<第193回国会 2017年4月14日 本会議>


◇本会議反対討論/種子法の廃止は、高い安全性と公共性を持つ種子の生産・普及体制が崩壊させる

○農業機械化促進法を廃止する等の法律案(内閣提出、衆議院送付)
○主要農作物種子法を廃止する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 私は、日本共産党を代表して、主要農作物種子法を廃止する法律案に反対する討論を行います。
 討論に先立ち、一年前の熊本地震により犠牲となった方々に改めて哀悼の意を表し、被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。
 一年たってなお、避難者は四万七千人に上ります。被災者の住宅やなりわいの再建にはいまだ多くの課題が横たわっています。被災者の生活の立て直しのため、政府が手だてを取り切るよう求めるとともに、日本共産党として力を尽くしていく決意を改めて表明いたします。
 さて、種子法は、一九五二年に制定されて以来、食料増産を図るため、稲、麦、大豆の種子を対象に、都道府県による奨励品種の指定、原種、原原種の指定、種子の審査制度等の規定などで品種開発と安定供給に役立ってきました。しかし、政府は、民間事業者が参入しにくいとの理由で本法を廃止すると言います。
 こうした中、種子法の廃止に反対する世論が日に日に広がっています。参考人からも、慎重審議や十分な資料の説明と国民的な議論が求められましたけれども、政府質疑は僅か五時間、委員長職権で審議を打ち切ったことに強く抗議するものです。
 種子は、農業生産の最も基礎的な農業生産資材であり、農と食を左右するものだからこそ、国の姿勢を示すためにこの種子法が制定されました。ところが、質疑を通じて明らかになったことは、従来の政府の説明を合理的な理由もなく覆していることです。
 農林水産省は、僅か十年前、種子法は民間による新品種の種子開発、民間参入の阻害要因とはなっていないと答えていたのに、今は民間企業が参入する阻害要因になっていると言います。また、奨励品種制度は農産物種子法の要だと言ってきたのに、奨励品種は県が開発した品種を優先して奨励品種に指定する県自らへの御褒美だ、こんなことを言いました。挙げ句の果てに、立法事実に関わる種子法の対象である麦、大豆の資料をなぜ出さないのかと質問をしたら、公表している資料だから自分で探せと言わんばかり。全く許せない答弁です。
 しかも、農林水産省は、規制改革推進会議に種子法の廃止を自ら提案し、廃止要求が出されていたわけでもなく議論もされていないのに、廃止することを結論としました。まさに、廃止先にありきの姿勢です。種子法の廃止は、農林水産省の自作自演と言われても仕方がありません。まともな説明責任も果たさず、国会議論を軽視する農林水産省の姿勢に強く抗議するものです。
 以下、反対理由を述べます。
 第一の反対理由は、都道府県と関係者が積み上げてきた高い安全性と公共性を持つ種子の生産、普及体制が崩壊する危険があるからです。種子法がなくなれば、育種予算を確保する根拠がなくなります。政府は、財源を確保するために努力すると言いましたが、現状が維持できるとは答えませんでした。財政的な担保がなくなれば、安定した種子の生産や供給体制は保証されず、地域の気候や農業形態に根差した品種開発が後退することは明らかです。
 参考人からは、圧倒的な資金や技術を持つ多国籍企業の行動を抑えるため、国が一定の関与をしなければ本当の意味での自由な取引はできないとし、企業の暴走を制御するのが国の役割だと言われました。種子法を廃止すれば、外資系多国籍企業がもうけの場として進出する可能性もあります。
 第二の反対の理由は、種苗法の中で位置付けるとする品種の圃場の審査等は、予算的な裏付けがなく、現状が継続される保証はありません。政府は種苗法で対応すると言いましたが、参考人からは、食料安全保障のインフラとしての種子法と知的財産の保護を定めた種苗法では目的が違うので、種苗法では対応できないとの意見が出されました。政府の説明には道理はありません。また、農業競争力強化法で対応すると言いますが、むしろ都道府県の知見が民間に開放される懸念があるのです。
 第三の反対理由は、現在でも民間企業による育成品種が奨励品種となるなど、民間に不利とは言えない上、むしろ開発に掛かるコストが増えて、種子価格が上がる危険があります。以上を申し上げ、反対討論といたします。(拍手)

○議長(伊達忠一君) これにて討論は終局いたしました。

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○議長(伊達忠一君) これより採決をいたします。
 まず、農業機械化促進法を廃止する等の法律案の採決をいたします。
 本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。

  〔投票開始〕

○議長(伊達忠一君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。

   

  〔投票終了〕

○議長(伊達忠一君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数        二百三十一
  賛成           二百十七
  反対              十四
 よって、本案は可決されました。(拍手)

    

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   〔投票者氏名は本号末尾に掲載〕
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○議長(伊達忠一君) 次に、主要農作物種子法を廃止する法律案の採決をいたします。
 本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。

  〔投票開始〕

○議長(伊達忠一君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。

  〔投票終了〕

○議長(伊達忠一君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数         二百三十一
  賛成            百五十八
  反対             七十三
 よって、本案は可決されました。(拍手)