<第193回国会 2017年5月18日 農林水産委員会>


◇加計学園、説明責任を果たせ/農業者の同意を不要にする土地改良事業/公共性、公益性、明らかにならず/地域の共同で進める農地管理に混乱が生まれる恐れ

○土地改良法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 冒頭、法案の質疑に先立って、この間、当委員会でも櫻井委員や森委員を始め繰り返し取り上げられてきました獣医学部、加計学園の新設をめぐって、安倍総理の意向が強く働いていたことを示す文部科学省作成と言われる文書の一部が明らかになりました。先ほどの副大臣とのやり取りを聞いていても、大体この事実に近いのかなと思いながら聞いていたわけですけれども、これが事実とすれば、この間の答弁は一体何だったのかなと、国会軽視そのものだと強く抗議をしたいと思うわけです。
 先ほども質疑がされておりましたけれども、文書の中には山本農水大臣の名前も出てきますから、ですから事実確認やあるいは真相解明というのは本当に必要だと思います。問題解明のために資料を積極的に提出するなど、説明責任を果たすべきだと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) もとより、いただいた情報についてできるだけ開示をさせていただきたいと思っております。

○紙智子君 事実解明のためにやはり要求された資料を速やかに提出するように求めておきたいと思います。
 そして、加計学園の問題は新たな段階に入ってきているわけで、当委員会においても、この問題についても集中的な質疑時間を取っていただきたいということを要求をしておきたいと思います。

○委員長(渡辺猛之君) 後刻理事会で協議いたします。

○紙智子君 それでは、土地改良法の一部改正案についてお聞きします。
 この法案は、昨年十一月に決定をした農業競争力プログラムに沿って出されました。真に必要な基盤整備を円滑に行うための土地改良制度の見直しにおいて、農地中間管理機構が借り入れている農地について、農業者からの申請によらず、都道府県営事業として、農業者の費用負担や同意を求めない基盤整備事業を実施できる制度を創設する、その際、公共性、公益性を確実に担保するというふうにあります。法律案の概要にも、新事業の要件ということで四つ書かれています。面的なまとまりがある、それから借入期間、集団化、収益性、これが相当程度あるとなっているわけです。
 公共性、公益性を具体的に担保するというのであれば、これ何をもって相当程度というのか、まず政府参考人と、その後大臣にお聞きします。

○政府参考人(農村振興局長 佐藤速水君) お尋ねのこの四つの要件の詳細でございますけれども、地域の実情ですとか担い手の経営状況、あるいは要件を設けました委員御指摘の公共性、公益性、こういった趣旨等を踏まえまして、今後早急に詰めてまいりたいというふうに考えてございます。

○紙智子君 これは相当程度というところについてお聞きしたんですけれども、大臣はどうでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 地域の実情を踏まえながら担い手の経営状況、さらにこの要件を地域地域でそれぞれ当てはめながら、趣旨を踏まえて農地の集積、集約化、これに資するものであるように客観的に考えていきたいというように思っております。

○紙智子君 何をもって相当程度というのかと聞いたんですけど、なかなかちょっと答えがはっきりしないと思います。
 それで、その要件のうち収益性についてお聞きしたいんですが、事業実施地域の収益性が相当程度向上することというふうに書いてあります。それで、二〇一五年の水田作の農業経営統計調査で、経営規模別の収益性というのが公表されています。農業所得については、作付面積十アール当たりの農業所得と家族農業労働一時間当たりの農業所得の金額が出されています。十ヘクタールから十五ヘクタール、十五ヘクタールから二十ヘクタール、二十ヘクタール以上、この金額について御説明をお願いします。

○政府参考人(農林水産大臣官房統計部長 佐々木康雄君) お答えいたします。
 今御指摘の二〇一五年の水田作経営の稲作部門における作付面積十アール当たりの農業所得、それから家族農業労働一時間当たりの農業所得でございますけれども、まず、作付面積規模が十から十五ヘクタール階層におきましては、それぞれ三万六千円、二千六百七十四円となっております。次いで、十五ヘクタールから二十ヘクタール階層におきましては、それぞれ四万七千円、三千九百七円。それから、二十ヘクタール以上階層におきましては、それぞれ三万四千円、三千五百五円となっているところでございます。

