<第193回国会 2017年4月25日 農林水産委員会>


◇長崎諫早訴訟、開門を拒み控訴しない国の姿勢を強く抗議/種子・種苗の知的所有権が海外に流出する危険性も/農水相「第2全農は無理がある」と答弁

○農業競争力強化支援法案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 法案の質問に入るに先立って、諫早干拓の潮受け堤防の開門問題についてお聞きをいたします。
 四月十七日に長崎地裁は、諫早湾干拓事業潮受け堤防の排水門の開門を禁止する判決を出しました。本日、大臣は控訴しないことにしたという談話を出しました。これは私、驚きでした。一九九七年にギロチンと言われる潮受け堤防が閉め切られて以降、タイラギ漁は激減、養殖ノリの色落ちなど漁業被害に苦しむ漁師の皆さんの姿や苦しみの声、怒りの声を思うと、これ、大臣が控訴しないと言われたことに強く抗議をしたいと思います。
 昨日、有明訴訟原告団、漁民の皆さんと弁護団の皆さんがお見えになりました。皆さんから、山本大臣に会っていただいたんだとお聞きしました。その際、大臣は原告団の皆さんに、自分としては和解を望んでいると言われたと聞きましたけれども、そう言われたんですね。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 原告団の団長の馬奈木弁護士さんもしばしば記者会見の末尾に和解という解決を望むと言われておりまして、私も、この訴訟様々たくさんございますが、この全ての訴訟をひっくるめて和解での解決以外に根本的な解決はないというように考えております。
 その意味において、私ども、この諫早訴訟二十年、これを一年間和解協議の場を長崎地裁がつくっていただきまして、そのテーブルにのって真摯に努力したつもりでございますし、何より大事なことは、漁業関係団体もその和解協議に真摯に対応していただいたということに対して感謝をしておる次第でございますし、原告団の皆さんに和解をなお希求したいということは申し上げました。

○紙智子君 つまり、原告団の皆さんに会われて、自分としては和解を望んでいるというふうに言われたと。これはどういうつもりでおっしゃったんですか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 裁判というものは相矛盾する結論を得ておりまして、開門をしろという確定判決があり、また、開門してはならないという差止め請求がございます。その意味において、全てを網羅的に国が解決するというのは和解しかございません。その意味で、裁判の制度、仕組みにおける一つの限界を超えるためには和解が最も大切な手段であろうというように思っております。

○紙智子君 昨日の午後のことですよ、お会いになったのは。来られている方たちは、もうノリの色落ちとかで苦しんでいる漁民の方たちもいたと思うんですよ。そういう人たちはやっぱり開門を望んで来ているわけですね。片方、自分の頭の中ではもう控訴しないことを決めておきながら、そのことを考えながら、会った原告団の皆さんには和解を望んでいると言われたわけですか。これ、詭弁じゃないですか。原告団を愚弄していると言われても仕方がないんじゃないですか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 開門要求をされている原告団の皆さんも、記者会見をされる都度、最後には和解を望むというように言っておられます。私もそのとおりであろうと思っておりますが、ただ、開門によるかよらないか、又は開門に代わる基金案というもので一年間このテーブルに着いたわけでございますし、その意味においてぎりぎりのところまで歩み寄ったという、そういう状況でございます。あと少しの懸隔だというように思っているものでございまして、何とかその間を埋められないかというように今でも思っているところでございます。

○紙智子君 そのぎりぎりのところまで歩み寄れたという話なんだけれども、そして、その和解協議をしてきたと言うんですけれども、努力をしてきたのは双方そうだと思いますよ。だけど、それを壊したのは誰かと、私は農水省に本当に大きな責任があると思いますよ。
 改めてちょっと確認しますけれども、福岡高裁の判決というのは、国に対して三年以内に諫早干拓の潮受け堤防を、排水門を五年間継続して開放するように命じる判決を出しました。国はこれ履行義務を負っていると思いますけれども、間違いないですね。履行義務を負っているか負っていないかということだけ端的にお答えください。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 負っております。

