 また、改正案は、農村地域への導入促進の対象となる工業等五業種の限定要件を撤廃し、サービス業等にも拡大するものになっています。業種指定を廃止することで農産物産直販売所等の小売業、農家レストラン等などの参入が可能となりますが、一方で、農地転用の許可権限が大臣から地方自治体に移譲されている下で、安易な農地転用等を行われる危険性もあります。既に利用されていない遊休工業用地が約千四百ヘクタール、農地転用の目的が達成されませんでした。企業誘致が破綻した事例は全国各地にあります。同じ道を歩む必要はありません。全国で工業跡地等が増加する中で、新たに企業誘致のための農地の転用を進める必要性もありません。
 さらに、農業を基幹産業と位置付ける自治体にとっては、農業の振興と地域の営農を支えてきた農業関連企業の発展は一体のものです。本法を改正して農村地域に一般企業を誘致すると言いながら、農業競争力強化支援法案で農業関連企業のリストラ撤廃を求める合理的な理由もありません。
 以上を申し上げ、反対討論とします。

―――(略)―――

○委員長(渡辺猛之君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
 これより採決に入ります。
 農村地域工業等導入促進法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。

   〔賛成者挙手〕

○委員長(渡辺猛之君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、徳永君から発言を求められておりますので、これを許します。徳永エリ君。

○徳永エリ君 私は、ただいま可決されました農村地域工業等導入促進法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・こころ、民進党・新緑風会、公明党及び日本維新の会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。

    農村地域工業等導入促進法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  農村の高齢化・人口減少が進む中で、優良農地を確保しつつ、農業の持続的な発展を図るとともに、農村地域における就業の場を確保し、農村の機能を維持していくことが重要である。
  よって政府は、本法の施行に当たり、次の事項の実現に万全を期すべきである。

 一 国が策定する基本方針において、既存の産業導入地区内に造成済みの遊休地がある場合にはその活用を優先させることを明記すること。また、農業と導入産業との土地利用調整を行う際には、農用地区域外での開発を優先させるとともに、農業上の効率的な利用に支障が生じないようにすることを明記し、優良農地の確保に努めること。加えて、今国会で改正された土地改良法に基づく農地中間管理機構関連事業で費用負担を求めずに事業を実施した農地については、少なくとも農地中間管理権の存続期間中は産業導入地区に含めないことを明記すること。
 二 都道府県の基本計画の策定及び市町村の実施計画の策定に当たっては、産業の施設用地と農用地等の利用調整が適切に行われるよう、必要な指導・助言を行うこと。
 三 法施行後の土地利用の調整の状況について検討を加え、優良な農地が十分に確保できなくなるおそれがあると認めるときは、所要の措置を講ずること。
 四 農村地域へ導入される産業の業種が拡大されることに鑑み、農地法に基づく農地転用許可の特例や、農業振興地域の整備に関する法律の農用地区域からの除外の特例については、その厳格な運用に努めること。
 五 農業・農村の維持発展のため、新規就農者の確保や農業の多面的機能の発揮に努めるとともに、産業を導入するに当たっては、六次産業化など地域に賦存する資源を活用する地域内発型産業の導入を推進し、農業と導入される産業の均衡ある発展及び雇用構造の高度化に資するものとなるよう、また、農村地域の自然環境や生活環境の保全に十分配慮するよう、都道府県及び市町村に対して指導・助言を行うこと。
 六 農村地域に導入される産業に地元住民及び地域への移住者が円滑に就業できるよう、雇用情報の収集・提供等の必要な支援を行うよう努めること。
   右決議する。

 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

○委員長(渡辺猛之君) ただいま徳永君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。

   〔賛成者挙手〕

○委員長(渡辺猛之君) 全会一致と認めます。よって、徳永君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。