<第193回国会 2017年5月23日 農林水産委員会>


◇加計学園/農水省は特区諮問会議の原案に「コメントなし」と回答/諮問会議で「期待する」と発言/国産材の家具支援を「しっかり支援する」、農水省答弁

○農林水産に関する調査(国家戦略特別区域における獣医学部の新設に関する件、国産広葉樹材の需要拡大に関する件)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 安倍首相が腹心の友と呼ぶ人物が理事長を務める加計学園について質問いたします。
 昨日、我が党の小池晃書記局長が参議院の決算委員会で質問しました。昨年十一月九日に安倍首相を議長とする国家戦略特別区域諮問会議が開かれて、現在、広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能にすることが決まりましたが、その原案を独自に入手して質問したわけです。
 原案から決定文書に至る過程についてお聞きします。
 山本地方創生大臣は、昨年の十月下旬頃、特区ワーキンググループでの文科省、農水省での議論や、獣医学会、獣医師会などから出された慎重な意見などから総合的に判断して、まずは地域を限定することで意見に十分配慮することが適当であると判断したというふうに言いました。その上で、内閣府の事務方に取りまとめの原案作成を指示したと。そして、昨年の十月二十八日に内閣府の事務方が文部科学省の高等教育局、十月三十一日に農水省の消費・安全局に原案を提示しましたと。農水省からは原案についてのコメントはございませんでしたと答えられました。
 大臣、農水省はこれ、コメントをしなかったんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) コメントしておりません。

○紙智子君 コメントをしなかったのはなぜですか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 格別異論があるわけではないということが趣旨と、もう一つは、積極的に所管外の事項についてあえて申し上げることもないという、二つのことがございます。

○紙智子君 所管じゃないと。
 これ、コメントしないというのは、コメントしませんと回答したんですよね。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) コメントなしと回答しております。

○紙智子君 じゃ、そのコメントなしと回答した文書を提出していただけますか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) これは個々の政策の意思決定過程に関わることなので、この文書の提出は控えさせていただきたいと思います。

○紙智子君 それは理解できないんですよね。大体、いろんなやり取りというのは、口頭でということはないと思うんですよ、紙でやり取りしていると思いますから。
 委員長にお願いします。これ、是非文書を出させるようにお願いします。

○委員長(渡辺猛之君) 後刻理事会で協議いたします。

○紙智子君 それで、なぜコメントをしないという回答だったのかというのは、よく分からないんですよ。
 それで、昨日の決算委員会において、山本地方創生大臣は、文科省から十月三十一日に内閣府に対して意見の提出があったというふうに答弁されました。私たちが入手した文書によりますと、文科省は、獣医師の需要を所管する農林水産省及び厚生労働省において、今後の獣医師の需要の動向を明らかにした上で今治市の構想を考える。既にここで今治という名前が出てくるんですけれども、加計学園には、でも慎重だったようなんですよ。
 文科省が言っているのに、なぜ農林水産省が需要の動向を明らかにする必要があるんだというふうに回答しなかったんですか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 既に臨時委員として意見を求められましたときには、私の所感を申し上げ、地域的に偏在をしていて、特に広域的に、地域によっては獣医師、特に産業動物医、あるいは公務員獣医師が少ないということは既にコメントしてありますので、それ以上のコメントはございませんでした。したがって、十一月一日はコメントなしと回答を申し上げました。

○紙智子君 獣医師を所管する農水省としては、内閣府の原案に対して、結局コメントなしということは、原案を黙認したということになるわけですよ。
 それだけじゃなくて、その後、あるんですけれども、日本獣医師会等、関係者の理解を得られるように、農林水産省は責任を持って意見調整を行うこととも言っているわけですね。なぜ内閣府は、こういう意見が文科省から出ているのに、農林水産省と調整しなかったのか。農水省は、文科省から出された意見を内閣府から聞かれましたか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 文科省からのそうした意見について、問合せはございませんでした。

○紙智子君 昨日の質問で、文部科学大臣は、三省で調整してきたというふうに答弁しているんですよ。三省で調整してきたと。
 山本地方創生大臣は、十一月二日に関係省庁間の事務的な調整を終えたんだというふうに言っているんですけれども、これはいつ調整したんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 最終的に調整が終わりましたのは、十二月二十二日に三大臣合意文書を作り上げたときでございます。