○紙智子君 そうですよ。国は確定判決に沿ってこれ本来開門すべきですよ。開門したらこれ農業被害が大変になるということが言われているんだけれども、確かに一部被害は出ますよ。しかしながら、農水省は、皆さん方は、裁判において三の二の開門だったら農業被害は防げると、裁判に勝てるんだと言ってきたんじゃないですか。違いますか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 当時、三の二開門ということを考えておりました。今般の長崎地裁判決に対する対応を検討する中で、開門に向けた事前対策工事の着手すら行えず、現実に開門することは著しく困難な状況にその後なってまいりました。長崎地裁における和解協議で、開門によらない基金案について真摯かつ前向きな議論は重ねられております。
 そんな意味で、二十二年の福岡高裁確定判決でございますけれども、なおこうした状況の変化がございまして我々はこの開門に達していないわけでありまして、またさらには、福岡高裁に請求異議訴訟が提起されまして、またこの審理も同時に始まっているわけでございまして、その審理が法律論争に今後なり、さらにはどう展開するかということを注視しているところでございます。

○紙智子君 三の二でやれば農業被害は出ないというふうに言ってきたわけですから、その説明責任をきちっと果たされないで説得することができなかったということですよ。国が控訴する権利を放棄するようなことがあれば、これ漁業者の不信感、現地でこの混乱はますます大きくなるばかりで、和解とは逆の方向に行ってしまいますよ。この混乱と不信をどう解決するのかと。これ、今こういう対応取られたんだけれども、ますますこれ大きな問題になりますよ。どう解決するつもりですか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) この長崎地裁での和解協議におきまして原告団の皆様は、開門によらない基金、開門しなくて基金を論じるということに対して真摯に対応いただきました。しかし、その中で、やはり開門に代わるという長崎地裁の訴訟指揮に対して御不満があったようでございました。
 したがいまして、この長崎地裁の今回の判決は控訴を断念することによって、この舞台は福岡高裁に移るわけでございまして、福岡高裁の請求異議訴訟、これを真摯に見守っていきたいというように思っております。

○紙智子君 今、和解の協議がされていたと、実際には基金によるような話で進んでいたというんですけれども、双方がやっぱり粘り強く話し合っていたと思うんですよ、和解に向けて。それを壊したのは、農水省が、三月にも質問しましたけれども、想定問答集を作成して、自分たちの都合の良いように動かそうとしたことが明るみに出て、それで一気に不信と混乱を招いたからですよ。その反省もなしに、大臣は今控訴しないと言うわけですよ。
 控訴しないということはどういうことかといえば、これ開門してはならないということを決めた長崎のこの判決を確定させるということになるわけですよ。同時に、福岡高裁のこの開門の義務、農水省としては開門しなきゃならないという義務は引き続き消えないわけですね、残っているわけですよ。そして、漁民の皆さんは決してそこで諦めたりしないわけですよ。ですから、この控訴権をもし放棄するようなことになれば、いよいよ農水省は自らの立場をより厳しいところに追い込むことになるんですよ。
 私は、やっぱり農水省って一体誰のためにあるのか、農水大臣というのは一体何のためにいるのかと。これは、農業も大事だし、漁業も、双方大事でありますよね。この両方とも共存を図って円満な解決を望んでいるわけですし、それをやるのが役割だと思いますよ。国がやるべきことというのは、先ほども言いましたけど、これはやはり、これまで農水省自身が裁判の場で三の二の開門だったら農業被害は防げるんだと、そういうふうに言ってきたその具体化をきちんと図って、受け入れられる案を作って、和解の協議の場をつくるべきだと、是非そのことをやるべきだということを訴えて、次の質問に移りたいと思います。
 それで、法案ですけれども、今回新法として出された農業競争力強化支援法についてお聞きします。
 参議院の本会議を受けて今日から委員会の審議に入ったわけですけれども、本会議で質問したことも踏まえながら、新法がどういう法律なのか、何を目指すのか、誰のための何のための法律なのかということで議論をしていきたいと思います。
 まず、四月一日の日本農業新聞のモニター調査についてお聞きします。
 本会議で大臣に私はお聞きしましたら、大臣は、農政の推進に当たって、各地の農業者や農協を始めとする農業関連業界等から意見を伺ったというふうに言われました。総理が八本の法律を出すと言ったのが施政方針演説です。二月から三月にかけて八本の法律案が出されました。そこで、モニター調査が行われたのが三月と。これ、日本農業新聞ですね。既に農政の方向がはっきりした上でのモニター調査ですよ。
 そこで、安倍農政を評価するというのは三割まで満たないと。農家や生産現場の声よりも経済界の声を重視していて評価できないというのが七五%ですよ。なぜこれほど不人気だったと思いますか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 日本農業新聞が行いました農政モニター調査に関する報道は承知をしているところでございます。
 これまで安倍内閣におきまして、農業者の所得向上と農業の成長産業化の実現を図るため、農地中間管理機構の創設や日本型直接支払の創設、輸出促進や六次産業化など、農政改革を進めてまいりました。具体的な成果といたしましては、担い手への農地集積が二十七年度には五二・三%というようなこと、あるいは輸出が伸びていること、あるいは新規就農者も伸びておりますが、こうしたことでその成果も少しずつ上がっておりますので、やがてこの不人気も挽回できるのではないかというように期待しておるところでございます。