○紙智子君 今お答えいただいたように、作付面積十アール当たりの農業所得は十五ヘクタールから二十ヘクタールというのが一番高くて四万七千円。二十ヘクタール以上は三万四千円なので、一万三千円下がっているわけですね。ちなみに、五ヘクタールから七ヘクタールが四万円で、七ヘクタールから十五ヘクタールが三万六千円ですから、二十ヘクタールよりも農業所得は高いということになるわけです。家族農業労働一時間当たりの農業所得は、十五ヘクタールから二十ヘクタールが三千九百七円、二十ヘクタール以上になると三千五百五円に下がっていると。つまり、十アール当たりで見ても一時間の当たりで見ても、規模を拡大して二十ヘクタール以上になると農業所得は下がっているわけです。
 今回、農地中間管理機構が行う新事業というのは収益性が相当程度向上するということを担保にしているわけですけれども、農業所得はどの程度上がるんでしょうか。大臣。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 農業競争力強化を図るためこうしたことをやっておるわけでございますが、一般的に収益性を向上させるためには、販売額を増加させる、生産コストを減少させる、この要因で決まるわけでございます。米について申し上げれば、ブランド米や米加工品の付加価値を高める取組により販売額の増加を期待すると。
 平成二十五年の圃場整備の完了地区における米の生産コストを見て、一ヘクタール当たりの区画に整備した場合、六十キロ当たり一万二千二百円から八千七百円に減少しているという、そういう事実、収益性を向上させるにはこれは必要ではありますけれども、今後、こうした収益性の詳細な分析を踏まえて算定をしていきたいと思っておりますが、手元には、数字としてその目標についてのまだ確かな値段あるいは価格というものを持ち合わせてはおりません。

○紙智子君 まだ手元には確かなものがないということなんだけど、収益性が相当程度と言っているわけで、それがどう関わるかということが示されなかったら、これ担保にはならないと思うんですよ。
 昨年の九月に規制改革推進会議に提出をしている生産資材価格の引下げに向けてという資料の中に、農家の生産費が出されています。全農家と十五ヘクタール以上の農家の十アール当たりの生産費、六十キロ当たりの生産費が出されているんですけれども、これも簡潔に説明してください。

○政府参考人(農林水産大臣官房統計部長 佐々木康雄君) 二〇一三年でございますね。

○紙智子君 はい。

○政府参考人(農林水産大臣官房統計部長 佐々木康雄君) お答え申し上げます。
 二〇一三年の十アール当たり及び六十キログラム当たりの米の全算入生産費につきましては、全農家平均で見ますと、それぞれ十三万四千四十一円、六十キロ当たりが一万五千二百二十九円、それから、作付面積規模が十五ヘクタール以上層におきましては、それぞれ十万一千九百一円、一万一千四百二十四円となっているところでございます。

○紙智子君 安倍政権は日本再興戦略で、今後十年間で全農地面積の八割が担い手によって利用されて、米の生産コストを四割削減するというふうに言っているわけです。
 先ほど二〇一三年の統計を紹介していただきましたけれども、最新の統計、二〇一五年でいえば、全農家と十五ヘクタール以上の十アール当たりの生産費、六十キロ当たりの生産費がどうなったか、説明をしてください。

○政府参考人(農林水産大臣官房統計部長 佐々木康雄君) お答えいたします。
 最新の数値は二〇一五年の数値でございます。それで、全農家平均の数値から御紹介いたしますと、十アール当たりでは十三万三千二百九十四円、六十キログラム当たりでは一万五千三百九十円となっております。それから、作付面積十五ヘクタール以上層の米の全算入生産費につきましては、それぞれ十万一千五百二十二円、一万一千三百九十四円となっているところでございます。