○紙智子君 それ、結論だけあるんですけれども、先ほど櫻井委員が質問というか要求されていましたけれども、やっぱりこの経過が、その間が見えないわけですよ。調整したと言うんだけれども、そこのやり取りとか、意見表明でどんなやり取りがあったのかということあるはずなのに、それがすっぽり抜けているわけですよ。これは全然納得いかないわけですよ。これ、その過程について是非出してほしいと思うんですけど。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 私が調整をさせていただくべき立場にはありません。したがいまして、獣医師を所管する、特に産業動物医と公務員獣医師の需給について計画をさせていただく立場といたしまして一つの意見をまとめ、そしてそれを終始一貫どのような会でも申し上げてきたわけでございまして、そうした趣旨が盛り込まれている取りまとめ文書につきましては、私はコメントなし、すなわち了解という判断をさせていただきました。
 あとにつきましては、私ども全くあずかり知らない分野でございますので、質問にお答えしようがないということでございます。

○紙智子君 とにかく、その途中の経過が分からないんですよ。
 それで、先ほど櫻井委員も要求しましたけど、この途中のプロセス、これを提出するように委員長にお願いします。

○委員長(渡辺猛之君) 後刻理事会で協議いたします。

○紙智子君 昨年の十月末というのは、農水大臣はTPPの質疑をいろいろやっていたときで、採決をにおわす発言をしていたときなんですね。だから獣医師どころではなかったのかもしれないと思うんですけれども、しかし、十一月の九日に行われた国家戦略特区の区域諮問会議、これはちょっと違うんですね。山本地方創生大臣は、計画案は山本農水大臣の同意をいただいているというふうに言って、山本農水大臣はそこに出席をしていた、その会議に出席をしていたと。産業動物獣医師の確保が困難な地域があるので、解決につながる仕組みになることを期待したいというふうに発言をされているわけですよ。
 農水省の従来の見解というのは、獣医師の需要は全体としては足りているということだったわけですね。獣医師が確保できるように、本来だったら全国的な支援とか調整をしなければならないわけですけれども、そうではなくて、一気に特区に飛び付こうとしたわけですよ。この見解の変更はいつ、どこで議論されたんですか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 獣医師の需給につきましては、終始一貫、全体としては需要と供給のバランスは整えられているという認識であることは伝えさせていただいております。
 ただ、家畜とペット、言わばそれぞれ獣医師さんの専門分野が違っておりまして一概に言えないわけでございますが、ペット一頭当たりの診療回数が増加しておりまして、ペットの数は少なくなっているものの、都会におけるペットの獣医師さんの需要というのはかなりあるものと認識しております。
 ただし、酪農、畜産の盛んな地域におきます産業動物医、獣医師あるいは公務員獣医師の皆さんは不足感がかなりあるわけでございまして、その需給バランスをどう整えていいのか、そういったことについては私ども、獣医学部やあるいは獣医師会の皆さんが是非やっていただきたいと期待を掛けていたわけでございます。
 しかし、長年の経過の中で、なかなかそうした需要、ニーズ、地域的な偏在というのは埋まらないわけでございまして、その意味において、この学校が地域的に不足感のある四国で開かれるということに対しましては、率直な意見として、この地域の獣医師、特に産業動物獣医師の皆さんが地域に残ってくださればという思いを申し上げたわけでございます。
 こうした点を常に申し上げているだけのことでございまして、全体として獣医師に需給バランスが崩れているというところを申し上げたことは一回もありません。

○紙智子君 結局、思いはいつも言っているということなんだけれども、今私聞いたのは、いつ今までの主張していたことを変更されたのか、どこで検討したのかということを聞いたわけで。いや、答えはいいです。
 このあと、結局、十二月二十二日には、内閣府と文科省と農林水産省の三大臣の合意に至るわけですよね。加計学園ができれば、これ新たに獣医師になる方が出てくるわけです。獣医師の需要は足りているというふうに言っていた農水省は、従来の見解を変えた経過が全く分からないんです。なぜ期待するとまで言って加計学園の設置に飛び付いたのかということなんですね。
 安倍総理は諮問会議で岩盤を一つ壊したというふうに自慢しているわけですけれども、安倍総理のお友達のために税金を使うとか政治の私物化するということは、これ本当にやめるべきだと思いますし、農水省は本来の役割を果たすように強く求めておきたいと思います。
 それで、あと残りの時間でちょっと林野の問題を質問したいと思います。
 それで、林野庁の委託事業で、多様な木材需要に対応するための需給動向調査が行われていますけれども、それについてお聞きします。
 これがどのような調査で、なぜ調査したのかということと、それから、家具製造者、製造業者などの需要者にも意見や要望を聞いたんだと思うんですけれども、どのような意見や要望が出されたのか、まとめてお答えいただければと思います。