○紙智子君 もう全然分かっていないですよね。もっとちゃんと見てくださいよ。先ほど与党席からだってどんな質問されたんですか。もうちゃんと受け止めないと駄目ですよ、これは。
 それで、昨年十一月に規制改革推進会議の農業ワーキング・グループが農協改革に関する意見というのを出しました。それで、全農等の在り方についてということでいろいろ書いていますけれども、その中にこうあります。全農が農業者の協同組合の原点に立ち返ってこうした改革を推進することを強く期待するが、着実な進展が見られない場合には、真に農業者のためになる新組織、本意見に基づく機能を担う第二全農等の設立の推進など、国は更なる措置を講ずべきであると、こういうふうに言っているわけですけれども、この協同組合形態の民間事業体を否定をして第二全農を求めると、この第二全農という意見について山本農水大臣御自身はどう思われますか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 二十八年十一月十一日の農協改革に関する意見は、やがて十一月二十九日、農業競争力強化プログラムにこれは改組、改変されておりまして、そのときには第二全農の設立というのは盛り込まれておりません。
 第二全農をつくるということには無理があるように思っておりますし、今、自己改革をやっていただきまして、我々とも意見交換をスムーズにさせていただきまして情報の共有を図っている最中でございます。その意味におきまして、今後は自己改革を推進していただいて、所要の目的を達するというように期待をしているところでございます。

○紙智子君 無理があるというふうに言われましたけど、どうして抗議されないんですか。抗議したんですか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 先ほど申し上げましたように、農協改革に関する意見が十一月十一日でございましたが、やがて十一月二十九日には農業競争力強化プログラムというものにこれは改組、改変されておりまして、そこには第二全農の言葉は含まれておりません。

○紙智子君 先ほどもありましたけれども、これはもう支援法じゃなくて脅迫法じゃないかと。ちゃんとやらなかったら第二全農でも何でもつくるぞということが言わば言われているわけですよ。確かにいろんな議論の中で消えてはいるけれども、しかし、やっぱり本質的なところは変わっていないと思いますよ。
 やはり、農家や生産現場の声よりも経済界の声を重視して評価できないというのが七五%、先ほどのモニターの調査でもあるわけですよ。誰のための農政なのかと。幾ら農家の所得向上だといっても、現場はそう思っていないですよ。TPPから続く農政の不信というのはまだ払拭できていないです。
 今回政府が出した法案も、十分時間を取ってやはり丁寧に説明責任を果たしていくと、一つ一つの法律を国民に分かるように時間を取ってしっかり審議すべきだということを申し上げておきたいと思います。
 次に、これも本会議でもやりましたけれども、主要農作物種子法の質疑に続いて、種子、種苗についてお聞きします。
 種子法の議論において、規制改革推進会議で出された資料についてお聞きをしました。都道府県が開発をした品種は民間企業が開発した品種よりも安く提供することが可能だというふうにあるので、麦や大豆の販売価格を出してほしいというふうに要求しましたら、出てきたのは奨励品種のみだったんですね。それで、質問で確かめたところ、政府参考人は、これはもう既に公表しているものですというふうに言われたわけですよ。
 資料要求、これしているわけですけれども、まだもらっていないですけれども、いつ出すんですか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 米、麦、大豆の種子につきまして、農林水産省としましては、都道府県ごとの奨励品種名や育成期間、品種特性や作付面積などを調査した水陸稲・麦類・大豆奨励品種特性表等を公表を既にさせていただいております。
 また、一方、米、麦、大豆の種子価格につきましては、そのほとんどが県域での生産流通を前提として、地域ごとの生産コストや生産物の販売価格等、様々な事情を勘案して決定されたものでございます。農林水産省としては、種子生産における地域の自主性を尊重し、公表を前提とした調査を行ってきていなかったところでもございます。
 今般、委員からお尋ねがありましたため農林水産省が生産団体等への聞き取りを行い、把握した主な種子の価格についていろいろと調べて、またこれを公表したいというように思っておりますが、麦の原種をホクレンから採種農協へ売り渡す際の三十キロ当たりの価格は、民間が育成した春よ恋、平成十一年ホクレン育成の価格は七千六百五十円、公的機関が育成したはるきらり、平成十七年農研機構育成は七千四百円となっておりまして、民間育成品種及び公的機関育成品種ともほぼ同水準でございます。
 こうしたことについての詳細については既に公表しておりますけれども、私どもで簡単にまとめたものにつきましてはまた後日お届けしたいというように思います。