○紙智子君 安倍政権が誕生した直後の二〇一三年から二〇一五年でどう変わったのかということでいうと、十アール当たりの生産費でいえば、全農家が十三万四千四十一円から十三万三千二百九十四円、つまり七百四十七円下がっただけ。十五ヘクタール以上の農家でいってみても三百七十九円下がっただけです。それから、六十キロ当たりの生産費では、全農家は一万五千二百二十九円から一万五千三百九十円、生産費は百六十一円増えています。十五ヘクタール以上の農家でいえば、一万千四百二十四円から一万千三百九十四円で三十円下がっただけなわけです。
 規模を拡大して農業所得が増えるのかといえば、十アール当たりを見ても一時間当たりを見ても、二十ヘクタール以上になると農業所得は下がっていると。生産費は二〇一三年からほとんど変わっていないわけです。農地中間管理機構の新事業というのは、収益性は相当程度向上することが担保であると言っているわけですから、これ合わないわけですよね、全然分からないと。
 それで、まずこの問題が一つです。それからもう一つ、土地改良事業、これについての手続についてお聞きします。
 土地改良事業を行うに当たって、現行法では事業参加者全体の三分の二以上の同意が必要になっていると。これは言い換えれば、三分の一の同意は必要としないということになるわけです。なぜ三分の一の農業者の意思を排除しているのでしょうか。

○政府参考人(農村振興局長 佐藤速水君) この現行の土地改良法では、事業参加資格を有する農業者の三分の二以上の同意、これに基づきまして事業を実施できることとされております。その同意の意味でございますが、実施地域内の事業参加資格者に費用負担を求めるために行うものでございます。したがいまして、事業参加資格者の三分の一の同意がなくても、三分の二以上の同意で事業を実施可能としております。
 その理由でございますが、この土地改良事業と申しますのは、土地ですとか水のつながりによります一定の地域を対象として実施される事業でございますので、地域全体の合意形成を図る必要がございます。また一方で、生産性の向上ですとか生産の増大といった地域農業の発展に資する事業でありますので、地域の多数の農業者が賛成している場合には、少数の反対者が存在したとしてもこの事業を実施することが適当であるといった考えによるものでございます。
 少数の反対者がいても土地改良法上は事業参加資格者の三分の二以上の同意により実施できますけれども、できる限り地域の事業参加資格者の理解と協力を得ることが重要でございます。このため、事業の実施に当たりましては、反対する方も含めた事業参加資格者全員に対して丁寧な説明を行っているというのが現状でございます。

○紙智子君 戦後、この土地改良法ができた当時というのは小規模で零細農家が多かったわけですよね。農地整備を図って食糧の増産を図る上で、一部の方が反対していたとしても、経費の負担があっても、やっぱり強制力を持って土地の整備を図る必要があったのではないかと、そういうことも想定できるわけですけれども。ただ、当時は、農産物価格を保証して農家の生活を向上させる食管制度などがあったわけです。だけど、今は大分違っていて、農業経営の規模も相当大きくなったと、それから農作物の価格支持制度もなくなりました。こういう時代の変化の中で三分の一の農家を切り捨てていいのかというふうに思うわけです。
 やっぱり慎重であるべきと、元々そういう立場だということではあると思うんですけれども、もっともっと慎重であるべきではないかというふうに思うんですけれども、大臣の御見解を伺いたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 現行の土地改良法では、農業者の三分の二以上の同意で事業を実施できるわけでございます。その同意は、実施地域の農業者に負担を求めるために行うものという考え方でございます。
 一方、機構関連事業、担い手への農地の集積、集約を加速化するため都道府県の判断で実施できるものでございまして、農業者に費用負担を求めないことから同意を不要とするものでございますが、関係農業者の理解を得て事業を推進していくことは当然のことであろうというように考えております。
 このため、今般、農地中間管理機構法を改正しまして、機構に対し、あらかじめ所有者、耕作者に対して機構関連事業が行われることを説明する旨を義務付けております。これは法の八条第三項でございます。また、所有者、耕作者は本事業が行われ得ることを承知して機構との間で権利の設定が行われることとなるように措置をしております。また、事業計画の策定に当たりましても、所有者、耕作者に対する事業計画の公告、縦覧、審査請求、裁決といった手続も用意をしております。
 そういった点で、三分の二の特別決議をしながらも、残りの三分の一の皆様に同意をいただくことを丁寧にやっていかなければならないというように思っておりますし、また、耐震化事業につきましては、巨大地震が発生した場合に備えて、耐震性が不足している施設について緊急に対応する必要がありますことから、国又は地方公共団体の判断で事業を実施し、基本的に農業者の同意を求めないこととしておりますけれども、緊急耐震工事計画につきましても農業者への公告、縦覧等の手続をしっかりやっていきたいと思っております。
 このように、機構関連事業や耐震化事業の実施に当たりましては、関係農業者の意見をしっかりと丁寧に酌み取っていくということが大事でございますし、地域の合意形成の機会が奪われることのないようにしっかりと対処していきたいというように思っております。