○政府参考人(林野庁長官 今井敏君) お答えいたします。
 この調査につきましては、我が国の広葉樹材の資源量等を調査したものでございますけれども、我が国の広葉樹材につきましては、昔から家具用やチップ用に利用されてきたところでございますけれども、近年、輸入広葉樹材の減少等を背景といたしまして、もう少し国産広葉樹材を供給してもらえないだろうかといった声が高まっていたところでございます。
 こうした声を受けまして、農林水産省では昨年、平成二十八年度に、国有林内の広葉樹資源の利用可能量を推計するとともに、広葉樹林材のニーズを把握するため、この多様な木材需要に対応するための需給動向調査というものを実施したところでございます。
 この調査におきましては、国内の広葉樹の主な需要先として期待できます全国の家具製造業者等四十七社にヒアリングを行ったところでございますけれども、そこにおきましては、国内の広葉樹資源について長期的かつ安定的に供給してほしい、あるいは今まで利用されてこなかった樹種について新たに用途開発をしてほしい、広葉樹について国産材や北海道産材等の地域材としてのブランド化を図ってほしい、国産広葉樹材について消費者へのPRを強化してほしい等の要望があったところでございます。

○紙智子君 この調査が国有林内の広葉樹の調査をされたということなんですけれども、この広葉樹は家具にも多く使われているわけです。ところが、一定の量はあるものの、チップやバイオマス中心のため、家具向けの国産の広葉樹が不足しているというふうにも聞いています。調査では、輸入広葉樹の高騰ですとか入手困難が高まっていると、いずれの地域でも安定的に供給されれば利用したいという要望が出されているというふうに聞きました。
 この調査結果を踏まえて、これを取り組むに当たってどんな課題があり、今後林野庁としてはどう取り組んでいくのかということについてお話しいただきたいと思います。

○政府参考人(林野庁長官 今井敏君) お答えいたします。
 多様な木材需要に対応するための需給動向調査、この調査によりまして、国産広葉樹に対しまして一定の需要があることが判明いたしました。今後、その安定供給を図りながら、家具等への利用拡大に努めていくことが重要な課題だと認識しております。
 このため、今後、農林水産省といたしましては、広葉樹資源と需要のマッチングを図るということと、家具利用等に向けた新たな技術や製品の開発、あるいは展示会や表彰事業等による消費者へのPRなどを通じまして、地域振興にもつながる国産広葉樹材の需要の拡大と利用の促進を図ってまいりたい、このように考えております。

○紙智子君 全国屈指の家具生産地と言われている福岡県の大川市、ここでは、一一年度から国産材の活用調査事業として、大学や地元のインテリアデザイナーや家具製造業者、行政などの関係機関が連携を取って国産材を使用した製品の開発と普及に向けた取組が進められています。針葉樹一辺倒だった植林を見直して、家具に利用可能なわせの広葉樹、センダンを植林する取組を始めているということですし、北海道でいいますと、旭川家具工業協同組合が二年前から道産の広葉樹を使った家具作りに移行する取組をスタートさせています。道産材を使った家具をアピールするパンフレットやラベルを付けるなどしてやっているわけです。ミズナラについては、十年以上前から植林するなどの広葉樹の植林事業にも取り組んでいます。
 農林水産大臣にお聞きしますけれども、こうした国産材活用に向けた取組についてどのように評価されているのか、お聞きしたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 今後、森林資源を活用していく上におきまして、単に環境に合ったCO2の発生抑制に対する措置という面が一つと、やっぱり森林資源を活用するということによって初めて環境に資するものという考え方とを二つ合わせて実行していかなきゃなりません。
 そのために、この秋ぐらいに森林環境税の議論もしていただけるように聞いております。大きなお金を入れる以上は森林について更に見直しをしていく必要がございます。そのときにおいて、広葉樹でその資源を生かした家具、特に大川家具、府中家具、徳島家具、静岡、飛騨というように産地もございます。その時々、その地域の皆さんが地域振興にもなるように、そうした意味での国内需要を伸ばすということを支援していきたいというように思っております。

○紙智子君 今日は、国有林内の広葉樹の調査を初めて行ったということもあったので、広葉樹が多く使われている家具に光を当ててお聞きしましたけれども、国産の広葉樹材を安定的に供給して、国産材を使用した家具製品の普及拡大に向けた家具製造業への支援というのも、やはり木材利用の促進、適切な森林管理につながるんじゃないかというように思うわけです。
 国産材を使った家具の良さということでは、やっぱり多くの人から、ぬくもりが感じられるとか、木の香りがして心が和むとか、そういう声も聞かれているわけです。それから、道産材を使っている家具を作る職人さんなどは、木が生きた歳月だけ、つまり百年掛かっていればそれだけ家具としても使ってほしいというようにおっしゃっていて、家具を使う人は職人さんの思いが伝わってくるという話も聞きました。
 是非、国産材の需要拡大のために、国として踏み込んで大いに応援していただきたいと思うんですが、最後にそのことについてのお考えを一言お聞きしたいと思います。

○委員長(渡辺猛之君) 時間が来ておりますので、お願いします。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 今後しっかり支援をしていく、そういう検討に入りたいと思っております。

○紙智子君 終わります。