○紙智子君 先日いただいた一日で仕上げて出してきたものは物すごく簡単なもので、私たちが要求していた販売価格なんかも含めて、ちゃんと事細かに書いているやつ出してくださいと言ったんだけど、出てきていないわけですよ。それ、あるんでしたら今日中に出していただけますか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 膨大な資料でございますので、その資料の特定をいただけますれば今日中に出せるかとも思いますが、鋭意、紙委員と御協議させていただきたいというように思います。

○紙智子君 出す出すと言いながら、何で出されない、そもそももう法案の審議は終わってしまっているわけですよ。それで、出しもしないで、ある、公表はしているからと言いながら、なぜ出さないのかということなんですが。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 御存じのとおりでございますし、既に公表された資料でございまして、膨大な資料にわたるものでございまして、これについての特定をしつつ出さなければ、もう紙委員にかえって御迷惑を掛けるというように思っておるところでございます。

○紙智子君 もう全然それはなっていないですよね、今の答弁は。いや、本当に、公表しているからと言って出さなかった理由にしたんですけど、これ自体が全然納得できないですよ。
 これ、出していただけるのはいつ出していただけるんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) その公表した膨大な資料の特定を紙委員にしていただいて、それから大体めどが付くというように考えるところでございます。

○紙智子君 膨大というのは、どのぐらい膨大なんですか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 主要農作物種子法の廃止法案に沿う形で公表をさせていただきたいと思いますし、また委員と御相談させていただきたいと思います。<

○紙智子君 ちょっと意味分からないです。ちょっと、この後、質問続けられないです。

○委員長(渡辺猛之君) 速記を止めてください。

〔速記中止〕

○委員長(渡辺猛之君) 速記を起こしてください。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) できるだけ速やかに、できれば今日中に提出いたします。

○紙智子君 是非、今日中にということがありましたので、待っていたいと思います。是非出してください。これは、この後も引き続き、全体のこの農業競争力強化法案にも入っている中身ですから、重要だと思いますので、お願いします。
 次に、国と地方の役割分担のことについても本会議で聞きました。
 九七年の地方分権推進委員会の勧告では、種子法に関わる補助金を廃止して一般財源化するということになっていたわけです。勧告では、稲等の主要農作物の優良な種子の確保が食糧の安定供給等の観点から極めて重要だから種子審査等は全国的な制度の下で実施する必要があると、これ法令解説に書いてありますけれども、というふうになっていたわけです。
 種子審査等は国の制度、財源は地方に移譲する、そういう役割分担をしたわけですね。種子法の廃止というのは、言わばこうした地方分権の考えに反するんじゃありませんか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) これ、平成九年七月の地方分権推進委員会第二次勧告でございまして、そこで主要農作物種子法に係る国の補助金を、主要農作物種子生産管理等事業費について、全国的な主要農作物種子の審査制度等を維持しつつ一般財源化すると決定をされたわけでございます。
 私ども、補助金でやっていたものでございますけれども、一般的な地方分権の改正でこうした整理となったことでございますので、私どもの意見をあえて今述べる立場にはございません。
 そして、今般の種子法の廃止後におきましても、種苗法に基づく種苗の生産等に関する基準に種子法の圃場審査及び生産物審査の審査基準と同様の内容を定めて移行するとともに、これらの審査に対応する業務を都道府県が実施するということになっておりまして、これは種苗法に基づく事務の実施に必要な地方交付税が措置されることが大事なことだろうというように思っておりますので、平成三十年予算編成過程において、私どもも精いっぱいの努力をしていきたいというように思っております。