○紙智子君 今、丁寧に聞き取らなきゃいけないという話があったんですけれども、今回の改正では三分の二の同意も要らなくなるということですよね。農地中間管理機構が行う新事業においては、所有者が知らずに事業が進められたり、反対する人がいる場合にどのように対応するのかということが疑問としてはありますし、それから農地中間管理機構、農地中間管理権を有する事業施行地域内の農用地を貸し付けているときは農地の貸付けの相手方の意見を聴くだけでいいというふうになっているわけです。
 これで果たして本当に地域の話合い、合意が取れるのかなというのは、正直言いまして、まだまだ懸念というのが拭い去れないというふうに思いますし、ちょっと時間がないので、加えてもう一つ併せてお聞きするんですけれども、同意徴集手続の簡素化についてなんですけど、土地改良施設の更新事業のうち技術革新等に起因する機能向上を伴うものに関わる同意手続を簡素化するというようになっています。具体的には、事業参加資格の三分の二以上の同意に代えて土地改良区の総会の議決で事業が実施できるとなっているわけです。
 普通、議決だったら組合員の二分の一以上が出席をして過半数で議決するわけですから、これ、三分の二がもしかすると四分の一になる可能性もあるんじゃないかと。そうすると、地域に混乱が生まれることないのかというふうに思うんですけど、いかがでしょうか。

○政府参考人(農村振興局長 佐藤速水君) 更新事業の申請に当たりましては、土地改良区が各組合員に対しまして事前に説明会を開催いたしております。具体的には、工事の内容ですとか事業費の概算、管理事業計画の同一性、組合員負担の相当性、これらにつきまして丁寧に説明を行っているところでございます。このことは、今般、同意手続を簡素化する更新事業についても変わるところはございません。
 この総代会の方の議決で足りることにするわけでございますが、総代会の議決というものは、一つは総代の三分の二以上が出席してその議決権の三分の二以上で決する重要事項と、それと総代の半数以上が出席してその議決権の過半数で決する一般事項、これ二つに分かれております。更新事業の申請は、制度上重要事項と位置付けられております。この重要事項につきましては、一般事項と比較いたしまして議決権等が厳しいことから、より丁寧な説明が行われているところでございます。

○紙智子君 農地中間管理機構の活動状況に関するアンケートって出されていますよね。それ見ていきますと、農地流動化について機構をどのように考えているのかということが示されています。機構と機構以外どちらでもよいというのが、市町村でいうと五五%、指導農業士の皆さんであっても五〇%となっています。機構は軌道に乗っているかどうかという質問に対してでいうと、軌道に乗っているところまでは行っていない、それから軌道に乗っていないというのを合わせると、市町村で八七%、指導農業士、農業法人協会では九一%となっているわけですね。
 だから、そのほかにもいろいろアンケートを取っていて、軌道に乗せるために何が必要かということについては、一番多いのが、現場のコーディネートの活動の強化を望むというのが三六%となっていて、ちょっと時間がなくなってきたので、これ自体を質問にしようと思っていたんですけれども、これら含めて、いろいろとやっぱりこういう意見がまだまだ現場に行くとあると。そういう中で、やっぱりもうすぐに進めていくということについてはより慎重にならなきゃいけないというふうに思うわけです。
 それで、やはり地域の合意を得ながらするべきだというふうに思いますし、こういう、一方では、必ずしも中間管理機構を通さなくても、農業競争力基盤整備事業として五百八十億円の予算組んだ中で、予算措置としてそれに対して対応できるというものを一方でつくりながら、そういう制度をつくっているのに、なぜこういう農地中間管理機構に新事業をつくるのかということでいえば……

○委員長(渡辺猛之君) 時間が過ぎておりますので、質疑をおまとめください。

○紙智子君 地域の話合いというよりも、あらゆることをやって中間管理機構の実績をつくるというところにやっぱり重きが置かれているんじゃないのかなというふうに言わざるを得ないんですね。そういうことを含めて、私としては、なかなかこれは慎重を欠いているんじゃないかというふうに思います。
 以上で終わります。