○紙智子君 今の答弁も納得できないんですけれども、種子は国民の共有財産だ、戦略物資だと、食糧の安定供給等の観点から国の制度にしたわけですよね。それなのに、理解も合意もなく種子法を廃止しました。今もこれ、種子法を廃止しないでほしいというファクスや要請がもうずっと続いているんですよ。種子法廃止は重大な問題だというふうに思っています。
 それから、本法で種子、種苗がどうなるのかということですけれども、独立行政法人の試験研究機関及び都道府県が有する種苗の生産に関する知見を民間事業者に提供することになると。本会議で質問しましたら、都道府県と民間事業者との間で知的財産に関わる契約を締結するという答弁だったわけですね。
 知的財産に関わる契約というのはどういう契約なんですかね。この契約対象というのはどういうデータが入るんですかね。そして、どういう使い方になるんでしょうか。さらに、この売買金額というのは幾らになるんでしょうか。この三点、お聞きします。

○政府参考人(農林水産技術会議事務局長 西郷正道君) 当然、種子、種苗は重要な戦略物資であるということは論をまたないわけでございますので、また、国、都道府県の知見の提供を行うことによって民間事業者の参入を促進するということで、諸外国に打ち勝つ有用性の高い品種の研究開発をしていかなければならないと、戦略的課題と考えております。
 それで、例えば国の農研機構の知見を民間事業者に提供する際にはこういった考え方に基づいて実施していくこととしておりますけれども、その知見がみだりに流出して国内農業に悪影響を及ぼすことがないよう、例えば契約の中身でございますけれども、国内で事業を展開しようとする企業に農研機構が開発した品種を提供するということにおいては、その場合はその品種を国外に持ち出すことがないというふうなことを事項を契約に盛り込むといったようなことを考えております。都道府県に対しても、同様の対応が行われるよう指導、助言を行っていきたいというふうに考えております。
 金額等につきましては、ちょっと今数字ございませんけれども、それなりのそれについては当然のことながら対価は求めていくということに、ライセンスということになると思いますけれども、対価を求めていくということになると思います。
 いずれにいたしましても、国内農業に悪影響を及ぼすことのないように努めてまいりたいと存じます。

○紙智子君 ちょっと今の答弁は何をおっしゃっているのかよく分かりません。聞き取れなかったんですよね。
 この種子、種苗に関わる全てのデータが民間に提供されることになるわけですよね。知的財産権等が海外に流出することを防止するための措置を設けるというふうに答弁されたんですけれども、どういう措置なんでしょうか。それから、国内農業の発展に悪影響を及ぼすことがないように都道府県に対して指導、助言すると言われましたけれども、指導、助言というのは一体何なのか、説明をしていただきたいと思います。

○委員長(渡辺猛之君) 西郷事務局長、もう少し大きな声ではっきりとお願いします。

○政府参考人(農林水産技術会議事務局長 西郷正道君) はい。失礼いたしました。大きな声で申し上げます。
 契約につきましては、要するに、国内でやるということであれば、みだりに国外に持ち出すということは絶対ないような契約を入れ込むということで対応しております。(発言する者あり)はい、それにつきましても、その契約につきましては、買収された方に仮にそういうことがあった場合については受け継いでいただくという契約にしていくということでございます。
 それから、都道府県に対する指導はどのようなことかということでございましたけど、国ではこういうことをやりますといったことをお示しして、もし都道府県でやられる場合についてはこれを参考にしてくださいということでございますし、都道府県は都道府県の品種を持っていらっしゃるということは、その品種を自分で守っていくということが仕事でございますので、当然のことながら、そういった点で御協力をいただけるというふうに考えております。

○紙智子君 どうやって歯止めができるのかというのがもうよく分からないんですよ。
 それで、技術的な助言だとかガイドラインだとかということではこれ止まらないですよ。知的財産が海外に流出してしまったと、つまり事後の対策ではこれ流出を防ぐことにならないわけですね。
 法的拘束力のないガイドラインではこれ効果が発揮できないんじゃないんですか、大臣。

○政府参考人(農林水産技術会議事務局長 西郷正道君) そこはあれでございますけれども、契約というのは、もしそれが守られなかった場合については損害賠償その他でもって企業に非常に、何というんですか、負担を求めることになりますので、そこは今までも守ってもらっておりますし、これからもそういうことでやっていくということだと存じております。

○紙智子君 だから、それは後対策になっちゃうんですよね。出ていってしまって賠償を払ってもらったとしても、もう出ていってしまったらずっと回るわけですから、結局、効果がはっきりしないような対策ではこれ安心できないわけです。日本の食料主権にも重大な影響を与えかねないということを指摘しておきたいと思います。
 あとちょっとまだあるんですけれども、時間になりましたので、残りはあとまた次回させていただきたいと思います。